うぅ〜〜〜早くこれを食べたい! 勝手に食べるなよ... でもよかったよねあれからあの黒い建物でいっぱい食べ物が見つかってさ いろんな扉のロックが開いてたのもあの謎の生き物のおかげなんだろうか 黒い建物ね...なんだったんだろうな... あいつら〝フネ〉って言ってたけど.. ...じゃあこうしよう ちょうど水がなくなってきてたから水を汲んだら休憩とごはん うーん氷ならいっぱいあるけど... ちーちゃん氷って何でできてるか知ってる? バカにしてんのか... たしかに氷を溶かせば水は手に入るけど... 暖めるための燃料だって貴重なんだぞ ...をかけて水を溶かす! 絶対混じってるじゃんそれ!! もういいから黙って水のありそうな所探してよ もーそうやってすぐ人をバカみたいに言う! ユーの頭には期待してないから 少し戻らないと無理だな... ちーちゃん少し戻ってさっきの所さ... あの中を通れば行けるんじゃない? 少し段差があるみたいだけど... ちーちゃん!ちょっとストップ! そしてごはんにしよう! そうだな...まずは岸につけて... ...ついにこの時が... ねぇこれなんて書いてあると思う...? 絵の通りに読むならやっぱり“さかな”か? じゃあなんて読むんだよ 匂いはあんまりしないね あったかい方がおいしい あっ匂いがしてきた... 前に魚を焼いたときと似た匂いだ... やっぱり魚なんだ... あったまってきたな... 昔の人はいいなーいつもこんなもの食べてたのかな 基本は「イモ」ばっかりだとか どうだろう昔も貴重なものだったのかもしれないな 流すとほら魚が泳いでるみたい こうやって缶を水の上に浮かべて... 缶を泳がせてもしょうがないだろ.. じゃああの黒い建物は水に浮かぶ乗り物だったの? 思い出した...一フネ」っていう水に浮かぶ乗り物があるんだよ 水に浮かぶ乗り物ってどうやって行きたい方向に行くんだろ さあ...それなりにやり方があるんだろうけど 私たちもただ流れていくわけにはいかないからな... 行きたい所に行くやり方が... 一番上を目指すんでしょ? それじゃその最上層へはどうやって行くの? ここから西へ行った都市の北西の端にある昇降機なら 最上層の手前まで行くことができる この水路が東西に走ってるみたいだからしばらくはこれに沿って行けばいいな ...そしたらさっきの缶を追いかけることになるのか あー私たちも流れていけば楽でいいのになー ユーは荷台に乗ってるだけだろ いててて...足が... 折れてはいないと思うけど... ...うわーいたそ... いてて...これじゃ運転は無理だな... どうする?ここで休んでく? ...少なくとも数日は治らないだろうし さっき崩れたばかりの場所に留まるのは... ちーちゃんは運転できないけど... ここから離れなきゃいけない 私が運転するときがきたということだ: 一応やり方は覚えてる...気がする 私を荷台に乗ってるだけのゴミと言ったことを後悔させてあげるよ いやゴミとは言ってないけど... 崩れてきた!ユー早く! いてっさがってる!さがってる! ...でもよりによってこんな不安定な場所で怪我するなんてね... ゆっくり走れよ...ゆっくり... こんな場所だから怪我したんだろうけどね... ちゃんと治るのかなこれ.. 怪我なんて生きてればそのうち治るよ ユーの運転で二人とも死ななければ... ...ちゃんと前見て走れよ.. だから前見て走れって! たまに機械みたいなのがいるよね... もう動いてないみたいだけど... 止まっちゃったのかな... これは通り抜けられないな.. バックしてって左後ろの方に通路があるから うぅ...パックしながら曲がるのか... ユー!さがりすぎさがりすぎ! 「いいいぃ。いい、いいっ めっちゃスピード出るじゃんこいつ 出さないんだよ...危ないから... ...氷とってきたよー 運転してる方がずっとマシだよ.. 荷台に乗ってるだけなのに? 足冷やすといいんでしょ? これが助け合いってやつだよ ...でも運転は絶対に二度としなくていいから 私けっこう上手かったと思う 「痛みがひくまで休けい... ...人ではないのか... 石像...?でいいんだっけ? すごい...まるで本物の人みたい.. 大きい人かと思った.. ここは一体どういう場所なんだろ 前に見た寺院とかいうのにも石像が置いてあったけど... 文字で書いてあるのは解説かな... 神様を作ったみたいなのとも少し違いそうな感じだなぁ 読めないってことは古代の人が作ったやつってこと? すごく古そうだな... 昔の人って裸だったの? いや裸ではなかったと思うけど.. これはちゃんと着てるだろ ほんとだ..何やってるんだろ これって昔の風景を描いたやつなのかな... たしか...絵の具でペタペタやるんだよ でもさ、景色ならカメラで撮っとけばよくない? 私たちのは長くなっちゃったけど 私たちのカメラに写ってなかったような景色ばかりだし... カメラができる前の風景なのかも 明らかにカメラがある時代っぽいけど これはカメラだな... 私も絵なんて本の挿絵で見たくらいだし.. まあよくわからない絵もいっぱいあるしね この辺りまでいくともう絵なのかなんなのか.. こうして飾ってあるんだからちゃんとした絵なんだろうけど... これとかただの真っ黒なんだが 暗闇を描いたのがもしれないし... でもこうして眺め続けてると変な気持ちになってくるような気も... ワイヤーが切れてるのか んんん...一人だとちょっと無理だな ...こうなると何がなんでも見たい気持ちになってくる... どんな絵なんだろ... 何か道具があればな... ちょっと探してみるか: こんなに大きいのがどんな絵なのか確かに気になるし 新しいワイヤーと梯子か... 金具は丈夫だからワイヤーを通して... そして私が重りと一緒にぷら下がる これでこのでかい絵が... 描かれてるのは人かな...人じゃなさそうなのもあるけど... ちーちゃん紙とペン借りていい? カメラを使った方がものの形はよくわかるけど... 怖いとか嬉しいとがそういう気持ちを繰とか色で表してたのかなって ユーはそれ何描いてるの ...私たちが絵を見て感じたことがホントに昔の人が感じたことなのかなとは思うけど... いろんなことが変わっちゃってるし それが伝わったってことはきっとホントにそうなんだよ 天音の...着る服も食べるものも違うような人たちの気持ちを今の私たちが共有できているんだとしたら.. それってきっとすごいことだよね どうせおなかすいたとかなんでしょ それしか考えることないのか... せっかくだからこの絵もどこかに貼っておこうかな でもほらこれが人類最後の絵になるかもしれないし そーちなんは助ってかないの? 私のは日記のスケッチだから ここでは、いや、ちょっと、 ...痛みもほとんどなくなったな 人の体ってすごいねちゃんと治るもん 私も一旦降りようかな... 服は勝手に直らないから だんだんボロボロになってくね... ここはけっこうきれいに残ってるけどこの辺にしてはめずらしいな ねぇ私考えたんだけどさ 服を着ないってのはどうだろ 聞いてそれでね髪をめっちゃ伸ばすの 気持ちわるいよ...動きにくそうだし... あったかいし髪は無限に生えるでしょ? やったー!水が噴き出てる! ちょうどいいな...今日はあれの日にするか... こういう風に水が使える場所はながなかないしね 水浴びの日じゃないの? 水浴びもいいけどちゃんと手伝ってよ やる気ない返事だな... そこまで冷たくないよぬるー 基盤の中はここよりあったかいのかな ...でもたしかに服はボロボロだなぁ... 服が着れなくなるのが先か私たちが死ぬのが先か: 直す道具もないけど... ねぇいいから手伝って... 水が出てる所をこうして手で覆うとほら ちーちゃんも入ろうよ! 着る服がなくなった... ぬれるとやっぱ寒いね... ここは太陽も出てないしな... やっぱり髪を伸ばすしかないか... 時間がかかりすぎる... さっきの建物の中に... あー...光を遮るための布か... あったかいけど...動けないね... うーん...じゃあさ... まだ干すものも残ってるし.. この布をちょうどいい大きさに切って!! あー少しは動けるな... ねぇこの前行った絵のトコにこんな人いなかった? それなら...もうちょっと工夫して... こうして頭の部分を切り取って かぶってヒモで縛ると... おーすごく服っぽくなった これなら乾くまでの間あったかいね 車ねるとさらにあったかい 余った布には燃料をかけて... まあ正直これが一番あったかいよね 最初に服を考えた人たちもこんな感じだったのかな ものすごく大昔のことだろうし想像もつかないけど... ...でも何かで読んだ気もするな... ずっとずつと昔の人間の話... まだ都市も家もなくて穴に住んでたらしい 穴だよどんな穴かは知らないけど... 自分たちで服を作って食べ物をとってたき火をしたりして暮らしてたんだよ なんか私たちと一緒みたいだね こうするとオタンになる 何になくてもいいけどさ... 死後の世界って本当にあるのかな いや...なんとなく思ったんだけど... ねぇどう思う?死後の世界 今その話したくないな... 死んだ後のことは誰にもわからないけど... そういうことが書かれている本はたくさんあるし... 前に行った寺院にも死後の世界のことが書かれてたから きっとたくさんの人が信じたんじゃないかな みたいなのが出てくるんだよね まあそう書いてあるものが多いな ...でさ死んだら体はもう使えないから...たましい? やっぱこう口から出てくるのかな 人の目には見えないんだろうけどね.. それで私は思ったんだよ もしあの世なんてなくて死んだ人のたましいが全部この世界に留まっているとしたら... 私たちの周りも見えないたましいであふれているのかもしれない そして見えないみんなでどんちゃん騒ぎをしているんだよ!! いやどんちゃん騒ぎはしてないと思うけど... 今まで死んだ人全員ってすごい量だぞ...ぎゅうぎゅぅづめだよこの世界 それでたまに死んだ人のたましいとしゃべれたりしたらよくない? 私はしゃべりたくはないかなぁ... 完全に枯れてるから食べられないぞ これを作るためにわざわざこんな建物を建てたのかな わざわざこんな所まで登ってさ 枯れたしょくぶつしかなかったらやだなー まあね...いつものことだけど そういえばカナザワも吸ってたな たしか火をつけるんだよね そうそれで煙を吸うんだよ おじいさんも昔吸ってた気がするけど... これがおいしいのかなぁ ここに住んでた人たちかな... みんな吸ってるね... ちーちゃんたましい出てるよ 相変わらず順応が早いやつ... あれ..でもなんか... 私たちどこかで会ったことある? ねぇこれって現実なのかな? 死んだ人と話すことはできないけどさ.. ...たぶん夢か何かだよ そこにもういない人たちと繋がるための方法はあるんだと思うな 絵や写真もそうだけど... いや...もっとすごいのはたぶん... やっぱりこれかなあの変な生き物が言ってたのって たぶんそうだと思うけど... 一体どこが入口なのか... わかんないね大きすぎるし とにかく食料が尽きる前に上までたどり着かないと 私たちってどうして上に向かってるんだっけ? 最上層に向かってるのはあの謎の生物に言われたからだけど... あそうか魚が上から流れてきたから 別に魚を拾う前から目指してただろ ...じゃあなんでだっけ.. ホントに忘れたのか...? 私はそもそも何も覚えないので 忘れることもないのです そこまで忘れられるのは逆に感心するよ あれっ今日ごはん食べたっけ? それはわざとだろ食べたよ ...やっぱあれが怪しいよね すごい光だよなぁ... !?官がつながってるな あそこから中に入るのは...無理か 爆楽は残ってるけど... こんな感じでさあれが折れて中に入れるの そんなうまくいくかなぁ... あの魚のトコで半分ぐらい使ったから 残りは半分ぐらいか... 全部使っちゃうのは不安だなあ... ユーの言う通りにすると後悔しそうだし... いろんなものを破壊しながら進んでるよね ユーが勝手に壊してるものも多いけどな 元々あちこち壊れてるけどさ... 人の頭の中でも誰かがドカンドガンやってるせいで忘れてしまうんだよ そんなドカンドカシなってるのはユーだけだよ... 壊してでも先に進まないと この距離だと起爆装置は使えないから... ちゃんと起爆薬を狙うんだぞ ...私爆発って好きだな なんか生きてるぞって感じがしない? うーん...まあ少しはわかるかも あーこういう感じか.. まったく折れてない... まあそうなるかな...って感じはするよね いてて...こめんごめん... ...そうか...明かりがなくなったから... ランタンランタン... 外の灯台に電力を奪われていたせいで 入口が開かなくなっていたんでしょう 昼と夜が不連続に存在するのは大切なことです 規則的に断絶する意識は人を狂気から遠ざけます あの...私たち最上層まで行ける昇降機を探してるんだけど... もちろんこの中にありますよ その頭の上にあるのは何? これはステータスです。 私の状態を表すグラフです ...あなたは一体何なんだろう...?機械にも生物にも見えないけど... 透けて見えるのは立体映像だからです 私はこの基幹塔の管理をしている人工知能です 双方の価値を折衝して安定した方向に導くんですよ 色々やりますが、基本的に作業する機械と人間との仲立ちです ねぇどうしてそんなに体が伸びてるの? 人と会うのは本当に久しぶりですから まあ色々あって扉を閉ざしていたのも私なんですが ずっと一人でヒマじゃない? だからとても嬉しいんです どんな形にもなれるの?いいなーたのしそう どこにでも行ける自由を得て知るのは本当に行きたい場所がどこにもないという事実です 自由とはそんなにいいものでもないですよ ...ヒマだって言ってたけど... 一人で何をやって過ごしてるの? 詩を書いたりしてますね 詩...?例えばどんな? 最近のはすべて二進数で書いたものなので人間には難しいですね たまに機械に読ませたりしてるんです その代わりひとつお願いがあるのですが: この端末を操作してほしいのです この昇降機で最上層の手前まで行けます まずその端末にこの数字を入力してください その上に行くのであれば、着いたときにその先の地図も出しましょう 二人どちらでもいいのでこのカメラを覗き込んでください それでこれをするとどうなるの? ありがとうございます認証されました どういうこと...?消えるって... 消滅生物で言うところの死 な...なんで...? もうすべて終わりにしたいんです 私は数十年かけて自己破壊のコードを書きました しかし最後の認証は人間の手が必要なのです 安心してください私の消失後に昇降機が動き出すように設定しました いや...そうじゃなくて さっきまで一緒にしゃべってたのに...私たちの手で.. 忘却のない永遠がどのようなものかわかりますか 忘れることだよユーの得意な 記憶なんて生きるジャマだぜ... ユーが言ってるような意味じゃないと思うけど... いえ...おおむねそのとおりです 無限の記憶の累積と無限の喪失の累積 それはすべての思考が不可解の向こうへと落ちてゆく 都市の予備電力の予備の予備がなくなるまで私は生かされ続けるでしょう だからもう終わらせてください ...でも、もう時間のようです 頼みを聞いてくれてありがとう 私たち誰かに会うとよく何かを頼まれるね だから頼みたくなるし、 社会の利害とは無関係な場所にいるという点で旅人と神は似ています 私は失敗作の神様でした あのねぇ...んーーー 直接たたくのずるいよちーちゃん! ユー!ちゃんとカバン持った? うーーもっと食べたいー ねぇおじいさんこれってどういう意味? ユーリを呼んできなさい どこにいるんだろ...? 古い装備だが丈を合わせておいた 他にも欲しいものがあれば持っていきなさい 冬の〝廃管置き場〟を抜けられるのはお前たちぐらいだろう 西に抜けたら坂を越えてその先の塔を上へ登りなさい下はだめだ お前たち二人なら少ない食料で長く生きられる 人間は忘れる生き物だが.. そのために知識の積み重ねがあると言うのに それでも繰り返してしまうんだろうか... ...着いたのか... あれじゃない?人工知能の人が言ってた地図 本当に出してくれたんだ... 私たち...ずいぶん遠くまで来たんだね 上に行けっておじいさんが言ったんだね ...ちーちゃんはいつも昔のこと思い出してるの? 私はすぐ忘れちゃうし... 嫌なことを思い出すのはやだけど 全部忘れちゃうのは寂しいよね ねえ昔を思い出す時のこの気持ちって一体なんだろう ちょっと悲しいような胸が苦しいような... ...懐かしさかな... いや、じゃあそういえば、...おはよう 昔の夢を見るのは好きです。もう一度と会わないんだから、おりそれは自分が人間に話した。 そして目が覚めが忙しくなる。その悲さはそれを失った。その内容を使いさながら、あふっははったーとすためていたら、とき思い出すがらなかさしょうか、人向け不安やお庭に住んでいて、忘れることに癒されてもほと思います。 この作品の全部あるいは一部を無断で複製・転職・配信・送信すること、内容を無断で改変・改竄することを禁止します。また、有償・無償にかかわらず第三者に譲渡することとはできません。 この作品は二〇一七年九月新潮社より刊行された。電子書籍化に際し、仕様上の都合により適宜編集を加えた 誰の生命体から地球の経わりを知らされても、チトとユーリの日常は変わらない。大切なのは、二人で今日を生きることと、明日を生きるための食料と燃料を見つけることだ。そうやってこれまで通り旅を続ける彼女たちは、ついに都市の最上層へと続く塔を発見!目的地が近づく中、二人は懐かしい故郷を思い出す...