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Instructions:
手塚治虫
アドルプに生く
漫画全集
手塚治虫漫画全集
375
わかりますから、
ありがとうございます。ありがとうございますが、
・ドルフに告ぐ
いろいろかろう
第21章...
第22章...
第23章...
第24章...
第25章...
第26章...
第27章...
第21章
昭和八年九月六日
横浜港に着いた
クイーン・エリザベス号
から一人のドイツ人が
日本へ上陸した
その名は
ラムゼイ...
ドイツのフランクフルター・
ツァイツング新聞社の
特派員であった
彼はすぐその足で
東京へ出て、帝国
ホテルにおちついた
たちまち
警視庁は
彼を呼び
つけた
フーン
ハウスホーフェル将軍
の推薦状?
ワシントンの
大山大使から
白鳥敏夫氏へ紹介状!?
いや
ナチス党の
方とは
存じません
でした!
これは
失礼しま
した!!
いやどうも
日本とドイツとはて
友邦ですからな
こういう
取り調べも
形式的でして
ここに
投印を
押して
下さい
いや
他意はな
いんです
日本在住の
外国人の方は
みなさんそう
していただく
規則でして..
ラムゼイは
やがて数寄屋橋の
近くの電通ビルの
八階にある...
FPANACANER
自分の新聞社
のオフィスへ
顔を出した
やあ
よろしく
日本に
ようこそ!
ドイツ・ジャーナ
リスト同盟の
会食でゲッベルス
大臣にお目にかか
りました
ゲッベルス大臣
にはぼくもご挨拶
したことがあるよ
ーこの男、ラムゼイは
長い年月新聞記者を
やっていたのでもなければ、
筋金入りのナチス党員でもなかった
それどころか上海に長く居たし、
モスクワに常に出入り、
していたのだ
君の
日本での
生活が快適である
ことを祈るよ
しかもラムゼイは
別の名前をたくさん
持っていた
ジョンソン
ヴィッフク
スミス
シュミット
ロバート
ソンダー
グスタフ!
インソン
地
ミカン箱
いっぱいに
タイプで打った
原稿が山積み
されていた
麻布永坂町
三十番地にある
彼の家には
それは日本の
歴史社会・政治
その他、もろもろの
本や資料をドイツ訳
英訳したものだった
ーラムゼイは
深く日本を研究
していたのだ
日本人の本質を
つかみ、徹底的に
日本を知ろうと
していたのだ
もちろん、それには
大きな目的があった
彼には秘密の
同志がいた
ひとりは
フランスの
アバス通信社の
ヴーケリッチ
“エリザは
いかがです
か?
ッエリザ・
クラメルは
健康が
回復して
います!
ヴーケリッチ
です
よろしく
二人は
合い言葉を
つかって
会っていた
もうひとりは
無電士の
クラウゼン
クラウゼンは
天才的な無線技師
だった、ラムゼイから
渡された秘密文書を
最初は...
乱数表にして
たちまち打電
してしまうのだ
そのようなものはわからないのか
その無電機械は
ぜんぶ部品を日本で
買って組み立てたものだった。
どこへ?
モスクワであった
ラムゼイはソ連
情報部の第一級の
スパイだったのだ
ラムゼイの目的は
日本がソ連を
攻撃するかどうかを
探りたしかめる
ことだった
そして
それをモスクワへ
知らせーナチスの
ソ連進攻に
対処させることだった
ラムゼイの
スパイ組織は
完璧なシステム
だった
ラムゼイに直接
会えるのは、日本人を
ふくめて四人だけ
それから情報をあつめる
下部メンバーは
網の目のようにくみこまれ
おたがいに、ほとんど
未知の人々であった
なんか
用かね
若いの
私は
この本を
とても
おもしろく
読みました
一番
おもしろいのは
25ページです!
“おれは
73ページが
一番おもしろい
と思うね!
しおりの
中に
ネガが
入って
います
お前さん
大阪から
来たのか
え?
近づきに
一杯やらん
かね?
結構です
芳男
ゆうべは
どこに
泊まり
ました!?
一晩じゅう
心配で起きて
いたのですよ!
もしかして..
汽車ん中だよ
東京へ行って来
たんだ
おまえは予科に
おちてから
すっかり気だてが
変わったねえ!
勉強もしないで
フラフラ外出ばかり
して...それで父さま
のお望みのりっぱな
将校になれると思う
のですかッ
あーあ
うるさいよ
わかったよ
わかりましたよ
芳男
帰った
のか
ちょっと
来い!!
ここへ
来い
おまえ、きのうの朝、
わしの部屋へ入ら
なんだか?
入って
ないよ
どうして?
父さん
何か
用?
この
わしの机の上の
書類かばんの
錠前がこわれ
とるのだ!!
前にも
こんなこと
が一度
あった
前の晩には
ちゃんと
かかったのに
見ろガタガタ
だ
芳男
ほんとに
知らんのか?
はい
そうか
まったく
奇妙だな
このかばんには
第四師団
三十七連隊の
関係書類が入っとる
外部の者に見られ
たら責任問題
じゃ
かばんを
買い換えた方
おいいですよ
芳男
それは
そうと
おまえ
予科を再び
受けようと
いう気が
あるのか
ないのかッ
どうだ
はっきり
せい!!
わしはちゃん
と学校の上層
部によしなに
頼んでおいた
のに
わざと赤点を
とりおって!!
バーー!!
本多の
つらよごし
だ!!
来年こそ
きっと
受かれッ
芳男ばっちゃま
お風呂わいて
おります
「イベル地駅から2018
号出勤終6出世リヤ
快納杉選兵劇長ド採火
Rthy/G試Gアイールトレ
おられまい
,JG零細Gせ〕ゑGR」
40世代150艦押せ
第648条第10〉
その状況...
これは
有り難い!
大阪の
連絡員ケンペル
から資料が
手に入ったよ
第四師団の
最新の
会議
議事録
だ
このケンペルと
いう日本人は
たしか高級
将校のせがれ
たったな?
そうだ
まだ若いが
よくやって
くれるよ
親父の書類を
カメラに収める
のは大変だ
「博士」..
然り、ラムゼイという名も
この男のコードネームに過ぎ、
なかったのだ
では又...
博士
ラムゼイには
一般に知られた本名
があった
曰く
リヒァルト・ゾルゲ博士
そのころ
アドルフと小城先生は
なおも
本多サチの身元を
洗っていた
圏塚少女歌劇
本多サチが
芸妓になる前に受けたという
宝塚歌劇学校
その受験者名簿には
彼女の名は載っていたが、
なぜか彼女の履歴書は
紛失してしまっていた
彼女の埋葬された
お寺がわかったわ
慈念寺という
尼寺よ
さいごの
頼みの綱ですね
ここやわ
本多
サチさんの
お墓のう
旦光院随幸信
例の事件のあと
兄とかいう人が
現れてこの寺へ
埋葬を頼みはった
んじゃ...
それから時折供養
料を送って来はるけど
ご本人は一度も
お参りに見えたことはない
他には
どなたも
いやお若い
方が彼岸と
盆には線香を
上げにおいでじゃ
これじゃよ
若い人!?
その方の名前は
さあ名前は
知りませんのや
私その人に
お目にかかりたい
んです!
明日から彼岸やさかい
その方も
きっと見える
はずじゃ
これは
ほんの
お線香
料で...
これはこれほ
ーほんなら
その方が見えたら
お知らせ致しましょ
じつはね
ここで
その方を
お待ちしたい
んですけど
本気で「この
墓地にずーっと
張り込むんです
か?
そうよ。その若い人と
いうのが、たぶん本多サチ
さんの甥だと思うわ
このチャンスを
のがしたら
当分甥を探す
方法はあらへんわ
えっ?
彼岸の間
ずっと?
どうもおれ
この線香の匂い
ちゅうのがもう一つ
好きやない
お線香の
匂いが嫌いや
なんて
やっぱり
あんた
外人やから
ねえ...
とんでもない
おれは生まれも
育ちも神戸
でっせ!
線香とか
お墓とか
いうのは
イメージが
好かんので
す!
日本の仏教は
なんやしらんが
「死」のイメージが
つきまとってる
さかい嫌いです
極楽やなんや
いうたかて
人間死んだら
おしまい
や
それは
そうやけど
第一ね
ほんまに
仏教を信じてる
日本人がなんぼ
おるかー疑問
でっせ
お彼岸
とかお盆には
お寺さんへ
来るくせに
その点
エホパの教えは
「汝殺すなかれ」
とか生きかたを
はっきり教えてます
おれ達ユダヤ人には
生きのびることが
信条です!
...さあ
それはそれとして
交替であのお墓
見張るんよ
やっぱり
ずーっとここに
居るんでっか
気がのらへ
んなあ...
ふふん...あ・
まあそんな
ウーン
どうもこういう
所に一人いうのは
愉快やない
しかし
幽霊と
ナチスが
両方来たら
どっちがこわいか
...いうたら...
ナチスやなァ
ンッ
これでどんど
四時過ぎれば
うすぐらくなって
きよるし...
誰か墓参りに
来よったぞ!!
あの
ゲイシャの
墓の前に
座りよった
あいつだ
あのー
いいけどねえ
いつい...なにって
はははあい
えっというか
待って
くれ!!
ちょっと
待って!!
話が
あるの
や!!
なんで
逃げるんじゃ
待てったら!!
頼むから
話を聞いて
くれ!!
ギャ
~ッ
いてて..
やりよっ
たなーッ
やばい!
このアホめ
止まれて
逃がしたら
小城先生に
めんぼく
ない!
わッ
このガキャ
器用に
投げくさる
モトマチの
双葉山を
知らんのか
腰骨折った
ろか!!
ウー
ウーッ
フウ
ウー
ウッ
ウ
ハァ
ノフ...ハァ..貴様..
貴様...
...誰だ
そそやから
モトマチの
双葉山やと
いうとるや
ないか...
ハァ...
ハァ...
双葉山?
ふざける
な!
あんた
本多サチ
いう人の
甥です
やろ?
あ...さよか...
おれ...元町のパン屋
「ブルーメン」とこの
アドルフ
です
ハ...ハ...
毛唐が
おれに何の
用だッ
そ
そんな女
知らんッ
そやかて
基に線香
供えてはった
がな
それが何だッ
逃げるのは
無理でっせ
腰の骨ずらし
たんや
毛唐のくせに
警察みたいに
日本人をつけ
まわすな!!
別におれ
あんたと
どつきあう
つもりや
なかったん
です
あんたを探しとった
んです去年から...
あんたがほんまに本多
サチの甥なら
あんたに渡さんならん
もんがあるんです...
......
そこらの
店で
休みまひょか
何か
飲みますか?
ミルクですか
甘酒ですか
?
甘酒二つ!
しょうがを
きかしてや!
ひえっこっちだって言ってるんだったんですけど...そういうことはないよなと
変わった
外人だな
貴様...
おんや
どろんこやしー
この人けが
してはるしー
へへへ...
目は青うとも
心は
大和
魂でっせ
あんた
桑山先生いう
ドイツ文学者
知ってます?
知らん!!
じゃあ
ラムゼイは?
知らんっ!!
貴様の
云ってることは
なに一つわけが
わからないッ
人違い
だ!!
おれは
本多なんとかの
親戚でもないし
あの墓になんの
おかわりもない
んだーッ
さよか...
そんなに信用
ないのですか
これがあんたの
おばさんに
あたる人や
ないんで
すか?
しつこいなッ
その女は
どこの誰なん
だ!!
おれが誠意持って
話してる証拠に
これを見せましょう
原文は
ラテン語やった
そうです
これは
桑山先生いう
人の遺言です
アドルフは
その遺書を持った
若者の手がかすかに
震えるのを見た
彼は本人だ!
アドルフは確信した
これが
どうした?
おれ達、本多サチ
さんの甥の人を探して
るんですもしあんたが
別人でも...話だけ
聞いてくれまへんか
アドルフは注意深く
ことばを選びながら、ヒットラー
出生の秘密を話した
そして、その出生文書がナチス
にとってどんなに打撃になるか
その手紙の中に
出る「ヒットラー
出生文書」の
ことですか...
この目の前にいる男が
目ざす本多の甥だという
確信はあったが
万一別人だったり当局のまわし
者だったりしたら...それは
一か八かの賭だった
ナチスを倒すためなら
ソ連やら
どこへやらと
それを
渡すつも
りです
...ラムゼイ
ちゅう人の
連絡員に
しつこいな!
ラムゼイなんて
名前は知らん
そうかい!
そんなにおれが
信用でけへ
んのなら
用はない!
さっさと
帰れ
あんたとは
縁がなかった
ことにしま
っさ
小銭持っとらへん
さかいあんた
払うといてんか!
フン...
ラムゼイ
なんかくそくらえ
あのヒットラー文
書は、別の手で必ず
発表したるわい!
はえある
おい
そこの
外人
待てェ
なにか
用ですか
用があるから
呼んだんじゃい!
われぁどこの国の毛唐じゃ
こいつ
日本語が
妙に達者
やぞ
トイツ人?
ドイツ人がなんで
こんな所うろつい
とるんじゃい!
おれは
ドイツ人だ
わいらはな
在郷軍人会の
城東支部の
もんじゃい!
お国の為になっ
今度大日本
壮年会連盟ちゅ
もんが出来たん
じゃ覚えとけ!
井上さん
やめなはれ
ごまかすな
アメリカかイギリス
のスパイじゃろ
あんたがた
いったい
誰です
おれはなァ
ドイツやろが
アメリカ
やろが
そうとう
酔うとるんや
な...からむのは
やめて下さい
井上さん
ええから
やめ
なはれ
じゃかッ
しい!!
おれの
にらんだところ
こいつは
スパイじゃ
やめ!
毛唐はしんそこ
信用でけんのじゃ
だいたい魚の腐った
ような目しくさって
日本はもちろん
アジアから
毛唐共を追い
出してこそ
大東亜共栄閣
が生まれるん
じゃい!
天に
代わりて
不義を
討つ!!
それを
貸せ
やめて下さい、
お...
おれが
何をした
いうんや
やめないかーッ
恥を知れ
酔っぱらいッ
どけ
やい!!
おんどれァ何じゃい
スパイをかばう気が
こいつは
怪しいもんじゃ
ないぼくの
連れだ!
ほんならおんどれも
いっしょくたに
ぶちのめしたろかい
ぬかしたな
どっかで顔でも
洗って来いッ
よせちゅう
に!!
はなせッ
そんなにからむの
なら相手になって
やる来い!!
本多
大佐殿の
ぼんぼんや
おまへんか?
やっぱり
そうでっか
自分は
本多大佐
がまだ
少佐の時代に
可愛がって
いただき
あれ?
あんた...
四年前に
除隊いたしました
部下であります!!
ぼんぼんとは
まだお小さい頃
軍旗祭でお目に
かかりました!!
みなさん
この人のご尊父はやな
大阪憲兵隊司令部付の
本多大佐殿や!!
このぼんぼんは
幼年学校出の
秀才なんやぞ
失礼な
ことがあると
えらいこっ
ちゃで!
どうもすんません
この男は酒ぐせが
悪うて...
なに
酒ぐせやとッ
大東亜共栄
園...ムニヤ
ムニヤ
ささ
行こう
おい
大丈夫か
ひどいめに
あったなァ
ひたいを
割られてる
...
バカカで
ひっぱたい
たんだな
家はどこだ?
神戸?
そいつは遠いなァ
どっかで傷の
手当てせにゃ!!
とにかく
あの連中の
無礼をお詫び
しますよ
といっても
この時間じゃ
たいがいの医者は
しまってるし
そうだおれ
の家へ行こう
タクシーで十分
ほどの所だよ
母さん!
ぱあやに
救急箱
を!
傷の
手当てだ
おまえ...
その方は
!?
外国の人
じゃない
かい
そうだよ
酔っ払いに
からまれた
んだ
物好き
な子...
門の前の
車は?
父さんに
お客様
なのだよ
司令部の人?
三邦貿易の
瀬戸山様だ
よ
三邦
貿易の
重役?
フフフランスラッフファン
ソ連は
ノモンハン以来
国境に蠢動
しておる..
今の兵力では
国境鎮圧に
ギリギリの
段階だ
関東軍は
すくなくとも三箇師団は
南へ動かすべきですよ
閣下
山下将軍も云われて
おるソ連を東西か
・ら即時叩くべきです
大佐ッツ連を
叩いて日本になんの
利益があります?
資源はたかが
木材とわずかな
石炭だけ!
今の日本に
必要なのは
なによりも石油
それに莫大な
食糧ですぞ!
でなければ支那戦線は
持ちこたえられませんよ
それより
おたくの利益に
うまみがないという
ことでしょう?
ハハハか
ソ連などドイツに
まかせておけば
よろしい
仏印繭印
フィリピンの
大資源を
そのまま
埋もらせておく
いわれは
ありませんぞ
いたずらに
日本が南下政策
をとれば
ツ連は
そのすきに満洲を
ねらうかもしれん
そうなればひとたま
りもなく関東軍は
全滅でしょう
お
これは遅く
までおじやま
しまして..
おい
お帰りだ
はい
いや
久々に
お会い
できて
あなた
とは満業
創立以来
ごぶさた
でしたな
あれから
何年ですかな
大佐もご栄達で
何よりです
あなたの社も
ますます
ご発展で結構だが
これからの時局は
難しくなりますぞ
満洲では
大佐の
おかげで
たっぷり
儲けさせて
頂きまし
た...
だからこそ
今度は
私の方から
お誘いするん
ですわ
お互いに
よかれと
思いましてな
海軍省の
例の具申書
ご一読下さい
くれぐれも大佐の胸の内に
あの方
なにか
ご用で?
わしを
抱き
こもうと
いう
腹だ
もうすこし
飲もう
瀬戸山の
キツネめ!
やつは所詮商人
でしかない
北を捨てて南へ
兵力をすすめる
ことが...
これが実行されれば
もしかして
あと一年後には
どんなに危険
なことか認識
しておらん!
いや
日本は
世界中を敵に
まわすことに
なるぞ...
どう
具合は?
おおきに...
おかげさんで...
......
あんたの
おやっさんは
将校さんですか
ああ...
そうさ
ねえ
憲兵隊でね
...満洲国の建国
からずーっと
ハルピンにいたさ
昭和十一年に内地へ
帰ってくるまで..
ぼくは小学校もハルピンだった
へーハルピンて
えーとこや
そうですねえ
たのしかった
でっしゃろ
満洲生活は
神戸に
モロゾフ
いう
白系
ロシア
人の
菓子屋が
ありますねん
そこのオッサン
からハルピンや
新京のことよう
聞かされました
ぼくの部屋へ
来ないか
どうせ
あした早朝
帰るんでしょう
それが
小学校ん時の
アルバム
ぼくがうつし
たのもあるぜ
どうりで
そこにすごい
小型カメラが
あるわ..
ヘーッ
小学校ん時から
カメラいじって
はったのか
それよりか
これは
大したもん
じゃない!
ほら
これが
クラスの
親友達だ
右から
三番目が
ぼくさ!
この子
あんたですか
あんたを抱いて
る人誰です?
貰って男だ
ぼくを
自分の子の
ようにかわい
がってくれた
小使さんだ
へー
今でもその
学校に?
死んだよ
殺されたん
だ
なぶり殺しさ
途中、馬車にひっかけられて
転倒した拍子に表彰状は泥の中...
賞状が泥んこに
なった程度なら
校長に
あやまればすむ
やないすか
誰に?
―ある日
黄さんは校長の空
自宅から
表彰状の案を
学校へ届ける
ようにいいつ
かった
...
ところが
そう
いかな
かったん
だ
表彰状の
上には
優等生に
渡す
賞状だ
菊の御紋章が
印刷され
ていたんだ
菊の御紋章を
泥で汚した
ということで
彼は
日本兵の
リン
チの
猛攻撃を
浴びた
ぼくは一部始終を
見ながら
助けるすべも
なくオン
オン泣いて
いた
隙る、ふみにしるのリンチのあと、
ポロ切れのようになった泥だらけの
蓋さんのからだが横たわっていた
それをじっと
眺めていた
人々の目つきが
忘れられ
ない
黄さんの時
だけじゃない
満洲人は「ことごとに
日本兵からさげすまれ
こき使われていたもんだ
それでいてほくが
小学校で習うのは
日本軍人は
正義の戦争を
しているという
ことだった
おなし土地に住み
おなじものを食べな
がらなぜ満洲人は
日本人より劣等とさ
れるのか、ぽくは幼
い心に強い疑問を
持った
ぼく達の習った
正義とは「正しいことを
することじゃなくて
ただ、相手を威圧するため
このお題目なんだと悟った
だからぼくは
一生正義の
ためにつくして
なんかやるもんか
と誓ったよ
これも黄さんの死の
おかげさ
おたく
「目は青う
ても心は
大和魂」と
云ったね
だがおやじは
ぼくを幼年学校から
士官学校へ進ませる
お膳立てをした
結構な軍人コースさ
大和魂って
どんなもんか
知ってるのか
ひさかたのォ
光のどけき春の日に
しず心なく花の
散るらんン
てっしゃる
おたくいろんな
ことを知ってるん
だなあ...
パッと咲いて
パッと散る...
皇国のために
身命を捨てる
そう
愛国心だ
だがほくは
今の大和魂は
気にくわん
愛国心が
なんでいかんの
です?
いや
もっぱら
戦争する
ために
使われてる
概念だか
らさ
日本人がやたらに
大和魂と云うのを
満洲人達が聞いてて
どんなにさげすんだ顔つきを
したか...何度も見たぜ
他人にさげすまれ
たり憎しみを
持たれる愛国心なんて
まっぴらだ!!
ワハッ
見つけた
見つけたッ
この
人や
やっぱり
あんたの
おばさんやな
おたくもしつこいな!
本多サチなんて
知らないものは知ら
ないッ!!
本多
サチ!
そやかて
現にここに
あんたと一緒に
バッチリうつって
るやないですかッ
他人の空似だろう。
そこにうつってるのは
ハルピン時代の...
なんで
そうウソ
つくんじゃ
身内に芸者がおる
このがプライドきずつくの
か!?殺人事件にかかわ
りを持ちとうないのか?
それとも..
もう一度
云ってみろ
フン
そろそろ始発だな
おれ帰らせてもらうぜ
ここに
居ったってもう
これ以上何にも
聞けんしなァ
小城先生が
がっかりするやろ
けんどよ...
もしあんたの
気が変わって
ラムゼイいう人と
わたりをつけてくれはっ
たら...おれ、いつでもヒッ
トラーの文書持って来まっせ
右へまがって
一丁ほど行く
と駅だ
と...
父さん...
もう起き
たの?
まだ夜明け
前だよ
今の
毛唐は
誰だ
夜更けで
医者がいな
いからうち
で手当てを
ななんでも
ないよちょっと
知りあった
ドイツ人さ
待てッ
芳男
道でね、酔っぱらい
にからまれて、ケガ
してたんで助けたんだ
父さん
おれ
寝るよ
彼が
コートを着た
場所に落ち
とった!
ではなぜ奴が
こんな写真を
持ってた?
では
おまえが落とし
たというのが
?
なにかの
間違いだ
ろ?
うちにあった写真は
残らず焼いた筈だ
この女が芸者姿のを
残らずだ!!
おまえが持っとる
当はないッ
ででも
あんなドイツ人が
落としたなんて、よけい
あり得ないじゃないか
芳男も一度聞く
あの男は
何者だ?
住所はッ
神...
神戸に
住んでる
ア...
アダム
とか
知ら
ない
何とか云ってた
それ以上は名乗らない
よしあの男の
身元は憲兵隊に
調べさせる
もう一度現れたら
ただでは
帰さんぞ
この女が
アカのスパイだった
からだ!
芸者に身をやつして
情報を集めていた売国奴だ
おまえはよーくそのことを
肝に銘じとる筈だ!
芳男おまえの
叔母にあたるこの女
なぜ戸籍を抹消し
本多一族から抹殺したが
知っとるな?
第22章
昭和十六年
五月
国民ガッコー
一年生!
2018年07月20日
おばさん
今日ももう
ズラッと
うちの
前に
並んでる
わ!
おやまー
じゃあぼつぼつ
お店開けよう
かね
四月から
主食が配給制に
なって
毎朝パンを
買いに行列が
できるのね
それだけじゃ
ないんだよ
目的は
うちのケーキと
クッキーなんだよ
お砂糖の配給が
どんどん減っ
てくってのに
じゃあ
そろそろ
開けるわよ
うちは
割り当ての
お砂糖をめい
っぱい使って
ケーキ焼いて
るからね
グーテン・
モルゲン
オハヨ
ゴザイマース
エリザ
ちゃん
お早う
いややね...
二合三勺いうても
うちの子は
三合たべるんよ
パンの方が
満足する
みたいやねー
おまけしておき
ましたよおたくは
たべざかりの人が
三人いらっしゃるから
ママ
粉の
配給ー
あらァ
ワッフルやわ
おいしそ
これ三つと
これ三つ
こんな粉やと
うまいパンカ
焼かれへん
ヨッコラ
ショ
ホーム
クッキー
一箱ね
ご苦労
さん
でもねー
おたくほど
良心的な
パン屋さんは
ないわ
粉のタチ
かだんだん
悪うなる
みたいや
ほんま
神戸で一番
おいしいんや
ないかしら
あら
光栄で
すわ
うちはたとえ粉の配給が
二合になろうと一合に
なろうと
今までどおりの
味と量を確保する覚悟です。
どうぞごひいきに
アドルフさん
国民服着て
いるわ
へへーッ
こう見えても
町内会の
防空訓練の班長で
神戸製パン業組合の
理事でっせ!
売り切れに
なりました
どうぞ
また明日
お越しを
アリガト
ゴザイマース
エリザ
日本風の
おじぎが
うまく
なったぜ
毎日
アッというまに
売り切れになって
しまうわわ
日本って
どんどん食べものが
少なくなっていく
みたい
君のために
買うたんや
...
これを
あたしに?
...
なぜ?
君が日本に来て
もう半年や
記念にあげる
エリザ
ちょっと
見て
もらって
くれるかい?
君はいずれ
ドイツへ帰るん
だろうけど
よければ
...ずーっと
うちに居てくれて
いいんだぜ
おれだって
君が好き
なんだ
有り難う
...これは...余
計なお世話だと
思うかも
失礼ないか...
ママも君を
本当に気に入って
くれてるし...
ほんと
さ!!
おれ
好きだ!!
君が...
まだずーっと先の話だけど
もし、戦争が終わったとき、
には...君、うちの
家族にならないか...
つまり...
アドルフ
あたし..
将来のことは
パパにまかせ
てあるの
わかってるよ
それがおれ達
ユダヤ人の
しきたりだ
でももし
君のパパや
ママが
OKしたらたよ
いや、きっとOKして
貰うよおれは
君をきっと幸せに
するから
アドルフ
お客さんだ
よ
ママ
売り切れだっ
て帰しちゃい
なよ
チェッ
今
大事な
ところ
なのに
お前に
お客さん
だよ
あんたは
よく
ここが
だっておたくが
元町のパン屋ブルーメン
と名乗ったじゃないか
くそ...
今行く
あッ
やあ
しばらく
......憲兵が
ここへ調べに
来たろう?
ああ、来ましたぜ
三度ほどでも
型どおりの捜査で
ㇷフフフ
おたくの名が
アタムだってデタ
ラメ云ってやった
だから
おやじはこの二か月
神戸中のアダムを
憲兵に調べさせてた
んだ
でおれも
このふた月間
きびしい
監視でね
アダムいう
ドイツ人カ
居るか
ちゅう
一本槍で
なんで
あんたのおやっさんは
おれのことをそないに
調べようとするんですか!?
ちょっと
遠出できなかっ
たんだよ
仕方ないよ
おたくあの晩
これを落とし
て行ったろ
おたくが
落としたのを
運悪く
おやじが
拾ったんだ
これからは
ぼくも自由行動が
制限されるんだ
今日こうして
やっと出て来たか
らにははっきり
話をつけよう
こっちもです
まあとにかく
部屋へ行きま
しょう
なにごとなの?
心配
いらんよ
この人
おれのダチや
ようこそ
この部屋の声は
ぜったい外へは
もれまへん
おたくの推察とおり
おれの叔母だ!
だかもう一族の
戸籍から抹消されて
赤の他人なんだ
だからあの女の
身元は不明という
ことになってる
ほんとにイ
本多サチは
おれだけは
叔母が好きだっ
だからいまた
に墓参りには
行ってるがね
叔母は立派な
人だった
この支那事変は
日本がしかけた
一方的な侵略
だときめつけて
日本軍の
侵略をとめるために
こっそり中国共産党
と連絡をとって
情報を集めていた
じゃあ
共産党の
スパイでっか
一口に
スパイと
いっても
いろいろ
あるよ
叔母は
ひたすら
世界の平和を
ねがって
自発的に
やっていた
のさ
叔母が何者かに
殺されて身元が
ばれそうになると
おやじはすぐ叔母の
戸籍を抹消して...
櫛から写真まで
のこらず
焼き捨てたんだ
誰に殺され
たかわからない
んすか?
さいごに会った
時ワグナーの
像を手に入れて
それになにか
重要なものが
入っているとか
云ってた...それが
殺しにかかわって
るのかもしれない
まあ今となっては
どうでもいいがね
というっすっ
わけで
おれが叔母の
遺志をついで、日本の
軍国主義をほうむるための
万分の一の手伝いをする気
になったのは..
それからまもなくだった
ドイッ文学者の
桑山先生を知って
はりますか?
叔母が
よく会っていて
尊敬していた
先生だよ
では
ラムゼイ
は?
ラムゼイという人
は知らないが、もしか
したら組織の中心に
いる人かもしれない
おれはただの情報
提供者さ...
しつれい
すんません
体温でぬくもって
ますが...
これが
例の
ヒットラー
の出生文書
か!
そうです
ナチスにとって
致命的な
文書です!!
それが第三者の
手で世界に
公表されれば
ヒットラーはまず
失脚です
ナチスの哲学
そのものが崩れ
おちまっしゃろ
そして
何百万人
もの
ユダヤ人が
助かり
ます!
おたく
ユダヤ人
かい?
そうです!
ナチスを
倒すために..
本多さん...
それをラムゼイに
ぜひ!
わかった
とにかく
ラムゼイに
連絡をとって
受けとるかどうか
きいてみる
じゃあ
すぐ小城先生に
会って下さい!
おれ先生から
その文書預かっ
てるだけやから
チョッ、
ママ
ちょっと
小城先生に
ひきあわせに
でかけるよ
本多さんを
かい?
なぜ
あの人の
名を
ママは
知ってるん
だ!?
知ってるも
なにも
あんた達の
話ここへ
つつぬけ
だったよ
フギャ
上の部屋の
かべのうしろ
かこわれて
いてさ
声が
みんな
かべをつたって
ここへ聞こえて
来るんだよ
じゃあ
あの
秘密の話
みんな聞か
れてしまっ
たんです
かあ!!
ああ...
聞いた
とも
気にする
ことないよ
お前立派なこと。
やってたんだねえ
ママはね
ちっとも
知らなかっ
たよ...
あんなすばら
しいものを
持ってたなん
て!
エリザ
なんか
感動しちまっ
てさ...
ママあの話は
秘密なんだ
外に洩れたら
おれ達
おしまいだ!!
わかってる
とも首が
とんだって火あ
ぷりになったって
人に云うものかね
出かけて
来るよ!!
もっと
スピードを
あげてっ
もっと早くっ
次!
第二町会
交替!
なんだその
へっぴり腰は!
焼夷弾は待つ
てくれへんぞッ
ごめんなさいそっちゃ
旦那と
寝てる時は
もっと腰つきも
達者だろうが!
これが
重すぎて
腰の骨がはず
れそうやわ
骨が
はずれる
ぐらいが
なんじゃ!!
救護班!
救護班!!
うちの
とうちゃん
アゴを
はずした!
峠さーん
お客さんでっせ
峠さんやめなはれ
あんたにホースは
無理やで
防空演習中だ
待って貰って
下さい!!
邪魔しないで
下さい私だって
ちゃんと
やれるんだから
ブワー
峠さんいったい
どこをねらって
るんや!!
すんません
手元が
狂いました
ちゃうちやう
もっと右!
もっと右!
こっちや
ない
云うてる
のに!!
だれかホース
かわって
くれ!!
無理
しなさ
んな
あんた
また
手がケイ
レンした
んや
くそォ
左手だけ
いざって
時になると
云うことをきか
んのです!!
ケガじゃ
ないぞ
いいから
救護所で
休んで
なさい
お疲れ
さま...
おれは
非常の時には
全く無用の
長物だ
ばかなこと
云わないで
わしも
いざという
時になる
とアゴを
はずすんじゃ
まったく
恥っさらし
なこった
でも貴方は
簡単に
なおるから
いいすよ
本物の空襲が
やってきたとき
こいつが云うことを
きかなきゃ
ろくに火も消せましょう。誤っている。
せんよ
「町会
峠さんはほんとに
空襲なんかあると
思いはるのか
この日本に
敵の飛行機
なんかか
爆撃に
来ると思いな
はるのか
思いませんよ
だがかりに
です
万一にですよ
万一?万一にも
敵が土足でふみこむ
なんちゅうことは
あり得ん!!
断じてない!
もしかりにだ
日本本土に近づく
ときには必ず
神風が吹いて
たたきのめす!
おはさん!!
またよ!
神国
日本には
八百ヨロズの
神がおわし
一日に
何べん
アゴ
はずす
んや
防空
演習
終了
小城先生でしたな
一年半ぶり
ですなァ!
おやッ
あなたは
...
おかわり
なく...
この方が
峠草平
さん...
こちらは
お住まい先の
お嬢さん
はじめ
まして
ええと...
仁川
三重子
です
お手紙でお知らせして
おいたと思いますが...
例の方なんです
あの文書の...
参り
ましょ
おっとここでは
話もなんですから
用意した場所へ行きましょう
すぐそこですよ
失礼
三重子
さん
先にうちへ
帰っていて
くれ
絶対デカの
来っこない場所を
見つけておきまし
たよ
まあここは
建築工事場
じゃありませんの
そう!
今日は休日で
人っ子一人いない所
なんす
...峠さん
らしい
場所やわ
魔法びんの
お茶でよければ
ありますよ
しかも
テッペンだから
ふつうに話したって
下へ聞こえません
この方は...
名前は申せま
せんが
峠さん...
左手、不自由
そうやわあ
あの追ヶ浜の
銃創がもとで
どうやら運動神経
かいかれて
しまったんですよ
おかげで徴兵は
まぬがれてますが
ね
ラムゼイと
いう秘密機関に
つながる人です
あの文書のことは
もうご存じで
すの
しかし
この方なら
心配いりません
ほんとに心から
平和を望んで
戦争や人種差別
を嫌っておいで
なんです
...あの文書
見せたんですか
この人に..
この方の上司に
お渡しすれば必ず
これを公表して
ナチスは大打撃を
ええ
それについては
あたしが命かけて
保証しますわ
渡す...
峠さん
あの時
お話しした
「時期」が
来ましたんよ
これを
平和のために
役に立てる
時が...
この書生
さんに?
信じて
いいんですか
どうか
信じて
下さい
峠さん本来これは
あなたのものです
無断でぼくが
預かるわけに
いきません
それでぼくから
お願いに来ました
ぜひこれを
ラムゼイに届けさせ
て下さい!
決して悪いよう
には致しません
...ご存じと思うが
その文書は私の弟の
遺書でもありましてね
それを掴んだために
殺された弟の怨念が
しみこんでるんです
だから私も命にか
けても守ってきました
それを手放すからには
弟の仇討ちを...
ラムゼイとか
いいましたね
その人..
正体はなんで
すか
あなたの弟さんだけ
じゃなく、ナチスに
殺されたユダヤ人とか
もっと大勢の人達の
怨念を晴らして
やりましょうよ
ぜがひでも
その秘密機関
にお願い
しますよ
ナチスを憎むある国
の情報部員だ...とだ
けしか申せません
世界中に顔の
きく人だそうです
わかった
まかせるよ
よろしく
たのむ!
そうですね。でも、
そういうことで、
気にするな
例の追ヶ浜の
一件の
知り合いだよ
あの男の人
何て方?
知らん
おい
ほんとに
知らんのだよ
初対面だ
名乗らなかっ
たんだよ
そうツムジ
まげるなよ
おかしいぜ
運命は
気まぐれなものである
長い間峠草平にほのかに
感じていた幼い憧憬が
ふっきれて
仁川三重子は、今突然
本物の恋を感じていた
たった一目見ただけの
若者なのに...
芳男「そこで
何をしてるのです
別に
別に
...
これで
よし
なぜ焼きついて
消えないんだ。なぜ
もう一度会いたいなんて
気をおこさせるんだ
あの子は!!
たしか
三重子とか
いったっけ
“ゲンペル”より〝マラー〟へ
「大変おいしい。おかず”を手に入れ
ました、あまりおいしいので
アラムセイルに味はつて貰はうと
おもひます、貴方から
“ラムゼイ”へ連絡して
話をとって下さい
さうすれば私は
〝おかず〟を東京へ
持参いたします」
...!?...?
クレジックンや
女などにうつつを
ぬかして受験勉強もせず
なんたるふぬけ!
それでも日本男児か!?
じゃあ
父さんは
どうなんだ
父さんが二十過ぎの時
由季江とかいう女の人に
初恋をしたんだ
ろう?
父さんは相手に
打ち明けること
もしないで
ウジウジ
してる間に
その人は
ドイツ人と
結婚しちまって
それでも父さんは
未練がましく
今でもつきあってるだろう
うるさい。何を云う
彼女はわしの恩人の娘だ
彼女を心配して何が悪い!!
...ぼくだって
もう一人前です
いつかは結婚しなきゃ
ならないじゃ
ないですか
その時は
わしが相手を
探してやる
この非常時に
女だ恋だと
うかれておる
場合かッ
三重子
三重子
ということに
なってしまうん
だろうな...
えーい
なんてこった
女の顔かちらつ
くなんて
たるんでる
せいかもしれ
ん
今のおれには
女の子とつきあっ
てるひまなんか
ないんだ
--
うるさい!!
ジッ
二
四三
お友だちと会って
来ますタ方には
帰りますから
一人でごはんを
珍しいことも
あるもんじゃ
えっ
?
パラソル
買って来ま
したよ
日ざしも
強いし
ジロジロ
見られない
しね
こういう
姿って
よく
映画で
見ますね
サマに
なるから
でしょう
この奥に
静かな涼しい
淵があり
ますよ
よく
あやめが池へ
いらっしゃる
の?
よく来て
くれましたね
あの手紙...
貴女がじかに
受け取った?
ほら
あんな大きな
フナが
このあたりに
料亭があってね
おやじのお供で
何回か来ました
...
軍人の宴会は
おもしろくないので
一人でボートをこい
でいたんです
ええ
どう書いていいか?
とにかく貴女に
もう一度会いたいと..
ショックだった?
おッと
ヒャー
驚いた
っっ
つぶれた
かな?
二人分
買って来
たのです
なん
ですの
?
いや何
やっぱり
つぶれた
一銭定食
淡
ブフフフッ
本多
さんって
すごくかわい
いんですのね
いつも
一銭定食
めし上がって
るの?
これ
きらい
でしたか
?
いいえ!!
でも
なんだか
雰囲気が
あわないか
ら...
じゃ
ぱくの雰囲気
ってどんな?
そうねー、お父さまが
えらい将校でしょ。お菓子も
お邸へ出入りのしにせのもの
しかたべ
ないとか
とんでも
ない!!
ハルピンに
居たころは
もっぱら
満洲人向け
駄菓子屋
専門です
でもきっとお父さま
すごく厳格なんでしょ
きっと
スパルタ式
教育なん
だわ
淡お好み焼きの原始的なもの
うちなんか
成り上がりなん
ですよ昔...
おやじは
貧乏書生
だったそうです
政治家の加味又造の
家で働いていました
満洲蓮国の
右翼の
黒幕といわれ
た男ですよ
その
加味又造に
おやじは軍人根性
を徹底的に
ただきこまれたんだ
でもどういう
因果かぼくは
おやじとまるで
性格が反対
でね...
さあ...
こんどは君の
話を聞かせて
くれない?
お話しする
ようなことって
ないの
お父さんは
どうして亡く
なったんです?
おととし
殉職しま
した
立派な警察官
だったんですね
あたしねー
父のあとをつ
いで警察官に
なりたいと
いつも思う
女が警察官に
なれる時代来ない
かしら?
日本じゃ無理だ
ドイツへ行けば
女警官が居
るそう
だけど
ね
ドイツ?
行かないわ
あんな所!
あたし日本
の警察へ
入りたいわ
おれは
この子が好きだ
でもまだなにか
ふっきれないものが
ある...
この子はまだ
心の奥にわだかまりを
持ってるのだ
曇って来
たから
上がりま
しょう
号外!
号外!
ドイツが
ついに
ソ連と
開戦ンー
ウーム
ついにやったか
こんなに早く
はじまるとは...
ヘルリン発
同盟...
六月二十二日
早朝
果敢なるドイツ軍は
百五十三師団を
もってソビエット
国境を進撃
バルト海から黒海を
奇襲せり
ドイツはソビエ
ツト連邦の脅威に
対抗するため
ドイツ国防軍に
戦闘を命令
せり
エストニア・ラトヴィア
リトアニアの諸地域は
はやくも独軍が包囲し
敵軍を掃討しつつあり、
三週間のうちにレニングラー
ドを占領する予定なり
ドイツ
なんか
全滅しち
やえばいい
んだわ
なんだ!!
ドイツなんか
こうして
やる!!
三重子さん
どうしたんだ?
あたしの
父はドイツの
人殺しに
撃たれて
死んだのよ
ナチスの
人殺しが
なにもしない父を
一発で殺したのよ!!
あたし父の仇を
うちたいのよ!!
あたし..
警官になって
ピストルをおぼえて
ドイツの奴らを殺したい!!
警官がだめなら兵隊に
なって殺したァい!!
ウッ
・ウッウッ
第23章
東京電兵隊司令部
野村は
おるか
野村大佐
あッ
土肥原閣下!
特務機関
土肥原大将
はいッ
最近とみに
参謀本部の最高
機密が外部に洩れて
いる件だか...
それについて
何か目ばしは
ついたかね?
ノ...目下
全力をあげて手を
尽くしておりますが:
どうなん
だ?
このところ
国家機密の内容が
筒抜けだ!!
一日も早く漏洩の
ルートをつきとめ
スパイを検挙せねば
重大な結果をまねく!!
まったく
もって
腹が立つ
われわれの会話は
つねに何者かに
盗聴されとるのだ!!
ここにも
ここ
にも
というのは
冗談だが
なにかリスト
の洗い出しで
手掛かりを
つかんだか
ね?
ここにも
盗聴者が
おる!!
はッ十名ほど疑わ
しい人物をふるいに
かけましたが
最大の標的は...
イギリス人の特派員
ジェイムズ・フックスという男でした
それは
いまいま
しい
失策だな
この
五枚の写真を
ごらん下さい
これは
つながりの
あるグループ
かね?
現在われわれが
追っている
重要な人物
です
目下の所
わかり
ませんか
この二人は
日本人
あとの三名は
ヨーロッパ人
です
内閣嘱託で満鉄
東亜経済調査局
の尾崎秀実
画家の宮城与徳
マックス・
クラウゼンに
ブランコ・
ヴーケリッチ
しかしこやつは
逮捕寸前に
窓から
身を投げて
自殺しました
そして
これが
最も大物
です
フム?
こいつは
顔を見た
ことがある
そうだたしか
ドイツ大使と
一緒の時に側に
居た男だな
そうです
ドクトル・
リヒァルト・
ゾルゲです
正体は?
わかりま
せんがとにかく
日本やアジア情勢に
くわしい男で
なんでもナチ高官の
信頼を得ていた奴だ
名前は...ドクトル...
おまけにドイツ大使
オットーの親友と
きていますので
うがつに手が出せ
ません...
それは厄介だな
ドイツは友邦だから
ドイツ人を逮捕すれば
友好にキズが
っく
しかし閣下!!
長く泳がせておいて
もし国外にでも逃げ
られますと..
かりにスパイと
してもだ
逮捕するには
首相の特別裁可が
なされねば
ならんのだ
その通りだ
近々
御前会議が
ある
わが国とソ連との
今後の問題をきめる
重大議決がなされる
それまでに
あとの四人は
逮捕しておけ
ゾルゲのことは
大至急首相に
言上しよう
はッ
閣下その
ソ連のことですが
関東軍は結局
ソ連には進攻しない
のでしょうか
たぶん
せんと思うね
今が絶対の
好機なのだが
私もそう
思います
まことに
歯がゆく
存じます!
関東軍は
七十万おる
今関東軍が総力をあげて
ソ連に進攻すれば、すぐ
なくともドイツのために兵を
さかれているソ連としては
全くの受け身だ
わが方の優勢は間違いない!!
東シナ海
わが国は
ソ連に宣戦は
せんじゃ
ろうよ...
ドイツが
モスクワをおとす
まではな
ハ...
だが上層部は
資源を得るために
南方へ兵力を
向けるという!
君の目はゾルゲと
いう男に似とるな
諜報員はみんなそんな
目になるのかね
お
たわむ
れを
よいか
秋までに例の一味
全員逮捕を
忘れるなよ
承知いたし
ました
青山を
呼べッ
東京・永田町
ドイツ大使館
大使
ソルゲ博士が
おみえです
やあゾルゲ君
からだの具合はどう
だね、心配しとったぞ
大使
もうよくなり
ました...
通し給え
ソ連戦線の
情報が気になりまして
おちおち寝ても
いられません
ハハ...
ドイツ軍は
すでにモスクワ
へ三百四十キロ
の地点だ!
勝利だよ勝利!
疑いを持つことは
それだけで国家へ
の反逆につながり
ますぞ
おめでとう
ございます
やあリンドルフ
わが偉大なる
総統のご作戦が
気になるのですか
ねあなたは
いやな奴だ...
ゲシュタボから
派遣された
大め...
フーッ
いや全く!
あのリンドル
フめの前では
思ってることも
うかつにしゃべ
れんわ!
なにか
情勢に
不安でもある
んですかわ
大使...
お顔の色で
わかりますよ
...じつはな...
ゾルゲ君
はっきりいって
ソ連戦線は
順調とは云えん
らしい
ものすごく頑張な
ソ連師団が立ちふさ
がってドイツ軍は
一部膠着状態らしい
のだ
膠着
状態か...
ヒットラーめ
負け戦の味を
覚えるかいい
そこでだ...総統は
なんとか日本にソ連と
開戦させろと
強いご希望
でなァ
東条閣下が
お着きになりました
今日
総統のお気持ちを
日本の高官に
伝えろという
命令をうけてる
んだ
今
ここへ
高官連中
が来る
.....
ほんとですか!
やれやれ
来おっ
たか...
ソルゲ君
悪いが席を
はずして
くれんかね...
何しろ...
ああ
いいですとも
大使
一番うしろのは
特務機関のポスの
土肥原大将か!
こいつは要注意
人物だ
あのお人よしの
オットー大使は
大使館の中に
私用の部屋ま
でしつらえて
くれた
先頭にいるのは
陸相の東条英機
だな、名実我に
実力者だが
嫉妬深い男らしい
あいつがソルケ博士か
今にはえづらかくな...
思い知らせてやるぞ
もしもし
ああ私だ
ツルケだよ
マラーから
何か連絡は
なかった
かい
ありまし
たわ
なんでも
「大阪からおいし
おかずを見つけた
ので買って届け
ますか」という
ことでしたか...
どのくらい
おいしいのか
ねえ?
ああそれは
私の好物だ
届けてほしい
と伝えてくれ
なにか大阪で重大な
情報をキャッチした
らしいぞ
大阪花区xx町
よし!
ふみ込めいッ
特高だッ
秦泉寺一郎
逮捕するっ
アッッッ...
あ...足
......
逃げた
ぞーッ
七月に入ってまもなく
町のかたすみで一人の
労務者が警察に捕らえられた
容疑はスパイ行為である
ああ...ッ
あッッッ!!
よし
家の中の
ものを
あがいても押収しろ
無駄やぞッ
おい
その手紙の
束はなんだ
『ケンペルより”マラーへ
大変おいしい。おかず”を
手に入れました。貴方から
〝ラムゼイ〟へ連絡して
話をとって下さい』だと
ケンペルとは誰じゃ
ラムゼイとは何者
なんじゃッ
え?
貴様...
特高を
なめるなよ
どうした
吐かんのか?
野郎ォ
“ケンペル”とは誰や?
おい!!いいかげんに
吐け!!
ウグ...ク..
グウ...
“ケンペル”こと
本多芳男が連絡員
“マラー”にあてて書いた
手紙が特高の手に
渡ったことで、身の
危険が迫っているとは
芳男は夢にも
知らなかった
こいつ
舌をかみ切った
もうしゃべれ
んわ
手当てしてやれ
しゃべれんでもええ
自白文を
書かせれ
ばええのや
三重子
今日
もか
法念寺庫裡
二十日二時
三重子
さん!!
おれも学生時代
女を追いかけてたっけ
彼女の気持ちをとやかく
云うつもりはないが...
あの本多って学生
だけはいかん...
危険すぎる...
三重子さん
おせっかいと
云われるかも
しれないけどね
あんまり
本多君と
深入り
するなよ
そりゃあ彼は気性の
いい男だし家柄も
申し分ないんだが...
ひっかかるんだ
なにか
なにかって
なに?
じつはなあ
彼のことで君が
知らないことが
あるんだよ...
芳男さんに
なにか秘密
でもあるって
いうの?
それは
悪いこと
なの?
いや
つまりだなァ
そんなことじゃ
なく...
彼の人生には
たいへん危険が
つきまとってる
ということさ
ン...ま..
いろいろあってね...
彼がそれにぶつかると
君までまきこまれ
るかもしれんよ
なんの
危険なの
?
おあいにくざま!
あの人..
災難にへこたれる
人じゃないわ!
あたし
信じてる
おれなー
君の行く
末を心配
して...
あたしの
ことは
あたしが
きめるわ!!
お父さんでも
ないのに
奇言な心配
せんといて!!
そう
云われる
だろうと
思ったよ
...おれ
あの本多ってのに
嫉妬してるのかな
仁川さん
今三重子さんは
本物の恋を
しています
おそらく一生に
一度の恋になり
かかってます...
それだけに
これは危険
なんてす...
いつまでこんな
ふうにかくれて
会わなきゃなら
ないの
ぼくのおやじに
知られようものなら
それこそ永久に
会えなくなっちまうよ
おやじは恐い人間だ
あたしの父さんは
若い時女の人と
つきあって勘当
されたわ...
うちの
おやじはぼくを
勘当なんかしない
おやじにとってぼくは
いわば二歳駒だ
自分の理想通りの軍馬
に調教するのが夢なのさ
でもお互いに
好きになるのは
自由でしょ!?
軍隊生活では
それも
許されない
んだ
あたし
軍人も軍隊も
いらないわ!
あなたさえここに
いればいいの
でもそれは
女の勝手なのね
あなたはもうじき
東京へ行って予科
土官学校へ入って
そのまま土官学校に
進んで戦地行き
十年たっても
二十年たっても
あなたはもう
ここへは帰って
来ないわ
三重子さん
いつか戦争も
終わるさ
そしたら
世の中もきっと
変わるよ
戦争が
終わった日
ぼく達は
ここで会おう
そして将来の
ことを
相談しよう
大きな声で
堂々と
宣言しよう
ぼく達は
恋人同士だ
ぞーって...
そういう目が
きっと来るさ
ねェーン
本多
さまァ
いやッ
スケベー
じじいィ
いやァー
本多の
ぼっちゃまー
助けてー
本多ッ
貴様の
一粒種は
なかなか
すみにおけ
んぞォ
これはしたり
芳男君が
染吉とでけて
おるとは
つゆ知らず!
あらァ
ウブやねー
愛したげよ
思たのに
そうよ
あたしゃ
この秀才ぽっちゃまに
しんそこ惚れてン
のやー
本多芳男
さんたお?
すこし話を
したいが
いいかね?
えっ?
なんのこと
ですか?
とぼけるなよ...
もう一つ教えてやろう
〝ラムゼイ〟は今日東京の
鳥居坂署に逮捕された
仲間はいもづる式に
捕まってるぞ
“マラー”は
捕まって
泥を吐いた
よ
なんの
ことか
わかり
ません
そして
お前さんも
その未端の
分子だ!
コードネーム
はッケンペル
だろう?
そうか
じゃはっきり
云ってやろう
国際スパイ組織が
一網打尽になったと
いうことだ
失敬だぞッ
憲兵隊
司令部付
本多大佐の
家族に
向かっ
て!
高官だからこそ
こちらも
紳士的に扱ってるんだぜ
芳男君
でないオ!
遠慮なく
しょっぴいて
いるところだ
身に
おぼえは
ないッ
われわれもことを
荒だてるのは好かん
父上は憲兵隊の
大物だし体面も
あるたろう
ぼくがそんな
組織とどういう
関係があるッ
だから今夜は
忠告だけしておく
明日おとなしく
警察へ出頭するんだ
我をはると
父上に迷惑が
かかるぞ穏便に
はこぴたいんだ
いいか
忘れるなよ
明日
出頭せねば
正式に逮捕
するぞ!
〝ラムゼイ〟か
捕まった?
“マラー”が
吐いた?
組織が
一網打尽?
...
じゃあ
あのヒットラーの
文書を渡すことが
できなく
なったな!
あの文書...
あのニレの
木の根元に
埋めた文書
そうだ
早く掘り出して
小城という人に
返さにゃァ...
それを
すませたら
特高に
出頭でも
するか
明日になれば
このおやじゃどんな
顔をするだろう
おれが警察へ出頭
したと知った時
おれの人生は
おしまいだが
おやじの人生も
おしまいたな
特高か
...
チェッ絶対に吐いてやる
もんかどんなに拷問されても
知らぬ存せぬで通してやる
だが
三重子さんは
どう
思うかな
おれは彼女を
裏切った...
おい
芳男
ぼつぼつ
おひらきだ
車を呼ぶ
ように
云え
うん
お気を
つけて
大佐ー
有り難う
存じま
した
芳男
え
疲れたか
?
い...いえ
すこし
降りて歩こう
お前に
話がある
先ゆき
おまえの
妻になる女
の話だ
その
公園のベンチに
でも座ろうか
芳男...
満洲へ
戻らんか
お前は予科
土官学校の
入学試験に
一度おちた
来年受けても
なかなかパスは
しにくかろう
えッ
満洲国陸軍の
軍官学校へ
留学してみんか?
新京にある
やつだ
満洲国陸軍軍官
学校の予科なら
予科士官学校と
同格だ帰国
してから
陸士へ
すんなり
行けるぞ
軍官学校には
わしが話をつけて
やる満洲へ
留学せい
それで
だな
芳男
新京で
見合いを
して貰う
!
相手は
満州国の
さる高貴な
方の
令嬢だ
相手は十七歳
教養も高く
日本人と
変わらんぞ
ぼくは
満洲になど
二度と行きま
せんッ
二年で
日本へ
戻れるの
だぞ
とにかく一度会え
気に入ってくれること
を望んどる
結婚はまだ先でよいが...
お父さんはぼくを
満洲へしばりつけ
ようってんです
か?
聞けッ
芳男
わしは...
満洲に骨を
埋めることが
夢だった
わしにとって
あの王道楽士は
生き甲斐だった
だが
最高
会議は
関東軍の
兵力を
へらしてまで
東南アジアに
戦力を集中
させることに
決めおった
政治家は
満洲を
見捨てる
気だ...
無念じゃ
わしは満洲を
建国以来
ずっと見て来た
おまえにも
満洲の楯と
なってほしい
それでほく
を満洲貴族
と結びつけ
るのですか
せっかくですが
そういう政治的な
裏のある結婚は
いやです
政治的?そんな
大げさなことじゃ
ないぞ!
...それに
満洲は日本
人に差別されて
います
なにを
云い出すのだッ
ぼくかもし
大陸へ
行くなら
すくなくと
も満人も
漠人も日本人と
平等になった
時ですッ
たとえその女性が
貴族の身分でも
日本人の社会に
入れば
一生差別になやんで
はずかしめをうけるでしょう
そんな立場のひとを
とても貰えるものですが!!
おい芳男
どこへ行くッ
お父さんは
どうぞ先に帰って
下さい
ぼくは行く
所がありますので
見せたって
おやじには
わからんだろ
うがね
貴様には
日本男児として
の誇りがない
のカッ!!
あります
明日になれば
それを
見せますよ
三重子さん
幸せに...
芳男は
昨夜帰った
のか?
夜明け
でしたよ...
今朝がた
おふろへ
入って..
今部屋で
なにか書いて
おりますの
あたくし
あの子の
ことが
心配で
あとで
話があると
云え
だから
おれが云って
聞かせてやると
云うとる
のだ!!
あの...
なにかうちに
?
奥様おもての
方になんかおかしな
人がうろうろ
していますけど...
失礼ですが
ご予息は
ご在宅で
しょうな
ええ...
芳男はおりま
すが
じつは...
いや
大変恐縮ですが
そろそろご子息を
お連れする
時間になって
来たのです
ええッ?
どどちら
さまで...
バカ
なにかの間違
いだろう
あなたー
ッ!!
何事だッ
警察の方が
芳男を一アノ
...連行に...
よし
わしが
会う
それが...
それが...
芳男に...あろう
ことか...スパイの
...疑いかある
とかで.....
ふざけた
奴らだ...
こともあろうに...
とっちめてくれる
もう
なんだか
あたくし
わけが...
...
速捕状た?
こんなもの
持って帰れッ
うちを何と心得
とるかッ!!
残念ですが
確固とした
証拠かあり
まして
憲兵隊の
依頼をうけて
正式に逮捕
状が出た
のです
今日
出頭して貰う
ことになって
いました
...実は
ラムゼイ機関
という
国際スパイ
組織かあり
ましてな
挙げたメン
バーの自白で
芳男君の
名が出てき
たのですよ
それまで
第四師団司令部の
重要機密が
外部に凍れているという
疑いがありましたが
お心当たりありませんか
そういえば..
わしのカバンの鍵が
何度かこわされていた
だが...まさか家の
者が...
それを
早くご報告
いただきたかっ
たですな
...しばらく
お待ち願お
う
わし自身
この耳で
たしかめたい
大佐殿
お察しします
よ
メンバーの自白
で、芳男君が
そういう書類の
写真ネガを組織
に渡していたこと
がわかりました
あなた
...
あなた!?
刑事さんは?
芳男のこと
は?
芳男ッ
おれの質問に
答えろ
おまえが
スパイ行為を
したのは
事実か?
事実です
おれのカバンから...
師団司令部の機密を盗んだ
のもおまえなのか?
はい
そうです
信念に
もとづいて
やりました
ありません
間違いないのだな?
なぜ...なぜそんな
ことをした?
なにを血迷った
のだ?
悔いはないの
か...悔いは..
そうか...
では...止むを
得ん...
あなたーッ
今の音
なんですの!?
まさか...
芳男ーッ
芳男を問い詰めたところ、
突然精神錯乱を起こして
自殺しました
だが
あなたがたが云われる
点については全く身に覚え
のないことだと申しておった
だから...わしはそれを信じます
お引き取り願おう
いまさら逮捕でも
訊問でもあるまい
家宅捜索は以後
憲兵隊の立ち会いの
もとに願いたいッ
さっさと
帰らんか
おなくなりに!?
芳男やーッ
第24章
大佐殿
憲兵隊司令部の
ご許可を得て
お邸内を捜査
させていただき
ます
倅の部屋
だ
どんなささいな
落書きやメモの
たぐいも見落とす
なッ
警部
ツァイス製の
超小型カメラや
これで書類を
写したのか
フィ
ルムは?
からだ
マラーへ送るはず
だった「おかず」は
発見したか?
いいや
いちはやく
処分
したのかも
しれんな
床下とか天井裏
も探してみい
床下に埋めてあ
るのかも
わからんぞ
待てッ
それを
どこへ
持って
いくッ
ならんッ
体の証言を
疑うの
カッ
一応証拠品として
押収いたします
大佐
しかし
しかし
ノートなどを
調べなければ
なりません
この
本多に逆らう
気かおもしろい
やってみい
参謀本部へ
上申して
貴様達を
軍事裁判に
ひきずり出し
てやるぞっ
憲兵隊も
件を青天白日と
確認しとるのだッ
捜査はみとめたが
犯罪者扱いは
我慢ならんッ
それを置いて行け
わかり
ました...
おい
引き揚げろ
さっさと
帰れーッ
二度と
来るなっ
では
失礼を
なぜ...
殺したのです
...わが子を
たった
一人の
息子を...
かわいい
芳男を...
あれは
自殺だ
いいえ!
貴方が殺した
のです貴方は
そういう方です
だまれ
自殺だと
云って
おる!!
わ...わし
だとて
...
断腸の
思いだ
う...そ...!!
本当だっ今
新聞社で聞いたんだ
芳男君は
ピストル
自殺をした
うそ!!
本多家が
口封じをしたらしい
記事にはでない
別に遺書は
なかったそう
だ
うそよ!!
おどかさ
ないで!!
...
...君には
ほんとになぐさ
めようがないけれ
ど彼は危険
な橋を渡って
いたんだよ...
なぜ自殺したのか
わからないが
きっとドタン場に
追いこまれ
たんだろう...
...彼が好きだった
のはわかるよだ
『彼はもういない
あきらめたまえ
いや...
いや!!
君は若い
んだ
また
いつの目か
もっとすば
らしい人に
会えるさ
あんなに悲しむと
は思わなかった
ヒョンな
気でも起こさ
なければいいん
だが...
すでに
おそし
!!
しまった
つい二三時間
眠っちまった
やっぱり...
旅に出す!
さっきから
今やここ見たの。
いやーーっかくみんなに
キャラリーAHPANANの
「今年ける前、それを
いらっしゃー何か前の世間
Angizonはバシンナミナ
一番いいので終わった
身のまわりの
もんがない!
大変だあ
ああの
若い娘が
家出しました
どどうかすぐ
探して下さいッ
三重子
へこたれるな...
人生は長いんだぜ
峠さん...
...まあ!!
やーっ
カウフマンの
奥さん
いつぞや
は...
お久しぶりで
すわ...
こうして
由季江と草平は
ふたたび
めぐりあった
......!
最初の出遇いから三年
昭和十六年の秋も
深まったころのことである
第25章
東京拘置所
いやいや、
これまでの
昭和十六年十月二十四日
独房から取り調べ室に
出て来た
リヒァルト・ゾルゲは
いつになく憔悴していた
逮捕から一週間めである
特高警部補の
大橋秀雄は
もしかしたら今日
オチるかもしれない
とかんじた
ゾルゲ君
あなたがなんにも
しゃべらないと
おなたやあなたの組織
この記録はなにも残らない
この際記録として残し
た方がいいのではないか
ね?
なんの組織だね?
何度も云うとおり、わた
しはフランクフルター・
ツァイツングの特派員で
もう
おそすぎるんだ
よ...本当のこと
を云いたまえ
やあ
吉河検事
今日は
おれは調べん
休むから...
気楽にしろ
吉河さん
紙を貸してくれ
それから
鉛筆がほしい
なにを書いたん
だね?
ドイツ語が
「一九二七年以後
わたしは国際
共産主義者である
おれは
負けた!!
日本の警察
に負けた!!
いかにも
おれは
スパイだっ娼
コミュニズムの
スパイだ!!
間違いないっ
......!!
おれは
負けた!!
で話むつは
間ぁ
ここまで行ってくださったんですか
機軍なずら洩
ゾルゲ事件は
帝都を震え上が
らせた
日本の防諜政策が
いかに甘いものか
ということを内外
に露呈したもの
だった
野村全権
アメリカにはつつぬけの
状態だった
日本が極秘に進め
ていた対米戦略
計画にしたって
グルー大使
アメリカ大統領
ルーズベルトは
日本の出かたを
先の先まで
読んでいた
グルー大使
日本の状勢は
よくわかっとるよ
大統領閣下
このままでは
危険です
もちろん
危険だ
いずれ日本と
開戦することになる
にちがいないったぶん
日本の矛先はフィリピンが
ハワイだろう
問題は
その時期が
いつかと
いうことだ
だが外交上は
我がアメリカは
あくまで平和を望んで
いることを新しい外相に
見せておきたまえ
大統領閣下
当面日本に対し
アメかムチカ
どちらを
おえらぴになり
ますか?
もちろん
ムチの方
だよ
ーそして東南アジアへ
進出した日本軍に対して
アメリカは突然
日本人貧産の凍結と
石油の対日輸出の停止を
宣告したのだった
アメリカは
和平条件として
支那全土から日本軍を
撤退させろだと?
ブジョクだッ
ではきくが
日本へ
その見返りは
いったい
あるのか!?
こうなれば
対米交渉を打ち切る
いかいにない
外交交渉を十二月
一日までとし
成立しなければ
対米戦も
やむを得ん!
大統領閣下
日本はどうも
開戦を十二月
はじめに
きめた
ようです
大本営産軍部
たぶん
最初の
攻撃は
ハワイです
えッ
フーン
スケープ・
ゴートは
ハワイか...
ハワイにおとりの
艦船を集めておけ
万一日本の攻撃の
マトになっても惜しくて
ない艦船を集め
るのだよ
アリゾナ
オクラホマ
カリフォルニア
ウエスト・バージニア
ネバダ
テネシー
メリーランド...
閣下は日本機動
部隊の標的を
つくれとおっしゃる
のですか?
いけにえ!!
だよ
止むをえん
太平洋艦隊の
主要艦船が
真珠湾に
集結させられた
もしそれが
ルーズベルトの
いわゆる〝スケープ・
ゴート”なら
あまりにも
巨大ないけにえの
群れだった
EngetSyrighet
日本大使館
最後
通牒です
か?
大使
これが
ハル国務
長官へ野村
君から渡す
通達だ
大至急
英訳を
ーしかし
野村大使は
予定の時間通りに
ハル国務長官に
通告を手渡す
ことができなかった
タイプの
うちかたが
へたなために
英文の通告を
つくるのにひどく
手間どったのである
その間に
ハワイ近海に
接近した
帝国海軍
機動部隊からは
朝もやを
ついて
攻撃機が
次々に飛び
立って行った
ハワイ時間
十二月七日午前七時
五十六分一真珠湾に
第一弾投下
それは野村大使が
ハルに覚え書きを
手渡す一時間二十
分まえだった
これは国際ルール
無視の大暴挙だと
ハルは火のように
怒った
そして日本では大本宮によって
国民に
対米宣戦が知らされ
たのは八日の早朝四時半
だった
フフファン
臨時ニュースを
申し上げます
臨時ニュースを
申し上げます
大本営陸海軍部
発表
帝国陸海軍は
本十二月八日未明
西太平洋において
米英軍と戦闘
状態に入れり
つづいて
東条内閣
総理大臣より
特別訓辞か
ございます
へへへ...
どうも
なんてこと...
...とうとう
やあ
まあ!まあー
まあ!峠さん!
思いがけない
こと!!
どうぞ!
どうぞお上
がり下さ
いまし
ほんとに大変な
ことになりました
わねえ
アメリカと戦争する
なんてあまりにも
常識はずれです
わ
いやあ
朝っぱらから
どうも...
それに生憎
大変な日に
だいたいね
日本人が海の
向こうまで出かけて
戦争をやるってのは
無理ですよ!
へえー
貴女もそう
思いますか
私も海外ぐらしを
してた体験からこれは
無謀だと感じますよ
第一
日本兵があちら
で梅はしや味噌や
らを手に入れら
れますか!
ドイツだってソ連なんかに
攻めこんで、ありゃァ
今に手痛い目にあい
ますよ
奥さんの前ですが
日本もドイツも
このままじゃ
負けですな!
ウン
あ!...
ン...
わたし..
すぐ見奮
するタチで
じつは奥さん...
先日...本多家の
ご葬儀の時に
お会いして
あのとき
ちょっと
うかがった
件ですが...
なんでも
ドイツ料理
店をおやり
になるとか
そして私に
手伝えとの
おさそいを...
あれからいろいろ
考えました
声をかけて下さって
いや大変光栄です
やとって
頂けますか
?
私みたいな
もんでも
まあ
ほんとに?
嬉しいわ!!
わたしァ
生憎そういう
サービス業には
ど素人
ですが
ボーイ
ぐらいなら
できると
思います
とんでもあり
ませんわ
もう決めましたわ
私も素人よ
ぜひパートナー
として一緒に
やって頂きたい
わ
やるなら
早い方が
いいですわ
だけど奥さん
これからの
料理店営業はむずか
しくなりますよ...
時期が
わるいと
思いま
すが...
なんで
おれがパート
ナーになるのが
そんなに
嬉しいのかな
おれにゃサッパリ
わからねえ
すぐにも
準備はじめ
たいんです
あの人が
ここの奥さんに
やとわれはった
男の人や
グリル・喫茶
明日市41円では9日香リ生産のリます
毎日午前11時〜午後9時
...
ええ
来週から
オープン
です
ガウフマンさん
の奥さんがレス
トランをひらき
はるそうです
ねぇ
奥さんの手作り
でドイツの
家庭料理を味
わっていただき
ますんで
ごひいきに
このあたりは高級
住宅地でしてね
料理店
なんて
ついぞ
ありませ
なんだわ
だからこそ便利なんす
ですからせいぜい
ごひいきにと...
それに
ここらは風紀が
うるそう
ございましてね
隣組としまし
てもねェ...
あッ
そーでした
うっかりしてた
この開店の
チラシ
すんませんが
隣組に配って
下さいよ
トントン
トンカラリと
隣組...
まわして
ちょうだい
広告ビラ
ねえ峠さん
ちょっと
おかけになっ
て定食の見
本をためして
下さいな
これ
コースで
三円
五十銭で
どう
へー
いただき
ます
材料のわりに
おなかのはる献立なの
ペーコンと青豆のスープ
爆製肉とザウアークラウト
このフライドポテト添え
それとライムブレッド
お好みでリンゴ酒
こりゃ
うめーや
どお?
ドイツの
おふくろの味
ですな
え...
それは本当
ヘッセンの郷土
料理なの
しかし材料が
よく集まりま
したなー
カウフマンが
お好みだった
のよ
僕がベルリンで
食ったのは実に
味気ないホテル
料理だったが
これこそ
ドイツの
庶民の味!
手作り料理
野菜は自家製
お肉はルートを
確保しましたの
こいつは
だんぜん受け
まずよ!
新聞販売所へ
行って来ます
えー
こちらドイツ
料理
店の
ズッペで
しょうか?
開店は
まだです
が...
あ
いらっしゃい
お待ちして
いましたわ
この人
楽士さんよ
大阪音楽学校
出の立派な
ソリストです
わ
うちで
契約して
毎日通って
いただくことに
したんです
お!
曲はシュトラウスの
がブラームスの
小曲にしてね
そうね!
「会議は踊る」
のワルツ弾けま
す?
夜は
チゴイネルワイ
ゼンもいいけど
できれば
ピアノの方が
いいのですが...
もう
何年も使って
ないけど
これで
どうかしら
ああ
これなら
いいでしょう
奥さん...無駄じゃ
ないかと思うんです
けどねェ
あなたも
ご存じでしょ
あちらでは
お食事には
音楽は欠かせ
ないわ
それに
弾くのは
ドイツの曲
ばかりですも
の問題は
おきないわ
宝塚だって
近ごろはドイツの
曲をどんどん
やってますもの
ね!
奥さん
若いなァ
まるで
娘さんみた
いにノッて
るな
マダム
カスラーリッペンは
どのくらい盛り
つけましょうか
厚切りを一枚でい
いわそれから
すこしやわらかめ
にゅでてね
卵が足りませ
んけどどこへ
電話すればいい
のでしょうか
養鶏場の
知り合いから
毎日届くわ
ジャガイモ
やキャベツを
家の裏に
たくさん作って
おいてよかった
毎朝新聞販青
いや...
うまいの
なんの...
あんたも一度
食いにくりや
いい
明日の
朝刊に
はさみます
>
奥さんは
夢の多い人だ
からだをはって
るところに
ほれたよ
前夜祭よ
ワインで
乾杯しま
しょ
ズッペが
千客万来に
なります
ように
乾杯
それから
奥さんの
ご健康を
気掛かりなのは
こんな丘の上
登れる
かしら...
大丈夫ですよ
腹がへってりゃ
食い物ほしさに
有り難う...
これから何年
続くかしら
材料とお金の
あるかぎり
やりぬくわ!
十一時開店と
書いたのに
一人も来ません
ねえ
すこし
わかりづらい
場所だから
迷ってるの
かしら
なにか
あったの
?
マダム!?
たいへんです養鶏場
から卵が届けられま
せんって
横流しが
警察に
みつかって
厳しいお叱り
を受けたんで
すって!
ふ
や
やっ
です
あ...
来た!!
あ...
いらっしゃい
まし!
どうぞ
どうぞ
こちらへ
あの...
メニューで
ございます
私達はね
食事をいただき
に来たのでは
ないのです
わしは
物価統制令
管理闇価格
査察委員
です
奥さん
この料理店は
極めて
不審な点
が多い!
規定以外の
材料はどこから
手に入れられて
いるのかを
伺いたい!
材料はうちで
作ったものと
知り合いから
わけて貰って
ます...
つまりね
必要以上に
ぜいたくな
ことをなさっ
てるんですよ
奥さん!
この決戦下で
すぞ国民が
ひとしく窮乏
に耐えておる
時に..
このような
ぜいたく三昧の
材料と手間が
どんなに非常識な
ものかおわかり
になっとるのか?
闇で買っている
とは云わん
だがもっと節約と
耐乏を旨とした
メニューにして
いただきたい!
うちは
ドイツ料理です
それなりの
作り方で
いたします!!
そんなら
ドイツ人だけに
食べさせれば
よいでしょう
...はい
なるべく
質素に
いたします
日本人は
いまやひとし
〈耐えしのぶ
時ですぞッ
だいいち
なんですか
こんなケバケバ
しい部屋で
殿様まがいの
料理を...
しばらく
監視します
からな
この
ナンジャ
モンジャ料理は
やめて
うどんかそばを
出しなさい!
はい...
なんていやな
ジジイだ
反省して
改めなさい
私甘かったのね
お嬢さん的な
考えだったのね
ああいう
やつがすぐ
うるさく云っ
てくるんだ
なーに
おもてむきは
云うとおりに
しておいて
裏で
うまいものを
作りゃいいん
ですよ
どこでも
やってますよ
赤坂や新橋の
料亭はみんな
やってまさァ
そのうち
常客がつけば
大目にみてくれ
ますよ
だれも
来ないけど
演奏を始め
てくれます
か?
「会議は
踊る」の
ワルツを!
なにを
弾き
ましょう
峠さん
踊って..
私
あいにく
チークしか
できんです
SSiatcren.glauftbas.9Didriper
チークで
いいの!!
どうぞ...
あァ
...
この
香り
おれは
この
香りを
三年も
待って
いた...
くそォ...
また
査察委員の
イチャモンの
お出ましか!!
いらっ
しゃい
ませ!!
どうぞ
こちらへ!
はいっ
コースで
ございますね
キョー・
ヘいッ
いらっ
しゃい
ませ
ワインが
あるのかい?
はいっ
白ですか
赤で
しょうか
ドイツ料理か!
近頃
こんな店が
できたなんて
うれしいね
「カリガリ博士」を
観た頃を
思い出すよ
えーっと
クラベ・
クロスターデ!
それから
フランク
フルト!
おめでとうッす
店長!
だんだんいい
雰囲気に
なってきまし
たよ!
店長なんて
いや!名前を
呼んで...
カカカウフ
マンの奥さん...
由季江って名
なのよあたし!!
第26章
それから
三年の月日が
流れ...
世界の
状勢は
変わった
ここ
ベルリン
でも
BAWNWHORF
日ましに
敗戦の色を
こくしていく
ナチス政府は
ヒステリックに
反政府分子を見つけては
抹殺していた...
あけろ
あけろッ
944年7月20日
おまえ...
裏口から
はやく
お逃げ!
SD(*)だ
手を上げろ!!
奴等は
どこだ?
奴等と
いいますと?
とぼける
なッ
吐かないなら
いの一番に
貴様を
銃殺にして
やるぞ
おらローナチス親衛隊保安議報部
家中にガソリン
をまけ
狐をあぶり
出せ!
ま...
待って下さい
家族か...
家族ごと
焼かれるのと
反逆者どもを
引き渡すのと
どっちを選
ぶ?
この...ゆ...
床の...し...し..
下です...
この中には関係ない
人達もいるんだ
裁判を受けさせ
てくれッ
狐ども
ジタバタしても
おしまいだ
出ろッ
そこへ並べッ
ああ
受けさせて
やるとも
地獄に法廷
があればな
ヒットラー
こそ
地獄へ落ち
るがいい!
ママー
ママ...!?
バカカ
バカバカ
人殺しー
人殺しーイ
目ざわりだッ
こいつをすぐ
収容所へ送れ
反逆者の子どもは
結局、反逆者に
なるんだ
あれで
まだはたち前
なんだとさ
どうだい
あのいっぱしの
リーダーぶり
総統の秘書
見習いという
身分から
アッという間に
出世した
成り上がりだ
そうだ
総統お気に
入りの模範生
さ...
しかしあれで
純粋のドイツ人
じゃないって
いうぜ
なんでも
日本人との
混血ってことだ
それでよく
異例の抜擢
にあずかった
な
クソマジメなんだよ
日本人の血のせいだ
そこが総統の
おめがねにかなった
んだろう
なにしろ
最近の反逆者狩りで
メキメキ点数を上げ
てるんだいずれ
幹部にのし上がるだろう
SD指揮官アドルフ・
カウフマン閣下に
な!
近頃はりきっ
とるね
カウフマン
中尉
ケシュタポ
極東諜報部
A・ランプ部長!
君が摘発した
反逆者は
何百人になる?
さあ
数えたことは
ありません
よく
ゲシュタポ本部へ
来てくれたな
まあめしでも
食おうか
君をゲシュタポに
ほしいくらいだ
よ
ゲシュタポに移籍する
気はありません
しかし貴方のお話には
興味があります
そうだこの
話はぜひ君に
のって貰いた
いものだ...
何を飲む?
ぼくは
酒はやりま
せん
あらためて
聞こうか
日本へ
行く気は
ないかね
...ではまず
第一に聞き
ます!
ゲシュ
タポの
仕事ですか?
なんのために?
まあ
そうたたみ
こんで聞くな
君は里帰りを
したくないの
かね
だからなぜ日本へ
行くんです!?
こんな
時期に!!
ある文書を探
して手に入れて
貰いたいんだ
?
その文書は
神戸に住むトーゲと
いう青年か、その
周辺が持ってるはずだ
なんの
文書です
か?
君は
総統の秘書として
側近に待っとった
総統がどういうお立場
だろうと絶対の忠誠を
つくす覚悟だろうね?
カウフマン君
これはわがナチス
およびドイツの浮沈
にかかわる重大文書な
のだよ
この文書は
総統個人のご身辺
に関するスキャン
ダルなのだ
もしかして
...!
総統の
ご出生に
ついての証拠文書
ではありませんか
やっぱり
君は
知っとった
か...
では
何も
云うまい
君は
総統がこの
馬鹿げたスキャンダルに
どんなにめいっておられるか
わかってる
はずだ
この山荘の
コックのマルレーネ・F・エクスナーは
母方にスタヤ人の血が流れています!
そんな者に総統のめし上がる料理を
つくらせておく訳にはいきませんッ
アドルフは聞きながら
思い出していた
この冬《ベルグホーフの::
どう調べたのか
しらんが
ボルマン
中傷は
やめんか
総統の山荘にご機嫌
伺いに行った時だった
もうだまれ
ボルマン!!
いえ!
これは事実です
噂が広がれば
大事であります
そこに
居るのは
誰だ?
元秘書の
カ...カウフ
マン中尉で
ありますッ
二度とこのことは
口にするな
貴様が黙って
おれば噂は広
カらん!!
カウフマンか
コックのエクスナー
を呼んでくれ
はッ
いつも
すばらしい
養生食を
わしにつく
ってくれて
ありがとう
光栄に
ぞんじます
閣下...
お前
ユダヤ人の
血がまじってい
るそうだな
はい
人に知られた以上
わしはお前をクビにて
せねばならん
はい
その時の
総統のなんとも
いえずさみしげで
苦悩にみちた
目つきがアドルフには
ひどく印象にのこった
自分にユダヤ人の
血が入っているから
こそ、ヒットラーは狂った
ように悩んでいるのだ
アドルフはそんな総統を
あわれんだ
だが心配するな
わしの力でお前を
名誉アーリア人に
してやる
おまえは
永久に安全だ
カウフマンその文書は
五年前私が日本で
手に入れようとして
紛失したものだ
だがその後の
情報でその文書は
トーゲがあるスパイ
機関に渡そう
として果たさず
いまだに彼の周辺に
あるようだ
きみは
命をかけてでも
それを手に入
れて処分する
.....それが
仕事だよ
え
どうだね
君は日本が
第二の故郷だ
君が一番適任
だと思うが
考えさせて
頂きます
ぜひ
引き受けて
貰いたいね
なるべく
そういたします
ではこれで
フン...
なんのことはない
自分が前に
しくじった
仕事の
尻ぬぐい
じゃないか
昔は氷の心臓を
持った男とか何とか
云われて恐れられた
そうだが今は
尾羽うちからしたっ
て感じさ...
だいいち
制空権も
制海権も
アメリカに
握られてるという
日本へどうやって
行くんだ
ママ...
たぶんアメリカ空軍の
空襲を受けてるでしょうね
あの美しい神戸の町は、
どうなってるんですか
あなたを二年前
このドイツへ呼びよせた
かった...しかし
どこだって危険は同じです
もう
もう二年も
連絡のとだえてる
ママ今頃
どうしてることか
連合軍は今
怒濤のようにこの
ドイツへ向かって
いるし
反逆者は日まし
に増えているし...
そうです!!
戦局が悪くなると
卑怯な裏切り者が
増えるんです
ぼくは
やむを得ず
そいつらを
処分せねば
なりません...
なにーッ
総統が
爆死したってッ
いつ?
どこで?
おれだ
カウフマン中尉だ
どこから?
用はなんだッ
「狼の砦」!?
そこで爆弾テロが
おきたのかッ
は犯人はだれだ
なにもわからんと?
ばかッ!!
そんなことで
SDがつと
まるかッ
噂の出所を調べ
ろッ、敵の流したデマ
ゴーグということもある
中尉殿..
総統が...
総統が...
メソメソ
するなッ
まだ死んだと
きまったわけ
じゃないッ
ええい
どけ
どけッ
軍曹!
たしかな情報は
入ってるのかッ
爆死は
事実かッ
情報が
混乱して
おりまして
どれが
真相か...
はっきりして
おります
ことは
今日午後二時
狼の砦.総司令
部で総統はじめ
将軍参謀
およそ三十
名が
作戦会議を
ひらいていた
さなかに爆発が
おきたので
あります
明らかに
テロだなッ
爆発後何人かは
自力で脱出したと
ありますが
その中に総統の
お姿はなかった
そうであります
主要閣僚が
「狼の砦」へ急遽
向かわれました
イタリアの
ムッソリーニ
閣下も
向かわれたと
ニュースが
入りました
カウフマン中尉殿
ミュラー閣下
からであります
わかり
ましたッ
至急
総統の
ご安否を
たしかめに
参ります
どけーッ
待ってろ
爆弾事件?
ああ総統閣下
はご無事だ
そうだ
なんでも
トイレから
下水へ
流れおちて
助かったと
カ...!
きさま
この大事の時に
悠然と座っている
場合かッ!
なアんじゃ
あいつは...
若造のくせに
いばりくさって
総統は
ご無事だという
ニュースが
入ったぞ
飛行場へ
つっ走れ
「狼の砦」は
東プロイセ
ンの片田舎
だ飛行機
で三時間
だ
なんたる
すさまじさ
......
爆弾は
書類ケースに
いれて総統の
足元に
おかれたのだ
運よく総統が
爆発物から遠
ぎかったので
まぬかれたが
地下壕なら
即死だぜ
総統は病院で
ハッセルバッハ
博士の手当て
をうけて
おられる
病院へ
行くかね?
総統は
?
軽傷だ
司令部へ
戻られ
たよ
おそいッ!
ミュラーは
来んのかッ
ミュラーは
なぜ機敏に
爆発直後
とんでこなかっ
たっ!!
総統の
ご様子は
?
当初はシ
ョック状態
じゃったが
今はもう
回復なさっ
た
はやく
この陰謀の
張本人をあげて
もらうことだね
もちろん
です
博士
カイテル閣下
申し訳ありません
情報があいまいで
総統
閣下!
閣下...
元秘書官の
カウフマン
中尉であります
カウフマン
か...
これを...見てくれ
子の体中きずだらけだ
予は運が強い...
この通り生きておる!
おそかったな...
なぜいの一番に
予の見舞いに来ながっ
たのだ?
もう
ムッソリーニも
帰ったあとだ
ご無事の
お喜びを
申し上げ
ます
貴様も...もし
や予の暗殺計
画に加担した
一人ではない
か?
とんでもありま
せん、神かけて...
子が目をかけてやった
部下がことごとく
予を裏切り、予の
命をねらう...なぜだ
国防軍もSSも
裏切り者だらけだ
恩知らずめか
その上、SDや
ゲシュタポは
ろくでなしだ!!
予の
まわりの人間は
みんなクズだ
クズ人間共だ
運転手と床屋と...
コックと「わしの
愛するエヴァと
それだけしか
おらん...
ウッ
ウッ...ウッ
予を案じ
予のために尽くす
信頼すべき部下は
一人もおらぬ
一人もだ!!
いえ!
わが国には
総統閣下を
おしたいする国
民が何千万人も
おります!!
カウフマン
お前は
忠実な
部下だ
お前は少年の
時から予の
秘書官見習いとし
て目をかけてきた
予に対する
恩を感じるなら
予のために
忠誠をはげめ...
でありますから
参りました
何なりとご命令
下さいッ
裏切り者を捕らえろ
課反人を一網打尽に
しろ!!
一人
残らず
捕らえよ!!
わかりました
必ずその陰謀の
加担者を徹底的に
検挙いたします
検挙するだけかッ
やつらを一人一人
拷問にかけ苦しめ
のたうちまわらせろ
ユダヤ人共のように
そやつら
根だやしにせいッ
予への裏切りは
たちどころに死
に値することを
思い知らせろ
わかり
ました
子は
国家であり
子とドイツ
は一体で
ある!
は
予にもしもの
ことがある時は
すべての
ドイツ民族
の滅亡する
時だぞ
知っとるな
腰ぬけのろくで
なしの国防軍
首脳どもめ!!
それすら
わかっとらん!!
だから連合軍を
上陸なんかさせた!!
あのバカ野郎が
ゲーリングの
田舎者の
役立たずめ
ヒムラーの
でくのぼうめッ
やつらのおかげで
戦況は今
危機に瀕しとる
なんたる
無力さだ
いいか
カウフ
マン
中尉
肝に
銘じて
おけ...
たとい子の
側近だ
ろうと
疑わしいやつ
を容赦する
なッ
しかも
反省もせん
自分達
の非の
認識すら
せんのだッ
もしも神愛が生きるか
先輩からこう戦いにあいて
われわれっ誘拐を
危な事だなはやつまり!!
わがやれっ飛毛を起こすようなんではまたこの戦いを感、気にすちびくならばその時、金沢家にもはやめまわりに
来まりません朝よりさし
女の子を作るなんてみ
もういい
行けッ
いや
待て
君に
教えてやろう
予を
暗殺しようとした。
卑怯者は大工
にちがいない
だ大工?
そうだッ
それ以外の
可能性は
ありえん!!
大工と
おっしゃい
ましたか?
やつらが
この司令部の壁に
爆弾を仕掛けたのだ
私は会議出席者の
リストを調べ
ました
フォン・シュタウヘン
ベルグ大佐が
途中から会議に
加わり途中で
退出しています
その上大佐は
こっそりこの
司令部の外へ
逃げるように
出て行かれた
そうです
爆発の
直後です
シュタウヘンペルグか
...やつが殺し屋の
張本人か
大工では
ないだと?
私は彼が疑わ
しいと申し上げ
ました
カウフマン中尉
貴重なる意見を
聞いたぞ
失礼いたし
ます!
カイテルに
つなげ
なに?
めしをくいに出た?
ではホイジンガーだ
そこらにおるだろう
ホイジンガー
将軍!
各ゲートを
閉鎖しろ
それから
裏切り者の一味の
一人を捕らえろ
そやつは
爆破犯人の名を
知っておる
たぶん一味だ
名前は
アドルフ・カウフ
マン中尉!
カウフマン
中尉殿
一緒に来て
頂きます
おれを
どうする
気だ?
貴様達..
自分のしていること
がどんなことかわかっ
ているのかッ
ホイジンガー
将軍閣下のご命令
であります
ホイジンガ
1閣下!!
自分がいったい
何を
したと
いうので
ありますかッ
総統からの
お電話でな
君が反逆者の
一味だと云われた
のだよ
そ...
総統力?
ご冗談
を...!!
私は反逆に価するなんの
行動もとっていません!!
逮捕されるいわれはあり
ませんッ
わしにどなっても
無意味だよ。軍事裁判で
申し聞きをするんだな。中尉
そいつを
監禁しろ
やめて下
さいッ
私は反逆者
じゃないーッ
これはいわれの
ない誤解だーッ
ランプ
部長
その男は
シロだ
釈放しろ
なんの権限で
このわしの
命令を妨害
するのかッ
たった
今、このランプ
が総統にお目に
かかって誤解を
といたのですよ
総統はいささか
混乱なさって
おられましてな
誤解であったことを
認められました
ランプ!!
総統はすでに
冷静に事態に
対処されておるッ
情報部の越権は
ゆるさんぞッ
そうですかな?
ホイジンガー将軍
それよりも
私は貴官が反逆者の
一味だという確証を
握りましたぞ
ななに?
なんだって
わしが反逆者?
ぼばばばかな!!
この期に及んで
ジタバタしなさんな
将軍
ホイジンガー
将軍を逮捕
したまえッ
すでにベント
ラーシュトラーセの
反逆将官達は
逮捕され、貴官の名が
浮かび上がって来たの
です認めなさい
アドルフ・カウフマ
ジ中尉なにを
つっ立ってる?
どうした
君はSD将校ではないか
上官といえども
遠慮はいらんぞ
借りができた
わけですね
ランプ部長
そうだな...
この貸しはいずれ
返してもらおう
立場が逆に
なりましたね
閣下!
......
若造が...
いまに貴様も
ほえづら
かくことに
なるぞ
カウフマン中尉
この総統の暗殺
計画はかなり
大規模な
ものだ
それらを
SDは片端から
あげる
んだ
それが
君の任務だ
将官から学者
民間人にまで
おどろくべき底の
深さで、反逆者が
全国的につながっとる
総統も君に
云われた
ろう
そいつらを
根だやしに
しろと!
......
私は:
総統の
お心が
わからな
くなりま
した...
なぜ私を
信頼するようなことを
おっしゃった直後に私を
反逆者として捕らえさせ
たので
しょう
だから総統は
現在
混乱なさって
いるのだ
それだけでは
ありません
総統は私の
面前でゲーリング
閣下やヒムラー長官
をあしざまにののし
られました
みんな総統を
おしたいし
総統のために
命をなげうって
いる方々
ばかりです
その方々をさえ
総統は信頼
なさってないよう
なのです..
私もかげでは
あのように
露骨に非難
されている
のでしょうか
...
私達はすべて
〝クズ人間〟なので
しょうか?
はっきりそう
おっしゃいました
気に
することは
なかろう
クズならクズらしく
総統閣下に忠誠を
つくし、クズのように
に死ぬのだ!!
そうだ。帝国が滅びれば
われわれも吹っ飛ぶ
われわれは
総統のような方に
とっては
たしかに
クズ人間かも
しれん...
しょせん
われわれは国家
という巨大なメカ
ニズムの上にひっか
かったクズに過ぎん
今のグチは忘れろ
二度とくり返すな
反逆者の烙印を
おされたくないのなら
な
口に出しては
二度と云わない
だが総統は
本当に正常なんだ
ろうか?
ベルリンのSD
本部へ帰った
アドルフは
即座に行動を
開始した
...
...
芋のツルのように
ゾロゾロと
反ヒットラー・グル
ープがあがってきた
自殺する者「いさぎ」
よく自白する者
逃亡しようと
する者...
リストをもとに
SDは容疑者を
片端から
逮捕して
法廷へ送り
こんだ
その数は
射殺された者
もいれて
五千人以上にも
のぼった!!
裁判は冷酷に仮借なく
進行した、検事や裁判長
は聞くにたえない罵響雑
言を被告にあびせかけた
アドルフ・
カウフマン君!!
おれを
覚えてるだ
ろう?
ああ...
覚えてるとも
AHSの同級生フリッツ・
ボーデンシャッツだ...
元気がいっフリッツ
ああ!アドルフ
君とはよく
遊んだな
贈り物を
交換したり
鳥を撃ちに
行ったな...
昔のよしみじゃないか
見逃してくれ
頼む...後生だ!
ぼくはひょんなことで
かかわりあっただけなんだ
反逆者
グループ
とは
知り
合いと
いった
程度なんだ
もう一度聞く
君はヒットラー・
ユーゲント内に
反逆者の
連絡網を
持っている..
全員の名を
云うんだ
知らないよ
ほんとに
知らないんだ
信じて
くれよ!!
やれ
残念だな
フリッツ君は
次の同窓会には出ら
れそうにないな
ギャア〰ッ
また
気絶
しました
「休みして続けろ
どうしても吐かんときは
やつの家族をいためつけ
脅しをかけて吐かせる
ギャッ
ウワーッ
ウ...ウ...
オ...オ...オ
オ...オ
ゲ~ッ
グァーッ
警備大隊司令官
レーマー少将が
お見えです
やあ
やっとるな...
君は機敏な
仕事ぶりだと
評判だぞ
カウフマン中尉
大仕事をたのみたい
大尉になれるよい
チャンスだぞ
おっしゃって
下さい
ロンメル
将軍を殺せ
ロンメル!?
ああの
国民的英雄の
ロンメル将軍を
であり
ますか
ッ!!
そうだロンメル将軍が
反逆者グループに名をつらねて
いることがわかったのだ
君の仕事は
一箇中隊を率いて
ロンメルの家を包囲し
抵抗すれば射殺
することだ
どうだ?
やってくれる
かね?
カウフマン中尉
し...
しかし...
あの
偉大な
アフリカ軍団の
英雄を...
なにかの
間違いでは?
閣下...
ロンメル元帥は
われわれの
希望の星です
ドイツ軍全軍の
誇りですッ
その方を
暗殺するなんて
とても私には
できませんッ
中尉
できないとはどう
いうことだ?
これは司令官
としての命令
だぞ
閣下もし
ロンメル元帥が
総統に反対の
立場をとっておられたと
しても長い間
自動車事故で病床に
居られました
暗殺事件とは無関係
だと思います!
無関係だと?
反逆者どもの
極秘名簿にロンメル将
軍の名があったのだぞ
中尉
直ちに
ウルムのロンメル
の別荘へ向かえ!
命令を実行する
のだ!!
で...でき
ません!!
命令に
そむくの
か?
お願いします
だ...だれか
ほかの者に
...お命じ下さい
申し訳ありません
...わ...私には
ロンメル元帥は
殺せません!!
カウフマン中尉
君には失望したぞ
ではこの仕事は
ほかの誰かに
やらせよう
もっと
勇気の
ある男
にな
中尉殿自分も
ロンメル閣下を信じます
拒否なさったのは
当然でありま
す!
余計な
ことを云わな
くてもいいッ
伍長ッ
おれが今
電話することに
ついては他言無用
だわかったか
はッ
もしもし
ロンメルだ
が君は
誰だ
自分は閣下を
敬愛している
者であります!
ロンメル閣下!
貴方のお命が
危険です
なんの
ことかね
すぐお隠れになるか
ご皆備下さいッ
ご身辺をねらって
司令部から
銃殺隊が
さし向けられ
ます!
閣下が反総統派に
名を連ねておられる
ことが発覚したのです!
そのことかね...
わしはすでに覚悟は
しとったよ
ああ、あの暗殺事件には
わしは関係ない
だが反総統派に同調
しとったのはたしかだ
わしはな
ヒットラーに
もうあいそをつかして
おったのだ!
あの狂った男は、この
祖国の危機について
わしか何度真剣な忠告を
しても耳をかそう
ともせなんだ
だまれロンメル
予の命じた
戦略に修正は
ありえないのだッ
今に奇蹟の
新兵器ができるぞ
それは
原子爆弾
という新兵器だ
これさえできれば
反攻できるのだ
わしは
唖然とした
.....
同席のみんなも同じ
気持ちだった。あれは世速
言だ総統はもう気が
ふれているんだ」とな
君には
申し訳ないが
あのような総統に
かきまわされて
いる祖国は
もうダメだ
狂った
総統が
わしを殺すなら
甘んして死のう
滅ぶ祖国に
生きながらえても
仕方がない
誰だか
知らぬか
電話を
有り難う
.....
アドルフ・カウフマン中尉
そべルリン地区SD司令部
勤務から解任し
東部辺境地区ユダヤ人
輸送担当官に
任命する
もう
来たか...
ポーラン
ワルシャワ郊外
出たら
さっさと
整列
しろッ
うろ
うろして
いる奴は
鉛のたまを
ぶちこむ
ぞッ!
次!
12号車
出せ!
ぐずぐず
するなッ
さあ
出ろッ
そちらの奴
荷物は一箇だ
一箇!
おいッ
しゃがみこむ
なッなにッ
病人だと?
これから
いい所へ
ピクニックに
連れてってや
るぞ
ハイル・
ヒットラー
やあ
来たな
左遷中尉
レーマー少将の
命令を拒否したってな
そんな大それだことを
すれば銃殺か流刑
は当然だ
アイヒマン少佐
私は少佐殿と前に
お目にかかりました
なに?
いつだ
四年前自分がアドルフ・
ヒットラー・シューレで訓練を
受けていた頃です
フン
記憶に
ないな
どうしたッ
なにを騒い
でる?
少佐殿
大変です!
貨車の中で
赤痢患者か
でました!
どの貨車だッ
どの貨車だッ
うしろの
二輛です
よし
その二輪の
ユダヤ人共を
外へ出すなッ
出た者は
もう一度車輌
へ戻せッ
急ぐんだッ
1415号
車輛の者を
車へ戻せッ
さっさと
やれーッ
おいッ
貴様...
戻らんか
モタモタ
するなーッ
もとの車へ
戻るんだーッ
戻らぬ奴は
射殺するぞッ
戻れーッ
急げ!!
よーし二輛を
引き込み線の
一番奥へ
引いていけ
隔離する
のだ
私の仕事は
フン君はベルリン
でははり切って
いたそうだな
それをここでも
見せて貰おう
この
ユダヤ人共二千人を
ブッヘンヴァルト収容
所へ連れて行き絵え
あそ
こまで
歩かせてですか
もちろん徒歩でだ
ただし休ませるな
ひたすら歩かせ
脱落した奴は殺せ
それから
食事を与えるな
なるべく大勢を
脱落させて処分しろ
収容所へ着くまでに半数に
減らし給え
なにしろ
あそこは
狭い
からな
心掛けましょう
貨車を
引き込み線の
奥に誘導
しましたッ
よし
ガソリンを
まいて
火をつけろ
ガソ
リンを
かけろ
ーッ
出してくれーッ
あついーッ
アッツッッッ
助けてくれ!!
助...け..て...
だれか..
だ...れ...か
ここを
開けて
下さーい
たれか開けて
お願い!!
伝染病は
早急に対策の
手を打つべき
だよ中尉
さて...
話はちがうが
さっきベルリンガら
電話連絡があった
ロンメル将軍が
今日、四時
ウルム郊外の別荘で
事故のために
死亡された
そうだ
事故死?それが
公式発表ですか?
なんてこった
...あんな英雄を殺す
なんて...総統は完全に
狂ってる!!
もう沢山です!
...狂った総統の下で
われわれは戦って
いるんだ!!
今さら
驚くなよ
とっくに
誰だってそう
思ってるさ
狂った元首の下でまともな
部下はやって行けんし
まともな元首の下で狂った
部下はつとまらん
あの総統の下で忠誠を
尽くすわれわれ全員
実は狂人の群れなんだ
おれも君もな
とにかく
命令を遂行しろ
二箇小隊を
かしてやる
しっかり
歩けッ
行く先は
遠いぞッ
よーし
五列に
並んで
出発ッ
どいつも
こいつも..
カタツムリ
みたいに
のろい!
これでは
予定の時間ま
でに収容所へ
着くものが
止まるな
歩け!!
歩けと
云ってるんだ
母さん
しっかり
して!!
母は心臓が悪いんです
休ませてやって下さい
もっと
スピードを
あげて
歩かせろっ
わからん
のかッ!!
今回はこの記事をしていましたので、
すみません
母に一息入れ
させて下さい
どうした
歩かんか!!
ほっとけ
行けッ!!
母さー
んッ
行くんだッ
母さーんッ
ママ
もう歩け
ないよオ
ハア
ハア
ま
待って
くれッ
もた
もた
するな!!
この
野郎
だれが
休めと
云ったッ
どなたか..
お医者を...
お医者を...
どけ!!
こいつは
もう
だめな
ようです
よーし
楽に
天国へ送っ
てやれ!
立てッ
立たんと
撃つぞ
もっと
早く
歩かせいッ
バス・
この野郎
死んだふりを
するなッ
この分では
時間通りに
収容所へ
着かんぞ!!
なんという
ていたらくだ
おい
そこの
じじいッ
貴様
音楽家
なのかッ
わしの
ことがね?
どこかで見た顔だな
そうだッ
あんたは世界的
バイオリニスト
ユーリ・ノルシュテイ
ンだ......ユダヤ人
だったのか
ごらんの通り
ユダヤ人じゃよ
よろ
しい
なにか
弾くんだ
みんなが
すなおに
歩くように
軽い行進曲か
なにかやるんだ
シュトラウス
のラデッキー
行進曲でも弾け
だれがそんな
ものを弾けと
云った!!
今の
ユダヤ人には
これしか曲は
ありませんでな
やめろッ
やめろッ
なんという
陰惨な曲だッ
これはわしの作曲した
「独裁者のための葬送
行進曲」と申してな
おかげで、今日ここで
初演することが
できましたわい
貴様
行列のスピード
をよけいダウン
させてしまった
ぞ!
独裁者だとッ
何のことだ?
説明をしろッ
わしは
仕事を奪わ
れ家を追い
出されました
それ以来
他人の曲は
決して
弾かぬこと
にしたの
です
ユダヤ人に
真の平和の
日がおとず
れるまで...
ノルシュテイン
貴様名演奏家か
なんか知らないが
ゴキブリ以下のクズだな
よろしい、わしはゴキブリかもしれませんて
だがゴキブリもまたよきかなです
奴は人間だけには毛嫌いされて
いますが、他の生きものからは
生きる権利をみとめられ
ています
その上ゴキブリは
人間が絶滅
したあとも
たくましく生きのびる
動物だと云いますな
屁理屈を
聞いている
暇はないッ
...
モーツァルト
の「軍隊行進
曲」をやれッ
弾けんとは
云わさんぞ
さあ
命令だ
わしには
弾けません
命令を聞か
ねば今すぐ
貴様を
処刑するぞ
「独裁者のための
葬送行進曲」なら
いつでもどうぞ
そいつを弾いたら
そのバイオリン
ごと貴様の
頭をブッと
ばす!!
バカな
年寄り
めッ
ウ~ム
あいつの曲が
頭にこぴりついて
...ちくしょう!!
グォグォゴオ
やめないいかー、
そいつを
弾くな
~ッ
おれの
頭の中で
弾くなッ
おれを眠らせ
ないつもりか!!
おれは...ねれは
あのいまいましい
曲のために...
ほかの音楽が
なに一つ思い出せ
なくなってしまっ
た!!
第27章
その年の九月には
ドイツはすでに
フィンランドと
ルーマニアと
ブルガリアを
うしない
ハンガリーも
間もなく
離反しようと
していた
そんな中で
片田舎のSD支部
では
カウフマン中尉が
ひとり無聊を
かこっていた
のである
ハイル・
ヒットラー
ハイル・
ヒットラー
久しぶりだな
カウフマン中尉
そうとう
やつれはてたな
見違えたぞ
君は
いわば
捨てゴマだ
ていのいい
廃棄処分
だ
君はやがて
さらに東へとばさ
れソ連軍の占領地
の前線へ追いやら
れるそうだな
知って
います
SD上層部は
君を全く
信頼していないのだ
よ
どういう命令
が下ろうと
私は全力をつくします
それが私の祖国への
忠誠です
...だが君のような
人材を大死にさせる
ようなそんな
場所へ追いやる
のは全く
不得策だよ
どうだ...
いつかの話
君なら
できると云った
はすだかわ
日本へ行く
話ですか...?
今さら司令部が
ゲシュタポに
移籍など
承知するもの
ですか..
いや...
話はつけら
れる
わしが承知させる
君次第だ!
君に日本で
してほしい
仕事は二つある
つは例の
総統の機密文書
を探し出し
その場で
焼却することだ
焼くので
すか?
カウフマン
中尉!
君が名誉
挽回できる
最後のチャン
スだぞッ
そうだ!
この時期になって
ドイツへ確実に持ち
帰ることができると
思うか?
戦局はますます
悪化するだろう
文書がアメリカや
連合軍の
手に渡る前に
とにかく
処分するんだ
もう一つ...
この
文書のこと
を知っている
人間を
すべて消せ
その中で特に
マークすべき
男はこいつだ
ソーヘー・トーク
そいつが
たぶん文書のありがの
カギを握っているんだ
じつは...
私情をはさんで
なんだか...
そいつは
わしの娘も
殺しおった
以前わしが
日本へ派遣
されたとき
その報いを
うけさせよう
としたが
果たせなかっ
たのでな
もし奴が
戦地へ行って
いなければ
神戸か大阪に
住んどるはず
だ
そいつは
ことに念入りに
殺してほしい
せいぜい
わしの分も
苦しませて
死なせろ
......そうですよ
しかし
日本の周辺は
アメリカが制空
権を握っていると
聞いています
どうやって日本へ
入るんですか
...
Uボートを
使うほかない
それに乗れ
桜北
逆純だ
北海を
まわって
北極海から
ベーリング海峡
をぬけ...
そして
北海道の
北端に着く
そこで東京の
大使館のリンドルフ
と連絡をとれ
ソ連船の攻撃の可能性
は?
千島へ入れば安全だ
ソ連は敵国だが
日本とは不可侵条約を
結んでいるからな
洲満
問題はベーリング海峡から
カムチャッカまでだが大西洋や
インド洋を南まわりで
行けば三倍の時間がかかる
これは急を要するのだ
...
二週間後
キール港に
君の乗る
Uボートが
待っている、これは
すべての必要書類だ
さあ
受けとり
給え
何を
ためらって
いる?
君は
東部戦線で
のたれ死に
したいのかね?
成功を
祈るぞ
これが
ドイツの見納めに
なるかも知れ
ない...
いや...
戦争が終わった
あとのドイ
ツへ戻れる
かな...
もっとも
おれが生きて
いたらの話
だが...
キール軍港
身分証を!
あっカウフマン
中尉殿
お待ちして
おりました
艦長は
あそこに
おられ
ます
君か
マルコ・ポーロを
きどる
ゲシュタボの
若造は
アドルフ・
カウフマン中尉
であります
U-103の
艦長のカール・
ゲズンドハイトだ
スイスへ
スキーに
行くんじゃ
ないぞ
はりつめた
五メートルの氷の
下を何十日も
くぐるんだ
凍死の覚悟は
できとるだ
ろうな
いちおう
日本には
送りとどけて
やるが
着く可能性は
五パーセント
ぐらいだぞ
いいな
いつでも
死ぬ覚悟は
できてます
副長のヤニングス
機関長の
リッセンだ
この男がわれわれの
速速荷物だそうだ。丁重に扱え
どうぞ
よろしく
ここが
中尉殿の
個室です
なにぶんにも
艦内は手狭で
ありまして
お許し下さい
エンジン始動
しばしの
別れだ
祖国の土よ
出航ー!!
..
...
潜航開始
速力
ハノット!
U-103は
Uポートの中でも
命をながらえた艦で
一九四〇年に造られ
ナチス末期まで
キール港を中心に
出撃していた
いよいよ
潜航か...
いまやU-103は
キール港からスカン
ジナビア半島に沿って、
一路・北極海へ向け
航行をつづけて
いくのだった
当時
Uボートは
北極海では
いぜんソ連船団を
おそっていたが
その勢力はひどく
弱っていた
進路北北東
全速前進!
ヒャー
寒〜〜い
中尉あんたは
大事な人だ
あんたの部屋だけは
温風が入ってる
はずですぜ
君達は
寒くない
のか!
なーに
こんなのは
序の口さ
あと三日も進むと
永久結氷帯へ入る
そこは年中十メートル
以上の氷がはりつめた海だ
何日ももぐって進むんだ
もっとも
海岸の方は
凍ってないが
そこには
ソ連の哨戒機
がうようよ
いるからね
急速潜航
北東に
進路を
変更せよ
左舷約
四カイリに
船舶らしき
物体あり!
また
敵さんか
.....
フフン
やっこさんも
こっちを
見つけた
な
前方の
氷裂に
進入せよ
了解
.....
もうこんな
棺桶生活は
おまんならん
汚れた空気:
油と汗のにおい...
そしてこの寒さ...
やりきれん!!
えーいッ
ジッとして
いると
たえまなく
ノルシュテイン
の行進曲が聞こ
えてくるんだ!!
おまけに
あのいまいましい
ユダヤ人共の
うらめしげな
顔が..
重なり
あって
目の前に
ちらつく!
くそーッ
どうしたんだ
敵にキャッチ
されたのか?
それが相手が
わからないの
です本艦の
あとをずっと
つけてきている
未確認の艦が
あるのです
ソ連の
潜水艦じゃ
ないのか
もし敵なら
当然攻撃を
しかけてくるはず
なのですが
ただ距離をおいて
えんえんとつけて
くるだけです
不気味な
やつだな
...
えーっ艦長!!
入ったら
それこそ当分浮上
できませんよ
こっちから
攻撃を
しかけて
たしかめたら
どうなんだ
相手が何者かも
戦力もわからなくては
しかけようがないであります
よーし
結氷帯の下へ入れ
やつをやりすごすん
だ!
深度300!
深度
300!
エンジン
停止!
エンジン
停止
艦長
こんな所で
止めるのか
静かに
大声を出すと
やつに
感づかれる
やつの目を
くらますのだ
敵がまた
接近して
来ます!
もう
4000フィー
トに迫り
ました!
こっちは
氷の
すき間だ
魚雷をフチ
こまれたら
氷の下敷きに
なるぞ
3000フィート!
まっすぐこっちへ
向かってきます
ちく
しょう!
巨大な
やつです!
どういう
魂胆なのだ
2000
フィート!
の所で
止まりました
止まっ
たって?
やっちまえ
機先を制す
ということが
ある!
心理作戦を
ねらって
いるんだ
ろう
こうなりゃ
我慢くらべだよ
ギャーギャ!
うるさいな
あんたは!
モチは
モチ屋に
まかせて
貰おう!
部屋へひっ
こんでいた
まえッ
もしかしたら
あの物体は
おれを追っ
て来た
ユダヤ人共の
怨念じゃ
ないだろうか
そうだ
だからほかの
連中は
平気なのだ
おれだけが
うなされる
わけがわかった
ぞ...
おれは
こんな所に
居たくない!!
おろして
くれッ!
亡霊どもめ
おれを日本ま
で追ってくる
つもりだ...
今すぐ
この
船から
おろせーッ
あっちには
死霊どもが
乗りこんで
るんだッ
だから...
ン
中尉殿お静かに...
中尉殿
お静か
に...
敵は
至近距離です
声を出さない
で下さい
わからない
のか船を
浮上させろと
云ってる
んだぞ
中尉
敵のソナーに
声が届くぞ
ガーガー
どなるなッ
あの船には
ユダヤ人共の
死霊が乗って
るんだぞ
いくらかくれて
いても
ムダだーっ
あんた
酔っぱらって
るんじゃ
ねえのか
貴様達じゃ
話にならん
艦長はどこだッ
艦長ーッ
ユダヤ人が
おれの部屋に
何百人も...
部屋に
とじこめろ
当分監禁だ
ウッ
そこに
立ってるのは
誰だ!?
うらむなら
上官を
うらめ!!
くッくそッ
幽霊め
それ以上
近ょると...
貴様か!!
パン屋の
おやじ!!
四年前
おれが撃ち
殺したうらみ
で出て来た
のかッ
なにごとだ»
四年前のことだ
貴様...まだおれを
責めるのかーッ
くらえッ
よせッ
この
バカヤロー
さっさと
それを
取り上げろッ
艦長!!そこ!!
そこ!!艦長の横に
おれが殺したユダヤ人
のパン屋が居る!!
もうこんな化け物
屋敷みたいな船には
乗ってられないッ
この船はユダヤ人の
亡霊共で一杯だッ
バッ!
せっかくの
君の上衣が
穴だらけだ
ぜ
これかね
パン屋の
幽霊ってのは
乗りなれない
Uボートなんかに
乗ると
素人はえてして
閉所恐怖症を
おこすもんだ
ことに君みたいに
なんか屈折して
いる
ノイローゼ人間はな
何しやが
るーッ
よし...
もうその小僧の面倒は
いいから、各自持ち場へ
戻れ
何もしやせんさ
君には当分おねんね
していて貰う
これ以上手を
やかせるなよ
ユダヤ人をかなり
処分したようです
な
ああいう手合いは
無我夢中でユダヤ人を
殺しておきながら
孤独になると
えてして良心の呵責に
堪えられなくなるもんさ
まだひよっこなんだ
まだ
敵は静止
してるか?
はい
動きません
よーしこっちも
腰を据えるぞ
どちらが先に
動きだすかだな
中尉殿が
お昼寝からお目ざめ
のようだぜ
もう一度
睡眠薬を
打ちますか
ほっとけ
そのうちに
あの部屋は
声も出んほど
冷えてくる
ウ...ウ...
ウ...寒い...
寒い...
三日目か
アーリッ医療はしなしは家
足板を使ってくれといねば
5時点で活用品によって制服
大和支量に補助すると
自宅に利用することに
何かわかんな
艦長ッ
ついに
我慢しきれな
くなったか!
敵が動き
始めましたッ
こっちへ
向かって
来ます!
発射用意!
1200...
1000..
900...
800..
700...
発射!!
命中だッ
中尉
喜び給え
君の幽霊船は
粉砕したぞ
進路
南南東微東
全速前進!
そうとう
参ったね
さすがに
ウウ...
ウフ...ウフ
ウフフフ
艦長
来て下さい
中尉の様子が
変です
医務長
彼を
診てくれ
かなり
心臓力
弱っています
精神が錯乱
していて
危険な状態
です
ウ...フ...フ
ヒ...ヒ...
仕方がない
千島へ
着いたら
すぐ入院させ
るんだ
こんな狂った
頭で日本へ行っても
目的を遂げられる
でしょうか?
フン
狂った頭でも
結構使いものに
なるさ
だいたい
ゲシュタポの
人間に
まともなヤツ
はおらん
U103はその後
運よくベーリング海峡でも
さしたる敵とも遭遇せず
十月の終わりには
千島列島に
近づきつつあった
十一月初頭
そろそろ
北の海に
氷が張りつめる
ころ
U-103は
基地に
入港した
凍傷は大した
ことないな
問題は精神的ショッ
クじゃが一過性の
ものじゃから、東京で
入院させればすぐ正常
に戻る
じゃろ
それは
幸いでした
われわれは
ただちに
本国基地へ帰投
せねばなりません
東京のドイツ大使
館には至急来る
よう連絡をつけて
おきました
それまでカウフマン
中尉をよろしく
ああよろしいとも
責任もって
看護しましょう
ここは
どこだ
ろう
牢獄かな
おれは
いったい
どうなった
んだ?
いててて
よっこら
日の丸じゃ
ないか
ヘーッ
ここ
日本なの
かな...
ハロー!
ちくしょう
おれは
日本語が話せ
るんだっけ
交換手か
神戸たのむ
三宮三八〇五だ
ああ、何時間
かかってもいいぞ
あッそーか
おれは日本
へ着いた
んだ
Uボートは
おれを日本へ
運んでくれたんだ
そうだったのか
はい
こちらは
スッべ料理店で
ございます
カウフマンじゃ
ないんですか?
いいえ...カ..カウ
フマンでございますが、
...どちらさまで
ママ
ぼくだ
アドルフ
だよ
ママ
えーッ
アトルフ!!
あなたなの
ほんとに
あなた
なの!?
ああ
正真正銘
のぼくさ
日本に来た
んだよ
ああ...ああ
アドルフ...アトルフ
あなた今どこに?
会いたかった!!
今北の方さ
いずれ近い内に
うちへ帰るよ
元気?
声聞いて安心
したよとても
若々しいもの
ああ...アドルフ
あなたをひっくり
させることがあるわ
ママはね、再婚したの
ええ!!
えええ
元気よ
とても
誰と
なんだ
そいつは
日本人かい!?
そうよ
ママは...
それで
国籍を
日本人に
戻したのよ!
なんてことだ...
ママ...どうして
ぼくに相談して
くれなかったの
そう...
無理だとは
わかって
るけど...
東京で
体をなおしたら
とにかく大至急
神戸へ帰るよ
ママが
日本人と再婚!
おお神様...
アドルフ
東京は空襲か
はげしくなって
いるのよ
気をつけて
ドルフに告ぐ
読者の皆さまへ
「手塚治虫漫画金集」の作品の中、には、アフリカの黒人や、東南アジアの人々をはじめ多くの外国人の
姿が出てきます。それらの絵の一部は、いかにも未開発国当時の姿だったり、過去の時代を誇張して
いて、現在の状況とは大きな違いがあります。最近、このような描き方は黒人や、部の外国人に対す
る人種差別であるという指摘がなされております。こうした絵に不快感を覚え、侮辱されていると感じ
じる人がいる以上、私たちはその声に真剣に耳を傾けなければならないと思います。
しかしながら、人々の特徴を診張してパロディー化するということは、漫画のユーモアの最も重要
な手法のひとつです。手塚作品では特にそれが顕著で、多くの国の人がパロディー化の対象になって
います。また作者は人間に限らず、動植物の甘界から想像の世界のものたちまでもユーモアたっぷり
にキャラクター化しています。それは作者の自嘲像でさえ例外ではなく、彼の鼻は実際よりも数倍大
きく描かれています。また作者はつねに文明と非文明、先進国・ご発展途上国、権力者と弱者、金持ち
と貧者、健常者と障害者など、すべての憎悪と対立は悪であるという信念を持ちつづけた人で、物語
の底には強い「人間愛」が流れています。
私たちが今あえてこの「手塚治虫漫画全集」を刊行しつづけるのは、作者がすでに改人で作品の改
訂が不可能であることと、「第二全者が故人の作品に手を加えることは、著作者人格権上の問題もさること
とながら、当該問題を考えてゆくうえでも決して適切な処置とは思えないこと、加えて私たちには日
本の文化遺産と評価される作品を守るってゆく貴務があると考えるからです。もとより私たちは地球上
のあらゆる差別に反対し、差別が無くなるよう劣めてまいります。それが出版に携わる者の責任であ
ると考えます。読者の皆さまも、この手塚作品に接するのを契機に、さまざまな差別が存在している
事実を認識し、この問題へこの理解を深めてください。ますようお願いいたします。
手塚プロダクション/講談社社
東京都文京区音羽ニーーニーニング
〈郵便番号】一二十〇一〉
講談社、週刊少年マガジン補集部
あなたは、この手塚治虫漫画金集
を読んで、どんな感想をお持ちになり
ましたか。
編集部では、この手塚先生の全集に
ついて、読者の方たちのご意見をお待
ちしています。
ご意見、読後の感想を左記のところ
あてに、どしどしお寄せください。
手塚治虫漫画全集'#5
アドルフに告ぐ4
一九九六年九月十七日第一劇発行
定価はカバーに表示してあります。
著者「手塚治虫
発行者・山野・勝・
発行所株式会社講談社
V.D.C.726
ニューの
東京都文京区音羽ニーニューニー
郵便番号
電話編集部(03)五三九五ー三四五九
印刷所,凸版印刷株式会社
製本所株式会社国宝社
販売部(03)五三九五ー三六〇八八
落丁本・乱丁本は、小社雑誌業務部宛にお送り
ください。送料小社負担にてお取替します。
電話(03)五三九五ー三大O三
なお、この本についてのお問い合わせは、週刊
少年マガジン編集部宛にお願いいたします。
◎株手塚ブロダクション_一九九六年
本書の無断機写(コピーに変化権法上での例外を除き、禁じられています。
.ntedin,Japar
ヒットラーの極秘文書を手に入れたカミルは
ソ連のスパイ・ゾルゲを通し、驚くべき事実を
世界に公表しようと全てていた。一方、ユダヤ
人揃発に奔走してい「るカウフマンは、その文
書を取り戻すため、日本行きを命じられる!!
装幀〈鶴本正三+田形斉
著者紹介本名,治。1928年
11月3日、大阪府豊中市生ま
れ。大阪大学医学専門部卒業。
医学博士。1946年「マァチャ
の日記帳」でデビュー。1947
「新宝島」が大ヒットする。「新家島」日本のストーリー漫画の唯立に尽くす。また、アニメー一人一般界でも
「新宝島」が大ヒットする。
米
この世界でも、大きな
それをはじめ「リボンの騎士」
...
こをはじめリボンの胸士」人の鳥」「ジャングル大帝」ブラック・ジャック「ブッグ」「アドルフに
の馬」ジャングル大帝」ラック・ジャック」「ブッ「アドルフに告ぐ」等が
それでも、
講談社
定価:本体563円
(税別
雑誌4040-3-1SBN4-06-173975-2.097999/436E-()