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LaRosetelersalles
池田理代子
ユのば
!?
ベリオナエのばら
その
池田理代子
1755年...
この年ヨーロッパの
3つのちがった国々に
やがてフランスの
ベルサイユで
宿命的なであいを
持つことになる
3人の人間が生まれた
北欧の王国
スウェーデンに
高貴な家柄の
上院議員の
長男として
ハンス・アクセル・
フォン・フェルゼン
は生まれる
...
日田
田田
あああま。。お前おまのお母。おおー
生まれながらに
ぼく大な資産と
高い身分と
もの静かな賢さと
そして.....
のちにベルサイユ中
この貴婦人たちの胸を
ときめかせる
ことになる
均整のとれた
男らしい美貌に
めぐまれた
フェルゼンであった
オスカル・
フランソワ・ド・
シャルシェが
生まれたのは
ご主人さま!
お生まれで
ございます!
フランスの
ベルサイユに
ほと遠からぬ
貴族の館
フランス王家の
信任もあつく
代々王家の軍隊を
統率してきた
由緒ある家の
末娘であった
もう
それはそれほ
お美しい
天使のような
お姫さまで
ま...また
女だという
のか!?
王家を
お守りし
車を指揮する
将軍の家に
女などは
いらぬわ!
ええいくそっ!
な...なんと
いうことだ!
女ばっかり
これで6人!
ジャルジェ家
はいったい
のろわれて
いるのか!?
そ...そんな
ご主人さま
ふむ......
泣き声だけは
男なみだな
しっかりして
おる
どうで
ございます
このきりりと
したお美しい
お顔だち!
ご成長の
あかつき
には
さぞや...
よし
きめた!
オスカル!
おまえの名は
オスカルだ!
どうだ
いい名だろう
そ...それは
男の名まえ
ではありま
せんか!?
そうとも!
こいつにわしの
あとをつがせる!
この父が
フランス一の
軍人にそだて
あげてやろう!
いくら
なんでも
あまりな...
ええーっ
!?
オスカル!
わしのむすこだ
わかったな!
そして...
巨大な
歴史の嵐の中に
その運命を投ぜられた
悲劇の王妃
マリー・
アントワネット!!
1755年11月2日
マリー・アントワネット・
ショゼファ・ジャンヌ・ド・
ロレーヌ・オートリッシュは
フランスとならぶ
ヨーロッパの
強国オーストリアに
女帝マリア・テレジアの
第9子として生まれた
母マリア・テレジアは
女ながら政治に
異常なほどの
才能をもち
強力な国家体制を
ととのえ
オーストリア・
ハブスブルグ王朝の名を
不動のものにした
女傑であった
シェーンブルン宮殿の
奥ふかく
大オーストリア星女
として...
マリー・アントワネットは
この上もなく美しく
気高く優美に
そして、おおらかに
そだっていく...
さあ
アントワ
ネット
さま
もうお時間で
ございますよ
作文はおできに
なりまして?
そして、
アン...
アントワ
ネット
さま!
...!
キャーッ
マリー
さま!!
いやいの?
マリー
さま!?
キャー
お...おやめ
くださいまし
ドレスが...
おかあさまに
見つかったら
それこそこの
わたくしは..
マリー
さま!!
ああ
マリーさま
もうこれ以上
わたくしの
白髪をふやさ
ないでくだ
さいまし!
ひとりきりに
ならないと作文
が書けないと
おっしゃるから
わたくしは..
ああ
それなのに
なんてこと!
ごめんなさい
侯爵夫人
おねえさま
たちがあんまり
たのしそうに
さわいで
いらっしゃった
ものだからつい
マリーは
作文がきらい
だなんて
思わないで
ちょうだいね
ええぇええ
ようくわかって
おりますとも!
歴史も
フランス語も
ビアノも歌も
マリーさまは
気がすすまない
だけで
いらっしゃい
ます!
あのね...
作文をずるけて
しまったぶんの
うめあわせを
したいんだけど
つぎは
グルック
先生の
ピアノなの
よ
なんとか作文の
時間にかえて
いただけるように
たのんでもらえ
ないかしら?
ま!
マリーさま
なんて
いじらしい
おことば!
おまち
くださいまし
グルック先生も
1日くらいなら
わかってください
ますわ!
おねが
いいえねえね
侯爵夫人
まあ!
では先生は
ビアノのほう
が作文より
高級だと
おっしゃい
ますの!?
マリーさまに
とって...
母国語である
ドイツ語なんか
どうでもいいと
でも!?
しかし
きめられた時間内に
勉強をすませ
られなかったのは
あなたの
責任ですぞ!
えーっ!?
このつぎは
フランス語の
時間にかわっ
たんじゃないん
ですか!?
なんですって!?
マリーさまは
読書を先に
してほしいと
おっしゃい
ましたのよ!
いったいどうなってるんで
てるんで
すの!?
やられた!
また
いっぱい
くわされ
ました!
まったく
もうみんな
だらしない!
だれひとり
マリーさまの
あまいことばに
勝てる人間は
いないんだから
ふふ...
マリーさまの
愛くるしい
ほほえみに
心をうばわれ
ない人が
いたら
その人の心は
きっと石で
できてるん
だわ
アントワネットが
7歳のとき
当時6歳だった
天才音楽家W・A・
モーツァルトが
シェーンブルン
宮殿で
御前演奏をした
ことがあった
そのとき
モーツァルトは
魅惑的な少女
マリーに求婚した
というエピソード
ものこっている
じゅうじの
あう人をかならず
とりこにせずにはいない
マリー・アントワネットの
このふしぎな魅力は
そののち
彼女の死の直前まで
色あせることなく
輝くのである
コツ
コツ
カウニッツ
そのように
いらついて
みたところで..
陛下!
なんども
もうしあげて
おりますわが
とおり
ハプスブルグ
家とフランスの
ブルボン家は
長いこと
ヨーロッパの
支配権をかけて
戦ってまいり
ました
しかしもはや
これ以上の戦いは
むだに両家を
つかれさせる
ばかりです
そのことは
わたしにも
ようくわか
っています
フランスと
わがオーストリアは
あらそうよりも
同盟をむすぶべき
であるということは
だからと
いって...
両国が平和同盟を
たもっていく道は
ただひとつ!
末のご息女マリー・
アントワネットさまを
フランスへ
嫁がせもうしあげ
両家が婚姻を
むすぶこと
なんで
すって!?
アントワ
ネットを!?
まだやっと
11歳になるか
ならないかの
あの子を!?
これで
ございます
あの
ルイ15世に
ですか!?
宮廷をめかけの
天下にして
しまっている
あの色気じじい
のところに
ですって!?
...
ど...
うか...
陛下!
そうではござ
いません!
どうか
お...おち
つかれ
ますよう
ルイ15世の
孫:ですって...!?
さよう!
未来のルイ
16世
あいてて・
フランス王太子...
未来のフランス国王と...
現在のフランス
王太子殿下が
おん年12歳になら
れまする
理想の縁組とは
ぞんじますが...
わたしの
マリーとを...
そうだわ...
どうしてそれに
気づかなかったん
だろう...
王太子妃になれば
ゆくゆくはだまっていても
フランス王妃...
皇女にとって王妃に
なるという以上の幸福が
考えられるだろうか...
そして
フランスと
オーストリアの
同盟は末長く
安藤!
カウニッツ!
すぐにフランス駐在の
大使に連絡を
とりなさい
ルイ15世の
意向を
さぐらせる
のです!
はっ
陛下!
フランス
バリの郊外にある
ベルサイユ宮殿では
時をおなじくして
ルイ15世と廷臣
ショアズールとが
やはり
オーストリアの
マリア・
テレジアと
おなじことを
考えていたので
ある
はっ
未来のルイー16世たる
フランス王太子に
ひとつ年下の
オーストリア皇女
マリー・アントワ
ネットを...!
まだまだ!
ふみこみが
たらん!
そらそら
どうした
はっ
バランスが
くずれる!
体重の
かけかたが
たりんから
そんな...
はーーーっ
うっ!
スイッ
はあはあ
はあ
はあ
はあ
父上をまかし
ました
前からの
約束どおり
1個小隊を
いただきます
ふむ...
あっ
ほっはっはあ!!
ゆだんをしてると
そういうめに
あうのさ
かかか...
ひきょうも
らっきょも
あるか
精神の緊張が
たりんのだ
ひ...
ひきょう
な!
まだまだ
おまえには
1個小隊も
まかせ
られんよ
オスカル
くそっ
子どもだと
思って
ばかに
しやがって
あのおやじめ
はっはっ
イ~~ッ
いまに
みてろ!
はは...
ところで
オスカル
・と
こんど
わがフランスでは
オーストリア皇女を
王太子妃として
むかえようという
提案がもちだされて
いるが
きいているか?
オーストリア
皇女
女帝マリア・
テレジアの
姫君ですか?
ふむ..
ことし11歳に
なられるマリー・
アントワネット
という単女だが
そのあまりの
美しさ愛らしさに
オーストリアでは
宮廷中が
ひっかき
まわされて
いるという
うわさだ
肖像を
見たことが
あります
目の
すばらしく大きな
ハプスブルグ家
独特の
つんとした唇の
気の強そうな...
もしほんとうに
その皇女が
王太子妃に
なられれば...
オスカル!
そのかたは
おまえが
身をていして
お守りし
お仕えもうし
あげる方に
なるだろう
いまから心して
その日のために
はげむ
のだぞ!
父上..
はいっ父上!
シェーンブルン宮殿
ああ...
マリー
さま!
ウォッホン!
よろしい
ですかな?
これから本論に
はいろうという
ときにゃもう
そのように
そわそわと
なさっては...
もぞもっ
もそもそ
あのね先生
北の庭の
泉のところに
きれいな衆の
花が咲いてる
のよ
先生になら
きっと
とれると
思うわ!ねえ
こんなに
外は
お天気も
いいし...
ねっ?
へへ...
そりゃあ...
ま...
はっ!
マリーさまは
たいへんすぐれた
頭脳をお持ちで
いらっしゃる
のに
そのように
ひとつのことを
じっくり深く
考えることが
おきらいだとは
たいへん変な
残念な
ことで
ござい
ますぞ!
はっ
こ...これは
陛下
ああ
そのまま
授業を
つづけて
よろしいの
ですよ
あ...あのね
まさかとは
思います
けど...
こ...これは
みんな
マリーの
書いたもの
ですか?
ドキ
ふたたび
かあ...
はあ...?
さようで
ござい
ますが
な...
なんという
こと.....!!
あ.....
ひどーい!
これも...
これも...
もうすぐ
13歳にもなろうと
いうのに!
フランス語はおろか
ドイツ語すら
女法も
つづりも
なにもかも......
なっちゃいない
なんて!!
フランス
王妃!?
未来の
フランス王妃に
なろうかと
いう人が!
そうですよ
マリー
よくおきき
なさい
たったいま
フランス駐在の
大使から
手紙がとどき
ました
フランス国王
ルイ15世は
あなたと考えてした
王太子殿下との
縁組をのぞんで
おられるという
手紙です
さあ!
こんなことはして
いられません
すぐに
メルシー伯を
よびなさい!
それから
マリーの
教育係も
みんな
あつめて!
フランス
王太子妃...
このわたしが..
やがて
あのフランスの
女王に......!!
フランス
簡
しどろ
もどろ...
歴史
文学
女学
ピアノ
歌!
ダンス
!!
ホッ
ま...まあ
これだけは
なんとか..
まるで
蝶のような
かろやかさ
つばさに
のって
舞うような
なんという
優雅さ!
しかし...
ともかくも
フランス語だけは
なにがなんでも
ちゃんと
身につけて
おかなくては!
さっそく
国中に手配して
もっともふさわしい
フランス語の先生を
さがすのです!
それから
メルシー伯
はっ
フランス
からの
正式な結婚
申し込みが
くるまでは
バリ中へ
根気よく
宣伝を
つづけねば
なりません
バンフレットや
にがお絵や
肖像画を
どっさり
ばらまいて...
マリー・アントワネットが
どんなにうっとりするほど
美しく愛らしいか
どんなに
すらっとして
気高いか
ほっそりした体つき
真珠色にかがやく肌
優雅なものごし
それに...
情深く
すなおな性格!
伝統あるフランスの
王太子妃は
ヨーロッパ広しといえど
オーストリアの星女
マリー・アントワネット
以外には
考えられない!!
ニッコ
ニコ...
このなまりあと
ものの
おてんば
娘!
ねえ...
いつか
本で
読みました
けど...
女の人は
ひとりの男の方を
おしたいするように
なって、そして
お嫁にいくもの
なのでしょう?
マリーは
なぜ...
顔も知らない
殿下のところへ
嫌いで
いかなくちゃ
ならないの?
マリーは...
恋というものも
してみたいし...
まだまだ
みんなと遊んで
いたいのに...
おねえさま
がたも
みんなそうで
ございました
よ
それよりも
フランス王妃に
なれば
どんな望みも
思いのまま
ですわ!
だれもが夢みる
ことですのに
それより
お庭にでて
お遊びなさい
ませ
あたたかくて
いい気持ちで
ございますよ
そうね...!
くよくよ考えても
しかたないんだわ
いつも
たのしいことだけを
考えてるように
しましょう!
ホホホ...
ー769年...
マリア・テレシアが
まちにまった
ルイ15世からの
正式な結婚申し込みが
ついにとどけられた!!
こんな大きな
結婚式は
もうずいぶん
長いこと見られ
なかったわねえ
マリー・
アントワネットは
14歳の
かがやくばかりの
乙女であった
なんたって
フランスと
オーストリアが
血縁をむすぶ
んですもの
いよいよ
来年の4月
だねえ...
準備だけで
1年なんて
あっという
間よね
ヨーロッパ中が
お祭りみたいに
わきかえるだろう
ね!
ああ
ワクワクするよ
ねえ!
歴史はじまって
以来の
超豪華なしたくを
するんだってえ
話だぜ
わしらにも
お布施が
あるかも
知らんで
ムフフフ...
目ん玉の
とびでるようなサッチ
金や銀や宝石や
布が毎日
宮殿にわんさか
はこばれてくってえ
うわさだぜ
いよいよ
あと2か月で
ございます
わね
へんし~ん
ゆいあげた
髪もよく
おにあいで
ほんとうに
王太子妃に
ふさわしく
高貴に
おなりですわ
わたしは..
オーストリア
女帝として...
ただわが国の
繁栄と安全のみを
考えて
この結婚をきめ
すすめてきたのだ
けど...
これで
よかったのだ
ろうか......?
あの
むじゃきで
おてんばで
遊び好きな
マリーに
とって...
もしかしたら
王冠や
王妃などという
地位は.....
ああ!!
たまらなく
不安だ...
あの
あまったれですなおで
考えることのきらいな
平凡な娘にとって
不幸をもたらす
ものにすぎないのでは
なぜかようっ
不吉な
予感が
して...
あ!
おかあさま
へっ
マリー...
これから
お別れまでの
2か月間
この母の部屋で
いっしょに生活
するのです
おかあ
さま...?
あなたの
せおう地位が
どれほど大変
なものか...
それをわたしは
あなたに
教えておかねば
なりません
わたしの
マリー...
2000万
フランス国民の
ために
あなたが
りっぱな女王に
なれるように..
あ...
こんなにはやく
手ばなすのじゃ
なかった...
1770年
4月...
フランスより
特使
デュ・ルフォール
ウィーンへ
花嫁出迎えの
ため
入来!
2台の
ガラスばりの
馬車をふくむ
6頭だての馬車
48台をつらねての
荘重な行列で
あった
いよいよ
マリー・アントワネット
にとって生涯最大の
運命をわける
祝典のはじまりである
夜を日についての
けんらん豪華な
祝祭バーティーの
つづく中で
そのうえなの
いつも
マリー・
アントワネットは
キリスト像を前に
おごそかに
オーストリアにおける
すべての権利を
放棄する儀式を
すませる
ついに懐かしい
祖国との
別れのときが
やってきた
そして4月21日
この日をかぎりに
マリー・
アントワネットは
祖国オーストリアを
はなれ
フランス王太子妃として
新しい運命にむかって
すすんでいくのである
わたしの
マリー
よく
きいて
ください
この心得書は
わたしからの
贈りものです
これを相談あいて
として
まい月21日には
かならず
読みかえすのです
おかあさま
ああ!
わたしの
愛する
マリー!
かならずですよ
約束して
ください
きっとあなたを
たすけてくれる
はずです
これを母だと思って
書いてあることを
よく守りなさい
おかあさま
...
おかあさま
ありがとう
ございます
おかあ
さま!!
さようなら
マリー!!
この母のことを
わすれないで!
よく勉強をして
自分をみがき
自分の欠点に
うちかっておくれ!!
遠くはなれて
いても
わたしは
最後の...
最後の息を
ひきとるまで
そのこと
だけが
あなたを
守る!
やめない...
でしょう..!!
あなたの身を
案ずることを
やめない
でしょう!!
マリーさま
ばんざい!!
ばんざい
!!
ばんざい
!!
マリーさま
ばんざあい
!!
さようなら
オーストリア!
わが祖国よ!
なつかしい
おかあさま
おにいさま!
永遠に...
シェーンブルンよ!
美しき泉
よ!!
わたしは...
フランス
王太子妃!
花嫁の
引渡しは
国境ケールと
ストラスブールに
またがる
ライン河の中洲に
つくられた離宮で
おこなわれた
マリーさま
いよいよ
お引渡しの
儀式が
はじまります
おめしかえを
なさいます
よう...
オーストリア製
のものは
すべて...
1本の糸すら
身につけて
いくことは
ゆるされ
ないのです
ぜんぶ
フランス製の
ものに
きがえて
いただきます
この服を...
ぬぐのです
か?
なにもかも...
すべて...ですか?
はい
レースも
リボンも
十字架も
指輪も...
下着もで
ございます
これからのサイトについては、
やれやれなの
わかったわけじゃないでしょーっオレのオレちゃんのお
いっ
ふふ
大きな
お引渡しの間
皇女
お別れです
われわれは
これから先へ
でることは
できません
どうか
おしあわせ
に...
あ...
ああ...
オーストリアの
すべてが..
去っていく...
去っていって
しまう.....!!
ただいまより
フランス王太子妃と
なられました
マリー・アントワ
ネットさまの
これからのおせわを
いたします
ノアイユ伯夫人
でございます
はじめまして
王太子妃殿下
おこしを
おまちして
おりました
国王陛下と
王太子殿下が
コンビエーヌで
おまちで
ございます
アントワ
ネット
さま!?
っ...う...
あああ...あ
え...え...
じゃじゃ、
あ
わあー
ノ...ノアイユ
伯夫人...
あ...あの
人は...
え?
あ...あ!
彼女は......
オスカル
フランソワジャレンエ...
ジャルジ
もうしましてね
«
ジャルジェ将軍の
娘で.....
女ながら
近衛連隊長つき
大尉をつとめて
おります
女...
!?
ふふ...!!
ベルサイユへの
道のとちゅう
コンビエーヌでは
フランス王家の
一族が
アントワネットの
行列をまち
うけていた
王太子妃殿下
ご到着に
ございます!
わい
お...お!!
これはまた
なんという
愛らしい
花嫁では
ないか!
まるで
フランス中に
幸福を
ふりまきにきた
天使の
ようだ!
ほっはっは
はじめまして
国王陛下には
ごきげん
うるわしく...
まあ!
おじいさま
さあ!
そこに
いるのが
そなたの夫
わたしの
孫のどうだ
王太子ルイだ
この人ったら...
なんてかたくるし
そうにまるで
でくのぼうのように
つったっている
のかしら
この人が
わたしの夫...?
この...どろんとした
目の...この人が...
これ!
なにをぼけっと
しておる!
花嫁どのに
あいさつの
キスを
せんか!
こんなもの
なの.....?
夫になる人からの
はじめてのキスを
うけても...
なんの胸の
ときめきもない
これから何十年も
生涯をともにする
夫なのに...
5月16日
ベルサイユ宮殿
の中にある
ルイは世寺院で
どの
6000人の
貴族・僧侶の
列席のもとにいった
正式の結婚式が
とりおこなわれた
そしていっこんじゃ
結婚証書
へのサイン
あっ
しみが..
おお!
こ...これは
不吉な...
ああ...!
さあさあ
よいではないか
紙にペンが
ひっかかった
だけだ
はは...
こんな美しい
幸福にみちた
王太子妃になんの
不吉なことが
あるというのだ
こうしてマリー・
アントワネットは
ついにフランス王家の
人となったのである!
ときに
アントワネットは
14歳であった
パリ...
かあさん!
みんなが
ベルサイユへ
でかけていくよ
ほら
!
きょうは宮殿の庭も
わたしたちに公開
されるんだって
いうよ!
花火は
きょうは
だめだよ
昼すぎから
雨だからね
花火も
でっかい
あがるん
だってさ!
すっごい
きれいな
王太子妃なん
だってねーっ
う...ん!
かあさん
てば!
噴水からは
お酒が溢れて
みんなで好き
に騒げるって
のにさ!
ジャンヌ!!
まったく
この子は
遊ぶことばっ
かり考えて!
ちっとは妹の
ロザリーを
みならったら
どうだね!?
うわっ
ふん!
おあいにく
さまたね
わたしは
ロザリー
みたいに
おとなしくは
できて
ないのさ
やれやれ
この子は
またその話
かい!
ねえ
かあさん
だってさあ!
バロア家と
いやあ...
わたしたちの
とうさんが
パロア家の
最後の貴族
だって
ほんとう
なの?
ふふ...
あのころ
かあさんは
おちぶれかかった
バロア家の
女中をしていてね
いまの
ブルボン王朝に
なるまえの
バロア王朝の
流れをくむ
貴族じゃないの
へへっ
その最後の
生きのこりが
わたしたちだ
なんてさ!
だんな
さまに
愛された
のさ
でも
おまえたちが
生まれてすぐ
だんなさまは
なくなられて...
それで
かわいそうな
バロア家も
おしまいだったのさ
世が世
なら...
たとえ
女中の娘でも
ベルサイユ宮殿に
暮らしているのは
わたしたちだった
がもしれないんだと
ねえ?
ロザリー
でも
ジャンヌなら
美人だから
まっ!
いやだ
ジャンヌったら
はは...
どこかの貴公子の
お目にとまって
玉のこしって
こともあるかもよ
そうよ!
このまま
こんな...
こんな
ブタ小屋みたいな
きたならしい
うす暗いところで
終わってたまるもんか!!
いやなこと!
わたしはこんな
掲きための薄汚い
やつらみたいには
ならないんだわ!
どんなことを
したって...
綿ビロードの
ドレスを着て
優雅なコルセットを
しめてさ...
おいしいものを
どっさりたべて
パーティーや
仮面舞踏会...
ほほう!
ハンス・
アクセルさま
お忘れで
ございまし
たか
、、
陽気のせいか
ずいぶん村々が
活気にみちて
いるじゃないか
フランス王太子と
オーストリア皇女
との婚礼が
あったので
ございます
おかげで
ヨーロッパ中が
お祭り
さわぎで...
ああ!
そうだった...
そうだったな!
オーストリア農女
マリー・アントワネット
か.....
ばあや!
もう時間だ
服はどう
した!?
はっ
いや
スウェーデンの
貴公子
ハンス・アクセル・
フォン・フェルゼン
は造兵学を
学ぶために
ドイツの大学へ
むかうところで
あった
なんと
ぶふっ
なんだ
そりゃあ
?
ドレスで
ございますよ
きょうは
王太子妃殿下が
はじめて
ベルサイユ宮へ
おでましに
なるって...
いったい
なにをもたもた
やってんだ!?
はーか!
そんなもの
このオスカル
さまが
着られるか
こ...
こんなもの
って...
どぼっ
お...
お嬢さまは
女なので
ございます
よ!
正真正銘の
女!
お嬢さま
だと?
父上に
きかれたら
首がとぶぞ
おい
アンドレ!!
支度はいいか
でかけるぞ!
おばあちゃん
いいかげんに
あきらめなよ
しつっこい
なあ!
このーっ!!
孫のおまえ
までが調子に
のってーっ
マリー・
アントワネット
さまは
オスカルさまと
おない年でもう
お嫁にこられたと
いうのに!
アントワネット
さま!
そのように
うごかれては
ちっとも下着が
ととのい
ません!
なにをしている
のです!
お支度は
まだできま
せんか!?
あ...
ノアイユ伯
夫人...
妃殿下は
ちっとも
じっと
なさってて
くださらない
のです
ああやって
そこら中を
走りまわって
いらっしゃる
もので...
アントワ
ネットさま
いいですか!?
ここはもう
オーストリアでは
ございませんの
ですよ!
ベルサイユでは
とくに礼儀や
洗練された作法が
重んじられて
います
あっ
それに
アントワネットさまは
もう自由に遊び
まわられたころの
子どもとはわけが
ちがうのです!
虫歯がみつ!
それなのに
王太子妃とも
あろうお方
が......!
でも
オーストリアでは
だいじな儀式や公式の
行事のとき以外は
おかあさまは
ゆったりした
服を着せて
自由にさわがせて
くださったわ
オーストリア
とフランス
ではちがい
ます!
わがフランスでは
体面や礼儀作法が
とてもきびしいの
ですからね!
ベルサイユ宮殿
へのはじめての
おめみえなの
ですから...
ムム...
厳粛な作法を
やぶったり
なさいません
ようご注意
くださいまし
このベルサイユでは
では
そうそう
それからひとつ
だいじなことを
ご注意もうし
あげておきますが
公式の場で
身分のひくい
親人のほうから
自分より身分の
高い婦人に声を
かけることは
ぜったい許されて
おりません
王妃さまが
お亡くなりの今は
王太子妃である
アントワネット
さまが見てい
宮廷でいちばん
地位の高い
女性ですから
どうぞ
宮廷の婦人たち
にことばを
おかけください
ませ
宮廷で
いちばん...
みんな、アントワ
ネットさまの
お声をまって
おりますから
地位の高い
女性...
だれも
わたしに声を
かけられる人は
いない...
あ...
なんてすてき
なの!
みんなが
わたしから
声を
かけられるのを
まっている...!
アントワネット
さまのつぎが
国王の
お嬢さま方で
よろしゅう
ございますね
きょうは~
国中の
貴族たちが
ぜんぶ
あつまって
いるのです
からくれ
ぐれも...
はいはいっっ
わかってます
エチケット
夫人!
エチケット
夫人!?
そ...それは
わたしのこと
ですか!?
あのひとは
王太子殿下の
叔母さまに
あたられる
アデレイドさま
ビクトワールさま
ソフィーさま
そのつぎか
王太子殿下の
妹姫の
エリザベスさま
...とまあ
こういう
順序で
ございます
きている
かしら..
きっと...
そうだわ
きっと...
ま...あ!
これは;
まるで夢を
見ている
ようですわ
いままで
このペルサイユに
こんなにも美しい
魅力的な貴婦人が
あらわれたことは
ありませんでしたわ
どうでしょう
あの軽やかな
優雅な足どり
なんて
ほっそりとして
いらっしゃるん
でしょう!
それに...
さすがは
オーストリア星女
としてお生まれに
なられただけ
あって...
ほんと...
気品にみちて
すこしも
びくついたり
なさらないし
気高いほど
誇りたかく
き然として
いらっしゃる
こと!
みんなが
わたしを
見ている...
わたしの姿に
目をみひらいて
おどろきの声を
あげている...
わたしの
美しさに
夢中で
見とれて
しまっている!
あ...
すばらしいわ...
すばらしい...!
この
ヨーロッパーの
フランス宮廷の...お
わたしは
いま...
ベルサイユの
女王!!
殿下
ほら!
メヌエット
ですわ!
もじ
もい
あ...
わ...わたしは
ダンスは
やらないの
だよ
すきに
踊って
おいで
な...なんなの
この女.....!?
なんてうまん
高慢ちきな
態度で
くじゃくみたいに
あつかましそうに
すごい
肉体美だけれど
下品な女!
このわたしを
あんなにじろじろ
見つめるなんて
いったい...
こんにちは
ごきげんいかが?
オスカル...
え...っと..
オスカル・
フランソワで
ございます
ほら!
アントワネット
さまが
オスカルに...
ま!
いちばん先に
お声を...
ああの...
あそこから
わたしを
じっと
見つめている
女の人は
ささ!
わたくしたちも
おそばへよって
お声をかけて
いただか
なくては
どういう”ェ”♡
身分の人
なのです
か?
デュ・バリー
伯夫人
王太子妃殿下が
お心をとめられる
ような女では
ございません
でも...
ああやって
あんなおおぜいの
とりまきに
かこまれて
まるで
じぶんこそ王妃と
いうような顔を
しているんだもの...
まーあ!
アントワ
ネット
さま!
ホホホ...
宮廷中の
貴婦人たちの
顔をごらんに
なりまして!?
ホッホッ
ホッホ...
デュ・バリー
伯夫人...
なぜみんな
あの女に
あんなに
へいこらして
いるの...
アントワ
ネット
さまが
いらっしゃる
まえは...
身分といい
美しさといい
みんな
さかだちしたって
あーあ!
スカッと
さわやか!
ノアイユ
伯夫人
みんな
われこそは
社交界の女王
宮廷のブリマ
プリマドンナと
心ひそかにきそい
あっていた
ものですのに!
ほんものの
女王である
アントワネットさまには
かないませんもの
王太子殿下は
ぜんぜんダンスも
なさらないし
女の人たちと
おしゃべりも
なさらないけど
王太子さまは
おとなしい
内気な方
なのです
読書!?
なにが
いったい
お好きなの
かしら?
読書が
お好きで..
まあ!
わたし
本なんて
だいきらい!
それから
狩猟と
そしてどうよ
錠前づくりが
ご趣味です
じょ...
錠前.....!?
あ...あの...
か...かじ場で
トンテンカンデン
やってつくる...?
と...
とびらに
つける...
あの鍵...
...!?
アデレイド
さま
ビクトワール
さま
ソフィーさま
おでましで
ござい
ます
まあ!
おばさまがた
ようこそ!
おいアン
ドレ!
いよいよ
3人の
オールドミスの
おば君たちが
ご登場だ
なに?
アントワネット
どのの部屋に
か?
ふふ...
こいつあ
おもしろい
ことに
なりそうだ
ん
マリー・
アントワネットに
デュ・バリーか
.....
国王陛下の
おめかけ!?
あ...あの
デュ・バリー
伯夫人が...
!?
そうです!
だいたい
あの女はね
もとはといえば
下層階級の
生まれで.....
つまり
きたならしい
下町で
娼婦をして
いたのよ
娼婦って
...?
男たちに
お金でからだを
売る売春場の
ことです
そ...そんな
いやしい女が
どうして
この宮廷に
オーストリアの
おかあさまは
そういう種類の
女たちには
ムチをくれて
感化院へほうり
こんでいたのに...!
あの女はね
あるとき
自分の情夫に
お金をださせて
名門貴族の
デュ・バリー伯爵
と
まんまと
養類だけの結婚
をして
その翌日には
伯爵を毒殺して
しまったのです
それで
伯爵夫人になった
あの女は
宮廷に出入り
するようになった
というわけなの
国王のめかけに
なってからは...
大臣をかってに
任命したり
お城をつくらせたり
廷臣からの
わいろをうけとったり...
ぜいたくの
しほうだい!
国王は
娘である
わたしたちの
反対なんか
おかまいなし
で
すっかり
あの女の
いいなり
だから
もう
みんなが
あの女の
ごきげんとり
で...
まるで
半分は公認の
女王として
ふるまって
いるのですよ!
なんて...
そう!
なんて
ずうずう
しい女!!
そうなの
よ!
それで
あんな目で
わたしを
じろじろ...
でもね
いくらあの女が
権力があって
あなたに
ライバル意識を
もやしたって
正真正銘の
王族で
未来の王妃の
あなたには
かないっこない
わ!
へへへっ
いいこと!?
せいぜい無視して
おやりなさい!
どうだった
ね?
きょうの
パーティー
は
どうやら
アントワネットは
たった一度で
全宮廷を
とりこにして
しまったらしいな
ちらー・
わたくしは
あんまり
すかない
ですわ!
あんな
なまいきそうな
赤毛のちびは
おいおい
アントワネット
は赤毛では
ないよ
きれいな
ブロンド...
このわたしの
髪にくらべたら
あんなの
赤毛みたいな
もんです!!
また
ドレスを
注文しな
くては
こんどは
あんなかんな
赤毛のちびに
ぜったい負け
ないような
すごいのを!
わたしはいままで
いつも...
いちばん美しい
馬車を持ち
いちばん大きな
タイヤモンドを
身につけ
貴婦人たちの
最前列にすわって
全宮廷の貴族に
とりまかれていたわ
だってわたしにはありあまるような権力があるんだもの!
だって
わたしには
ありあまるような
権力があるんだもの!
それを...
あんな
外国からきた
ちっぽけなおませ娘に
負けたりして
たまるものか!
この...
お...おまえは
なんてことを
してくれるん
だい!?
いくら
貧しくたってね
人さまのものに
手をつけるなんて
わたしゃもう
なさけなくて
なんだい!
まい日ろくな
ものたべさせ
ないでさ!
ばっかし
いってたら
きれいごとよっ、
飢え死にする
のがオチさ!
ジャンヌ
!?
ジャンヌ!!
どこへいくの
よ!?
ジャンヌ
ねえさん
!!
カラ
カラ
わりあいじゃ
いい馬車だ
やってみる
価値
あるかも...
おやさしい
おくさま
バロア家の
血をひくこの
あわれな孤児に
どうか
おめぐみを...
バロア家
?
あ!じゃ
馬車を
とめて!
あ...あなた
それは
ほんとう
なの!?
バロア家
ええ
おくさま
じつは...
では...
いまのブルボン王家に
まさるともおとらない
バロア家の...
この娘が
王家の血すじを
ひいているというの...!?
おお!!
なんということ!!
国王のまつえいとも
あろう娘が...!!
あなた!
わたしは
フーレンビリエ
候爵夫人
たしか
孤児だって
いったわね
わたしの屋敷へ
いらっしゃい!
こんな
正しい血すじの
あなたを
ほうっては
おけないわ
え!?
ええ!
もちろん
教育も
うけさせて
あげます
ゆ...夢じゃ
ないの!?
金貨1枚でも
ラッキーだと
思ってたのにさ。
い...いまこそ
わたしが長いこと
まっていたときだわ!!
このチャンスを
のがしてなるものか!!
わたしののぞんでいた夢に
1歩近づくんだ!
ま...まってて!
なかまたちに
お別れして
きます!
まってて
ください
ね!
ジャンヌ!!
ああジャンヌ
いったいどこへ
いってたのよ!?
心配してたのよ
ロザリー
かあさん
お別れよ!
きいて
ちょうだい!
侯爵夫人がね
わたしを
ひきとって
くださるの
な...
なんだって!?
おまえ...
ひとりでここを
でていくの!?
ばかなことを!!
ああ
そうだよ!
こんなチャンス
2度とあるもん
じゃないわ
こんなとこで
一生終わりたく
ないからね
ジャンヌ!!
ああうそだわ!
あなたがいって
しまうなんて!
ジャンヌ!
考えなおして
ジャンヌ
かえって
おくれー
っ!!
ロザリーあんたも
はやいとこ
考えたほうが
いいわよ
このまま
かあさんの
ように
おいぼれない
うちにね!
まって
おくれ
ジャンヌ!!
ジャンヌ!!
かあさんを
すてて
しまうの!?
ジャンヌ
ひどい!!
お...おおお
ロザリー...
ジャンヌが
ジャンヌが
!!
ほら!
オスカル・
フランソワ
ま!
きょうはまた
いっそう
すてきな
いでたちで
オスカル
さまよ
冷たいわ
ねえ!
わたしたちと
けっして
おしゃべり
なんかして
くれないん
ですもの
ああ!
あれでほんとの
男性だったら
おしかけてでも
おくさまに
なっちゃうわ!
ふふ
わたしは
アンドレの
ほうか...
きゃっ!
こっち
見たわ!
なによあなた
アンドレのほうが
いいって...
あ...こんばん
今晩もう
ねむれないわ
きっと!
ところできょうは
アントワネット
さまはどなたに
まっ先に
お声をかけて
くださるかしら
ふふ...
そりゃあ
きっと...
ほら!
やっぱり...
こんにちは!
オスカル
フランソワ
まあ!!
きょうの
アントワネットさまの
お美しいことったら!?
まばゆいよう
ですことね!
あなたは
ちっとも
なんていい
センスをして
いらっしゃるの
かしら...
ほかの人のように
おしゃべりしたり
踊ったり
しないん
ですね
こんど
わたしの
午後のサロンに
いらっしゃいな
せっかくながら
アントワネットさま
オスカルは
女とはいえ
軍人でございます
わたしの
すべきことは
おしゃべりや
ダンスではなく
フランスと王家を
お守りすること
だけで
ございます
おいっ
オスカル!
おまえなんだって
王太子妃の
おさそいを
ことわったんだ!?
このばか!
とんま!
どじ!
アンドレ!
きさまも宮廷の
だらくした
貴族どもと
おなじ考えか!?
王太子妃の
サロンに
よばれるなんて
出世まちがいなし
だってのに!
おまえが
ばあやの孫で
なかったら
よこっつら
はりたおす
ところだ!!
あの
赤毛のちび
.....
このまえは
このわたしが
どういう地位に
あるか知らなかった
ろうから.....
わたしに声を
かけるのを
忘れてたみたい
だけど...
ふふ...きょうは...
みなさん
こんにちは
ごきげん
いかが?
ごきげん
いかがデュ・バリー
バリー
夫人
まあ!
きょうも
相変わらず
お美しい
ですわ!
みなさん!
こちらへ
いらっ
しゃい
ません!
おばさま
たちとお話
しましょうよ
午後から
みんなで
馬の遠のり
をしようと
相談して
いるのよ
あ...あの
デュ・
バリー夫人
では
失礼しますわ
あ...
わ...わたし
も.....
遠のりには
デュ・バリー
夫人も、っっ
いらっしゃるん
でしょう?
ほほほ...
ほら!
デュ・バリー
伯夫人が...
え?
なんです
って?
そういえば
アントワネット
さまは
まだいちども
デュ・
バリー夫人に
お声をおかけに
なりませんわね
あら!
そういえば
そうね
そうだわ
いくら
国王陛下の
ご窟愛を
うけていて
宮廷一の権力が
ある
デュ・バリー
夫人でも
身分からいえば
けっして高くは
ありませんもの
王太子妃殿下に
自分のほうから
お声をかける
なんてことは
こんりんざい
できません
ものね!
こ...この
あまったれの
オーストリア
娘...!!
まさか.....まさが
このわたしを
みんなのまえで
公然と無視しよう
なんていうつもりで
いるんじゃ......!?
止めってないってーーっ
つまらんことを
いうものじゃない
アントワネットが
わざとおまえに
だけまだ声を
かけないって?
その15の
子どもが
王太子妃だと
いうだけで
わたしは頭をさげて
おことばのかかる
のをまたなくちゃ
ならないんですわ!
誤解だよ
誤解!
あいてはまだ
やっと15歳の
子どもじゃ
ないか
宮廷中が
陰でなんと
いっているか
ごぞんじ
ですの...!?
国王の
ご龍愛を
いいことに
いばりちらしても
生まれやそだちの
いやしさは
がくせませんわ
もともと
平民のそれも
娼婦出身の
めかけなんぞが
堂々と宮廷に
顔をだせる
こと自体が
おかしいのですよ
れっきとした
オーストリア星女
としてお生まれになった
王太子妃が
きっと
そうだわ...
あの赤毛のちびは
このわたしに
挑戦する気だ...
あんな女に
お声をかけられ
ないのは
とうぜんでしょう
国王さえいいなりに
うごかせる
このわたしに
ずうずうしくも...!!
こんにちは
きょうも
いいお天気
ですことね
オルレアン
公夫人
モーロワ伯夫人
モールパ伯夫人
ごきげんいかが
アントワネット
さま
ロベール侯夫人
ランバール候夫人
午後から公園の
森へ散歩に
でましょうよ
まあすてきですわ
ベルサイユ公園は
いまがいちばん美しい
ときですもの
王太子殿下も
ごいっしょされ
ますのよ
ローザン夫人
マントノン夫人
こん夜のカルタ遊びの
会にはきっときて
くださいね
まあ!
なんて光栄
でしょう!
ニコースが
ニコーっか
ま!
かわいいとこが
あるじゃないの
この
鼻ったれ娘
わたしに声を
かけるのを
わすれてたことに
気づいたんだわ
ふ...ふ......!!
こんにちは
ジュール
伯夫人
アントワ
ネット
さま!
あ.....
...
わな
こ..この...!
ひそ
どうやら
王太子妃は
デュ・バリー夫人を
完全に無視なさる
おつもりらしい
そうなると
アントワネット
さまが
女王になられる
わけだし...
ど...
どうした
もの
だろうな
...
デュ・バリー
夫人のうしろにはなんといって
なんといっても
国王がついて
おられるし...
それにしても
オスカル
フランソワは
どちらに
つくのかしら?
しかし...
国王陛下が
なくなられたら
王太子殿下が
即位されて...
そりゃ
つきあいの長い
デュ・バリー夫人
のほうに...
しかし
なんてったって
現在はデュ...
バリー夫人の
権力が...
あらあ!
彼女はいいよだ
由緒正しい
ジャルジェ家
の出身です
ものそんな!
おべっか
つかいの
貴族どもが
あわてふためいて
さわいでるぞ
アンドレ
マリー・
アントワネットか
デュ・バリーか
どっちにつくのが
自分のとくに
なるか...
オスカルは
どちらにも
つかん!
ふ.....
このおもしろい
女の一騎うちを
ゆっくりと観戦
させていただくさ
オーストリア
シェーンブルン宮殿
およびで
ございますか
陛下
ああ
メルシー伯
もっと
こちらへ
メルシー伯
わたくしは..
フランスへ嫁がせた
アントワネット
のことが
どうしても心にかかって
しかたないのです
人がよくて
ふかく考えることが
大きらいだし
あの娘は
あのとおり
かわいらしくて
どんな人間をも
とりこにせずには
おかない魅力と
陽気さを
もっていますが...
だいいちまだ
若すぎてとても
自分で自分を
おさえてなど
いけません...
外国の宮廷で
ちやはやあまやがされて
アントワネットが
だめな人間になって
しまいはしないか
自分の地位を
いいことに
勉強をほったらかし
にして
遊びほうけている
のじゃないか...と
メルシー伯
どうかこの
マリア・テレジアの
使いとして
フランス宮廷にいき
わたしのかわりに
あの娘を指導しては
くれませんか
陛下の
おたのみと
あれば
陛下!
パリ
このメルシー伯どんなことでもすべてを犠牲に
すべてを犠牲に
してお役に
たつつもりで
おります
があさん!
いやよねえ
最近は
パンを1斤
買うんでも
パン屋の前で
長い行列
なんだもの
かあさん
また
ジャンヌねえ
さんのこと
考えてたの?
ジャンヌは
いつも...
貴族のような
生活を夢みて
ここから
ぬけたがって
いたわ...
ほんとに
ふしぎな
くらい
え?
あ...あ
いや...
ときどきとても
わたしとジャンヌは
姉妹だなんて
思えないな...って
考えたことも
あったわ
しかたないわ...
それがジャンヌに
とっていちばん
幸せな道なら...
ジャンヌって
こんなとこには
もったいないくらい
きれいだったもの
ふふ...
やっぱり
ジャンヌって
あたしとは
どこかちがうのね
な...なにを
いうのよロザリー!!
...?
ジャンヌより
おまえのほうこそ
お...おまえこそ
かあさん
?
どうしたの?
があさんたら
ふふ...
ほらほら
ベッドに
はいって!
いまスープを
あっためるわ
おとなりの
おばさんに
じゃがいも
いただいたの
フーレンビリエ
侯爵邸.....
ブーレン
ビリエ夫人が
きれいな
お嬢さんを
ひきとられ
たんですって?
なんでも
名門バロア家の
血をひく娘さん
なのですってね?
まあ!
早くお目に
かかりたいわ
えーえ!
いなかのお城に
ひきこもって
いましたのをね
ここ...
パリで
勉強やお作法を
ならわせようと
思いましてね
どうなの
ジャンヌ
したくは
よくって
まーあ!
さすがに
血はあらそえ
ないこと!
みごとな
もんですよ
ジャンヌ
ぅっ
いいわね
ことばづかいに
気をつけて
しとやかに
してるのよ
わたしの
遠縁てことに
してあるから
わすれないでね
え...え!
なんだってするわ!
わたしの夢が
1歩1歩
かなうんだもの!
どんなことだって
がんばってみせる
あの...
ブーレン
ビリエ夫人
しっ
おばさまと
およびな
さい!
むずかしい作法も
おぼえるし...
勉強や乗馬や
ダンスやビアノだって...
わたしの夢の
ためならば...!!
はい
おばさま
ベルサイユ
宮殿には
いつつれてって
いただけるの?
まあー
この子は
のぞみが
高いこと!
でもね
残念ながら
うちはまだ
宮廷へのでいりを
ゆるされては
いないのよ
そ...うか...
貴族にも
いろいろ
あるんだ...
この夫人.....
人はよさそうだけど...
ここはそんなたいした
家柄じゃないのね...
わたし有頂天に
なってたけど...
わたしの
のぞみはもっと
ずっと高いわ!!
いまに
ベルサイユ宮に
住んで
王妃のような
暮らしを
するんだ
そのためには
たとえ
どんなことだって
するわ!
ええ!
どんなこと
でも!!
まあッ!!
メルシー伯
キャッ
キャッ
おかあさまは
お元気?
グルック先生
は?
なつかしいわ
!
なつかしいわ
なつかしいわ
!
アントワネット
さま
おなつかしゅう
ございます
わたくしは
母君の
マリア・テレジア
さまのお使いとして
この宮廷に
まいりました
ああ!
オーストリアは
どんなようす!?
まい日フランス語
ばかりしゃべって
いるのでとても
きゅうくつだったの
...という
ことは...
いいですか
勉強を
なまけては
いけません
読書を
ずるけては
いけませんよ
たっ
たっ
たっ
たっ
まい月21日には
かならず
わたしのあげた
心得書を読み
かえすのですよ
あ...あのね
ちょっと
しばらくごた
ごたしてて
ほんとよ!
けっして
なまけてた
わけじゃ
ないの
やれやれ
やっぱり!
どうです
美しい庭園
でしょう
わたしの
結婚式のときには
この庭が下々の
庶民たちにも
開放されたのよ
ところで
アントワ
ネットさま
ああ
王太子さまは
またかじ場に
こもって
袋前づくりなの
王太子殿下の
お姿が
見えません
カ...?
あれは
たしか.....
たしかデュ・バリーとかいう...
国王の愛人と
きいたが
はて
アントワネットさまは
あまりお気に
めきぬごようす
もう何か月にも
なるのに...
まだ
ひとことも
ほ......
さすがの
デュ・バリー夫人も
わなわなふるえて
まっ青!
よし!
わしゃあ
アントワネット
さまのほうに
かけるぞ
なにを!それなら
わしはデュ・
バリー夫人のほうに
SOOOリーブルかける
こ...これは...!
では
アントワネットさまは
国王陛下の愛人に
まっ正面から...!?
なんと!!
そんなことをして
もし、国王のお怒りを
かったりしたら...
あっちのほう
だわ!
きゃー!
どなたが
あのキツネを
射とめたの
かしら!?
ふはーっ
またオスカルに
先をこされた
ようだな
いえ
王太子殿下の
たまのほうが
致命傷だった
のでございます
ほら
オスカルが
王太子さま
まあ!
じゃやっぱり
オスカルは
アントワネット
さまのほうに??
ああ
すてきだわ
オスカル
オスカルを
こっちの味方に
つけることが
できたら...
そうしたら
宮廷の貴導人たちも
きっとわたしの
ほうに...
そうだ
それには
オスカルの
母親を.....
そうだわ...!
オスカルを...
さあ
殿方はどうぞ
ご退出ください
ませ
ただいまより
アントワネットさま
お召しかえの
お時間でございます
さあ
お急ぎください
ませ
お昼のミサが
はじまって
しまいます
王太子さまも
お待ちで
ございますよ
お化粧...
お食事...
蒼がえ...
ミサ...
夜会.....
みんなふんな
しきたりや
作法にしたがって
おおぜいの人たちの
まえで.....
これじゃ
まるで
がんじがらめだわ
自由に
遊びたい..!!
自由に遊びたい...!!
好きなだけ
そこらじゅうを
走りまわって
わらって
わらって
そして
おしゃべりして...
あ.....
昔のように...
おばさま...!?
あの
あのハレンチなデュ・バリー
が...
た...たいへん
ですよ!
あの女が...
オスカル・
フランソワの母親を
自分付きの
待女にしたいと
国王陛下に
ねがいでたのよ!
オスカル・
フランソワの
母親を.....!?
デュ・バリー夫人
付きの侍女に...!?
わかってるわ
あの売女は
オスカルの人気に
目をつけたのよ
正式には
なんの地位も
ないくせに
いよいよあたしの
王太子妃
である
あなたに
挑戦してくる
気なんだわ!
もちろん...
そんな小細工
をしたって
貴婦人のなかで
最高の地位にある
あなたに勝つ
わけはないけれど
でもね!
わたしたちのかわいい
アントワネットが
あんな女になめられる
なんてがまん
なりませんよ!
ひゃあー
そ!
わかり
ましたわ!
おばさま方
オスカル・
フランソワ・
ド・ジャルジェ
オスカル・
フランソワの母親を
このわたし付きの
待女にしてくださる
よう、王太子さまに
おねがいします
それも
首席侍女の
待遇で!
ホッ
「のこんの!
母上を!?
オ..オスカル
さま...
お嬢さま
どうかお気を
おしずめ
あそばして...
ええ!
デュ・バリー夫人か
アントワネット
さまかどちらかの
おそば付きの
侍女にと...
たったいま...
だまれっ
!!
おじょう...
あ...と!
オスカル
さま
理由は
わかっている!
おいオスカル
おちつけよ!
いずれ選ばにゃ
ならん
ことなんだ
デュ・バリーか
王太子妃か...
このオスカルに
選ばせようと
いうのか...!
でもまあ
長い目で
見ればだ
な...
アンドレ!!
お...おまえ
お嬢さまに
なんて口きいて
るんだい!?
身分を
わすれた!
の!?
だれの
おかげで
宮廷に出入り
できると思って
いるのさ!
わあーっ
おばあちゃん
カんにん!
だ!!
母上を
あんな宮廷の
あらそいに
まきこむのは
いやだ!!
オスカル
これは...
国王陛下の
ご命令なのだ
デュ・バリー夫人か
アントワネット
さまか
いずれにお仕え
もうしあげるかは
オスカル
わたしのこと
ならしんせい
心配ないのよ
あなたが
いいと思う
方のおそばに
このジャルジェ家
の自由......との
寛大なお申し出
なのだ
きゅ...
いずれについても
母上がつらい
思いをされるのは
おなじこと...
たとえいまは自宅一つ猫、
宮廷一の強い権力が
あるとはいえ...
どうしても
どちらかを
選ばねば
ならんとすれ
ば.....
生まれも
いやしく
肉体で国王を
思いのままに
あやつるような
デュ・バリー夫人
よりは...
わかりました
父上.....
せめてさま
正統な
王位継承者の妃で
血すじの正しい
アントワネットどの...
うむ!
すばらしい
ですわ
奥さま!ちゃんとは
首席侍女として
おそばにつける
なんて!
では.....
ではどうか
王太子妃
殿下の
おそばに...
母上...
そのかわり
このオスカル
かならずいつも
どこからか母上を
お守りもうしあげます
翌日の
ベルサイユ宮殿は
マリー・
アントワネットの
デュ・バリー夫人に
対する
第1番目の
勝利のうわさで
わきかえった
くやしい
くやしい!
あ...あの
オスカルの
青二才までが
このわたしに
たてつくなど
とは...
おのれ!
あの母親
ただじゃおかない
んだから
見ているがいい!
くやしいい
いっ!!
陛下
なんとかして
ください
まし!
あーあ!
またその話か!
わたしはもう
めんどうなことは
ごめんなのだよ
いいえ!
このわたしが
あんな鼻ったれ娘に
はずかしめられっ
ぱなしにされたり
あの赤毛のちびから
ことはをかけられない
うちはわたくしは
宮廷で存在を
正当に認められて
いないことに
なります
たのむから
ほっといてくれないか
宝石でも馬車でも
好きなものは
手にいれたじゃないか
えーえ!
わたくしは
侮辱されて
いるのです
全宮廷の
ものわらいの
種にされたりと
いうわけには
まいりません!
これは
陛下への
侮辱でも
ありますわ
陛下は
わたくしを
お守りくだ
さる義務が
おありです!
陛下!
あああぁ
わかったよ!
クソ!
ううんね、
ありすがいい
ああこれ!
アントワネット付きの
ノアイユ伯夫人を
予の部屋に!
はっ陛下
たいへんで
ございます!
たったいま国王道
国王陛下
ご自身から
わたくしに
...
アントワネットさまの
デュ・バリー夫人に
対するおふるまい
について
ご注意と
ご警告がありました!!
ほほ...ん!!
心配は
いりませんよ
どうせあの女が
陛下に泣き
ついたにきま
ってます
国王陛下が...!?
こ...これは
たいへん
なことになった!
フランスと
オーストリアの
同盟の危機!
同盟の
危機...!!
これは...!?
デュ・バリー...
ええ名まえだけは
きいていますが
マリーが...
メルシー伯からの
意使で
ございます
事態はよほど
悪いものと
思われます
あの子が
そんな
さわぎ
を.....!?
すぐ
マリア・
テレジアどの
みずから
アントワネット
さまにてびる
お手紙を......
それは...
あ...
どうしたら
いいのだろう...
そんなことは
できるわけが
ない...
お金でからだを
男に売ったり
男のめかけになる
などというのは
女としてもっとも
いやしいことだと
教えてきたのに...
わたしは
あの娘に...
かといって
フランス国王に
さからうような
ことは
できる
わけがない...
じぶんの娘に
そういう種類の
女である
デュ・バリー大人に
対する礼儀を
おしえるなんて...!
カウニッツ
マリーへの
手紙は
あなたが
かいて
ください
陛下
あの娘の態度が
政治的に
まずいということを
総理大臣
カウニッツの訓令
という形にして...
...という
ような
わけで...
国王陛下が
交際される
人に対して侮辱
をあたえる
ということは
はいはい
メルシー伯
もうよく
わかりまし
た
国王陛下
ご自身をも
侮辱することに
なりますからして
なんでも
オーストリアの
総理大臣からアントワ
ネットさまに
お手紙があったの
ですってね
なにさ!
あのカウニッツの
かりがりじじい!
勝手に好きなだけ
しゃべっていればいいわ
それにしても
どうして、こんなことが
オーストリアに知れて
しまったのかしらね...
まあ!
それじゃ
アントワネット
さまは
とうとう説得
されて...
ほら!
アントワ
ネットさまの
おそばに
オスカルさまが
ぴったりついて...
そりゃあ
おかあさまが
心配ですもの
デュ・
バリー夫人が
おこったら
なにをなさるか
わかりませんものね:
まあ!
きょうはまた
デュ・
バリー夫人の
ごきげんの
いいこと!
じゃ
やっぱり
あの手紙は
もしかしたら
きょう
アントワネット
さまは
デュ・バリー
夫人に
お声をおかけに
なるかも...わ
ふん...
わたしは..
なんの地位もない
下町の平民に
生まれて...
とうとう
伯爵夫人という
称号も
手にいれたし...
国王の窮愛も
すべての権力も
宝石やドレスや
お城や...
のぞむものは
なにもかも
手にいれたわ
このうえは
なんとしても
王太子妃に
ことばを
かけさせて
わたしの力が
王太子妃よりも
上だということを
みとめさせ
なくては...!
いけない...!
たとえ
国王陛下の
ご命令でも
あの女に
ことばを
かければ
売春婦や
めかけが堂々と
この宮廷に
出入りするのを
わたしが
みとめた
ことになる...!
そんなことは
絶対
ゆるされ
ないわ!
もうこれは
おばさまたちに
いわれたからでも
なんでもなくて...
わたし自身の
問題...
そう...!!
わたし自身の
王太子妃としての
尊厳と誇りの
問題なのだわ!
あの女への
軽べつの
ありったけを
こめて...!
ひとことも
話しかけまい!
ぎゅっと唇を
ひきしめて...
わたしは
正統な
フランス
王太子妃
なのだから!!
もう
がまんが
なり
ません!!
オスカルの父親の
ジャルジェ将軍を
クビにして母親を
バスティーユ牢獄に
おくって
くださいな!
あのちびに
味方する者は
ぜんぶ追放
処分にして
やるウッ!!
なんという
ことだ.....!
あのちっぽけな
孫嫁が...
このわしの
フランス国王
ルイ15世の
命令を公然と
無視しておる!!
だれひとりいままで
わしの命令に
さからったこととて
なくみんな
ひとかけらでも
わしの好意を
得んがために一生懸命
だというのに...
フランス国王
ルイ15世の
命令を...!!
メルシー伯
フランス
外務省からの
通達で
ございます
外務省から..
デュ・バリー夫人の
私室に...!?
国王の公式の
謁見室ではなく
デュ・バリー夫人の
私室に...
協議したいことが
あるのでデュ・
バリー夫人の
私室におでましを
とのことです
で...では...
アントワネット
さまのことで
ついに....!?
メルシー伯
いそがしい
ところをご足労
であった
あ...いいえ
国王陛下には
あいかわらず
ご健康のごようす
オーストリアの
女帝陛下も
ごきげん
うるわしく
おすごしのこと
でしょうね
ところで
なんですか
世間では...
そらきた!
こんなところへ
わざわざ足を
おはこびくださって
おそれいります
メルシー伯
このわたくしが
あのお美しく
かわいらしい
王太子妃殿下に
対して
まるでなにか
敵意でもいだいて
いるかのように
うわさして
わたしを白い目で
見ておりますよう
ですけど...
とんでもない
ことですわ!
アントワネット
さまはそんな中傷を
まにうけてカ
いまだにわたくしに
おことばをおかけ
くださいませんけど
...
考えても
ごらんなさいまし
このわたくしこそ
いい被害者で
ございます
わよ!
ねえ?
メルシー伯
は...
はあ...
その...
なんだな
王太子妃は
このところ
またいちだんと
愛らしさが
まして
あー...
わしの孫も
すっかり
ほれこんで
しまっている
ようすじゃが...
どうも
若さのせいか
すこし活発
すぎ
そういうことは
フランスと
オーストリアの
ために
ならないし
態度をあらためた
ほうが
身の安全だと
いうことを
自分が思って
いることを
少々自由に態度に
あらわしすぎる
ような気がするが
そなたの
ほうから
わからせて
やっては
くれないか?
さすがにあの
色気じじいでも
孫嫁にむかって
じぶんの愛人と
なかよくしろと
命ずるのは
かかか...
気はずかしいと
みえる...
しかし
これはえらい
ことになった!
なんとしてでも
アントワネット
さまを説得せねば
マリー
さま!
いやです
いやです
いやです
ぜったい
に
いや!!
アントワネット
さまは
国王の力の
おそろしさを
ごぞんじない
のです!
うるさいわね!!
そんなにデュ・
バリー夫人と
話したければ
あなたがひとりで
お話しすれば
いいでしょ!?
あは...
フランス宮廷の
おそろしさを
...
ところで
アントワ
ネット
さま...
ニンマリ・
いままで
この宮廷で
国王にさからったり
都合の悪い人物を
かたづけてしまうのに
つかった毒薬のことを
ごぞんじですかな?
それは
味もにおいもなく...
ある日そーっと
食卓にもられる...
そのききめは絶大!
しかもあとがのこらない
ときていて...
さむざむ...
アントワネット
さまおひとりが
かたづけられる
のならば
まだいいほう...
そう
なると
オースト
リア・
フランス同盟は
どうなります
?
国王はことと
しだいによっては
オーストリアとの
戦争も辞さない
ほどのご立腹!
母帝
マリア・テレジア
さまが生涯最大の
力をそそぎこんで
成立した
この同盟は!?
もし
同盟がやぶれ
オーストリアと
フランスが戦争を
するような
ことになれば...
それはすべて
アントワネットさま
あなたの責任で
ございますぞ!!
わ...かり
ました...
約束します
...
あ...あの女に
いちどだけなら
...ことはを
かけましょう
でも
でも!!
これは
わたしの
ありません!!
意志では
ただただ
崇拝し敬愛する
オーストリアの
おかあさまの
ため.....
おかあさまの
ためです!!
メルシー伯
いいですね!?
1771年7月
ベルサイユ宮殿は
屋根うら部屋
召使い部屋の
すみずみに
いたるまで
興奮と期待と
ざわめきで
むせかえる
ばかりである
今夜の
アントワ
ネットさまの
バーティーの
ときですっ
てよ
まあアントワネット
さまが
デュ・バリー夫人に
とうとう屈服
なされるのねえ!
さすがのアントワ
ネットさまも
国王の力のまえには
ついに頭をさげざるを
えなかったか...
くやしいわ
くやしいわ
!?
げーっ
もう
今夜のことは
ぜんぶできてて
しゃべるセリフも
きまってるん
ですって
まずカルタ遊びが
終わるころには
メルシー伯が
デュ・バリー夫人
のそばによって
話を
はじめる
のさ
そこへ
ぐうぜんという
ふうにして
王太子妃殿下が
おでましになる
ふむふむ
そうして
メルシー伯に
あいさつして
話しかける
そのついでに
わたくしのとなりの
デュ・バリー夫人に
ちょっと
話しかければ
よいのです
よろしい
ですかな?
話しかける
ことばは
わかっています
もう4回も
うちあわせを
したじゃ
ありませんか!
では...
今夜のせい...
ご成功を
お祈りしますぞ
アントワネット
さま
しーっ
あ!
ほらほら
メルシー伯が
デュ・バリー
夫人のそばに
いったぞ!
しーっ
そら!
アントワ
ネットさまの
おでました!
こんばんは
ずいぶん
にぎやかな
パーティーに
なりました
こと!
こんばんは
どうぞ
ゆっくりして
してください
ね
こんばんは
こ...ん
ばんは...
メルシー
伯
アデレイド
さまだわ
!
さあ!
もう退出の
お時間です
ビクトワールの
お部屋で
王陛下を
おまちしなく
ては!
あ...
あの...
ア...
アントワネット
さま!!
いつでの
やったな!
あ...
あ...
あのオールドミスの
おば君たちが
だまって指を
くわえているわけが
あるものが!
あ...
デュ・バリー
夫人が
まちぼうけを
くらったとさ!
ワッハハハ..
ヒハ
ーッヒッヒ...
もうちょっとって
ところで
アデレイドさまが
王太子妃を
さらっていって
まあ!
あははは...
デュ・バリ・
夫人の
そのときの顔っ
たら!
あはは
デュ・
バリー夫人は
けっきょく
すっぽかされ
ちまったわけ!
まあ!
ゆでだこ
みたいに
まっかに
なって!
もう
がまん
ならん!!
戦争じゃ!!
オーストリア・
フランス同盟は
やぶれた!!
フランス国王を
ばかにすれば
どういうめに
あうか思い
知らせて
やろう!!
オーストリア・
フランス同盟は
やぶれた!!
ヨーロッパが
戦場になる
!!
メルシー伯!!
もういちど
チャンスを
くださるように
国王陛下に
おねがいして!
あけて
ーフフ2年ぶった
1月1日
こんどこそは
きっと...
ええ!!
きっと話します
だから.....!!
なんとマリー・
アントワネットが
フランス王太子妃
としてベルサイユに
きてからおよそ
2年もたって
はじめて
デュ・バリー
夫人はさしょ
最初のことばを
かけてもらった
のである!
貴婦人たちが
新年のあいさつの
ために
アントワネットの
前に順々に
歩みよったとき
であった
きょうは...
ベ...ルサイユは
たいへんな
人ですこと!
わー
おおーおお!
アントワ
ネットや
こっちへ
おいで
アントワネット
さま!!
きょうは
ベルサイユは
たいへんな人
ですこと...
きょうは
ベルサイユは
たいへんな人
ですこと...
きょうは...
ベ..ルサイ...ユ..
は...
負..けた...!!
王太子妃が...
王太子妃が
娼婦にやぶれた...
あ...あ...
あ...
オ...
オスカル.....
アントワ
ネットさま
いちどだけ...
わたしは
あの女に
声をかけ
ました...
でも...でももう
これきりで終わりです!
もうあの女にはぜったいに
......ぜったいにひとこと。
だって話しかけません!!
フランス宮廷は
堕落しました
王位継承者の
妃が
娼婦に敗北
したのです!!
フランス
宮廷は
なんという
なんという
誇り高い
人だ...
この方は
生まれながらの
女王.....!
わずか
16歳にして...
この方のお心はすでに
フランスの女王なのだ...!!!
ジャルジェ
夫人
王太子妃殿下が
ぶどう酒をデュ・
バリー夫人の
私室まで
はこんでくださる
ようにとの
ご命令です
デュ・バリー
夫人の?
王太子妃殿下は
デュ・バリー
夫人のお部屋に
おいで
なのですか?
はい
それはみょうなことが
あるものだわ...
あ...でも
それなら
ぷどう酒
運搬係の
ものに
アントワネット
さまが
あれほど仲の悪い
デュ・バリー夫人の
お部屋に...
ジャルジェ
夫人にとの
ご命令なのです!
アントワ
ネットさまの
お食事係は
68人もいる
のですから
オスカル
おお
アンドレ
か!
いまさっき
おくさまが
デュ・バリー
夫人の私室へ
いかれたが...
おまえ
知ってるか
?
母上が!?
し...
しまった!!
あら!これは
ジャルジェ
夫人!
王太子妃殿下に
ぷどう酒を
おもちいたし
ました
おとりつぎ
くださいませ
まあそれはそれほどれは
残念ですわ!
アントワネット
さまは
たったいまご退出
なさいまし
たのよ
え!?
せっかく
ですから
ぷどう酒は
いただき
ましょう
わたくしの
ぶんは
こちら?
はい
そちらで
ございます
ああ
あなた!
そこの
ろうそく係
こちらへきて
1杯いただき
なさい
わたしのために
ジャルジェ夫人が
もってきてくれた
ぶどう酒よ
まあっ
!!
よ..
よろしいん
ですの?
わたくし
などが...
じゃ
いただき
ますわ!
ぐ...
どうしま
した!?
しっかり
なさい!!
しっかり
して!!
あ...うっ
!!
ど...毒だわ
!!
いまの
ぷどう酒に
毒がはいって
いたんだわ!!
こ...これは
あ....!!
し...しまった!!
わなだ...
なんてこと...
デュ・バリー夫人の
わなだったんだわ!!
あ...
わたしが
アントワネット
さまのほうに
おつかえしたこと
へのしかえし...!?
ジャルジェ
夫人!!
わ...わたしの
ぶどう酒に毒を...
これは王太子妃の
さしがねなの!?
お...おそろしい
ことを....!!
それとも
おまえひとりが
くわだてたこと
!?
おそろしい
方だ...
オスカル
!!
じぶんの
召使いの命さえ
まるで道具の
ように使える
などとは...
ぶ...ぶれいな!!
オスカル
な...なんの
ことを...
こんなちゃちな
芝居が...
見やぶられないと
でもお思いか
デュ・バリー夫人!?
あなたも
ないはずだ...
国王陛下は
もう62歳...
それほどばかでは
あなたの権力は
その国王の
老齢のうえに
たっている
もろいものだと
いうことが
おわかりに
ならないか!?
うっ...
さーに
どのような
女であれ
おそれおおくも
国王陛下が
愛されたお方...
今夜のことは
けっして...
ロ外しない
つもりゆえ
安心されるがよい
だが
おぼえて
おかれるが
いい
このオスカルが
そばにあるかぎり
だれもけっして
アントワネットさま
と母上をおとし
いれることは
できない!!
...
62歳...
考えても
みなかった...
国王陛下は
もう62歳...
あすにでも
卒中の発作で
倒れるかもしれない
年なんだ.....
そしたら
あのまぬけな
王太子が
ルイ16世として
即位して...
よく目にでも
あの
鼻ったれ娘が
フランス王妃...
そしたら...
そしたら
わたしは...
バスティーユ送りか...
追放......
どうです
こんどのことでは
もうこりごり
なさったでしょう
ほんとに...
それというのも
王太子さまを
ほったらかしにして
おばさまたちの
膝ロやいじわるに
ひきこまれてしまった
むくいね
でも
王太子さまと
きたら
いつも...
鍛冶場で
錠前づくりを
なさってるか
狩猟をなさってるか
お菓子をたべて
いらっしゃるか
どちらかで..
ここはて
ぼてほて
んまっ!!
また
あんなに
泥だらけに
なって!
王太子
さま!
また
銀治場に
いらっしゃい
ましたのね
!?
王太子さま
ともあろう方が
職人のまね
なんかをなさ
って......!!
あ...
あの...
夜はひとりで
さっさと
おやすみに
なるし
わたくしと
ちっとも
お話もして
くたさらないし
いっしょにいて
さえくださら
ない!
王太子
さま!!
おぎゅ...
逃げられる
ものですか
きょうこそ
いわせて
いただきます
からね!
よろしい
ですか!?
はあ
はあ
だいたい錠前
づくりなんて
ばかげた趣味は
ですね...
お...
王太子さま
あっ。
まあ...
わたしすこし
いいすぎた
でしょうか..
王太子さま
泣かないで
わたしの
王太子さま
あほら
ほんとうに
とっても
愛して
るんだけど...
あの人が
あんまり
きれいで
かわいらしく
て...
そ...その
どうやって
話を
したらいいか
わからなくて
あの人は
なにをいっても
なにをやっても
すばらしいのに
ぼくときたら
ふむふむ
近眼だし
スマート
じゃないし
はずかしがり屋
だし・
アントワネット
さま
デュ・バリー夫人
から贈り物が
とどいて
おります
たいへん
めずらしい
東洋の香料で
ございますよ
デュ・バリームじゃ
夫人!?
そんなものは
さげさせなさい
王太子妃は
わいろを
うけとる
習慣には
なれて
いませんと
いっておやり
なさい!
は...はいっ
は...はいっ
おみごとで
ございました
アントワネット
さま
オスカル
ふふ...
デュ・バリー夫人か...
このあいだいっ
いったことが、だいぶ
こたえたとみえる...
ふふ...ふ...
アントワ
ネットさま
デュ・バリー
夫人付きの
女官が
ことづてを
もってきて
おりますか
アントワネット
さまが前から
ほしがって
いらっしゃった
70万リーブルの
ダイヤの耳飾りを
デュ・バリー夫人が
国王陛下に話をつけて
アントワネットさまに
贈らせるようにしても
いいとの
お申し出です
きっ!
あ..あの
......
ア:アントワ
ネットさま..
宝石を手にいれるのに
もはや他人の力や
好意にたよる必要なと
ないことを
アントワネットは
知っていた
・マリー・
16歳の少女の胸に
あらたに生まれた
自尊心とほこりは
すでにどんな力にも
うこかされないたしかな
ものとなっていたのだ
悪く思わ
ないどくれよ
ロザリー
ええっ!?
もう
あしたから
こなくていい
って...
あ...あの.....
どこも
不景気でね
人手があまっ
てるん
だよ...
はいよ
きょうまで
のお給金
ちゅ...
あ...
どうしよう..
どうしたら
いいの...!?
あしたから
病気のかあさんに
なにをたべさせて
あければいいの...!?
かあさんには
栄養のあるものを
たべさせて
あげなくちゃ
ならないのに...
パンも
卵もお肉も
このごろ
どんどん
高くなって
あ.....!
ジャンヌ...!
ジャンヌ!!
パンを
買っちゃったら
また...
野菜だけの
スープしか
できない...
こわいわ!!
どうしたら
いいの!?
どうやって
暮らしていけば...
おとなりの
ビエール
ぼうや
あ...!!
ジャンヌ
かえってきて!
わたしをたすけて!!
どうしたの?
おなかすいて
るの?
ん...
ぼく...
いいわ!
じゃバン
半分あげる
いいのよっこ
わたしの
ぶんだから
ロザリー
ありがと
ロザリー!!
ママにもわけて
あげなきゃ!
.....
きゃあっ!!
失礼!
娘さんけがは
ありません
でしたか!?
え...え
だい
じょうぶ
です
美しい方.....!!
じい...
表通りにくらべて
この裏通りの
貧しさと汚さは
ひどいものだな
ほんとにさようで
ございますな
ハンス・アクセルさま
ドイツでダヘッド
造兵学を
修め
イタリアで
医学と
音楽を学び
スイスで
哲学を
修め
スウェーデンの青年貴族
ハンス・アクセル・
フォン・フェルゼンは
いまバリ社交界でさいごの
みがきをかけるために
フランスにやってきた
マリー・アントワネット
オスカル・フランソワと
フェルゼンとの
宿命的なであいは
もうすぐであった!!
1773年
6月8日火曜日
パリの空は
雲ひとつなく
かがやかしく
晴れ渡っていた
18歳の王太子と
I7歳の王太子妃が
はじめて
首都バリを
正式に訪問する
日である!
若い夫妻を
ひとめ見ようとして
ノートルダムから
テュィルリー宮への
沿道をすっかり
うずめつくした
40万の群衆は
期待以上に
魅惑的でうるわしい
マリー・アントワ
ネットの姿に感激し
熟狂して
拍手と歓呼と
さけびで
首都バリは
嵐のように
わきかえった
オスカル!
どうかみんなを
ムチでぶたないように
近衛兵に注意して!
いいですね!?
はいっ
アントワ
ネット
さま!
ああ!
だめだ
だめだ!
さあ!!
それ以上
前にでない
でっ!!
よーよーきし
きれいな
おにいちゃん
だねえ!
さすが
近衛兵ともなると
ちがうよねえ!
わたしゃ
ほれぼれするよ
おにい...!?
ええい!
前にはみだすな
というんだ
くそっ!!
きゃーっ
もういちど
こっち
むいてーっ
近衛兵の
おにいさん!!
わーっ
てれてるよ
かわいい
ねえ!
羽のように
かろやかな足どり
気高く堂々とした
身のこなし
そして
オーストリア
ハプスブルグ家
独特のツンとした
唇からこぽれる
かがやくほほえみ
しかし中でも
パリ市民を
おとろかせ
魅了したのは
ミルクに
紅バラの花びらを
うかべたような
アントワネットの
比類を絶する
美しい肌の
色あいで
あった
見てごらん
あの肌の色!
まるで真珠の
ようだよ!
まるで
春のかおり
そのものの
ような方!
ああ!
こんな方が
フランス王妃に
なったらきっと
幸福な住みやすい
時代がくる
だろうよ!
わあーっ
見て見て!
王太子妃殿下は
わたしたちと
おなじように
あんなにケラケラ
おわらいに
なるよ!
みんなが
あなたを見て
ぼうっとなって
しまっているよ
ごらん
手をふって
え?
まあ!
ちょっと
ちょっと
手をふった
だけなのに...
ちょっと手をふっただけなのに...
すばらしいわ...!!
王太子妃という
地位にある
だけで...
こんなにも
おおくの人たちの
愛情を
えられるなんて
なんて
しあわせな
ことなの
かしら...!
妃殿下
妃殿下はここで
ただいまここで
妃殿下に恋している
20万の人々を
ごらんになっている
のでございます
おお!!
もしも...
もしも
この日の感激を
しあわせを
民衆の愛情を
アントワネットが
いつまでも
わすれないでさえ
いたなら...
彼女は
悲劇の王妃に
ならずに
すんだかも
しれなかった
!!
ーレンビリエ侯勝邸
ほんとうに
すばらしかった
わ!
アントワネット
さまの美しさは
あ...
みなさんに
おだしする
サポワ菓子の
したくは
よくって?
はいじゃ
ジャンヌ
さま
でも
ジャンヌ
あなたも
すばらしい
ですよ
たったの
23年で
なにもかも
すっかりおぼえ
身につけて
しまうなんて
ねえ!
ほんとにのみこみが
お早くて...
もうなにも
お教えすることは
ありませんわ
あたりまえだわ...
なんのために
夜もねないで
貴様人に
なりすますために
血のにじむような
努力をしてきたと
思うの...
ふっ...
これからが
ほんとうの
わたしの力の
見せどころよ
ふふ...
まあ見て
いるがいいわ
ジャンヌ
さま
ロザリーともうす
汚らしい娘が
お目にかかりたい
といって...
ロザリー
!?
ロザリー!!
あの娘だわ!
い...いまごろに
なって
いったいなにを
きょうは
お客さまも
みえてるのに...
まずいときに
シヌー
まあ
ジャンヌ!?
ああ!
ほんとうに
ジャンヌなのね!?
まあっ
すっかりきれいに
なっちゃって
見ちがえたわ!!
ロザリー
!!
なつかしいわ!!
よくあいに
きてくれたわね!
わたしの
ロザリー
!
ああ
ジャンヌ!!
うれしい..
わたし...
おいかえされ
るんじゃないかと
思ってたのよ
かあさんの
ぐあいが
悪くて...
それで...
それで...
もしあなたに
すこし自由に
なる
お金が
あったら..
あの...
ロザリー
そうだったの
かわいそうに!
えんりょなんか
いらないのに
さあ!
おはいりなさい
まあいったい
どこの
娘でしょう
ジャンヌ
さまの
お知りあい
なのかしら
前に
いなかのお城で
つかっていた
小間使い
ですのよ
わたしを
たよって
きましたの
まあ!
そうでしたの
おやさしいのね
さあ
ロザリー
こっちの
お部屋で
まって
いなさい
あ...
は...はい
ジャンヌ
さま
しかたないわ
ジャンヌはもう
お姫さまだもの...
あの人たちの
てまえ
わたしと姉妹
だなんていえや
しなかったんだわ...
でもいい..
わたしを見て
涙をながして
くれた...
やっぱり
姉さんだわ
中身は
昔の
まんま...
この
あまっ子
か!?
ジャンヌを
ゆすろうなんて
心得ちがいの
ガキは
あ...
あなた
は...!?
おれさま
ニコラス・ド・
ラ・モット!
ジャンヌの
恋人だ
お...おどす
ですって!?
なんのこと
を...!?
姉さんは
二度とおれの
ジャンヌを
おどしたり
できないように
たたきのめして
やるぜ!
うるせえ
金をださないと
ジャンヌと姉妹で
こじきをしていたと
世間にいいふらす
などと
ゆすりやがって!!
そんな
へたなうそで
おどせると
でも思ったか
この!!
ジャンヌが!?
そ...そんな
ばかな...!!
ジャンヌが
そんなことを
殺しても
いいって
たのまれたん
だからな!
あ...あ!!
うそだわ
ちがう..
ちがう!!
まてっ
またない
か!!
ジャンヌが...
わたしを
殺そうとした
...!!!
あっ
はあ
はあ
わたしが
きては
じゃまだったんだ
おかおお
おそろしい...
おそろしいわ!
ジャンヌはもう
人の心をなくし
はじめてる....!!
はじめは
わたしたちをすて...
とうとうこんどは
わたしを...
だまして殺そうと
した....!!
そのとおり...
いま
わたしの過去を
知っているあなたに
でてこられては
いままでの苦労は
水のアワになって
しまうのよ
これにこりて
もうよりつか
ないことね
なあ
ジャンヌ
さあて...と
なれなれしく
しないでっ!
まだ愛してるって
いったわけじゃない
んですから
ね!
つぎは
計画どおり
ここのお人よしの
侯爵夫人を
かたづける番...
ふふ......
この男
役にたち
そうだわ...
オスカル
オスカル
アントワ
ネットさま
しーっ
オスカル
これから
おしのびでパリへ
遊びにいくの
アントワッ
ネット
さま!!
とんでも
ないことです!
国王陛下の
お許しをえてから
でなくては!
オペラ座の
仮装舞踏会に
いくのよ
仮面をつけるん
ですもの
王太子妃だって
わかりゃ
しないわ
オスカル
護衛として
いっしょに
きて
仮装舞踏会...
そんないかがわしい
場所へ...
すごいわ
...!!
なんて
にぎやか
なんでしょう
オスカル
ここにいて
ちょうだいね
すこしおどって
きます
なんて
すばらしい
おどりかただ
お名まえは
まあ!
それは
もうしあげ
られません
わ!
ああ!
今夜
あなたを
さらって
いってしま
いたいよ
$
はあ
あ.....
胸がはじけ
そうに苦しい...
こんなたのしい
世界があった
なんて......!
ドキ
ドキ
ドキ
ここにいると
王太子妃という
身分をわすれ
られる!
好きなときに
わらってさえ
しかられる
宮廷の生活に
くらべたら...
夢のよう!!
お嬢さん
あ...
失礼!
お嬢さん
どうか...あの...
つぎのダンスを...
あっな...
なにを
...?
わたくし
は...
お...
1774年
1月30日
オベラ座
仮装舞踏会の
夜であった...
想像以上だ...!
なんという瞳...
なんという唇...
なんという肌の色!!
なんという肌の色!!
いったい
この少女は...!?
いったいこの少女は...!?
若造!
名まえを
名のられい
身分は?
地位は!?
オスカル
!!
フェアベルコミックス
ベルサイユのばら
一第1巻一
発行所......
著者...いや、池田理代子
発行人......鈴木秀樹
@Ryokoikeda
株式会社フェアベル
〒150-0001
東京都渋谷区神宮前4-7-2
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