ああ、やまっこうし青山剛昌 生きてるみてーだな... しぶといねオレも... ーったく...偶然蘭の血がオメーと一緒だったからよかったが..特殊な血だったら血が足りなくて今頃オメーはあの世だぞ... あの...わたしの血でよかったら.. わたしもこの子ときがた同じ血液型ですから... いや...偶然じゃない..蘭は確信してたんだ... 蘭が血をいっぱいくれたんだ... 早く元気にならねーと承知しねーぞ! ええ..主要臓器の損傷もなく術後の回復具合も良好でこの調子ならあと二、三日で退院できると思いますよ.. ただ...術後、体の抵抗力が低下していて、上気道感染を起こしているようですが... ただのカゼの事ですよ... な!そのゲームイケてるだろ? 今、学校で大はやりなのよ! あ、そこですそこ!そこを左に... 子供は時間が遅いのでお家に帰りましょう! 次は学校で会いましょう!! 退院が二、三日後って事は学園祭の真っ最中... 三日後だったらわたし達の劇の当日よ! どーするの...この子の迎え:あんた朝から手が離せないわよ? 大丈夫!お父さんに頼むから... そーいえばアイツに連絡した? 新一君よ!蘭が劇のヒロインやるって言ったらすっ飛んで来るかもよ! コナン君が元気になって観に来てくれれば... バカね!何言ってるのよ!! どーしたの園子姉ちゃんその手首... ラブラブって感じじゃない.. おかげで騎士役降板... まさか蘭...新一君からこのガキんちょに乗り替えたとか? あ、これ?劇の練習中に捻挫しちゃって... でもいい人が代役を買って出てくれて良かったじゃない! 前に言ってた新出先生よ! 悔しいけど先生がまたうまくてさーー!蘭とのラブシーンなんか必見よ♡ まあ、後は蘭が大勢のお客さんに飲まれなきゃバッチリね! 平気よ!あの体育館の空調壊れてて、上演中、サウナ状態で去年のお客さんの入り悪かったみたいだから... あら、今年は大丈夫よ! 演劇部が体育館の中で模擬店出して、冷たい飲み物売るってさ! あのヤサ男...最初からそのつもりだったんじゃ... あんた何考えてんの?ユリなんか買うて来て!! うるさいやっちゃなァ!!花やったら何でもええやないか!? ...あの声コナン君の病室からよね? アホ!!ユリはなァ臭いがきつうて嫌がられるんやで!? 見舞いに買うて来る花ちゃうやん!! そやったら初めからそうゆうとけボケ!! は、服部君と和葉ちゃん... それでどうなん?具合... 順調に回復してて二、三日後には退院できるって! おう!ボウズが大ケガしたっちゅうから、学校帰りに飛行機乗って来たったんや! まあええ!とにかく別のええ花買うて来いや! なんやのえっらそーに... 和薬が道に迷わんよーに姉ちゃんら案内したってくれや!! ホントは何しに来たんだよ? なんや、せっかく見舞いに来たったっちゅうのにつれないなー... 同じ腹撃たれた仲間同士やないが!! だーかーらーわざとユリなんか持って来て買い直しに行かせて、人払いさせた理由を聞いてんだよ!! あ、やっぱりバレとったか... 実は昨日の晩...阿笠っちゅうジイさんから電話があってなァー... おまえの相談に乗ったってくれっちゅうんや... なんや知らんけど工藤... あの姉ちゃんに正体バレかけてるそうやないか!!! バレかけてんじゃねー...バレてんだよ! まさかおまえから話したんか? バーロ、んな事するかよ... そやったらおまえとジイさんの思い過ごしかもしれへんぞ!ハレるバレると怖がってるからそう思てまうんや!! いや...思い当たる節は今までにもいっぱいあるんだ... オレが分身でもしねーかぎりごまかすのは無理って感じたせ... でもわかんねーんだ... 確信をもっているんなら、何でそれをオレに言わねーのかが... 相変わらず人の心は読めても自分の事になるとさっぱりやな... あの姉ちゃんが気ィついてんのやったら、ゆわへん理由は一コだけ... おまえの口から直接、話聞かせてもらうんをな!! こうなったら腹くくって、その何とかっちゅう組織の事やおまえの体を小さした薬の事を... 全部話してもうた方がええんとちゃうか? 人の苦労をしょい込んで、自分の事のように心配して泣いちまうようなお人好しに... んな事言えるわけねーだろ? ...かといってあんな張り詰めたような蘭をこのまま欺き通す自信はない... ホントは早く全てを話して楽にしてやりてーんだ... どっちが正解だと思う? 学園祭の最終日にやる蘭ちゃんの劇の事やけど... 日曜日やから平次も行くやろ? オレが分身でもしねーかぎりごまかすのは無理って感じだぜ... スマンけどオレ、行かれへんわ... その日、用事があるんや... 抜けられへん大事な用事がなぁ... この事は誰にも言ってはならんぞ!!もちろん蘭君にも... なーんかひっかかるのよ。あの子の最後の笑顔が... 女性を甘く見ると痛い目に遭う... 待ってるんや...おまえの日から話、聞かせてもらうんを... 言うっきゃねっか... どうやら私の中にはまだ、冷たい黒い血が流れていたみたいだわ... あら...わからないの? 私の正体がバレたのよ... あなたが言う黒ずくめの男達にね... 夢にも思わなかったわ... きっかけはそう...彼らと遭遇した杯戸シティホテルの一件... まさかピスコの他にもう一人彼らの仲間があの会場にいたなんて... その人の証言で、私が薬で幼児化した可能性があると組織は疑い始め...今朝彼らに私の居所を突き止められたってわけ.. すぐに殺されると思ったけど、彼らは私に組織に復帰すれば裏切りは不問に付すと言ってきた... ...それで?組織の存在を知っているオレを殺りに来たってわけか... ええ...それが私を受け入れる時の彼らが出した条件:もちろん、あなたの両親も大阪の少年探偵も、明日には消されるそうよ... ごめんなさいね博士が人質にとられているの... 今の私には彼を助けるだけで精一杯.. でも感謝してよ...あなたが両親や友達の死に顔を見ないように.. 真っ先に逝かせてあげるんだから... ...だったらどうする? もしあの会場に彼らの仲間がいたとしたら...そして私の居所を突き止められ博士を人質に取られたとしたら... 私は、今言った行動をとるわよ... まあそうなったら、彼らは私や私に関わった人達を全て抹殺する可能性の方が高いけど.. おい...お前いったい何を言いに.. あなたにクギを刺しに来たのよ..感情に流されてあなたが彼女に組織の事をもらせば... 彼女は間違いなく組織が消去する標的の一人にされるってね... か、彼女って蘭の事かよ? ええ...まだちゃんとは会っていないけど..彼女...十中八九あなたの正体に感づいているわ... そして今回ばかりはごまかしきれないと踏んだあなたは.. 薬の事や組織の事を全て彼女に打ち明けて楽になろうとしている... 警何驚いてるの?こんな事、見舞いに来てあなたの顔を見れば一目瞭然よ... 私がわかるんだから彼女も気づいているでしょうね 「そろそろ話してくれるかしら...」なんて思っているかもしれないわよ! 一つ目は、このまま彼女に何も話さず冷酷に接し続ける... あなたの選択肢は三つ... 二つ目は組織に正体がバレるわけがないと高を括って彼女に真相を話す... 何でこんなにお客さんがいるの?次、ウチの劇なのに: それだけ前評判が高いのよ、なんたってあのロミ・ジュリを凌ぐ超ラブロマシスって銘打っちゃったもんねー♡ やっぱり来てもーてん!平次は「迷惑かけるから行くな」ゆうてんけど... じゃあ服部君来てないんだ... なんだーひそかに狙ってたのに... 冗談よ冗談!園子は別の色黒の男の人に夢中なんだから! 悪かったわね色黒好きで... ほんで?工藤君はどこにおんの?呼んでんねやろ? 別に呼んでないよ... ーったく昔の友達とか近所の知り合いとか呼んでるくせに、何でダンナを呼ばないのよ? そっか...呼んだのボクだけじゃなかったんだね... まだカゼが治ってねーから今日は家で寝てろって言ったのに、約束したから絶対行くって聞かなくてよー... 蘭さんちょっといいですか? ラストのセリフのきっかけですが... 男前やなァひょっとして蘭ちゃんの相手役? そう!あの二人お似合いって感じでしょ? じゃあボク席で観てるから... もうノドがカラカラだよ! 模擬店混んでてさー... ちょっとトイレに行って来るからコレ、配ってて! 急いだ方がいいよ舞衣! もうすぐ始まるみたいだから... 舞衣もアイスコーヒーっと... えーっとオレがウーロン茶で... 私、オレンジ!耕平はアイスコーヒーだったよね! ごゆっくり御鑑賞ください... ああ...全知全能の神ゼウスよ!!! どうして貴方は私にこんな仕打ちをなさるのです!? それとも、望みもしないこの呪われた婚姻に身を委ねよと申されるのですか!? イヨッ♡待ってました大統領!! いやーあれ、ウチの娘でして♡ これをブリッジ公国ハート姫の馬車と知っての狼藉か!? 元より承知の上よ..姫を亡き者にし婚姻を壊せとの命令だ! 我ら帝国にとっちゃ公国と王国には今までどおりいがみ合ってもらった方が都合がいいってわけよ... 蘭ちゃん空手や空手!! そんな連中殺てしもてー!! カ、カラスの羽根... 私をお助けになる貴方はいったい誰なのです? ああ...黒衣をまとった名も無き騎士殿... 私の願いを叶えていただけるのなら...どうか... 台本と違いますけど... 邪魔したらアカン!今、ええトコなんやから!! そのままいいから続けて!! あ、貴方はもしやスペイド.. 昔、我が父に眉間を斬られ、庭から追い出された貴方が..トランプ王国の王子だったとは... ああ...幼き日のあの約束をまだお忘れでなければ... 芹山卓っおおっ覆われた真実 米花総合病院勤務の医師... さぁ...劇に見入ってたから... 劇を観ている最中に倒れられたとの事ですが.. なんか急に苦しみ出して... 死体のそばに落ちている、この飲み物を口にして倒れられたんじゃないですか? その時間いつ頃かわかりませんか? 中身はほとんど残っとらんな... 丁度悲鳴が聞こえたのが、劇の中盤の見せ場のシーンでしたのでねえ先生! そうか!この学園祭、蘭さんの高校だったんですね! ...て事はまさかあの男もここに... 誰かさがお捜しですか警部殿? はい!恐らくこれは.. 疲病神め...とうとう娘の高校にまで不幸な事件を呼び込んだか... で?死体には誰も近づけておらんだろーな? もちろん!!この検視官さんが触るまでは誰も.. 死因はわかりましたか? たぶんこの兄ちゃん、青酸カリ飲んで死んだんやろな... おい!誰も死体に近づけなかったんじゃないのか? あ、いやそのはずですけど.. アホ!死体に触らんでも見たらそれくらいわかるわ... 死んだ人間は血の気が引くんが普通や.. そやのにこの兄ちゃん、唇の色もツメの色も紫色になるどころかピンク色になってる...こら青酸カリで死んだ証拠やで! 青酸カリは他の毒と違て、飲んだら細胞中の電子伝達系がやられてしもて血液ん中の酸素が使われへんまま循環してしまうから、 逆にいっしょ血色がようなってまうんや... 後はこの兄ちゃんのロん中からアーモンド臭がしたら青酸カリで決まりやな... あ、はい...アーモンド臭もしますし、その少年の言うとおり、死因は青酸カリによるものだと... おい、おまえ..妙に事件に詳しいが... 事件当時、死んだ蒲田さんの席のそばにいたんじゃねーだろーな? あの眼鏡のボウズのそばにちゃーんと座ってたで!! うん!いたみたいだよ.. おまえ..なーんかどこかで会ったような、会ってないような... なんやもうオレの事忘れてしもたんか? 久し振りに帰って来たっちゅうのにつれないなー... あ、あなたまさか... 眼鏡のボウスに電話もろて、姉ちゃんの劇観に来たったんや!な!そやろ? 来るなっちゅうたのに... 顔にパウダーつけて髪形変えて...ここで歌舞伎でもやんの? ちゃ、ちゃうわいよー見てみ!オレは平次やのーて工藤... だから何の冗談だって言ってんだよ!? 工藤のカッコしてみんなを驚かそ思ててんけど、 やっぱりバレてしもたか!! 和葉のせいで台無しや... とにかく捜査の続きを... ーったく何なんだおまえは? それで?飲み物は死んだ蒲田さんが自分で買って来たのかね? くそ...工藤の振りして客席の小っきい工藤と一緒におるんをあの姉ちゃんに見せて、疑いを晴らしたろっちゅうこの巧妙な計画が... あそこの模擬店で四人分の飲み物を買って、席で座っているみんなのところへ持ってったんです.. その後、三谷君に四つ共預けて私はトイレに行ったんだったわよね? じゃああなたが飲み物を蒲田さんに渡したんですか? いえ..みんなに配ってくれって渡されて... 僕はじゃん自分が頼んだウーロン茶と鴻上さんのアイスコーヒーを手に残して.. ええ...三谷君から私のオレンジジュースと、蒲田君のアイスコーヒーを受け取ってそれを蒲田君に... 僕は渡してないよ!君が僕の手から勝手に取ったんじゃないか!? そんなのどっちだっていいでしょ? あの...失礼ですが蒲田さんとあなた方三人の関係は? 私達、この高校の卒業生で四人共演劇部...偶然今の職場も一緒で、学園祭の劇を四人で観に来るのが毎年恒例になっていたんです... でもまさか蒲田がこんな事になるとは... 自分の学説が認められるかもしれないって喜んでいたのに... しかしなんで、あんた一人で四人分の飲み物を買って来たんですか?一人で四つも持つのは大変でしょーに... 混んでいたから、みんなには先に行って席を取っておいてもらったんです.. 後で蒲田君が来て買うのに付き合ってくれていたんですけど... 急に青い顔して席に戻っちゃったから... きっと売り子の中に私がいたからじゃないでしょうか.. あら彩子ちゃん!あなたもこの学校の生徒だったの? そっか!どっかで見た顔だと思ったら... ええ...ウチの病院の院長先生の娘さんよ! じゃあもしかして四人の飲み物をカップに入れて売ったのは.. 蒲田さんの飲み物の中に誰かが青酸カリを入れたんやとしたら... その誰かはあんたら四人の中におるっちゅうこっちゃな!! ちょっと待ってよ!私は蒲田君と同じアイスコーヒーだったのよ!?私が彼の方に毒を入れたのなら、誤って自分が飲まないように直接彼に渡すわよ! でも両方に入れて自分の方を飲まなければ... 全部飲んじゃいましたよ! 自分のはトイレで捨てちゃったんじゃないんですか? 私はみんなの飲み物を預けてトイレに行ったって言ってるでしょ?戻ったら劇は始まっててその後、席は立ってません!! さっきも言いましたけど、僕は預かった飲み物を渡しただけで、毒を入れるヒマなんてありませんでしたよ.. だがフタを開けて中身の確認ぐらいしたでしょ? 開けなくてもわかりますよ!フタに中身が書いてありましたから... アイスコーヒーはガムシロップとミルクがフタの上に乗ってたし... じゃあ前もって毒入りのミルクかガムシロップを用意しておいて、渡す直前でスリ替えれば... だったら飲んですぐ死んじゃうわよ!蒲田君はほとんど飲んじゃってるじゃない!! 警部!蒲田さんのポケットから未使用のミルクとガムシロップが!! 未使用?どういう事だね!? 中身がアイスコーヒーじゃなく... そうすれば、もしかしたら私の所へ彼が取り替えに来てくれると思ったんです...私が彼との婚約を解消した理由を、聞きに来てくれるかもって... 私が卒業したら結婚する予定でした...でもなんか不安になって先週、断りの電話を彼に... それ以来病院に行っても会ってくれなかったから.. 警部殿...こうなるとあの線も出て来ましたな... なーんだ...だから私のもコーラだったのね?もうちょっとでこのガムとミルク入れちゃうところだったわよ... すみませんでした... とにかく四人の飲み物と、ガムシロップとミルクを鑑識にまわせ! そーいえば溝田君、車のダッシュボードゴソゴソしてなかった? ああ...免許証を捜してるって言ってたけど... うまくすれば彼女も疑われるというわけか...イヤな事件だな、オイ... 私達、蒲田君の車でここへ来たんだけど、なんか彼の様子がおかしかったのよ.. おい!その車の所へ案内してもらえ!! おいどう工藤...おまえも気ィついてんねやろ? 毒、仕込んだ犯人はたぶん... あの人やっちゅう事を... 開きっ放しになっとった蒲田さんの飲み物のフタ...間違えられたアイスコーヒーとコーラ.. ほんであの人のおかしな行動と言動...トリックもバッチリ読めたで!! 後は証拠があったら完璧なんやけど.. 相変わらず仲ええね、平次とあの子.. 変な事件は起こるし...劇は中止になっちゃうし... おまけに雨まで降って来てお祭りムードか台無しよー... 仕方ありません...あきらめましょう.. 蒲田さんの車のダッシュボードから青酸カリと思われる少量の薬物を発見しました!! やはり彼は前々から自殺を... こっちにもさっき鑑識から連絡があったよ...四人の飲み物に毒物が混入された形跡はないと...亡くなった蒲田さんが自ら毒を口に運んだ可能性が高いとな... ああ...これより我々は、 本件を自殺と断定して... いや...これは自殺じゃない... 極めて単純かつ初歩的な... そう...蒲田さんは毒殺されたんだ.. 暗闇に浮かび上がった舞台の前で.. 光を浴びる事を許されない人... しかも犯人はその証拠を今もなお所持しているはず.. それがわからないの!? 今のあなたは表舞台に立つ事を.. 常日頃からもっている、たわいもない自らの嗜好を利用されて... ボクの導き出したこの白刃を踏むかのような大胆な犯行が... 真実だとしたらね... ああ...ここんとこ休学してたあいつか!! キャー見て見て工藤先輩よ!! 噂だと当分戻って来ないって聞いてたけど.. バカね、事件があれば飛んで来るのよ! なんたって彼は帝丹高校が誇る... ホンマに男やったんや... 祭りの続きはこの血塗られた舞台に幕を下ろした後で.. 相変わらず語るねぇあの男は... 後で大事な話があっから.. バーロ...寝ぼけた事言ってんじゃねーよ... 逃げんじゃねーぞ... お、おう...何や工藤... そらーっや二つ持ってるけどそんな物何に... なるほどそういう事か.. くっ工藤君...久し振りに帰って来たところ悪いんだが... 毒を飲んで亡くなった蒲田さんのカップからも他の三人のカップからも、毒は検出されておらんのだよ? しかも蒲田さんは中身をほぼ飲んでしまっているし...こりゃーどー見ても.. 確かに一見、蒲田さんが自分で毒を飲んだ自殺のように見えますが.. ある物を使えばこの殺人は可能になるんですよ警部... そう...トリックの初歩の初歩... 氷を利用すればね... 使用された毒は冷水に溶けにくい青酸カリ... 氷に穴を空けその中心部に青酸カリを仕込み細い氷で栓をして再び凍らせた物を蒲田さんのカップに入れたとしたら.. 毒が溶け出すまでに時間がかかり、蒲田さんは中身をほとんど飲みほせるというわけですよ... し、しかし蒲田さんが氷から溶け出した毒を飲んだとしたら、彼のカップには毒が残っているはず... 蒲田さんのカップのフタ...開いてましたよね? なぜだかわかりますか? どーせ毒を飲んで苦しくて握りつぶした拍子に... バカモン!だったらカップがひしゃげているはずだよ... 氷入りの飲み物を飲み終えた後フタを開ける理由はただ一つ... 蒲田さんは毒を飲んだんじゃなく... 食べたって事ですよ... いるいる!飲んだ後、残った氷を食べてる人! ホラ、警部もよくガリガリやってるじゃないですか!! なるほど...蒲田さんのそのクセを知っていれば、確実に彼を毒殺する事ができ、なおかつ毒はカップに残らんというわけか.. それで誰なんだよ?そんな毒入りの氷を入れたのは? カップを手渡しただけの三谷さんと野田さんは無理.. 飲み物をカップに入れて売った蜷川さんは、その氷を入れるのは可能だか... ええ..蒲田さんを毒殺したのは、飲み物を買って皆さんの席へ運んだ... あなたしか考えられません!! 飲み物を買ったあなたなら、模擬店のテーブルでミルクとガムシロップを入れる振りをして、毒入りの氷を入れる事ができるというわけですよ... 舞衣はガムシロップもミルクも入れてなかったわよ!? ああフタの上に乗せてたよ... それは彼女が毒の氷を入れた後で中身がコーラだと気づいたからですよ!!それを入れてしまったら蒲田さんが飲まないかもしれませんからね... 飲み物を皆さんの席へ持って行くのを、劇が始まる直前にしたのは返品させないため: 中身が違う事に気づいても、館内が暗くなれば取り替えに行くのは億劫になりますからね... し、しかしそんな毒入りの氷どうやって持ち歩いていたというんだね? その方法ならさっき高木刑事が外へ出ている間に見つけておきました: この体育館裏のトイレの前のゴミ箱の中に捨てられていた、このビニール製のガマロの財布を... この中に毒入りの氷を数個の小さなドライアイスと共に入れておけば、長時間溶かさずに持ち運べます... つまり鴻上さんは、毒の氷を入れた飲み物をみんなの飲み物と一緒に渡した後トイレに行き、ドライアイスをトイレに流して財布はゴミ箱に捨てたんだ...違いますか? さすが工藤新一君...噂どおりの名探偵振りね... でも忘れちゃったの?私も蒲田君と同じアイスコーヒーで、それをみんなの飲み物と一緒に三谷君に渡したのよ? 彼がどっちのアイスコーヒーを蒲田君に渡すかわからないのに毒なんて入れられる? あなたは毒入りの氷を両方のカップに入れたのだから... 彼女は自分の飲み物を全て飲み干しているんだぞ!? その氷が溶ける前に急いで飲めばすむ事ですよ.. そうだとしても彼女のカップから毒物反応が出るはず...それにカップから無理に氷を出せば周りの客に不審がられて... 彼女も蒲田さんのように氷を食べる振りをしてその毒入りの氷を口に含んだとしたら? そう...彼女はその後氷を手の平に出して... こっそりある場所に隠したんだ... 彼女が羽織っているハーカーの... 毒入りの氷を口に含むのは極めて危険な行為ですが、毒を氷の中心に入れていたのならやってやれない事はありません! し、しかし本当にフードの中に? 銅がないさん青酸カリに触って酸化還元反応が起こった証拠やで! なんか平次..手品師の助手みたいやん... ここは東京やからアイツに花持たせたらな... しかしよくわかったな、フードの中に毒入りの氷を隠したなんて... 雨が降ってたのに私がフードを被らなかったのを見て不審に思ったんでしょ? ええ...氷が溶けてフードの中に溜まっている青酸カリを頭から被るのを避けたんだろうって... じゃあやっぱり舞衣が蒲田を... ええ...私が彼を毒殺したのよ... 医者の風上にも置けない... 知ってるわよね?彼が学会に発表しようとしてる例の学説の事... その学説に反する例外的な患者がウチの病院にいたのよ... 病状は末期だったけどね... ええ...彼はその患者に間違った薬を与え、病気の進行を早めて殺したってわけ...自分の学説を守るためにね... その話を彼に聞いたのは彩子ちゃんに婚約を解消されてヤケ酒を飲んでいた彼に付き合ってあげてた時...彼、後悔するどころか苦々しげにこう吐き捨てたわ... まったくバカげた世の中だ」って... だからわからせてあけたのよ...病院のラボからくすねた青酸カリを彼に盛って... あなたのような医者が人の命を扱う事の方がバカげてるって事をね... じゃあ蒲田さんの車のダッシュボードに薬のビンを入れたのも... そうよ!それも私... いつも彼がダッシュボードに入れている免許証を隠して不穏な行動を取らせて、自殺に見せ掛けたかったってわけ... あれがなければ私が犯人だという証拠は得られなかったはず...ちがう? ラッキーだったわね探偵君? あなたが未使用のガムシロップとミルクを所持している時点で犯人はあなただと睨んでいましたから... 雨が降ってくれて... あなた...トイレから帰って来た時劇はもう始まっていたと言ってましたよね? いや...ボクはフードの一件がなくてもあなたの衣服のチェックは警察にお願いするつもりでしたよ? 暗闇の中でカップのフタを開けても、アイスコーヒーとコーラの違いなんて見分けられません... だからあなたが犯人だと確信したんです.. あなたがガムシロップとミルクを入れなかったのは、事前にどこかでフタを開けて中身を知っていたからだとね: まぁそれも彩子さんがアイスコーヒーをコーラに替えてくれてたおかげですけど... さぁ、後は署の方で.. いやー相変わらず頼もしいねぇ君は!! まあまだ私の域には達してませんが.. どうかね?久し振りに被疑者の事情聴取に立ち合わんか? いや、ボクは遠慮しときますよ... まだヤボ用が残ってますし... あ、それから例によってこの事件にボクが関与した事は内密に... ああいいが...最近謙虚だな君は: なんで事情聴取に立ち合わへんのや... もしかしたら今後の捜査の参考になるかもしれへんのに... トリックなんてしょせん人間が考え出したパズル... 人間が頭をひねれば論理的な答えをいつかは導き出せるけど... 情けねーが、人が人を殺した理由だけはどんなに筋道立てて説明されてもわからねーんだ.. り、理解はできても納得できねーんだよ...ま、全く.. せっかく元の体に戻ったっていうのに... 死ぬかもしれないけど... うまく行きそうだったのに.. こんな所でコナンに戻ったら.. 蘭にオレの正体が... か、体が...動か.. ん?この臭い...保健室か? そっかオレ運ばれたんだ... 何か青い顔してやがる.. 目の前で人間が縮んだんだから... おー工藤!!目ェ覚ましたか!! もォ心配させないでよね! よかったー気ィついて!! 一回鳴らしゃわかるっつーの!! ねぇ、ちゃんとわかってる?今日の学校の予定... んなもん去年と一緒でどーせみんなで学園祭のかたづけすんだろ? 今、仕度すっからそこで待ってろ! いる、いる新一だ... ホントに帰って来たんだ!! 調子に乗ってんじゃないわよ... あなた、何様のつもり? あなたの正体があの子にバレなかったのは、私が調合したあの解毒剤とこの変装... そして博士が作ってくれたこのマスク型変声機のおかげでしょ? 舞台の上でこっそりあの子だけに会う約束だったのに、あんな大勢の前で堂々と姿を現すなんて... 悪かったよ!事件の真相がわかったら抑えきかなくなっちまったんだ... それにまさかあの解毒剤で完璧に元の体に戻るなんて思わなかったし... やっぱマズかったかなぁ? あのおおさか大阪のお友達に感謝するのね... まあ、あれでどこまで口止めできるかはわからないけど、事が落ち着くまでこのカッコであの探偵事務所に居候してあげるから目立つ行動は控えて... 何でおまえそこまでしてくれるんだ? 解毒剤ができたんならおまえだってすぐにでも元の体に戻りたいんじゃねーのか? バカね...あなたの正体がバレたら私にも火の粉が飛んで来るかもしれないから、協力してあげてるんじゃない! それにあなたが飲んだのはまた試作品... 私が使うかどうかは、今後のあなたの体調をじっくり観察してから決めさせてもらうつもりよ... あ、あのさー灰原... コナンの声で女言葉使うの止めてくれねーか? 気持ち悪くってよ... あら、私は結構気に入ってるけど... でもビックリしちゃったよ... 黒衣の騎士の中身が新一に替わってるんだもん! ろくにセリフ覚えてないのに、よく代役なんかやる気になったわね? あのまま台本無視して劇続けてたらスチャメチャになってたわよ? いーい?黒衣の騎士はいきなり姫を抱き締めてチューよチュー!それまでしゃべっちゃダメよ! どうって言われても途中で終わっちまったし... 違うわよハート姫よ!別にだからどうってわけじゃないけどさ... あああのドレス姿よかったよ! 馬子にも衣装って感じでイケてたせ♡ 退院おめでとうございます!! 元気にしてたかオメーら! おい、誰だよあの兄ちゃん... 博士ん家の隣に住んでる高校生だよ...帰って来たんだってさ! ああ例の幽霊屋敷の.. そういえば灰原さん今日カゼで学校お休みするって博士が言ってたよ! それより観たかよ昨日のサッカー!! ついこの前まであの中にいたんだよなオレ... 夢みたいな話だぜ... ホラ、わたし達も早く行かないと.. あ、待てよ蘭姉ちゃん... あ、冗談じゃ冗談... いつまで寝ぼけてんのよ? シャキっとしなさいよシャキっと!! 復帰早々夫婦で登校かよ? バーロんなんじゃねーよ... そーいえば今度来た英語の先生イケてるせ♡ ナイスバディの外人さん♡ わたしまだあの話聞いてないんだけど... ホラ、何か大事な話があるって言ってたでしょ? 米花センタービルてんぼ展望レストラン? ちょっと大丈夫なの?ここ高そうよ.. 心配すんなよ!父さんのカード持って来たから.. バーロ!息子ほったらかして外国に行ってる親の方がよっぽど道楽だよ... ほーんとコナン君にそっくりね! あの子の両親も外国に行ってて.. ずーっと思ってたんだ... コナン君の事新一だって... きっと新一大変な事件に巻き込まれて姿を隠さなきゃいけない羽目になって、博士に作ってもらった薬が何かで小さくなってるって...バカみたいでしょ? でも不思議よねー...こうやって新一が帰って来た後であの子を見ると、全然別人に見えちゃうんだもの... そりゃそーだ別人が変装してんだから... 大体当たってやがる... え?社長、パーティーにお出になられないんですか? せっかく我が社のマスコットキャラクターが完成したというのに... まあこれからも我が社のために尽力してくれと.. 皆に伝えておいてくれ! ああ...体調が悪くてな... しかしやけに薄暗いなこのエレベーターホール... 例の演出のために無理を言って照明を暗くしてもらったんですよ.. おお!そうじゃったそうじゃった! あ、すみませんパーティーの会場ってどのお店かわかります? 会場はその奥のいつものイタリアンレストランですよ! ちょっとお嬢様とパーティーの祝辞の打ち合わせがありますので、外してもらえますか? もうパーティーが始まる時間だから遅れるなよ! ちょっと仕度に手間取っちゃって... それよりちゃんとパパに私達の事話してくれた? じゃー私達一緒になれるのね! ああ...僕の勇気を讃えて何か褒美をくれないか? あ、パーティー始まっちゃったみたい.. パーティーの前にホラ! 丁度今、君がつけてるピアスとおそろいのピンクパールのネックレスだよ.. これぐらい当たり前さ... あ、それね...えーっと... 今日は君と結ばれる確約を得た、記念すべき日なんだからね... まーったく言いにくいのはわかるけど... 男なら男らしくはっきり言いなさいよ.. て、たったそんな事で見抜いちゃうなんて、やっぱりホームズってすごいんだ... 休学中の授業のノート見せてくれって! きっとそうだと思ってわたしコピーとって持って来たけど... 言いづらくってよー!! オメーをわざわざ食事に誘ったのは... オメーに言っときたかった事があったからで.. な、何?今の悲鳴... どーせ誰かがゴキブリでも見つけたんだろ?気にする事はねーよ! おい!人がエレベーターの中で死んでるってよ!! あ、だからオレが話したかったのは... 拳銃だ、拳銃!会社の社長が頭を撃ち抜かれてるらしいぜ!! 事件の事が気になってしょーがないくせに... わたしは誰かさんと違って逃げも隠れもしないから... さっさと行って来なさいよ.. すぐ戻って来っからよ! ほら下がって下がって!! 発見したのはあの三人...同じゲーム会社の社員で.. 会社に忘れ物をしたのに気づき、このエレベーターで取りに戻ろうとした時に死体を見つけたと... 社員の話によりますと、この社長は体調が悪くてパーティー前に「会社に寄ってから帰る」と言っていたそうですので恐らく下でビルに潜んでいた何者かに出くわして... ウーム:服も乱れておるし、どうやら犯人はバーティーで空になっていた会社を狙った金目当ての... おい...前にもここで似たような事件がなかったか? ホラ、ワシが新米刑事だった頃、妙な若い男が口をはさんで来て... その頃僕はまだ小学生ですよ.. 申し訳ありませんが金目当ての犯行の線はないと思いますよ... 犯人の目的が金で、拳銃を所持していたのなら人気のない場所へ相手を誘導するはずです...殺害後に金目の物を捜すつもりだったとしたら、いつ誰が動かすかもしれないエレベーターの中は最悪の場所... そうそうこんなふうに.. それにホラ、いくら衣服を調べたといってもシャツのソデのボタンまでは外しませんよ... ラーボクの名前は伏せてください!警察関係者という事で... 前はあんなに自己主張しておったのに.. しかしどうして君がここに? 蘭と二人で食事してたんですよ... まったく..高校生二人がこんな高級レストランの連なるフロアで食事とは時代も変わったもんだ... いえ、ここにしたのは.. 先程ここでお別れした時は元気でおいでだったのに... じゃあ社長さんを最後に見たのはあなた方ですな? このエレベーターで降りて行かれるのを我々三人でお見送りしました... その直後にお嬢様が来られて... ここで僕と二人で祝辞の打ち合わせを軽くした後、パーティー会場に... その間このエレベーターに誰か乗りましたか? その時間、いつだかわかりますか? パーティー開始のクラッカーが鳴ってたし、時計の針がそうだったから間違いないわ! 時計の針って...あなた、腕時計してないじゃないですか... 大場さんの腕時計の文字盤が見えたのよ!彼が私のピアスに触った時にね! ここで彼にプレゼントをもらったのよ!「君がつけてるピアスと同じピンクパールのネックレスだよ」って... じゃあ我々はパーティー会場の社員達に、この事を知らせて来ますので.. 変じゃないですか?今の話..だってね... あ、いえ...本当に文字盤が見えたのかなぁって... 失礼ね!ちゃんと見えたわよ!! ああ、たぶんあなた方が到着された時ここが薄暗かったから引っ掛かってるんですね? でもこのとおり僕の時計の針は蛍光塗料つきで、暗闇でも見えるんです... ここを薄暗くしたのは社長命令、何かの演出のためと聞いてましたけど詳しくは... だったらやっぱり変ですよ... いったい何が変だって... だってホラ、時計をつけた手でピアスを触っても文字盤なんて見えませんよ? ハハハ...バカだな君は... 向こう側の耳を触れば見えるじゃないか! へー...わざわざ向かって右側の耳をねぇ... 彼女を見ればわかるたろ? ピアスが見えているのは向かって右側の耳!だから僕は... 右手はどうしたんですか? 右手の方が触りやすいのに.. まあ右手が何かでふさがっていたのなら.. 新一がわたしに大事な話? オメーしばらく見ねー間に太ったんじゃねーか? でもわざわざ食事に誘ってそれはないわよねえ... 最近ちょっとウエストヤパぎみだし... でも彼、探偵でたぶんすぐに解決して来ると思いますから... あ、連れが戻って来るまでデザート待ってもらえます? さっきの悲鳴聞いて飛んでっちゃったんです! 力しこまりました... プロポーズよプロポーズ♡ プ、プ、プロポーズゥ? 君は僕が右手に拳銃を持っていたとでもいうのか!? 拳銃?ボクはそんな事一言も言ってませんけど? 警部さん何なんだこの少年は!? ねぇ...なんか大場さんを疑ってるみたいだけど.. 彼ら三人がエレベーターで降りるパパを見送ったんなら大場さんには犯行は無理よ! その後彼、ずっと私と一緒にパーティー会場にいたんだから... どこにも寄りませんでした? 警部!このビルのゴミ集積場からサイレンサーつきの拳銃と空薬茨を発見しました!! どうやら犯人は、逃亡途中で拳銃をどこかのダストシュートに投げ込んだものと... このフロアにダストシュートはありますか? ええ...トイレのそばに... ...なるほど、会話しながらでも捨てられるってわけか... どうやら君達は僕を犯人にしたいようだか... だったらエレベーターで降りて行った社長を僕が、いつどうやって射殺できたかを説明してくれよ! 僕はずっと彼女と一緒にいてこのフロアから離れていないし、 それに僕が撃ったというなら僕のソデロから硝煙反応ってヤツが出るんじゃないんですか? あなたもしかして... では調べさせていただきましょうか? ええ..構いませんよ! どーせ出るわけないんだから... いえね...ウチの母さんが言ってたんですよ...女性が口紅を直すのは、食事がキスをした後、ぐらいだってね... エレベーターの前で大場さんと... それで?その時彼はどうやって...? どうってこう腕を回して... その時あなた..エレベーターを背にしていませんでした? ええ...してたけど.. いつも二人でこっそりこんな事を? ええ..今夜もここで彼と待ち合わせて... ありがとうございます!とても参考になりました! さぁ会場に戻りましょう... あ、すみませんもう一つだけ... ひょっとしてそのピアスも大場さんからの贈り物とか? これは今日ここへ来る前に衝動買いしたピアス!プレゼントじゃないわ! 社長を射殺したのは大場さんに間違いない!! 残る疑問は二つだけ... エレベーター内での社長の奇妙な行動と... あの自信たっぷりな態度からして、硝煙反応が出ない工夫を何かしてるはず.. ねえ、もしかしてあれじゃない? ホラ、大場部長パーティーで着ぐるみの中に入ってたでしょ? あ、そっか、服を着替えるチャンスはあるってわけね! は、はい...今夜のパーティーはウチの会社の新しいマスコットキャラのお披露目会でもあって、キャラの着ぐるみがずっと壇上にいたんです... そうしたらその中身が大場部長でビックリ! なるほど...前もって同じ服を用意しておけば、硝煙がついた服と取り替えられるというわけか... でもそれ無理ですよ!着ぐるみを着る前に部長、オレ達に背広やズボンを手渡してましたから... まぁそう言うなよ!部長もウケを取ろうとがんばっていたじゃないか! ウケってあの着ぐるみのウインクの事ですか? そりゃー最初はウケたけど...あればっかだと逆にシラケちゃうわよねぇ... もしよかったら、その着ぐるみ見せてもらえます? シュ、シュールなデザインですね... このバーティーを仕切っていたのは? で?何かわかったのかね? それより暑くありませんか?この店... 何言ってんだね!クーラーが効き過ぎて寒いぐらいだよ.. 月山県で...「思い出のい場所 元に戻ってたまるかよ!! こ、こんな大事な時に.. 大場さんの服を調べた結果硝煙反応は出なかったようです! じゃあやはり、この事件は金目当ての外部犯... よーし、パーティー中このビルに出入りした不審人物がいなかったか聞き込みを... いや...その必要はありません... 犯人はすでに我々の手の中... さあ、上がりましょうか... 真実を解き明かすステージの上へ... おい!どーいうつもりだ!? さっき調べてわかっただろ? 僕の服から硝煙反応が出なかった事が!! それに何度も言ってるじゃないか!! エレベーターで社長が降りるのを重役達と見送った後、僕はずっと彼女と一緒にいたって! その僕がどうしてまた社長殺しの容疑者として呼び出されなきゃいけないんですか!? 君からも言ってくれよ、僕が犯人なわけないって!! ええ...ちゃんと証言できるわ! 大場さんは私とこのエレベーターの前で会った後、トイレでも会場でも私のそばから離れなかったって!そりゃー彼が着ぐるみに着替えた時は目を離したけど着替えた場所は密室...こっそり抜け出す事も誰かとスリ替わる事もできはしないわ... それともなーに?私がウソを.. いや、疑ってはいませんよ...あなたはずっと大場さんと行動を共にしていたと思ってます... あなたのそばで犯行が行われた瞬間もね... ちょ、ちょっとまさか私と大場さんが共謀してパパを殺したとでも... いえ、犯行はそばで行われたけど、あなたはそれに気づかなかったと言ってるんです... その時あなたは目を閉じ、エレベーターを背にして... 大場さんとロづけを交わしていたんですから... 扉が開いた瞬間に... こうやってあなたの頭を左腕で抱えて両耳をふさぎ... キスと同時にエレベーターのボタンを押し... あなたのお父さんは消音器付きの拳銃で射殺されたんですよ... 大場さんの手によってね... 口を挟むようで悪いがいくら耳をふさぎ消音器付きの拳銃で撃ったといっても人が撃たれて倒れれば少しぐらい音が... ええ...彼女にはかすかな音ぐらい聞こえていたと思いますよ。 だから大場さんは発砲の瞬間をパーティーの直前にしたんです... パーティー開始のクラッカーの派手な音と共に彼女の耳をふさいでいた左腕を解けば、その前のかすかな音なんて印象に残りませんから... もちろんエレベーターの扉が閉まるのを確認した後で.. なかなか面白い事を言うじゃないか、新米警官君? だが君の推理には一つ大きな穴がある.. 体調をくずして帰宅するためにエレベーターで下へ降りた社長が、どうしてまたエレベーター内にいたんだい? まさか僕に殺されるためにエレベーターの中に残っていたわけじゃあるまいし.. そのとおり..社長は下に降りずにエレベーターの中で待っていたんですよ.. あの着ぐるみを着たあなたが.. ここへやって来るのをね... そう..あなたは恐らく社長にこう伝えていたんだ... 「帰ったフリをしてここでこっそり入れ替わり、会場にいる社員達を驚かせましょう」と... じゃあまさか死体の衣服が乱れていたのは... ええ...社長は着替える準備をしていたんですよ... なるほど...エレベーターが待機中なら「チン」という到着音もしないというわけが... しかもこれは会社専用のエレベーターで今夜は会社のパーティー... ハーティーが終わるまで誰もこのエレベーターを使わないという事を計算に入れた上で大場さんは... 僕が犯人なら当然それが出るはずだろ?だがあいにく僕の服からは: あなた..ウインクしていたそうじゃないですか... 社員の方が言ってましたよ、あなたが入った着ぐるみはウインクばかりしていたと... それでビンときたんです.. ウインクはウケ狙いなんかじゃなく... あなたが何かを着ぐるみの目の中に隠したために、 仕掛けが動かなかったんじゃないかってね ビニール袋の中身は手袋と輪ゴム四つ: 前もって右手に手袋をはめておき、拳銃にビニール袋をかぶせて輪ゴムで留めた物を上着の内ポケットに入れておけば簡単に装着でき、撃っても服に硝煙反応は残らず薬莢も床に落とさず回収できる。 でも、そんな物を彼女のそばでつけたり外したりしていたら気づかれるんじゃ.. もちろんこのままだと丸見えですが... こんなふうに照明を薄暗くしていたのなら... その心配は半減します... そしてここで彼女にネックレスを贈ればそれをつけるために彼女がトイレまで連れて行ってくれて、 彼女から離れずにトイレのそばのダストシュートに拳銃を捨てられるってわけだ... あなたが彼女の耳をふさいだりピアスに触った時左手は素手だったはず..つまりベッタリ付着しているはずなんですよ、このビニール袋にあなたの指紋か... フン...ビニール袋に僕の指紋?そりゃーついてるよ... 僕もそのビニール袋に触ったんだから... 着ぐるみを脱ぐのを手伝ってくれた部下達と一緒にね... あ、はい片目が閉じないから開けてみたらその袋が入ってて...着ぐるみの大事な部品かもしれないからそのまま入れておこうと部長か... 僕ならこう推理するよ... 僕に恨みを持った誰かが、僕が彼女とトイレにいたスキに下の階で社長を殺し、僕に罪を着せるために着ぐるみの中にそれを隠したと... あの着ぐるみは僕が会場に行くまで着替えの部屋に放置してあったし、君が言うキスの最中に射殺するなんてナンセンスな空想話よりよっぽど現実味があると思うがね... さぁ新米君、もう推理はネタ切れかい? もっとも...僕は君のバカげた百の問いに百の答えを返す自信が.. あなた...ここで彼女にネックレスを贈った時、こう言っていましたよね? 「君のピアスと同じピンクパールのネックレス」だと... どうしてわかったんですか?彼女のそれがピンクバールだと... フン...ない何言ってんだそんな物見ればすぐに... 彼女のピアスは今夜ここであなたと落ち合う前に衝動買いした物... つまりあなたはそのピアスをここで初めて目にしたわけだ.. 闇に限りなく近いこの空間ではパールはただの黒ずんだ玉...ここでそれを「ピンク」だと判別する術はないんですよ... あなたが彼女と口づけを交わした時に... この光の扉を開ける以外はね... さぁ答えてもらいましょうか大場さん? あなたがなぜその時扉を開けたかを... お、大場さん!あなたまさか... フン...なぜ開けたかだと?そんな答えは簡単さ... 父に誓ったからだよ... 必ず復讐を遂げるとね... 僕の父も結構大きなゲーム会社をやってたんです: 「今、計画中の米花センタービルに我々の城を築こうじゃないか」ってね... だが、その実態は合併ではなく吸収... 父が構築したゲーム作りのノウハウは全て奪われ、父の会社の社員だった人達は次々とリストラされて名ばかりの副社長だった父は、失意のため自殺... でもパパはあんなにあなたに目を掛けて... ああ...僕の父を死に追いやった負い目があったらしく、社長は僕をどんどん昇進させてくれたよ...社長を殺して君を手に入れ、会社を乗っ取ろうと目論んでいたこの僕を... 全てはゲーム...復讐のために悪魔の力を借りた主人公が魔王を退治する物語さ...しかしまさかエンディングまで父と一緒と... だがそれを見破られた..今夜の僕同様頭の切れる若い男にね... 悪魔の力を借りたしっぺ返しが来たってわけですよ... そ、そうか思い出した! ああ...あの推理小説家の... つまり彼が親から引き継いだこの復讐劇を、 親子二代に渡って解明されたというわけか... 頼む...オレの体... もう一度鎮まってくれ... 今、コナンに戻るわけには... あいつが待ってんだ... これは貸しにしとくわよ... ねえ聞いた?事件解決したらしいわよ! いよいよ会えちゃうわね、あなたのカレシに! そんな...彼なんかじゃ... はいこれ、クレジットカード! 新一兄ちゃんが渡しといてくれって... 小五郎のおじさんに頼まれて様子を見に来たら、新一兄ちゃんと会ったんだ! お、とお父さん来てるの? 何やってんだあのボウズ!! もう一時間もたってんじゃねーか!!! うん...下の駐車場に... こーなりゃオレが直接... それは大人気ないし... なんか新一兄ちゃんの携帯に電話がかかって来て、 この前までかかわってた事件が大変な事になったって慌てて出てったよ! また置いてけぼりか... 新一兄ちゃん言ってたよ.. いつか...いつか必ず絶対に... 死んでも戻って来るから... それまで蘭に待ってて欲しいんだって... コナン君がそんな顔する事ないのよ.. 悪いのは事件と聞いたら地の果てまで飛んでっちゃう、 あの大バカ推理之介なんだから! あ、そうだ!コナン君デザート食べる? あ、すみませんメニューを... なーにが「待ってて欲しいんだ」よ!わたしはあんたのお母さんじゃないってーの! でも何だったんだろー...新一の大事な話って... ねえ、コナン君気にならない? だいたいなーんでこんな高い店にしなきゃいけないのよ? たいした話もないのにカッコつけてバッカみたい! ハハ...言えるわけねーよ... ゲンを狙いだなんてな... 思い出のこの場所で.. 事件に遭遇すると見境なしに大立ち回りをやらかす推理フェチさんには、とてもじゃないけどあげられないわ!! 悪かったよ..次からはなるべく自重すっからよー... 言ったはずよ!あれはあくまで試作品...今回は偶然私がそばにいたから事無きを得たけど...いつまた幼児化するかもしれない不完全な薬を投与するわけにはいかないわ..次は本当に死ぬ可能性だってあるし... やっぱ白乾児の成分だけじゃ完成品は無理ってわけか... ええ...せめて薬のデータがないとね...まぁ正体がバレなかっただけでもよかったと思って我慢するのね... あーくそ!こんな事ならさっさと蘭に言う事言っときゃよかったぜ!! 波があってイケてるぞ! 悪いな...まだカゼ気味なんだ... ゴキゲンですね灰原さん... 何かいい事あったんだよ! 給食カレーだったからな♡ コナン君「本当に行かないんですか?杯戸町の屋内ブール: またここから出直しってわけね... あーあ...もう夏真っ盛りだっつーのに.. オレには当分春は来そーにねーなこりゃ... あれ息子さんもいらっしゃったんですか? いえ、こいつはウチで預かってる居候で.. 何なの?そのオルゴール...ところどころ音が飛んでるみたいだけど... オメーには関係ねーよ!あっち行ってろ! 小学一年生だけど細かい事に気がついてよく事件解決のヒントになったりするんですよ!! へー...小さな探偵さんってわけか... あ、そうだ!コナン君にも話してみる? もしかしたら春菜さんが捜してる人の手掛かりがつかめちゃうかもよ! お姉さんが捜してる人ってポケットベルの友達なの? ええそうなのよ..名前は秋悟さん! 知り合ったのは三年前..美術大学に通うために私が東京に来たての頃で: なかなか友達ができなくてさみしかったから、適当に番号を押して送信したのよ...「私の名前はハルナ。お友達になってくれますか?」って... そうしたらビックリ!「私の初恋の人の名もハルナです。これからもヨロシクお願いします」って返事が返って来て、 それ以来ずっとベル友なの! 何でも相談に乗ってくれるやさしいおじ様って感じの人でね... じゃあポケベルに「会いたい」って入れたら会ってくれるんじゃ... それがもう無理なのよ... 彼のポケベル私が預かっているから... あれは去年のクリスマス...バイトで学費を稼ぎながら学校に通うのがつらくなって来ちゃってね... 学校をやめて、田舎に帰る前にどーせなら一度会ってみようって渋谷のハチ公前で秋悟さんと待ち合わせをしたのよ... でもいくら待っても彼らしき人は現れなくて...あきらめて帰ろうとした時に、そばの紙袋からポケベルが鳴って... 中を見たら彼のポケベルと一緒に、 このオルゴールが入ってたってわけ! どうしてそれがその人のポケベルだってわかったの? そのポケベルにメッセージが入っていたの.. 「これはとても高価なオルゴールなので学費の足しにして、春菜さんの夢をあきらめないでください」ってね... でもそんな高価な物を受け取るわけにはいかなくて.. オルゴールを調べてもらったらもしかしたら持ち主がわかって返せるかもと思って骨董品店に持って行ったのよ.. でも店の人には「ただの壊れた古いオルゴール」だって言われるし... 私のポケベルに変なメッセージが入って来るようになるし... 「あんたに聞きたい事がある。今から示す場に一人で来てくれ」って... それで?行ったのそこに.. ううん...いつもの秋悟さんのメッセージと口調が違ってたし、私のベル番を知ってる友達もそんなの入れてないって言うし...なんだか怖くなって行かなかったの.. そしたらその目の夜に今度は「泥棒猫」ってメッセージが... どういうつもりか聞こうと思っても連絡の取りようがないし... もしかしたら秋悟さんと関係があるかもしれないと思って、この探偵事務所を訪ねたのよ.. 秋悟さんを捜してもらうためにね... で?その奇妙なメッセージは今も? いえ...しばらく続きましたけど今はもう... となると残る手掛かりはこのオルゴールだけだが... ちゃんと音が出ない古ぼけたオルゴールをいくら調べてもなあ、 そんな事ないと思うよ.. ホラ見てよ!このオルゴールのドラムについてるピンの欠けたトコ... 古くなって自然に折れたんじゃなく、無理矢理ねじ切ったって感じになってるじゃない... もしかしたらオルゴールに何かメッセージが込められてるかもしれないね! そうねぇ...曲は「春よ来い」だから抜けてる音は最後の方の「ライと「ド」と「ラ」: 「ラドラ」?怪獣じゃあるまいし.. 抜けてるトコの歌詞ってわかる? えーっと歌詞は「おんもへ出たいと待っている」だから...抜けてるのは「も」と「出」と「る」.. そうかモデルだ!!その秋悟さんモデルなんだよ!! よーしそうとわかりゃモデル会社を片っ端から... そんな事しなくても、本人に直接会いに行った方が早いんじゃない? バーカそれができねーからこーやって.. だって秋悟さんのポケベルの番号わかってるんでしょ? だったら高木刑事とかに事情を話して、ポケベル会社に問い合わせてもらえば住所ぐらいわかると思うけど... さーすがコナン君ね!! 住所も電話番号もわかっちゃうなんて!新一より才能あるかもよ! 別にわかったのは高木刑事のおかげだよ... フン...戦権監用だな... でも本当に家に伺ってもいいって言われたんですか? ええ...電話に出られたのは秋悟さんじゃなかったみたいですけど... 秋悟さんがポケベルにはまってたのを家族のみんなは知ってらしたみたいで.. 秋悟さんから預かってるポケベルとオルゴールを返したいって言ったら「ぜひ来てください」って... 秋悟さんどんな人が楽しみですね! ごめんくださーい!春菜です!! あら、一人でいらっしゃったんじゃなかったんですね... あ、我々は付き添いというか... まあ話は後でいいだろ母さん... せっかく噂の「ハルナ」さんが来てくれたんだし... とりあえず部屋でゆっくりしてもらおうよ.. なんたって彼女は、おじいちゃんの心の支えだったんだから... そうね...とりあえず線香でもあげてやってくださいな... せ、せっ線香って... な、亡くなられたんですか? ええ...去年の暮れにポックリ... 秋悟さんってモデルだったなんて事は... それで?義父様から預かったというオルゴールは.. とても高価な物とお聞きしたのでお返しします! あら...この曲って... 母さんがよく琴で弾いてた曲だな... 母さんって、もしかしてあのお写真の.. ええ...父の横の写真が三年前に他界した母の春奈です... きっとおじいちゃん、春菜さんの事を死んだおばあちゃんと重ね合わせていたんだと思います... 「ハルナが帰って来た」ってとても喜んでましたから... それで...?オルゴールの中には他に何か入っていませんでした? ホラ、たとえばその... しかし、あのお年でポケベルとは洒落た方だったんですなー... いえ...義父様、義母様が亡くなってから夜遅くまでブラブラ散歩されるようになって...心配で持たせていたんです 四枚組で時価二億円の「手彫り切手」とか? この家にわざわざ来たって事は.. 祖父に隠し場所を聞いて家捜しに来たんだろあんた... まあすぐに化けの皮をはいでやるさ.. まあゆっくりして行きなよハルナさん? 気にしないでくたさい...稔は自分の会社がうまくいってないらしくてイラついているだけですから.. まあ今日はもう遅いし、せっかく来られたんだから泊まられてはどうですか? 父との思い出話を色々聞かせてくださいよ! ふへー食事中質問質問質問攻め... 春菜さんかわいそうだったなぁ... ねぇ...おかしくなーい? ホラ見てよ秋悟さんの位牌の裏! つまり春菜さんの話を信じるとすると... クリスマスにあのオルゴールを彼女に渡したのは... 秋悟さんじゃない別の誰かって事だよね? さあヤな事は忘れて早く寝ましょ... 左にはオレ達の部屋しかないじゃねーか!! あ、いや娘が妙な人影を見たなんて言うもんで.. そういえばこの前泊まったお客さんが言ってたわね...枕元に誰かが通る気がするから、部屋を替えてくれって... ま、前にもあったんですか? でも、この家には私達しかいないし... おいおい今度はなんだ!? なんかの弦が切れたような音がしたけど... まさか母さんの琴が置いてある部屋なんじゃ.. ちょ、ちょっと待ってよ! とにかくそこに行ってみましょう! おい稔、しっかりしろ!! 「マッテタヨハルナ」...? 秋悟さんからのメッセージ!? じゃあまさかさっきの怪しい老人の影も... この事件もみんなあんな... 去年亡くなったあの秋悟さんが... 人間死んじまったら何にもできねーんだよ!! くだらねー事言ってるヒマがあったら、警察を呼べ!! 人を勝手に殺すなよ... いったい何があったんだよ!? 知るか!突然硬い物で頭を殴られたんだ... まさか春菜さん、オレを殴ったのはあんたじゃないだろーな!? じゃあいったい誰が... だって大きな音がした時、みんな蘭姉ちゃんの部屋に集まってたもの..ねえ! 誰って...お兄さん犯人の顔見たんでしょ? だってホラ、お兄さんのケガオデコにあるじゃない!正面から殴られたって証拠だよね? フン!暗くて顔なんか見えなかったよ... え?じゃあ殴られた時もこの部屋暗かったんだ? ああ...暗闇の中で妙な音と気配に気づいた時にはもう遅かったよ... でもさー変じゃなーい? お兄さん、そんな暗い部屋の中で、 バーカ!きっと稔さんは誰かがいる気配を感じてこの部屋に入り、電気をつけようとした時に潜んでいた何者かに琴で殴られたんだよ! じゃあ春菜さんのポケベルに入って来たこのメッセージは? ああ...それはたぶん彼女の友達だよ... きっと春菜さんは今夜、友達の誰かと待ち合わせをしていたんだ...だが、彼女はそれをすっかり忘れてここへ来てしまった..つまりそのメッセージは「ずっと待っていた」という友達からの苦情... いえそんな覚えは... まあ今日は色々ありましたから忘れるのも無理ありませんよ.. だったらわたしか見た老人の人影は? もしかしたら兄さんを襲った犯人なんじゃ... でも杖をついた老人が重い琴で人なんか... フン!そんな事謎でも何でもない.. たぶんおまえの気のせいだ... とにかく警察に連絡を! お花けお化けっていつも怖がってるから、んなもん見たような気になっちまうんだよ! ちょ、ちょっと待ってよ!わたし本当に.. 我々以外の誰かがこの家に潜んでいたのは確かですからね! 誰も侵入した形跡がない!? ええ...雨で家の周りがぬがるんでいるのに、忍び込んだ足跡はどこにも見当たりませんでした 雨が降る前に侵入していたとしても、出て行った跡があるはずですし... じゃあまさか、まだ犯人はこの家の中に... あ、それはないです...あなた方が部屋で警察の方が来るのを待っている間父達と家中を調べましたから... 気になったのは開きっ放しになっていた裏口の門ぐらいたよな? ああ...あそこの鍵壊れていて、風で自然に開いてしまうんです... 前から直そうと思っていたんですが... しかし気になりますなぁ、その裏口... なんならご自分の目で確かめてみます? ウーーーム確かに... ありませんな足跡は.. ここに足跡でもありゃ聞かあの部屋の前で見たっていう妙な人影も、まんざら勘違いじゃなくなるんだが... だから本当にわたしは見たの! すみませーん車ズラしてもらえます? なんなら家の中に入れちゃってください...ここはこの辺の方達の帰り道になっていますので: 何かあったんですか?緒方さん... いやちょっと泥棒に... とりあえずもう一度事情を整理しながら、家の中を調べてみましょう.. えーっとお嬢さんが怪しい人影を見られたのは.. この廊下をここから向こうに.. 杖をついた老人が... じゃあその奥の部屋に逃げ込んだんじゃ... いえ...あの仏間には私がいたので、それはありませんよ: しかしそうなると本当にお化けか何かの仕業になっちゃいますよ? ねぇこの隣って誰の部屋? で、でもわたし見たんです! ああ...私と妻の部屋だ... この部屋の中で障子越しに人影を... ウソじゃありません、私もチラっと見ましたから... お嬢さん達が人影を見た時、あなた方はこの部屋にいらしたんですか? いえ...妻と息子の志郎と三人で台所に... い、いたのか犯人が!? あ...いたんじゃなくて「痛い」..畳に落ちてたヘアピンを踏んじゃってさ.. ーったくナョロチョロしてんじゃねーよ... ちなみに三人で台所で何を...? それで...?ケガをされた方の息子さんはその時台所にはいなかったんですか? ええ...稔はてっきり風呂だと思ったんですが.. 志郎に怒られていたんですよ... 「せっかく来てくれた春菜さんに、根掘り葉掘り聞くのは失礼だ」って... あ、いえ実は私、亡くなったこの家のおじいさんの秋悟さんとベル友で...会話の内容とかを色々質問されたんです!! ああ...兄さんと三人で何度も可度も尋問みたいにしつこくな! でも私、別にイヤじゃなかったですよ... 秋悟さんの影響で私も切手を集め出した事とか思い出話も話せましたし、私からも質問して秋悟さんの事が色々わかりましたから... 本当にやさしい方だったんだなぁって... 「またお邪魔してもいいですか」って聞いたぐらいですから... 別に気になさらないでください... 切手といえば稔さんが言ってたな...二億円の手彫り切手がどうとかって: もしかしたら今回の事件とその切手、関係があるかも... ああ稔ならこの隣の自分の部屋にいると... ジイさんのコレクションの中でもその飛びっ切りの手彫り切手がな... それをあてにして色々物を買い込んだオレ達は大慌て... 家中捜したが見つからずじまいってわけさ... ああ...この事はオヤジ達も知ってる事だ... 切手捜しに目の色を変えていなかったのは... おじいちゃんっ子だった弟の志郎ぐらいだよ... なるほど...だから春菜さんを質問攻めにしたんだな... もしかしたら秋悟さんが亡くなる前にベル友の彼女に切手を渡したんじゃないかと思って... まあオレはまだ疑っているがな... お兄さんの部屋ってこの隣? ああ...そうだけど... おじいちゃんとおばあちゃんの部屋だよ... 稔さんか琴で襲われた部屋! そうか...だから稔さんは明かりを.. だいたい読めてきたぜ... この事件のカラクリが... 残る謎は、蘭が目撃した人影と春菜さんが秋悟さんにもらったという音が途切れたオルゴール... 一応あのオルゴールを参考にして、音の配列は書き出してみたけど.. 何がなんだかさっぱり... あら、それって例の「春よ来い」の楽譜じゃない!どうしたの? た、たまたま音楽の宿題で... 貸して!ちゃんと書いてあげるから! ねぇ、この三つの「キ」って何なの? ああそれ、イ長調の事よ! では、今日はこれで帰りますが、また何かあったら連絡をください! 結局、泥棒だかお化けだかわからなかったな... コナン君見ませんでした?ちょっと目を離したスキにどっかに行っちゃって.. この家で起こったお化け騒動も... 不可解なボケベル相手も... あの謎めいたオルゴールの意味も... あんたがこの家に隠した... とっておきのコレクションのありかもな!! 芦花屋さんのと見ているあ よーし謎は解けた... 後はいつものように小五郎のおっちゃんを眠らせ... コォラ!毎度毎度ヂョロチョロしやがって ホラ、帰るよ!今夜ここにいるとロクな事ないから志郎さんが車で家まで送ってくれるってさ! 帰っちゃうの?せっかくボク面白い事に気づいたのに... そうそうその位置... じゃあもう少し右に寄ってみれば? なるほど..そういう事だったか... 蘭!この部屋にみんなを集めろ!今夜この家で起こった事件は解決したってな! 黒い紙とハサミとセロハンテープを借りて来てくれ... 泥棒見つけたんだろ?どこにいるんだよ!? そんなのは最初からいませんよ... だって解決したって.. まさかあんたまで父の幽霊の仕業だなんて言うんじゃ... もちろんそれもありません... 蘭が怪しい老人の影を見たのも、稔さんが琴で頭を殴られたのも、春菜さんのポケベルに奇妙なメッセージが入ったのも、 みーんな、このお化け騒動を起こすために仕組んだある人物の仕業ですよ... この家の住人であるあなた方の中の一人のね... まあ、お化けめいた事は以前にも起きていたようですが... 春菜さんが秋悟さんにもらったという例のオルゴールがそれですよ.. その話なら彼女から何度も聞いたよ!おととしのクリスマスにジイさんがこっそり渡したっていうアレだろ? でもあのオルゴールは音が途切れているだけで別にお化けめいたところは... 私がオルゴールを受け取ったのはおととしじゃなく去年のクリスマスなんですけど.. バ、バカなそんなはずはない!? それどころか去年の春からお父様はずっと入院されていて、とても動ける状態じゃ... おいおい何がどーなってんだ? 誰かが秋悟さんのフリをしてオルゴールを、ハチ公前で待っていた春菜さんの足元に置いただけの事... ほ、ほんと本当なのか? 「ワシが入院してからもこの娘を頼む:妻の春奈によう似てさみしんぼうだから」って... じゃあもしかして去年の春から... ええ...僕がおじいちゃんの代わりにあなたと交信を... ポケベルの使い方をおじいちゃんに教えていたのは僕だったし...送信するメッセージの内容も色々相談されて把握してたから... 本当はクリスマスにあなたと会った時全てを話すつもりだったんですけど... 目印の赤いマフラーを巻いて期待して待ってるあなたの顔を見たら言い出せなくなっちゃって..もうあなたをたますのは終わりにする意味でおじいちゃんのポケベルも紙袋に入れてあなたの側に... そ、そうだったんですか... 本当にすみませんでした.. でも、よく僕だってわかりましたね? やっぱ変でした?食事の時の会話で僕、おじいちゃんの死んだ日の話にいかないようにしてたから... いや...私は最初からオルゴールを渡した人物はあなただと踏んでました... 玄関先であなたに会った時点でね... あの時あなたは春菜さんの肩を押しながらこう言いましたよね? 「なんたって彼女はおじいちゃんの心の支えだったんだから...」 あの時はまだ自己紹介をしていないしそばには蘭もいた... にもかかわらずあなたは話でしか聞いてないはずの「ハルナ」さんを迷わず選んだ... それでピンときたんです...この人は春菜さんの顔を知っている... もしかしたらオルゴールの渡し主じゃないかとね; じゃあまさかおまえ...彼女にしつこく詮索するオレに腹を立てて琴で... 違うって!僕は兄さんが殴られた時も蘭さんが妙な人影を見た時も、父さん達と一緒にいたんだから... ボクずーっとここにいたよ! ウソ...だってさっき.. 廊下のガラスを見てみれば? おじさんに言われて貼りつけたんだ! ボクの形に切った黒い紙をね! つまりこういう事だよ... 蘭が見たのは人影じゃなく、ガラスに張られた老人を形取った紙の影... それを映し出したのは裏門からさし込んだ車のヘッドライトだったってわけだ そういえば人影を見た時シャアアって音が... それはたぶん、雨でぬれた道を車が通った音だよ... なるほど...そうすればこの場にいなくても人影を見せられるという事か... 志郎...おまえにもな... だからー兄さんが殴られた時も僕はここに... それも、この部屋にいてできるんです... テグスとヘアピン:そしてセロハンテープを使った... よくある仕掛けでね... その人物はそれを使ってここから離れたおじいさんの部屋の琴を天井から落とし、それが偶然その部屋にいた稔さんの頭に落ちてきたんですよ.. あの部屋でこっそり琴を調べようとしていた稔さん... あなたの頭上にね... 食事中の会話で春菜さんがおじいさんにもらったオルゴールの曲が昔おばあさんがよく琴で弾いていた「春よ来い」だと知ったあなたは調べたんだ...もしかしたら例の手彫り切手は、琴のどこかに隠されているんじゃないかってね... し、しかしいくら琴が天井から落ちてきたといっても、頭までの距離が短いから気を失うようなケガはしないと思うが... それに琴を調べようとしていたのなら明かりぐらいつけるはずでしょ? でも僕達が駆けつけた時、あの部屋の明かりは消えて真っ暗だったじゃないですか! そう...稔さんは明かりをつけなかったんじゃなく、つけられなかったんですよ... 犯人の仕掛けによって電灯が天井近くまで上がっていて、 稔さんは暗い中、そのヒモの位置がわからなかったんですから... ええ...恐らく稔さんは床に置いてあった琴を暗闇の中手探りで捜し、自分の部屋に持ち帰るつもりだったんでしょう..その時運悪く夢が落ちてきたんです!! 琴を落とす仕掛けは簡単!まず、タンスかなにかの上に琴を上げておき、その弦にテグスを通しそれを電灯に引っ掛けて... その両端をおじいさんの部屋と志郎さんの部屋の間の欄間に通し、稔さん、緒方さん夫婦の部屋の欄間を経由して長さを計って結び、蘭達の部屋のフスマの間にヘアピンで留め、琴をタンスから下ろしてぶら下げれば準備は完了!! 後は蘭の部屋のフスマを少し開ければヘアピンが外れ、自動的に琴が落ちるって算段だ... ちょ、ちょっと待ってくれ... ええ...今夜幽霊騒動を起こしたのは あの時フスマを開けた... それはたぶん、春菜さんに例の手彫り切手を捜されたくなかったからですよ... そう...和子さんがこの仕掛けをしたのは恐らく食事中:フトンを敷くと言って台所から抜けた時... そして老人の影を見た蘭達の悲鳴を聞いてこの部屋に駆けつけ、なにげなくフスマを開けて琴を落とし、 さらにみんながおじいさんの部屋に出払ったスキに窓ガラスの紙をはがし、携帯電話で春菜さんのポケベルに例のメッセージを入れて・恐怖心をあおったんだ... 春菜さんを怖がらせてこの家に近づけないようにするためにね... で、でももし老人のあの人影にわたし達が気づかずに寝ちゃってたら... たぶんポケベルを鳴らして起こすつもりだったんだよ... 裏門の前の道を夜通るのはこの辺りの住人の車...だいたいの帰宅時間は予測できるからね... し、しかし何メートルもあるその長い糸を妻はいつ回収したって言うんですか? 母さんはすぐに僕達の後からおじいさんの部屋に来ていたから...窓の紙をはがし携帯電話をかけながら糸を巻き取ってるヒマなんて... きっと奥さんは...糸の結び目を切ってその片方の端をこの部屋に引き入れて... テープで留めたんだよ... この扇風機の羽根の裏にね! な、なるほど..それなら自動的に糸を巻き取ってくれるってわけか... しかし信じられん...そんな大掛かりな仕掛けを、台所から抜けたスキにおまえが思いついたなんて... なんたってこの糸の仕掛けはこの子達が子供の頃にやったイタズラを参考にしてたんだから... じゃああの老人の影も... いいえ、あれは前にウチに泊まったお客さんが窓にくっついた木の葉の影を人の影だと勘違いしたのを思い出して: 理由はその人の言うとおり:春菜さん、切手を集めてるっていうしまた来たいって言うから、「やっぱりこの娘の目当てはあの切手!何度も来て捜す気だ」って怖くなっちゃってね... あの...もしかして前にポケベルに「泥棒猫」って入れたのは.. それも私...ごめんなさいね... でもひどいよ母さん...そんな事でおばあちゃんの琴を落として壊すなんて... ああ...あんなの壊れたって平気よ... 実は本物の琴は質に入れてよく似た安物と替えてあったのよ...私が入れたシステムキッチン、あなたの新車、稔のバソコン...も〜家計は火の車になっちゃって... じゃあおじいちゃんがくれたあのオルゴールを売るしかないか.. あ、でも私一応調べてもらったらただの民芸品だって... 変だなぁおじいちゃん言ってたのに.. 「おまえがワシの影武者になる礼に、見る人が見れば二億の価値があるこのオルゴールを授けよう」って... その価値はオルゴールその物ではなく、途切れた音にあったんですよ... に、二億?あのオルゴールが? あれ、昔父さんが温泉で買ったみやげ物だぞ? ジイさんに担がれたんだよおまえ... 日本特有のイロハ表記に直すと「イ」と「ハリと『イ」: ありがとうございます、これで琴も買い戻せます!! すべてあなたのおかげです!! あなた何者なんですか? 春菜さんの御親戚の方だとお聞きしましたけど... わかってたら切手捜しすぐにお頼みしたのに!! 毛利小五郎と申しまして... それならそうと早く言ってくれよ!! 稔もケガせずに済んだんですよ!! 色々お世話になりました! いえいえこちらこそ... でも本当にいいんですか?もしかしたらあの切手、秋悟さんがあなただけに贈った物かも... いいんです僕はもっと価値ある物をもらいましたから... このおじいちゃんのポケベルですよ! 春菜さんが僕に渡してくれたんです...「これからも勇気をいただけますか?」って... 本当にありがとうございました! 来たーんたなこれが... 名探偵コナンの少年サンデーコミックス 車で書籍制作会社株式会社社昭和ブライト