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Instructions:
野田サトル
★この作品は、著者かラー原画に加え、著者の原画をもとに
集英社でデジタル彩色を行った特別編集版です。
野田サトル
ゴールデンカム
...
はい、いいん
第13話、見ける...
ありがとうございます。
第2話「世話...
残念ながら、医師の服装って
第2話「猟師の魂...
第2話「ユク...
第2話、生き抜くいや、直ぐ...
あの時、目の前...
第27話、殺しの匂い...
53.Blightお別れは
野田サトル
この作品はフィクションです。実在の人物・同時・事件などには、いっきい関係ありません。
...
何の音だ?
第8話「裁出作戦
第18話・数出作戦
あれが第七師団の
兵舎だ
30人ほどが
出入りしてる
昔は商店だった
建物らしくて
窓に鉄格子があり、
入口に警備の兵が
一晩中立っている
あいつの
強さは
あの連中を
相手にするのは
危険だぜ
助けに
いったところで
手遅れになってる
かもよ
杉元は
絶対に
生きてる
死の恐怖に
支配されない心だ
不死身の杉元も
さすがに
悪運が尽きただろ
簡単に死ぬような
やつじゃない
たいていの人間は
ヒグマに襲われると
銃があっても動けない
死の気配に捕まって
冷静さを失い
体が硬直する
でも杉元は違った
あいつは自分から
死神にギリギリまで遊づくことで
生き延びる活路を見いたす
並外れた度胸で
立ち向かったから
死ななかった
ヒグマの東穴に
飛び込むような奴は
父以外に私は知らない
だからあいつは
不死身の杉元なんだ
おい
やめろ!
殺すなと
言われてる
だろうが
お仲間が来て
命拾いしたなぁ
兄弟仲良く
ぶっ殺して
やったのによぉ
バラバラに
刻んで
豚のエサに
混ぜてやる
あの兄弟を
杉元に
近づけるな
はいっ
お前ら
入ってくんのが
おせえんだよアホ
わざとデカい音
たてたんだから
スッ飛んで来いよ
暴れなきゃ指を
切り落とされる
とこだったぜ
手足を拘束され
てるのに
とんでもねえ
野郎だなコイツは
......
しぶとい
野郎だ
え?
杉元の野郎
生きてやがった
監禁されてる
ってことは
刺青人皮は
どこかに隠してる
ってことか
でも
いずれ口を
割るかもしれねえ
あの鉄格子
古くて錆びてた...
本曲げれば
俺なら関節を外して
侵入できるな
俺は博打が好きだ
おまえらに
張ってやる
わかった...
私は金塊に
興味はない
杉元を助け出すのに
協力するから
見つけたら
杉元と
分け合えばいい
俺に金塊の
分け前を寄越せ
作戦はこうだ
鉄格子の枠の四隅に
長い縄をつけておく
俺が中へ侵入して杉元の拘束を解き
俺が中へ侵入して
杉元の拘束を解き
お前さんに合図する
お前さんに合図する
兵舎のそとにある
馬小屋に
馬がいるから
前もって縄を
つないでおき
合図で走らせて
引かせろ
鉄格子を枠ごと外して
一気にすばやく脱出する
ところで
石鹸もってねえか?
体に塗れば
滑って鉄格子を
通り抜けやすく
なるんだが
馬じゃなくて
レタラじゃ
だめか?
馬のほうが
重いから確実だ
無い
調理用の
ひぐまの
油ならある
「ピセ」
熊の胃袋で作った容器
この袋に水や
さまざまな動物の油を
入れて貯蔵した
刺された傷は
肋骨が
防いでくれて
深くはないが
あの双子
必ずまた
来るぞ
カタッ
...
なんとかしねえと
次はやられる
お邪魔するぜ
妖怪?
脱獄エの
自石だ
おお...
なんでお前が
ここに?
おっかない
アイヌの娘っ子に
毒矢で脅されたのさ
アシㇼパさん
今度は何だ?
馬が何かに
怯えてる
レタラの匂いだ
馬たちに
気付かれて
しまった...
馬泥棒か?
まずい
問題発生だ
いいから
とにかく
手錠を外せ!
野犬だろ
捕まえて
食うか?
浩平は外で
見張ってろ
誰も入れるな
殺してから
拘束を解けば
「逃げようとしたから
やむを得なかった」と
一応言い訳が立つ
あれ?
おい洋平
銃は使うな
よこせ
銃剣でやれ
拘束を解く前に
銃声で
みんなが来ちまう
そのため、こんなに
歯抜け野郎
扉をあけた
ときには
すでに中は
あの有様で...
腸が...
ながくは
もたん...
まさに風口の蝋燭だな
杉元...
助けろ
刺青人皮でも
なんでも
くれてやる
馬橇の
用意が
できましたッ
第19話、駆ける
街で一番の
病院へ
連れて行け
医者の頭に
銃を突き
つけてでも
たたき起こして
治療させるんだ
最善は尽くす
お前も
それに報いろ
いまわの際を
悟ったら必ず
俺は絶対
死なんッ
私も馬で
あとを追うから
杉元に声をかけ続ける
いいな?
死ぬ前にありかを
聞き出せ
刺青人皮の
隠し場所を
伝えろ...
いいな?
はい!
それ行けッ
はいやッ
「駆ける
第19話
私の馬の
用意はまだか?
ほかの馬が
何かに怯えて
いまして
数を載せるのに
手こずってます
この死体...
妙だな
右手に
深い傷がある
防御創か
これでは
銃剣を持つことも
難しいはずだ
貴様ほんとに
こんな手で
杉元と刺し違え
られたのか?
どうなんだ?
左手は無傷なのに
どうして持ち替えない
杉元が死体に
握らせたのか?
むむむ?
この帯革〈ベルト
......
裏側にまで
血濡れた指紋が
付いている
なぜ殺したあとに
締め直した?
杉元...
ふん.
おい起き上がるな
出血がひどくなるぞ
だれか
落ちたのかぁ?
はらわた
腸を盗みおった
オラ行けぇ
走れ走れッ
!
杉元は
曲がれって
言ってんだよ
この馬野郎
そこを曲がれって!
!!
//
ゲッ
今日は
やめておこう
あの馬..
何が起きた?
銃声は
聞こえなかったが
!
なんなんだ?
この傷は...
これは
食べられないよ
アイヌの矢毒は
獲物が死んだあと
傷口に集まるので
こぶし大の肉を
切り取って捨てれば
あとは食べられたという
中尉殿ッ
何者かが
火を.....
杉元...
いや
離れて
ください
杉元一味に入れ墨を
集めさせたほうが
効率がいいな
奴らの方が
一枚上手だ
弾薬に引火します。
鶴見中尉殿
申し訳ありません
火の回りが
早くて...
中尉殿の部屋の
刺青人皮を
持ち出せ
ませんでした
それは無事だ
おかげで
暑いわ
あついぁつい
どおりで
探しても
ねえわけだぜ
変態中尉め
止まれ
止まれぇ
どうどう
どう!
アシリパさん
......
格好つけて
出て行ったのに::
助けられ
ちまった
ざまあ無い
ッ!!
ギャー
第20話
喰い違い
さて...
この馬
どうするね?
え?
どうする
ねって...
この馬は
軍が使ってた
ものだし
売ったら
アシがつく
かもしれん
置いていくには
惜しいし
いやいや
連れて行くには
目立つ
今後どんな
落とし穴があるが
わからねえ
ホラ
もうこんなに
俺になついてる
ケチケチしないで
証拠隠滅に
処分したほうがいい
レタラにも
ご褒美を
あげたい
......
決まりだな
馬肉と言ったら
やっぱ桜鍋だよな!?
浅草の吉原で
一度食べた
ことがあるんだ
あれは
ウマかったなぁ
さくらなべ?
それって
どんなものだ?
馬肉を
すきやき風にして
食べるんだ
東京で
流行ってる
料理さ
す.....
すきやき?
美味いのか?
それ
すきやき
食ったこと
ねえのかい
つまいそ~
ちょっくら
近くの農家を
あたってみるわ
......
......
桜鍋にするなら
卵が必要だな
気まずい...
いいや
毛皮は
捨てる
ある猟師が
盗人に獲物を
横取り
されたとき
猟師は毛皮商人の
もとへ先回りして
毛皮の特徴を
伝えておいた
そうか...
そういう
危険も
あるのか
さてと
こいつは毛皮を
剥ぐのも
大仕事だな
それで毛皮を
売りに来た盗人が
捕まった話がある
杉元
その顔...
酷く
やられたな...
まだ
腫れてるぞ
体も傷だらけ
なんだろ?
お前は
休んでろ
アシリパさん...
金塊を探す道ってのは
こういうことなんだ
捕まって
もっと酷い目にあって
殺されるかもしれない
もしも
アシリパさんの身に
何かあったら
私が
お荷物だと
言いたいんだろう
いや...
そういう
わけじゃ...
俺は...
おはあちゃんや
村のみんなに
申し訳が立たない
!
なに!?
顔に
貼っておけ
馬肉には
腫れや内出血を
鎮静させる効果が
あると聞いた
私は..
すでに
父を無残に
殺されている
危険は
覚悟のうちだ
杉元と一緒なら
目的が
果たせるかも
しれないと...
私が自分で判断
したから
協力すると
決めたんだ
......
私を子供扱いして
相棒として信用せず:
ひとりで
軽率に行動して
捕まったのは
お前じゃないか!
卵のほかに
キャベツと
ゴボウが
手に入った
ごくろー
さん
砂糖と醤油と
酒も分けて
もらえたぜ
この軍服の
おかげだな
なんなんだ!?
オマエら
雰囲気
悪いぞ!
これから
ご馳走だって
のによう
まだケンカ
してんのか?
夫婦喧嘩は
犬も食わねえから
ほっとくけどよ
うまい鍋食って
仲直り
しようぜッ
肉が桜色に
なったら
食べころだ
溶き卵に
からめて...
頂きます!
ハグハゲハグ
うまい!!
こりゃたまらんな
アシリパちゃん!
卵は混ぜる
んだぜ
こうか?
くう~~
うめえ!
あっさりした馬肉に
コクのある味噌との
相性が抜群だな
味噌の分量も
完璧だったな
味噌ダレが
最高に効いてる
杉元ぉ?いまの本当か?
お元ぉ?
いまの本当か?
これオソマが入っているのか?
これオソマが
入っているのか?
なに?
オソマ?
アシㇼパさん
実は...
桜鍋には
味噌が
欠かせないんだよ!!
アシリパちゃん
味噌が嫌いなの?
嫌いというか
うんこだと
思ってる
うんこ?
アイヌと
和人の違い
なのかねぇ?
ずまんすまん
アシリバさん
意外な部分で
分かち合え
なかったり
するんだな
肉はまだ
たくさんある
カタン・
味噌なしで
作り直そう
は.....
はあ...
はっぷ...
はっぷ
はっぷ
アシ...リパさん..
はっぷ
はっぷ
オソマおいしい
わわっ
オソマおかわり!
うんこじゃ
ねっつーの...
何だか
わかんねーけど
気に入った
みてえだな
ヒンナだぜ
ヒンチヒンナ
亡くなった
親戚の家です
ご自由に
使ってください
当座の資金と
ロシアの
商人から
試供品として
外国製の
最新式の銃を
いくつか
私に出来る事は
これくらいしか
ありません
充分だ
礼を言うぞ
土方さん
驚くほど若々しい
ですな.....
年上とは
思えない
私も
もう少し
体が動けば...
一緒に走るには
歳をとり過ぎました
嘘をつけ
新撰組にこだわり続けた
貴様の血が
減らんわけがないだろう?
...
永倉
永倉?
まさか
このジジイ...
新撰組
最強剣士といわれた
あの...
...
永倉新八』!?
おい
新撰組の
老いぼれ共
あんたら...
ただの
金塊目当てじゃ
ないな?
インチェスターライフル・M1892
装弾数件発
ポーチャードセストの
装弾数8発
今から会う
渋川妻次郎という男は
入れ墨を持つ
囚人ではないが
最近になって
榊戸集治監を
出所した
盗賊団の頭首で
手下からの信頼も厚い
昔の手下を再び集めて
小樽近郊に潜伏している
という情報をつかんだ
手下ごと仲間に
引入れようって
もくろみがい
いきなり
押しかけて
うまくいくかね
昼間に使者を
送ったが戻らん
そら
もうこじれてる
じゃねえか
ならず者を率いる
渋川善次郎の手腕は
是非ほしい
間違っても
渋川は殺すな
こっちは
俺とジジイと
若いごろつきで
合計8人
永倉じいさんの
情報じゃあ
盗賊団は12人
交渉が
決裂したら
そのときは
不利だぜ
いつだって頭数は
当てにならんかった
戦力になったのは
命を捨てる覚悟が
出来ていた者だけだ
生き残りたくば
死人になれ
久しぶりだな
渋川善次郎
おいコラ
誰に断って
入って来て
やがんだ?
めんこい坊主だ
ホレこっちゃ来い
高い高いッ
武之助~!
あんたが
網走に移されて
以来かい
棒戸じゃ
世話になったよなあ
使いの者を
送ったはずだが?
ああ...
痛めつけたら
べらべら
しゃべったぜ
アイヌの埋蔵金...
面白そうな話だ
協力するか
殺し合うか
どちらか
選べ
あんたの入れ墨
見せてくれよ
出所祝いだ
受け取れ
外から包囲するために
待機させていた
お前の手下どもたろう?
......
襖の向こうにいる
連中にも武装を
解除させろ
負けたよ
樺戸じゃあ
おとなしい男だと
みんな
騙されていたが
俺はハナから
おっかねえ奴だと
見抜いてたぜ
ブッ殺せ...
あ!
ぎゃっ
うおおお
けど
そういうことで、
皆殺しだッ!!
ひとりも
ここから
逃がすなッ!!
これが
新撰組副長
鬼の顔か...!!
人は死すべき時に
死ななければ
死に勝る恥が
あると云います
老い先短い
この歳になって
戦争を起こそう
だなんて
正気の沙汰とは
思えません
あなたは死に場所が
欲しいんじゃ
ないのかね?
土方さん...
私は
あと百年生きる
つもりだ
こいつは近藤さんの
器じゃなかったな...
......
引き上げるぞ
あんた...
本気で新撰組を
作る気か?
悪いが俺は
金塊にしか
興味ねえぞ
蝦夷地を
独立させたい
人間は大勢いる
誰が北海道
占領なんて
夢物語を
信じる?
どこにいる
ってんだ?
遥か昔から
この地に
住んでいる
アシリパ...
脱糞王はどこいった?
脱獄王は
街へ行って情報を
集めてる
俺はしばらく
街へは近づかない
方が良さそうだ
あ...杉元!
あれを取りたい
カエテの枝が
折れたところから
樹液が染み出して
ツララになったんだ
カエデの樹液を集めて
煮詰めたものが
メーフルシロップである
ツララを
どうするんだ?
食べる
ほんとだ
ほんのりと
甘みがある
天然の
氷菓子か
先っぽが
一番甘いんだ
見ろ杉元
エゾシカの
足跡だ
まだ
新しい
近くにいるかも
しれない
よし!
じゃあ追うか
アシリパさん
エゾシカって
美味いの?
脳みそに
塩かけて食うと
美味いぞ杉元
第22話「伝説の熊撃ち
杉元遅いぞ
鹿に追いつけ
なくなる
ちょっと...
待ってくれ
疲れた
雪が...
表面は硬いのに
下は柔らかいから
ズボズボ
足が取られて
適称「モナカ雪」
と呼ばれる雪質
情けない
シサムだ
ほら杉元
コレでも噛め
私たちは
フフチャと
呼んでいる
じゃあ
少し
休憩するか
アシリバさんは
山歩きに
慣れてるし
体重も軽いから
いいけどよぉ
トドマツの
葉先だ
葉っぱ食うの?
噛んで
露だけ吸って
吐き出すんだ
栄養がある
山で疲れたら
フフチャを噛むと
元気が出てくる
枝ごと採って
火であぶり
白湯にいれて
飲んだりもする
へー
ぱあああぁぁッ!!
苦げぇ
松脂臭えしよぉ
ホントに
効くのぉ?
これぇ!?
野性味溢れる
山の味はお上品な
シサムのくちに
合わんかもな
なにその顔ッ
やっぱ
アシリパさんも
苦いんじゃん!!
本当なら
生で噛む場合は
春の新芽が
いいんだ
やわらかいし
ああ~
水...
水が飲みてえ
苦いんじゃん
苦いんじゃん
アシリパさん
水ある?
水ちょうだい?
アシリパ
さん
ちょうだい?
ねえ...
ちょうだい?
アシリパさん
ちょ...
すごい
ちからだ!!!
杉元それはな
「クヨイ」といって
鹿の...
ドアッ
勝胱で作った
水袋なんだぞ
知らねーよ
あああぁ~~~
水飲みたいよぉぉ
川は近くに
ないのぉぉ?
無い
火を起こして
飯盒で
雪を溶かせば
いいだろ
アイヌの
うんちくぅ!
めんどくせえなぁ
雪を食べるか
やめろ!
雪を溶かすのに
体力を使うし
体が冷える
この蔓を
切ると...
樹液が大量に
出てくる
あ!杉元
いいものがあったぞ
サルナシの夢だ
この墓はすごく
水を吸い上げる
ウオーッ
水だぁっ!!
山で水を
切らしたときは
代用になる
ちょうだい?
アシリパさん?
んっ
んっ
んっ
サルナシの蔓は
ほかにも
利用法がある
私が使ってる
かんじきは
サルナシの墓で
出来ている
こりゃいいや
サルナシの蔓は
乾燥すると
とても軽くなる
体重が分散されて
沈みにくく
なるのか
よし行くぞ
杉元
ちゃんとしたものを
作ると時間が
かかるから
簡単なものを
杉元に
作ってやろう
無いよりは
ましだ
ついさっきまで
鹿が雪を掘って
笹を食べた
跡がある
この木を
棒でこすって
音を出したら
オス鹿が
戻って
見に来るかも
しれない
見ろ杉元
オス鹿が
角研ぎをして
縄張りを
主張したんだ
私たちの生活で
鹿は無くては
ならない存在だ
ストゥ
乱用しすぎ
じゃない?
「マカニッ」
いろんなものに
利用する
この靴も鹿の皮だし
矢骨(マカニッ)にも
鹿のすねの骨が
使われてる
フチ(祖母)が
言うには
昔は今よりもっと
たくさん鹿がいて
鍋に火をかけてから
狩りに行くほど
簡単に獲れたって...
キムンカムイ〈態〉や
ホロケウカムイ〈狼〉
みたいに
名前にカムイをいれず
ユクは
「鹿を司る神様」が
地上にばら蒔く
ものだと考えた
「獲物」という意味で
鹿をユクと呼んだのも
簡単に獲れたからでは
ないかと思う
人間に
食べ物として
与えて
くれたものと:
でも
ある年の冬...
鹿が大量に死んで
いなくなった
鹿を食べる
狼も死んで
いなくなった
100年(明治12年)
冬の異常気象が
記録されており
エゾオオカミ絶滅の
引き金となる
鹿が食べ物を
掘りおこせなく
なるくらいの
大雪が降った
簡単に捕まるからきっと誰かが鹿を粗末に扱った
簡単に捕まるから
きっと誰かが
鹿を粗末に扱った
だから神様が
怒って鹿を地上に
降ろさなく
なったんだって
フチが
よく話してくれた
うおッ
ほんとに
来た!!
馬みたいに
でけえッ
静かに
ゆっくり動け
オス鹿は
普段聴き慣れない
金属音を警戒した
急所を
はずした
クソッ
オレが
あせった
ばっかりに...
追うぞ
登れッ
必ず仕留めで
あげなくては...
藪を通って
逃げられた
笹に付いた
血を探せ!
藪を出た
足跡を見つけろ
このまま度を
逃がしたら
無駄に苦しい思いを
させただけだ
犬が一頭と
男がふたり
ひとりは
大柄で
歩き方が変だ
杖を両手に
持っている
のか?
怪我を
しているのは
右足か...
怪我を
しているんだ
まさか...
北海道のヒグマに
比べれば...
東北のマタギが
獲ってる
ツキノワグマ
ってのは
オオカミと
犬っころだ
だがこの犬っころは
アイヌの連中が
育ててきた犬種で
ヒグマも恐れん
その村田銃...
マタギの親父も
使っていた
一発ずつしか
入らん
不便な銃だ
そういうのは
「こだわり」じゃねぇ
時代遅れっていうんだ
フン
兵隊さんが
持ってるその銃は
五発入るんだっけ?
確かに便利だ
よし!リュウ!
行は行け行けッ
メス熊だったら
犯してしまえッ
マタギの
兵隊さんは
手を出すなよ
オレと
ヒグマだけの
勝負だ
おい
予備の弾は
出さないのか?
村田単発銃を
使う猟師は
みんな
撃ち損じたとき
すばやく予備の弾を
装填できるように
指に
いくつか
挟んでいたぞ
五発あれば
五回勝負できると
勘違いする
一発で決めねば
殺される
一発だから
腹が据わるのだ
ビビッって
おっ立ちゃ
負けよ
ブオッ
東穴を飛び出す正面に
立ちはだかって
驚かせた...!!
故郷にいたとき
熊の胆を
買い付けに来る
来売りから
聞いたことがある
二瓶鉄造
あんたの
名前だ
北海道にいる
ものすごい
「熊撃ち」の名前
そいつが
ひとつの山に入れば
そこの熊がすべて
消えてしまうって
マタギの
谷垣さんよ
まだ付いて
くるのか?
お前さんが
行き倒れてるのを
助けたからって
恋人が欲しかった
わけでは無いぞ
冗談じゃねえ
あんたも
狙ってるんだろう?
白い狼を
時間前の話題
第23話
この顔...
こいつはいつか
人間を襲う顔だ
なぜそう
言い切れる?
いやいや、
いまから
腹を開いて
見せてやる
6歳のメスで...
子宮に
出産跡が無い
こういう熊は
だんだん
凶暴になる
ヒグマってのは
メスのほうが
気性が激しく
恐ろしい
人間と同じだな?
ぬははは
あんたそれ
顔を
見ただけで...?
お前さんも
マタギなら
知ってるだろうが
熊ってのは
それぞれ
個性がある
ビビって
逃げ出すやつ
立ち上がって
急所をさらすやつ
何発撃とうか
向かってくるやつ
オレが一人で
斃したヒグマは
200頭を超えたが
一度だって
同じ勝負は無い
ひとりで200頭!?
集団で巻き狩りをしてきた
俺たちでも桁が及ばないもの
だが共通する
習性はある
「世数に逃げた熊は
動かない」...とか
「止め足を使うときは
山側の薮に飛んで
猟師の後ろに
回り込む」...とかな
個性と習性は
別だ...
習性を知り尽くせば
こちらの有利に働く
マタギの
兵隊さんよ
狼との勝負は
一度も無いだろう?
勝負どころか
手負いの動物は
格好の標的だぞ
そういうあんたは
狼を獲ったことが
あるのか?
無い!
何も知らん
からこそ
勝負がしたい
鹿の大量死で
エサの無くなった狼は
家畜を襲う
ようになり
人間の罠によって
絶滅するまで
駆除された
その知恵比べにも
負けず生き残った
最後の狼
狼の個性と
オレの個性の勝負
猟師の魂が
勃起する!!
別の鹿がたくさん
通った足跡だ
手負いの
鹿の足跡に
混じってしまった
血の後を
見失うな
手負いだから
高いところまで
登って
逃げないだろう
あっちへ
向かう足跡は
無視しろ
歩きやすい沢を
選ぶはずだ
急がないと...
杉元...
そうだな......
手負いのまま
逃げまわると
肝臓がだめになって
食べられなくなる
肉も熱をもって
味が落ちる
ウラウン!
いや
そういうこと
じゃなくて
あのトドマツの下に
入った足跡がある
手負いの鹿が
潜んでいるに
ちがいない
私がこの
尾根を降りて
鹿を追い立てる
杉元は
先回りして
待ち伏せしろ
おまえが撃って
仕留めるんだぞ
「降りる」
ったって
ほとんど
崖じゃ
ねえか!!
すげえぇ
なんだ
ありゃ!?
粘り強く丈夫な
ヤチハンノキで
できた山杖を使い
滑る技術を
クワエチャラセ
といい
アイヌ猟師は
度胸と技術で
急な斜面を
スキーに負けない
速さで滑り降りた
行ったぞ杉元!!
おおおぉおおっ
とうッ
ぶはあ
脳は!?
あ...
アシリパさん
鹿は?
......
杉元に気付いて
反対側の急な斜面を
登って逃げてしまった
まだこんな体力が
残っていたなんて
強いオス鹿だ
もうすぐ
暗くなる
仮小屋へは
戻れない
簡易的な
小屋を作って
朝を待とう
成長の悪い
トドマツを
窪んだ地面に
めがけて切り倒す
幹がそのまま
屋根の棟になる
ジャマな枝を切って
私達が入る
空間を作り
私の葉を
敷き詰める
ほんとにこんな
スカスカ小屋で
一晩過ごせるの?
さむい...
上着を脱いで
背中に火を当てろ
上着があると
熱が伝わらない
セトゥルセセッカ
背中あぶりといって
背中をあぶると
体が温まると
いわれてる
鹿もどこかで寝る
手負いだし距離は
そんなに開かない
朝起きたら
足跡をたどろう
必ず追いつける
うん
肝臓や
肉の味が落ちても
脳みそや目玉は
おいしく
食べられるから
そんなに
心配するな
いや
そういうこと
じゃなくて
さて今夜は
この二瓶鉄造が
獲れたての熊で
腕を振るった料理を
ご賞味いただこう
ニヘイゴハン!!
心臓
焼きましたッ
うまい!!
うまい!!
噛めば噛むほど
血の味がするッ
新鮮な心臓は
猟師だけの特権だな
谷垣よ!!
マタギは
熊の血を
飲むんだってな?
熊の血は
仕留めた人間が
飲むという
習慣がある
体温が上がり
滋養強壮になった
乾燥させて
薬としても
飲んだ
...
ならば
これも
いけるはずだな
むかし
モンゴルから来た
男に聞いた
調理法なんだがね
小腸を裏返し
雪で洗い
熊の腹腔に
溜まって
プルプルになった
血の塊を詰める
ニヘイゴハン!!
血の腸総め
ムグムグ
うん...
血の味がして
うまいッ!!
新かつくから
気をつけろ?
屋根をブチ破って
小屋を破壊する
なよ?
勃起!
ぬははは
物静かな奴だ
マタギの習慣が
身についてる
物音立てずに
行動する精鋭部隊
お前らはいったん
山に入ると
くしゃみも咳も
禁じられて
いるんだって?
あんた随分
おしゃべりな
マタギに
出会ったんだな
アタギはマタギの
ことをべらべら
しゃべらん
なぜ似合わん軍帽を
取らず
ここにいる
どうして故郷へ
帰りマタギに
戻らんのだ
谷垣...
俺は
ある目的があって
軍に残った
故郷の秋田を
捨てる覚悟だった
だが山に
入っているうちに
なにか俺の中の
毒のような物が
抜けていくのが
わかった
「コレヨリノチノ
ヨニウマレテ
ヨイオトキケ」
熊を成仏させるために
引導をわたす
マタギの唱え言葉だ。
お前にとって
「狼狩り」は
口実なのだ
あの戦争で
殺した相手には
一度も
唱えることは
無かった
軍にも
故郷にも
戻れず...
お前の猟師魂は
北海道の森を
彷徨っている
谷垣よ
狼を獲ったら
毛皮を手土産に
故郷へ帰れ
...
ふふッ
ぬははは...
勃起
第24話生ぎ抜いた価値
立て
杉元ッ!!
走れ走れ
止まると
殺される
死んで
たまるか
生きてやる!!
第24話、生き抜いだけで
鹿が雪を
掘り返して
寝た跡だ
血が
ついてる
私たちが
追ってる
手負いの
オス鹿だ
鹿の
オソマ〈糞〉が
凍ってる
ほら触ってみろ
杉元
鹿は決まった
時間の間隔で
オソマするから
追いかけるとき
距離の目安になる
凍ってしまっていたら、
二里以上は
離れたかもしれない
ほとんど寝ないで
逃げたんだ
一歩遅かった
でも
足跡の幅も
狭い
必ず
追いつける
食べるなよ?
......
キフっ
どうやって
狼を獲る気だ?
まずは
おびき寄せる
餌が必要だ
鹿を撃つ
狼の絶滅に
とどめを刺したのは
北海道で牧場を
作ったアメリカ人だ
狼から
家畜を守るために
硝酸ストリキニーネを
餌に仕込んで
大量にばら蒔き
毎日数十頭の
狼を駆除した
なぜだ?
わざわざ鹿を
獲らなくても
熊の肉が
余っているだろう?
だがその毒入り肉に
しょんべんをかけて
あざ笑い
生き抜いた
賢い狼もいた
獲物を
狩るときは
獲物の
気持ちになれ
谷垣よお前がもし
道を歩いていて
皮をすっかり
剥かれた
柿の実が
落ちてたら
食うか?
戦争で鈍ったかね?
マタギの谷垣ちゃん
見ろ杉元
また鹿の
オソマがある
近いぞ
ホラまだ
温かい
食べるなよ?
それは食べちゃ
ダメなオソマだ
食べていい
うんこなんか
ねーし!!
足跡が
乱れてる
なぜ
アシリパさんは
いちいち触らせ
るのか
また隠れて
休む場所を
探してる
そうとう
体力が
無くなってる
手前の木
きっとあそこに
隠れてる
あの木から
追い出せば
鹿は雪原を
走って近くの
木の下に
逃げ込む
杉元は風下から
大きく迂回して
あっちの木に
潜んでろし
気配を消して
静かに行け
かならず次は
一発で仕留める
これ以上
苦しませずに
終わりにさせる
見ろ谷垣
かわいい
肛門だ
鉄砲玉のように
追っていったまま
戻らないような
ことはなく
こちらが
ついて来てるか
確認し
リュウはまだ
若いが
優秀な猟犬だ
たくさんの鹿の
足跡の中から
新しく強いニオイを
探し出す
歩調を
あわせてくれる
足が痛むか?
谷垣
...
どうした?
リュウ
何をやっている
早く先導しろッ
.....
なるほど
ヒグマも恐れん
アイヌ犬が
このざまだ
我々は
狼の縄張りにいる
いくぞ
杉元
しっかりねらえ
ケホッ
こっちに来る
杉元撃てッ
はっ
うおおっ
...
何やってんだ
アイツ!!
レタラ!
レタラ
そのまま
押さえてろ
なぜ撃たなかった!?
お前が仕留めると
言っていたはずだ!
こいつは俺だ...
後日の
血が...
ツララになって
捕れていた
ツララを
蔵がす体温も
残って
いないのに
傷を負いながら
懸命に
生きようとする
こいつに
睨まれたら...
動けなかった
ブエエ
エエッ
最後まで
責任持てないなら
最初から撃つな
杉元...
ここに両手を
入れてみろ
熱い...
腹に?
どうだ?
かじかんだ手が
ほぐれていく
鹿は死んで
杉元を暖めた
鹿の体温が
お前に移って
お前を生かす
私達や
動物たちが
肉を食べ
残りは
木や草や大地の
生命に置き換わる
鹿が生き抜いた価値は
消えたりしない
食うか!
負おう食おう
今の銃声...
俺と同じ
三十年式小銃だ
ユ々
第25話
手負いで走らせたり
興奮させたり
苦しませた獲物の肉は
味が悪くなる
特に肝臓が
悪くなる
ほら杉元
ためしに
肝臓を
食べてみろ
ストレスによって
筋肉のグリコーゲンが急減し
グリコーゲンの供給を
担っている肝臓に極度の
負担がかかるためと
いわれている
......
レタラに
あげよう
な?
う~ん
あの...
生で食べるの
初めてでして
なんか
様子が変だぞ
急かしてる
こんなレタラ
初めてだ
誰か来る
強烈な殺気を
体臭として発する
不気味な人間が
近づいてくるのを
レタラは感じとった
ヒグマは
食いかけの獲物の
上で寝るほど
執着するから
それを猟師に
利用される
場合もある
でも狼は
警戒心の塊だから
執着せず
猟師には
姿も見せない
本来なら
すぐに立ち去るが
私たちにも
そうするよう
促している
きっとあの兵士だ...
まだ山の中で私を
探し回っているのか
行って
いいぞ
レタラ
私たちも
持てるだけ
持って
引き上げよう
毛皮と
内臓のいくつか
内モモ肉と
背中の肉〈背ロース〉と
腰の肉(ヒレ肉)
重たぁ~いコレ
おもたぁ~~~い
あとは重くて
持ちきれないから
置いていく
まだたくさん
残ってるけど
レタラが戻って
食べてくれる
だろう
脳みそ
食べるんだから
頭は持っていけ
ジャーッ
ジャーッ
見ろ谷垣
狼の足跡が
あるぞ
聞いていたとおり
かなりの大物だ
鹿の周りにも
たくさんついているが
食い荒らした形跡が
無いということは...
狼が獲った鹿を
猟師が横取り
したのか?
後始末か雑だ
三十年式小銃に
長靴と
鹿皮の靴を
履いた子供
持ちきれない肉は
木に吊るすか
川に沈めるなり
動物に荒らされ
ないようにするが
あの時のふたりだ
遠くて顔は
よくわからんが
ひとりは
兵士の装備だ
俺たちの足跡を
追ってくる
そぶりは無い
ただの
猟師かも
しれねーな
......
俺たちに感づいて
狼は逃げた
きっと残した肉は
狼に与える
つもりだったのだ
谷垣よ
「洗いっこ」
しようか
どういうわけか
わからんが
狼は少女を
警戒してない
...例の
アイヌの
少女か?
お前が
襲われた
ときの
狼は食べに
戻ってくる
かもしれない
......?
誰かいる
待ってたぜ
なんだ
白石か
どうして
私たちが
ここに来ると
わかった?
おやおや?
そいつは
鹿の毛皮か?
獲れたの
かい?
丁度いいときに
来たようだな
ここしか
知らねえもん
手土産に
酒を持って
きたんだ
新鮮な鹿肉に
うまい酒!!
今夜は
宴だな!!
ほんとうに
いい時に
来たな自石
?
うまいか?
杉元
うまいか?
白石
鹿の肺だ
これも生で
食べる
ヒンナ
肉は?
次はチタタッを
食べさせてやる
チタタブ?
出ました
チタタプ!!
鹿のチタタッは
セウリといって
主に鹿の「気管」を
使ったものをいう
チタタプって
言いながら
叩くんだぞ白石
チタタッ
って
言えぇ!!
肉が
食いたい
んだけど..
あ......!!
勝手に飲んでる!!!
白石がウジウジ
うるさいから
鹿の背中の肉を
食わせてやる
鹿の肉で
一番いい部分だ
お前らみたいな
都会のもやしっ子でも
食えるように
塩をふって
すこし炙っておいたぞ
食えオラ!!
これは美味そう
いただきます!
はくはぐはぐ
ウマイッ
多少の
臭みがあるが
柔らかい
肉だなぁ~
これは
酒に合うぜ!!
ぷるるるろるッ
おい杉元ぉ
チタタプ
残ってるぞ
全部食えッ
もう
オナカ
いっぱい
なにぃ?
お前ッ
懸命に走る
鹿の姿
内臓の熱さ
肉の味
全て鹿が
生きた話だ
全て鹿が生きた証だ
全部食べて全部忘れるな!!
全部食べて
全部忘れるな!!
それが
獲物に対する
責任の取り方だ
もし俺が死んだら
アシリパさん
だけは俺を
忘れないでいて
くれるかい?
ああ?
杉元が
死んだらあ?
ヒンッ!!
死ぬな
杉元ッ!!
ヒンッ!!
俺は
不死身だ!!
不死身だってさ
アシリパちゃん
ほらほら
チタタフ
食いな!
まむまむ
まむまむ
チタタッ!
うまーいッ
そうだ
杉元
そもそも
俺がここに
来たのは..
街で
ある情報を
つかんだからだ
金塊の暗号を
体に彫られた
欧人の情報さ
きん......かい?
忘れてんじゃヨえトレ!
ねえよオイ!!
偶然知り合った
毛皮商の男から
聞いた話だ
数年前に三人殺して
捕まったはずの男が
ひょっこり小樽に
現れた
俺はそいつを
よく知っている
何せ同じ監獄を
脱走した
因人仲間だしな
猛獣のような男さ
谷垣よ
マタギは
猟に入る前に
水ごりを
するんだってな?
俺たちマタギは
山の神様を
女だと信じている
水ごりは
山の神様が
嫉妬しないように
女のにおいを
消すためだと...
マタギの
信仰ってのは
どれも
狩猟のために
理にかなった
もんで出来て
いやがるな
嗅覚の鋭い
狼との勝負
準備は
徹底して
おかねば
めっぽう腕の立つ
猟師で
毛皮商人たちからは
畏怖の念を込めて
こう言われていた...
「冬眠中の羆も
うなされる」
「悪夢の熊撃ち
二瓶鉄造」
第26話「山の提
その入れ墨...!!
そんな目で
見つめるな
谷垣よ
あんたも
四人だったのか!!!
寒さで
縮んでいるだけだ
普段はもっと
立派だ
屯田兵を
殺しておいて
よくも俺に
冗談が言えた
ものだな
金塊なんぞに
目が眩んだ
人と人との
殺し合いだ
獣を殺すほうが
まだ多少の
罪悪感がある
マタキの谷垣か
兵隊さんの谷垣か
俺を撃って
皮を剥ぎ
やっぱり軍に
戻るかね?
いまのお前は
どっちの
谷垣なんだ?
二瓶鉄造
むかし猟師を
殺して獲物を奪う
悪いやつらがいた
私と父が
熊を獲ったときも
そいつらに
狙われたことがある
その名前
聞いたことがある
父はとっさに
熊のお尻に
傷をつけて逃げた
すぐに毛皮商の
所へ行ったら
同じ傷の
毛皮を持ち込んだ
男がきた
そいつは
捕まったが
仲間は
あと三人いて
山に潜伏し
次の獲物を
探していた
だがそいつらは
狙っちゃ
いけない相手を
選んでしまった
アシリパさん
なんか言った?
春に巣穴から
出てきた羆を
追跡して仕留め
解体していた
時だった
足元に
弾が跳ね...
銃声が届いた
すぐに俺が
狙われて
いることを
悟った
最近
噂になっている:
猟師の
獲物を掠め取る
卑怯な連中か?
......
聴こえてるか盛人ビもッ
人どもッ
二瓶鉄造が
ひぐま
羆を狩るときは
殺される覚悟で
勝負しているッ
俺を狩ると
いうの
ならば...
獣の糞になる
覚悟は出来てく
いるんだ
ろうな?
なんてデカイ声
してんだよ
二瓶鉄造...
なんだ?
お前知って
るのか?
いまさら猟師
ひとり相手に
ビビッてどうする
アイツは
やばいかも
同じように
何人も
殺して来た
だろうが
今の!!!
ケモノ以下の
きさまらには
銃を使わん
ふん...
始まりととって
かまわんな
ボッコで
殴り殺すッ
俺は三日かけて
ひとりずつ追い詰め
撲殺していった
だが最後の一人で
山狩りの警察に
先を越された
ヒヒヒ
おうおう
来たか
二瓶!!
一歩遅かったな
勝負は
おあずけだぜ
貴様
その棒を
捨てろ
こいつは
我々に
まかせておけ
アハハハッ
止まれッ
気持ちは
わかるが
離れなさい
俺はヒグマより
獲物に執着する
だが俺は
獣じゃなく
人間だからな
人間には
人間の
掟がある
山での掟を
つらぬいた
代償は
網走監獄への
収監だ
山で
死にたいから
脱獄した
勝負の果てに
部たちが
俺の体を
食い荒らし
爽となって
バラ時かれ
山の一部となる
理想的な最後だ
おまえなら
わかるだろう?
マタギの谷垣よ
その二瓶ってのは
どんなやつだ?
容姿は?
毛皮商が
数週間前に見たときは
茶色のアイヌ犬を
連れていて
18年式の単発銃を
持っていた
髪は白髪交じりで
初老の男さ
アシリパさん
昼間見た
男かも...!
兵士の装備をした
男の連れだ
そうだ!
それと
もうひとつ...
「もし白い狼の毛皮が
手に入ったら
いくらで買う?」
.....と
毛皮商に
聞いて
いたらしいぜ
来た...
金塊の手がかり...!!
私じゃ
なかったんだ
何でそれを
早く言わない!!
そうだぞ白石
てめーは
「フッチャの刑」だ
噛めオラ!!
レタッが
目的
だったなんて
ばあああぁああ
アシリパさん
朝を待とう
しっかり
休まないと
レタラが
心配なのは
わかるけど
ええ?
屋根じゃん
それ
一日放っておけば
鳥やキツネに
食い尽くされて
しまうだろう
狼が戻ってくるなら
今夜中だ
交代で
見張ろう
火も焚けないから
凍死するなよ
もはやこの駄犬は
湯たんほ代わりに
しかならん
狼が来たら
教えて
くれるよな?
距離は25間
〈約45メートル〉
月の光と
雪の反射のおかげで
かろうじて
輪郭は確認できる
我々の風下から
狼が来ないのを
祈ろう
来なかったか
読みが
外れたな
......
谷垣よ
キツネは
来たか?
いや
来ていない
何だか妙だ
やられたな
狼の糞だ
キツネが
来ないわけだ
一晩中
クソの見張りを
させられて
いた訳か
「送り狼」といって
狼は見知らぬ人間を
追跡して観察すると
聞いたことがあるが
このことか
いつの間に?
リュウは
反応しなかった
きっと俺たちが
水ごりを
している間だ
死骸には
近づかないように
していたから
気づかなかった
........
最初にここへ
来たときから
俺たちの動きは
監視されていた
勃起が
止まらん
何で俺も一緒に
行かなきゃ
なんねーの?
二瓶鉄造を
確認できるのは
お前だけだろ
行こう
囚人を捕まえて
レタぅを守る!!
白石由竹の装備
飴
第27話「楽
殺しの匂い
我々がこの死骸で
待ち伏せる
つもりだったのが
バレていたとすれば
......?
恐ろしいほどに
頭の切れるやつだ
一から
出直して
鹿を撃つ
しかない
その前に...
奴の肉で
腹ごしらえして
やろうじゃないか
もちろん
葵で汚されてない
部分をな
次は遠くから
一発で貫通させて
体に弾を残さず
仕留めた鹿の死骸を
用意しよう
谷垣よ...
俺も嗅覚は
並みはずれて
鋭い
んッ
俺の娘が
まだ赤ん坊の頃...
縁側で寝かせてると
大きなスズメバチが
娘の顔にとまった
その瞬間...
自分の体臭が
変わるのが分かった
俺もお前も
殺気が
強すぎるのでは
ないだろうか
だから狼に
感づかれるの
かも知れん
感情というのは
匂いとなって
発せられるのだと
気付いた
お前は
戦争帰りだから
なおさらな
必ず金塊を手に入れる...
マタギには
「木化け」という
言葉がある
射手が獲物を
待ち伏せるときは
「木になれ」と
言われてきた
心を周りの木と
同化させて
気配を消す:
どんな手を使っても
今のあんたの話に
木化けの本質を
見つけた気がする
「木化け」か...
...
娘が?
15人の子供と
女房とは
絶縁状態だ
女というのは
恐ろしい...
「送り狼」について
ほかに
谷垣が知っている
ことは?
親父から
聞いた話に
よると...
送り狼に
つけられた時は
身に着けているものを
道に落としておけば
追ってこなくなる
そうだ
おそらく好奇心の強い
狼が落としたものに
気をとられるから
だと...
送り狼とは
侵入者を縄張りの
外まで追い出す
狼の「習性」
なのだろう
いまもどこかで
われわれを
見ているかも
しれない
これがホントの
狼煙だな
よく見ておけ
谷垣
習性...
う・
奴が残した
狼の糞だ
俺たちが
いけ好かない
侵入者だと
執着心を
植えつけてやる
日本でこの煙が
見られるのは
これで最後になる
臭い!!
何を燃やした!?
狼の糞には
硝酸分火薬の原料が
多く含まれており
燃焼温度が高く
煙が散ることなく
まっすぐ高く上がったため
狼煙に使われた
といわれている
昨日私たちが
鹿を獲ったあたりだ
二瓶は谷垣が
見えない位置から
すぐ脇の尾根を
登り始めた
行垣が歩みを止めたのは
彼方について来ている
であろう狼を
足止めさせるためだった
谷垣は
ころあいを見て
おもむろに
飯盒を置く
犬もそうだが
地獄を使う
ことに
気を取られて
いれば
頭上は
鈍感に
なるはずだ
犬といえば
あの駄犬は
どこへ行って
しまったのか
昂ぶる殺気を
抑えて...
木と同化するのだ...
おかげで気配を
消すのに好都合だが
いた...
こっち
向かねえと
顔が確認
できねーな
アシリパさんは
ここから
弓矢で
援護してくれ
俺たちは
もう少し
近寄ってみる
人物配置と動き
あの男...
何かを狙撃
じようとしてる
出てきちゃダメ!!
レタラ!!
いる!!
殺気に
勘付いたか?
どうした出て来い
もう少し
頭を出せ!!
昂ぶりを
抑えろ!
ホルけだ木化け!!むぅぅ...
木化けだ
木化け!!
むうう...
勃起ッ!!
勃起ッ!!
邪魔が
入った
銃をこっちに
投げろ
...フン
どうりで
なかなか狼が
出て来なかった
わけだ
そんなに殺気を
撒き散らかされては
木化けも無意味だな
ケチな
物取りじゃ
なさそう
だな?
こいつで
間違いは
ないか?
間違いねえ
そいつが
二瓶鉄造だ!!
...
...あれは
白石か?
なるほど
目当ては俺の
体の入れ量が
その単発銃...
離さん
つもりか?
勝負
するかね?
勝負するかね?
どちらが
この山で
生き残るか
弾薬盒から
タマを取り出し
ボルトを引いて
装填するあいだに
俺は五発すべて
おまえに
プチ込める
俺は
不死身だぜ
!?
ガウルルッ
でかしたぞ
駄犬
獣の糞になる
覚悟は
出来ているん
だろうな?
>カムイ●(完)
アイコン
【アイヌ語監修】
中川裕
【取材協力】
北海道アイヌ協会
博物館-網走監禄
小榊市総合博物館
【アイヌ文化関係参考文献】
「アイヌ語絵入り辞典知里高央樹山孝雛
「アイヌの民具」筐野茂
「宣野茂のアイス語辞典」喧野茂
「アイヌの民具実測型集」武臓野美術大学-生活文化研究会
「アイヌ式エコロジー生活・治産エカシに学ぶ、白然の知恵」さとうち艦
「アイヌ神謡集」周里幸息
「アイヌ民族の軌跡」浪川塾治
「先生民アイヌ民族(別冊太陽)ムック
「シラオイコタン木下清蔵遺作写真集」
「アイヌの衣服文化」アイヌ民族博物館
「アイヌの四季計良智子鍛治明香
「アイヌ植物誌」福岡イト子佐藤寿子
「アイヌの民俗」早川昇
「クスクップオルシベ!砂沢クラ
「聞き書アイヌの食事秣中美枝.藤村久和村木美幸知井朝子古原鹸弘
「ニューエクスプレスアイヌ語J中川裕
「アイヌ語千歳方言辞典J中川裕
「カムイユカァでアイヌ語を学ぶり中川裕、中本ムツ子
「語り合うことばのかカムイたちと生きる世界一中月給
「コタン生物記(1)樹木雑草篇]更科源臓_更科光
「コタン生物記(2)野郎・海賊魚族篇J更科源藏_更科光
「コタン生物混(3野鳥・水鳥昆虫篇]更科源繊更科光
「サルウンクル物語JH上男治
「エカシとフチを訪ねてJIN上男治
おまけ
よし!白石
中の様子を
うかがって来い
杉元が
連れて行かれた
第七師団の兵舎は
あれだぜ
あ...
逃げた
ボクの
シライシ!
シライシ!
シライシ!
シライシ!
シライシが...
シライシが
とまらない...ッ!!
夢か...
スパラャリオンケア
担術後、
一般ハロ
overdeslgnt
hokoshisuendgo
YJC
DIGITAL
5月25日は、2016年10月20日に
3巻
デジタルカラー版
ゴールデンカムイ
野田サトル
◎野田サトル2015.2021
初版発行
「みんなデジタル版発行-202」年
2015年
発行所・集英社・
スーパー...ベース・http://www.stuesshara.co.
この作品は、著者カラー原画にカラ、ギャカーの原画をもとに
集英社でデジタル彩色を行った特別編集版です。
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を含む)することは、法律で禁じられています。また、個人
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