★この作品は、著者かラー原画に加え、著者の原画をもとに

集英社でデジタル彩色を行った特別編集版です。

野田サトル

...

第22話、会話...

第2話「老人と山...

第30話「言い伝え...

第31話「この二層地...

第3話、時間1部の巨大鳥...

第3話、明的逃走...

第3話「お姉...

お兄ちゃん...

あのね、彼女だす...

先輩、初者...

第8話「フンペ...

18910年15月18:14570012:

野田サトル

この時間はフィクションです。実際の人様と同時に事件などには、いっさい関係ありません。

第28話

話、鈴木

そいつを

よこすんだ!!

白石ッ!!なにやってる

早く銃を拾えッ

ガウッ

ガウウウッ

...

...お前様、

第28号は

ええっ

ただいた

いだだ

だだっ

ガウウッ

帰れ白石ッ

このワン公

ワン!!

おとなしく

しやがれ

二瓶鉄造!!

お前らこそ

武器を捨てろ

早く

銃を置け!!

きさま...

その子を...!!

盾に...!!

使う

なッッ!!

離れろッ!!

来るなッ!!

卑怯だぞ

無関係な

子供を人質に

するなんて

嘘だな...

前に会った時

この娘は

入れ墨の皮を

隠し持っていた

まったくの

無関係とは

言わせない

あの男にとって

私はそこまで

価値が無い

最後には

撃ってくる

無駄に

殺し合うな

ここは

お互いに

引くべきだ

信じるな

女は

恐ろしいぞ

谷垣

この娘を

挟んで

撃ち合っても

構わんぞ

俺はッ!!

白石...

すまん...

捨ててくれ

杉元...!!

その子には

見せるな

遠くへ

連れて行ってくれ

いいだろう

谷垣...

縛るものを

投げろ

白石...

谷垣よ...

その子を

連れて行け

悲鳴が

届かないくらい

遠くへ

やめろ

殺す

なッ

杉元!!

白石!!

......

あれぇ?

どうすんだ?

こっちは

丸腰だそ!?

谷垣!!

ふたりが

逃げたぞぉ

隠れて近づき

やつらの

隙を突いて...

アシリパさんを

取り戻す!!

脱獄王...

すっかり

忘れて

おったわ

杉元!!

ウウーッ

静かに...

森にいては

不利だ

ひらけた

見通しのいい

場所に

出なくては

!?

ウーッ

ウーッ

ウウウーッ

おとなしく

しなさい!!!

ここは

通っちゃダメ!!

鹿垣だ!!

アマッポが

ある!!

山越えをする鹿が

通る沢には

木を倒して垣を作り

仕掛け弓が置かれる

ことが多かったため

鹿だけではなく人間にも

危険な通り道であった

......?

毒の付いた

矢じりが

まだ体内に

残ってる

早くしないと

間に合わない

私の

手をほどけ

グウウッ.....

トリカブトの

症状は強烈な

シビレ感

灼熱感

刺すような痛み

やがて不整脈

痙攣呼吸困難を

引き起こし

死にいたる

手をどけろ!!

アイヌの矢講に

解毒方法は

ない!

助かるには

今すぐ

傷口のまわりの

肉ごと

えぐり取るしか...

かまわん...!!

やって

くれ!!

......

......

仕掛け弓に

かかったか

いずれにせよ

この男は

これ以上動けない

谷垣...

肉ごと取り除いて

処置したが

他人の調合した

毒だから

助かるかどうか

わからない

もう

終わりにしよう

そもそも私たちは

殺し合いに

来たわけじゃない

ここで

待っている

必ず白い狼を

獲って来る

この男

なんて執着だ...

ここを

離れなければ

今度は動けない

谷垣が奴らの

人常になる...

どっちだ?

こっちだアホ

谷垣の話が

本当なら...

お嬢ちゃんで

狼を呼び寄せる

ことが出来る

のだろう?

まだ奴らに

渡すわけには

いかんな

第29話(老人とU-

離せ!

離せ!

レタぅは最後の

狼だぞ!

けちなカネのために

誇り高い

ホロケウカムイを

絶滅させるのか!

狼はすでに絶滅している

狼はすでに

絶滅している

数がこれから

回復することは

無い

狼を

絶滅させた罪

この土地に住む

すべての人間に

罪がある

カネなど

どうでもいい

俺はエゾオオカミが

最後に見る猟師に

なりたいのだ

ここなら

周囲を

見渡せるな

!!

わめくのは

構わんが

舌を噛んでも

痛いだけで

死ぬことは

無いから

やめておけよ

ううっ

レタラが

ウェンカムイに

なって欲しく

ないだけだ

ウウウッ

誰が

自害なんて

するか

人間を殺せば

悪い神になって

地獄に落ちるという

やつか...

安心しろ

人間なんぞに

そこまで

価値はない

これは獣と獣の

殺し合いよ

だが

生き残るのは

俺一匹!!

苦しませずに

一発で決めてやる

なんと...

本当に

来たぞ

しかも

正面突撃とは

!!

なんて奴だ...

照準が

定まらぬように

走るとは

銃というものを

理解してるのか...!!

すばらしい...

最後の狼に

ふさわしいぞ

レタラ

来ちゃだめ

来い!!

ぉおおおッ

俺の勝ちだ

......

ゴアルルルッ

ガウガウ

ガウガウがウッ

ガルルルッ

......

ウウワウッ

よしよし

リュウ...

湯たんぼ

にしては

頑張ったな

なるほど...

「つがい」だったか

女房にとっちゃあ

男同士の勝負など

知ったことでは

ないか...

やっぱり

女は恐ろしい

クーン

だが満足だ

コロン...

スウィートだぜ...

は?

イオナナナ

別の

遠吠えだ!

しかも

これは..

!!

レタラ...

お前

家族が...

あの夜...

お前を呼んだのは

...

エゾオオカミ最後の

確認例は

1896年に函館の

毛皮商である

松下熊槌によって

「毛皮を数枚扱った」

という記録に過ぎない...

コレヨリノチノ

マジで

こいつら

連れて行くの?

ヨニウマレテ

死にかけてるのに

置いてはいけない

ヨイオトキケ

アイヌ犬も

ほっとけば

いつまでも

あそこにいる

疲れたく

杉元が

追いつくまで

俺はここで

休むぜ

まな板と

鉢とお盆の役目を

かね合わせた

ステキな道具

その

のばあたし、

第30話・言い伝え

白樺の幹に

穴を開けると

タッニ・ワッカ

シラカバの水

が出てくる

これで傷を洗う

タッニ・ワッカは

痛み止めと

止血の

効果がある

春が近いと

芽吹く準備のために

たくさん水を

蓄えるからだ

あとは

乾燥した松脂を

火であぶり

やわらかくして

傷口に塗る

止血と化膿に

効果がある

ひとまず

これで

いいだろう...

朝になったら

ここを出るぞ

ファンリング

本当に

こいつを

自分の村に連れて

いくつもりなのか?

村ならほかにも

いろんな薬があるし

温かいチセ(家)の

中にいたほうがいい

こいつ

第七師団だろ?

治ったら仲間に

俺たちのことを

話すかも..

置いていけ

谷垣...

といったな?

お前

二瓶鉄造が入れ墨の

囚人と知ってて

行動してたのか?

俺は猟師だ

死ぬときは

俺も山で死ぬ

ホラ!本人も

こういってることだし

置いていこうぜ

まあ..

俺の相棒がこの男を

助けたいというなら

邪魔しねーさ

もしそれが

裏目に出る

ようであれば

今度は俺が相手を

するまでだ

シンナ

キサラ!!

なに?

お前の耳が

変だとよ

アマッポに

がかったって?

それは

大変だったなぁ

ヨモギの葉も

痛み止めになる

乾燥して保存して

あるものを

誰か持ってるはずだ

ウドの茎を煎じた

汁で洗えば

化膿止めになるぞ

頑張れよ

第七師団で

俺の友人にも

日露戦争に行った

アイヌが

何人かいる

お前たちの

強さは

聞いている

鹿肉も

まだ

たくさんあるし

食事にしよう

きっと良くなる

鹿肉の鍋

「ユッオハウ」だ

プクサキナ(ニリンソウ)と

プクサ(行者にんにく)も

入れて栄養たっぷりだ

うんうん

ヒンナ!

鹿肉は

煮込んでも

ヒンナだぜ!

クックッグッ

杉元...

またオソマ

入れなきゃ

いいけど...

杉元.....

たしかにヒンナ

どうした?

え?

この鍋に

また......

この鍋にまた...

オソマ入れなきゃ

いいけど...

あ...

ああ...

味噌ね

ええ~っ

またか?

杉元お

お前.....オソマ

好きだなあ~

杉元は本当に

オソマが

好きだなあ?

いでで

ででで!!

うんこじゃ

ねえっつーの

なにこれッ!?

アドハウス

イブブブッ

白石の頭は

なんか甘いのが

出てるのか?

オソマ

おいしい

鮭のルイペだ

これは寒い時期しか

食べられない

ルイペ?

冷たい

半分凍っていて

不思議な食感だ

くちの中で

とけて

トロトロになる

うまいッ

生の肉や魚を

立木にぶら下げて

凍らせたものを

ルイペと呼ぶ

ルイペは

とけた食べ物

という意味なんだ

なるほど

寒い土地で生まれた

食べ方だから

凍ってるのが

基本なんだな

ルイベは

冷凍することによって

寄生虫を死滅させ

同時に生食でビタミンを

摂取出来る利点が

上手く合わさった

食べ方であった

カムイチェブ

アンクスケライ

〈神の魚が

いるおかげで

アオカイ

シクヌアンペネ

〈私たちは

生きているのだ!

アイヌにとって鮭は

「神の魚」「本当の食べ物」

と呼ぶほど食生活の中心だった

コロカ

ヘムトマニワノ

カムイチェブ

ソモヘメㇱパ

(でもある時から

神の魚が川をのぼって

こなくなった

オッカイウタラ

コンカネウモマレ

ワワッカ

イチャッケレレックス

(男たちが砂金を

採って水を

汚したせいだ

おはあさん

なんだって?

フチの鮭にまつわる

ウバシクマ

言い伝え》だ

アイヌは文字を

持たなかったため

叙事詩,神謡など

いろいろな口承文芸で

歴史や精神を伝えた

「同じことが

日高釧路

白老あちこちで

起こった」

「砂金は村の代表者が

船を使い海を通って

一箇所に

集められた」

ち~っ

...そうっよ!

「それが何年か

続いたので

鮭は獲れなくなり

生活は苦しくなった」

「アイヌは話し合い

砂金を

採るのをやめた」

「争いの元となる

砂金は

そのまま隠され

話すことも

熱じられた

「やがてみんな

年老いて」

「金塊のありかを

知るものは

この村の年寄り

ひとりだけになった」

ばあちゃんの

言い伝えが

本当なら

俺たちが

聞かされていた

20貰(5キロ

より...

その年寄りも

のっぺらぼうに

殺された...

もっとたくさん

あるんじゃ

ねえのか?

いやいや...

ちょっとまて

それが例の埋蔵金

ってことか?

北海道各地から

何年もかけて

集められたって?

このウパシクマは

私も初めて聞いた

桁が違う

そのばあさんの

言うように

埋蔵金の話は

あちこちのアイヌの

間でひそかに

伝わっている

俺たちを

率いている中尉は

情報将校で

情報収集や

分析能力に

長けている

鶴見中尉か...

のっぺらぽうは

逃走経路から

少しでも

金塊の隠し場所が

特定されないよう

念には念を入れて

嘘の情報を流した

20貫なら

一人でも

運べる量だと

誰もが考える

だがほんとうは

運び切れない

金塊があった

鶴見中尉の

推測では...

囚人が

聞かされていた量の

千倍はある

2万貫(万トン)

2万...貴.....

あいつは

目的が一致する

私だけにそう

伝えてきた

1メートル四方の

箱に入れたとして

4個分の砂金

現代に置き換えると

8千億円の価値がある

我々も

30年前は

資金繰りに

苦労した

その砂金の量で

日本の国家予算の

三分の一程度だが、

金の相場は

国外に持ち出せば

跳ね上がる

本当に

国が作れる

気がして来た

だろう?

第31話、二〇三高地

アペキライ(灰ならし)

孫にアイヌ文様を

伝え教える図

アシリバさんの

父親たちの

遺体はどこで

見つかったんだ?

トマコマイ

ここだ

おい谷垣

のっぺらぼうは

どこで捕まった?

......?

支笏湖だ

追いつめられ

アイヌ漁師の

丸木舟を奪い

対岸へ

逃げようとして

転覆した

のっぺらぼうは

そのとき

金塊の一部を

持ち出していたが

その重みで

転覆したのでは

ないかとも

言われている

トマコマ

ラコレ湖V

プタル

そうだった

としても

支笏湖は

日本で二番目に

深い湖だ

確かめる

すべはない

地図...

なのか?

やっぱ

どうかなぁ

この文字

覚えてる

後藤の

おっさん

酔っぱらって

女房子供を

刺し殺しちまった

情けない

オヤジだ

もう一枚の

やつは...

おぼえてねえな

たぶん雑魚だ

蕎麦屋で

暴れたって男...

あれはたぶん

「不敗の牛山」だ

10年間無敗の

柔道家だった

らしいが..

二瓶も

ヤバかったが

あいつもヤバい

師匠の不細工な

カミさんに欲情して

寝取っちまったんだと

激怒した師匠が

門下生を10人

使って制裁を

加えようとしたが

誰も歯が立たず

師匠をその場で

殺してしまう

全員が手足を

折られる重傷

えーっ!?

津山を

捕まえるのに

我々は3人

犠牲にした

頭蓋骨を握りつぶされ

一生寝たきりの奴も

いるんだと

出来れば

会いたくない奴は

他にもいる

面識はないが

3人殺した

津山という男が...

そいつは

我々が殺した

最後は鶴見中尉が

奴を仕留めた

...てことは

変態中尉の

着ていた皮が

津山か

鶴見って奴も

かなりの

くせ者だな?

旭川の第七師団本隊を

乗っ取るとか

言っていたらしいが

それで

どうするんだ?

東京に攻め込んで

クーデターか?

金塊がそんなに

たんまり

あるんならよお

金塊がそんなにたんまりあるんならよお

お仲間と

山分けして

遊んで暮らそうって

発想にならんのか?

なんだって

第七師団を

乗っ取ろうなんて

物騒なことを...

なにがあった?

旅順攻囲戦だろう

古い銃ですね

散弾銃なら

半自動のが

開発されたはずだ

いい銃は高いネ

もっとお金

必要デス

予算で数を揃えるなら、

それで我慢デス

出世払いって

日本語

知ってるかい?

トーマスさん

ワタシ

いろんな国から

武器買って

欲しい人に

売るダケ

投資家

じゃナイ

鶴見サンが

ゴールド見つける

保証ないネ

ヨーロッパ

いつ戦争起こっても

おかしく無いデス

大きな戦争にナル

日本はイギリスと

同盟してマス

日本は遠いカラ

戦わないかも

だケド

同盟あるカラ

協力しますネ

戦争はたくさん物が

必要デス

日本の作る

武器は

質がいいデス

鶴見サンがゴールドで

武器の工場作るなら

急いだほうがいいヨ

ワタシが買い付けて

世界中に売るヨ

戦争は儲かりマス

この無駄な攻略を

命令させた連中に

間近で聞かせてやりたい

手投げ弾を

投げ入れてやれ

まるで

死の行進曲のような

マキシム機関銃の

発射音...

情報将校だった

鶴見中尉は

二〇三高地攻略に

否定的だったが

命令に

従うしかなかった

はいっ

許せ

硬直して

離せん...!

ぐぁっ

ロシア軍の旅順要塞に

手こずっていた大本営は

早期攻略を急かし

最強の師団と言われた

第七師団が投入される

進め!!

鶴見中尉たちは

次々死んでいく戦友を

弾除けに使いながら

堡塁の機関銃を

次々破壊し

二〇三高地を占領した

鶴見中尉は

二〇三高地山頂に

国旗を突き立てた

小隊長だ

勝利はしたが

旅順攻囲戦に

投入された

第七師団

1万の将兵は

二〇三高地を陥落

させたころまでには

半分以下になっていた

この作戦の

参謀長でもあった

元第七師団長

花沢幸次郎中将は

手柄を立てようと

正面突破に固執し

多数の将兵を

戦死させたとまで

揶揄され

帰国後

自責の念から

書腹して亡くなった

政府部内では

花沢中将か

自刃したのは

部下たちの

落ち度とし...

勲章や

報奨金はおろか

陸軍の中での

われわれ第七師団は

格下げ扱いされ

冷遇された

軍事政権を

つくり

私が上に立って

導く者となる

お前たちは

無能な上層部

ではなく

私の親衛隊に

なってもらう

金塊をたた

分け合うのでは駄目だ

資金にして

武器工場を作る

夕張の石炭

倶知安の鉄鉱石

高品質な兵器を

国内生産するための

大きな拠点を

資源の豊富な

北海道におく

父親を亡くした

子供たち

夫を亡くした

妻たちに...

長期的に

安定した

仕事を与える

それが死んでいった

戦友たちへの

せめてもの

餞である

息子を亡くした

親たち

凍てつく大地を

開墾し

日々の食料の

確保さえ

ままならない

生活から..

救い出す

お前らが何のために

金塊を見つけようと

しているのか

知らんか

鶴見中尉の

背負っているものとは

おそらく比べ物に

ならんだろう

おい杉元

おめー

さっきの話を

聞いて

あんだけ

大暴れして

部下も

殺してるんだ

今さら協力し合う

選択肢はねぇし

かといって

ゆずる気もねえ

それでこそ

杉元だぜ

ひひひ

ほだされてんじゃ

ねえだろうな?

ところでよ~

あの鳥...

カラスにしては

デカいんだけど

何かな?

カパチㇼカムイ

オオワシだ

この時期は

もう樺太の方へ

いってしまうのに

まだ残っているやつが

いたか...

よし!

ふたりとも

支度をしろ

あのオオワシを

捕まえに行くぞ

え~?

オオワシ食えんの?

え?

オーイ

まってくれえい

第22話・性奇「謎の巨大鳥

この小川で

オオワシを

待ち伏せる

これは「アン」という

鷲猟用の小屋だ

丸太に

エサとなる

鮭をくくりつけ

川に渡す

ワシが丸太に

とまってエサを

食べに来るまで

ひたすら待つ

カパチリアッだ

こんな近くで

待ち伏せ

するってことは

火も焚けない

のか?

そうだ

この鉤を使う

飛んできて

エサを食うワシを

撃てばいいの?

ちがう

杉元!

いるぞ!

撃て!

早く!

うるさい

急かすな!

当てろよ!?

杉元

この小屋で

一晩過ごし

たいのか?

やめろ杉元!

アッ

外せばワシは

戻ってこない

私たちは弓矢も

使ってこなかった

丸太にとまった

ワシの足首を

この剣で

引っ掛けて

捕まえる

これが

鷲釣猟だ

ワシの尾羽根と

手羽根は

とても丈夫だから

矢羽根に使うと

いい矢が出来る

私の矢も足りなく

なってきたから

ワシの羽が欲しい

帰っていい?

あ?

フチ(祖母)が

言ってたけど

昔は

この鷲鉤猟で

ひと冬に100羽も

変れた

オオワシの羽根は

豊臣秀吉の時代から

最高級の失羽根とされ

アイヌと和人との間で

高値で取引された

ダメだ

お前は必要だ

鉄砲の大きな音で

狩場から

ワシが逃げてしまう

のかもしれない

でも銃を

使うようになって

ワシが

いなくなったって

結局昔からの

この静かな方法が

正しかったんだ

目先の利益を

あせった結果

大きな利益を

台無しにして

しまった

いつも解決を

急ぐから

失敗するんだ

杉元は

鷲鉤で

足を引っ掛ける

狩猟の方法は

ツルヤタカ

などにも使える

狙う獲物の

大きさによって

鉤の大きさを

変えるんだ

しかし...

一番大きな釣でも...

「フリ」は捕まえ

られっこないん

だろうなぁ

おそろしい...

フリ?

なんだい

そりゃあ...

伝説の巨鳥だ

片方の翼が

七里もある

巨大な鳥の伝説が

北海道の全土に

存在する

この鳥が現れると

太陽の光が

さえぎられ

あたりが暗くなって

女や子供が

さらわれるという

ここから西へ行った

シャクコタン

〈積丹半島〉に

ある洞窟にも

フリが

巣を作っていた

という伝説がある

オタル

シャクコタン

七里ねえ...

そんなデカイ翼なら

足首も大木なみ

なんだろうな

アイヌの

おとぎ話か

オイオイ

寝てん

じゃん

ああ!?

もしかして...

俺を「必要だ」

ってのは

湯たんぽ

がわり?

いまごろ

気付いたのか

もしかして

ふわぁ

!?

来た!!

でけえ...!!

オオワシは

メスのほうが大きく

体長が約90m

翼を広げると

2m半にもなる

いやッ

...

捕まえたあッ

あ?

アシリパさん

起きろ!

どうすりゃ

いいんだこれ!

白石!!

出て来いッ

早く

押さえ込め

「あ?」

じゃ

ねえッ!!

キャーッ!!

ギャアギャァ

おお

いや

......痛ってえ

いででッ

寝てろ!!

おらあーーっ

アシリパさん

鳥の骨は最大限に

軽量化された

構造なので

非常にもろい

よかったネ

うおおお

なんだ

このデカい

鳥は!!

アシリパさんが...

ちょっと

浮いてるう!!

おいコラ

放せっ

放せ

この野郎ッ

さらわれるぞッ

明治末期...

釧路原野で

巨大な鳥が馬車を襲い

農夫に反撃され

棍棒で打ち殺された

その巨大な鳥は

迷い鳥として

大陸から渡ってきた

ハゲワシであろうと

いわれている

現在でもその剥製が

釧路の高校の

理科室に所蔵

されているという

伝説の巨鳥...

本当に

いたんだ...!!

白石みてえな

頭してたな

オオワシは

足まで煮て食べる

杉元

白石

食べていいぞ

ぐあー

はわ...

ほわわ...

ガサッ

毎朝千回もの

打ち込みで

背中や腰の皮膚は

踵のように硬くなり

やがて大木を

立ち枯れさせて

しまうほどであった

現役時代は

一日10時間を越える

猛練習の日々

うぉおおお

ぅぉぉぉお女ッ!!

網走監獄での労働は

死者も出るほど

過酷であったが

フンシンンッ

......

牛山曰く...

「あそこにいては

体が鈍る」

ケダモノめ

近所に

通報されるぞ

永倉...

牛山を

呼んでこい

街へ行こう

第33話「明的逃走

すみませんでした

喧嘩を

吹っかける

相手を

よく選ぶん

だな

てめえより

強い相手を

判別する

なんざ

どけ

野良犬に

だって出来る

ことだぜ

あああ?

......

んじゃ

ちょっくら

いってくるぜ

老いぼれたちは

温かいお茶でも

飲んでてくれよ

舐めた口

和いてると

ブッた斬るぞ

小僧

なんだあの

異様な

雰囲気の連中は

おーコワ...

新撰組で一番と謳われた

剣豪の迫力は

伊達じゃねえな

ははは

大目に見てやれ

牛山は時々

女を抱かせて

やらんと

不安定なのだ

近所の婦女子

どころか

永倉も襲いかねん

......

チョーダイコーダー?

街へ行って

いろいろんな

よかっ

いやあ

アシリパちゃんから

わけてもらった

鷲の羽根

思ったより

高く売れたぜ

酒でも一杯:

アシリパちゃんに

もらった

鷲の羽根...

ほべるのに

にから

有効に使わんどな

無駄遣いは

ご法度だぜ

いや...やっぱりガマン...

あくまで金塊を

見つけるための

資金だ

よおダンナ

また来たのかい

情報はねえけど

うちで

遊んでいけよ

おめえんとこ

プスばっかじゃ

ねえか

今日はちょっとだけ

お高めな店の遊女に

聞き込みといくか

それに...

本当に

ムカつく

野郎だぜ

あくまでも

金塊のため

だからな

ルンルン

無駄遣いじゃ

ないぜ

アシリパちゃん

う......

......

よぅ...白酒由竹

何で逃げるんだ?

白石いいい

ちょっと

お話し

しょうぜ!!

やばいやぱい

やばいッ!!

おい

デカブツ

よりにもよって

牛山と

鉢合わせちまった!!!

ああ?

お前が

探してる男が

そこにいるぞ

!?

娼婦をブン投げて

怪我させたって

奴はあいつだ!

なにぃ?

あの野郎が...

よっしゃ

ぶっ飛ばして

やるぜ

おお

喧嘩だ

喧嘩だ

やっちまえ

あたしも

手を貸すよ

ちくしょう

時間稼ぎ

にも

なんねえッ

当時の小樽の

街中にはカチカチに

硬くなった道路や

屋根の雪を削り取り

石垣のように

うず高く

積まれている光景が

あちこちでみられた

おりゃあ

やった!!

これは

死んだ

えーーッ

ヒヒーンッ

オイ!何すんだ

危ないぞ

避けろ!!

フン

牛山は足払いの威力を

高めるため

60キロの米俵を

毎日蹴り上げては

簡単に転がしたという

「対戦相手の足が

頭の上まで飛んでいく」

牛山の足払いは恐れられ

ときには足首を

粉砕するほどであった

ダメだ!!

何をやっても

止まらない!!

どうやったらありました

あの暴れ牛を

止められるんだ!?

第七師団...!!

どうした?

そんなに

慌てて...

何か

あやしいな

お前

おい誰か

手配書

持ってるか?

助けてくれ!!

銭湯で俺に

カネを殺まれたって

いちゃもんを

つけられたんだ

やくざでもねえ

「変な入れ量」

をした

不気味な男に

追われてる!

第34話・接触

急げ急げ

合図が来るぞ

チクサ

打撃と回転により

人力で削孔する道具、

削岩機と原理は同じ

よし

もうこれで

充分だろう

!?

なに?女に?

なにが

規発した?

手投げ弾だ

待ち伏せか?

あの男だ

誰か助けて!!

鶴見中尉

銃声と爆発音は

この先です

兵を集めろ

馬が必要だ

どうにかして

借りて来い

はい

牛田!!

何であんた

ここにいるんだ!?

勝手に兵隊と

おっぱじめやがって

牛山は

例の女郎屋の前で

付検する

手はずだろ

伏せろ!!!

わぁぁぁああッ

逃げるぞ

来れ生山

白石が

そこに..

入れ墨の

ほうが...

大事だ!!

しっかり

頼まってろ!!

入れ墨の

四人...

ジジイの

計画よりも

銃声だ

ずっと向こうだよ

警官が

走っていった

警官なんて

サーベルしか

持ってないのに

ヒー

なにが

起きてるんだ?

どうだ?

通じたぜ

旦那!!

一名射殺

馬で逃走した

二名は

追跡中です

逃げたうちの

ひとりは

入れ墨の脱獄内

ではないかとの

笑いか.....

こいつは

入れ墨が

無い

通報は

罠か?

我々を誘い出して

入れ墨を

奪うつもり

だったのか?

...

ダイナマイトまで

用意して..

鶴見中尉殿

先ほど離れた場所から

聞こえた爆発音は

堺町通り付近

だそうです

こっちの騒ぎは

陽動作戦

女郎屋の二階が

爆発したとの

情報が伝わって

きました

......金融街か

狙いは銀行だ

いいよいま

あと一分で

引き上げるぞ

土方さん

ありました

こちらです

時を越えて

我が元へ

この銀行に

流れ着いたという

情報は正しかった

ようですな

ふふ..

こっちの

なまくらでは

どうにも

気分が乗らん

からな

あの爆破音が

金庫の壁を

破ったものなら

強盗たちは

もうとっくに...

!?

ふがふが

大金庫は

二階?

いいえ!

あるのは

保護預品庫です

でも扉は厳重で

当銀行の鍵と

預け主の鍵が

なくては入れません

カネを奪って

私たちを

拘束した男たちは

二階へは

行きませんでした

そのあと

爆発が起きて...

裏の外壁が

薄いことまで

調べられていた

ようだな

貸金庫の中身は

現金有価証券

あとはせいぜい

宝石類...

和泉守兼定です

ほかには

当銀行が

所有する

絵画や

刀などの

美術品が...

ここまで

用意周到に計画して

何が欲しかった?

カタナ?

土方蔵三

奴が

鶴見とかいう

軍人だな?

私が乗ってきた

馬まで盗んで

いきおって..

腹の据わった

いい面構えを

しておるじゃないか

幕末の亡霊

いや...

この世に怨みを

残した悪霊めが

よう...

ネエチャンがた

今日は

大変だったな

あんたこそ

ひどい格好だね

うん...

それより

頼んどいた

件だけど...

来ただろう?

入れ墨の男が

ああこっそり

新しいのと

取り替えて

盗んでおいたよ

ありがとよ

ホラ

お駄賃だ

でも

どうすんだい?

そんなもん

たとえ便所の下に

隠れようと

レタァは見つけ出すのさ

見ろ杉元

役立たずの自石が

帰ってきてるぞ

こいつ

酔っ払って

るのか?

ぐー

酒臭い

オオワシの羽を

売った金で

酒を飲んで

帰ってくるとは

どうしようも

ないやつだな

なんで汚い

片っぽ靴下ちゃんを

ポケットに突っ込んで

るんだ?

おい杉元

この汚い男を

部屋の隅っこの

寒いところに

転がしておけ

はい

アシリパさん

...

第35話・求愛

チロンヌフ

キタキツネの

足跡だ

へえ...

キツネの足跡は

一直線になるんだな

犬はもっと

肩幅があるから

足跡は広がる

前足が後ろ足に

重なるからだ

これは

キツネ用の

罠だ

キツネが

魚を食べようと

飛び上がると

狸はもっと

フラフラ歩く

前足がこの二股の

部分に挟まる仕掛けだ

キツネって

美味いの?

でも杉元

あんまり美味くない

タヌキのほうが

脂が多くて美味い

キツネも

食べてみたい

だろう?

俺はべつに

北海道の珍味を

食べ尽くしに

来たわけじゃないん

だけどなぁ

あ!杉元

静かに

あれを見ろ

エゾフクロウの

つがいだ...

エゾフクロウ

って美味いの?

プーッ

オイオイ

杉元お~...

私たちは

「夜鳴く神」とか

「獲物を降ろしてくれる神」

などと呼んでいる

食べる

わけない

だろ!!

いや

知らねー!

ヒグマ狩りと

関係があるからだ

夜に

この鳥が鳴いた方向を

追いかけると

必ず飛がいる

だから

アイヌの猟師は

エゾフクロウを

狙らない

仲がいいな

あんなに

ぎゃうぎゅうに

寄り添って...

エゾフクロウは

一生同じ相手と

暮らす

それなのに

毎年この時期

夜になると

鳴き合って

求愛するんだ

へえ~

一途だね

不安だから

相手の気持ちを

確かめ合うんじゃ

ないか?

...きれいごとじゃ

生きてけねえもんな

もし片方が

死んだときは?

そのときは

別の相手を

見つける

子孫を残すためには

当然のことだ

寅次!

お前..

花嫁を

ほったらかして

来たのかよ

佐一が家に

戻ってるのを

見たって奴が...

何で

戻ってきたッ

今頃になって

梅子を

連れて行く気か!!

梅子は

俺の女房だッ

おぉおお

ぐおっ

結婚

おめでとう

寅次

佐一...!!

お前は

気にも留めてない

だろうがな...

俺は子供の頃から

何ひとつ佐一に

勝てなかった!!

柔術でも剣道でも

いつだって

俺の前に

佐一がいた

梅子の中にも

ずっとお前が::

でも女ってのは

男ほど昔の相手に

未練を持たない

らしいけどなッ

ハハンッ

佐一が梅子のそばに

いれば大事に

していたかも

しれんけどなあ!!

俺はそれ以上に

大事にする

梅子の中にまだ佐一がいようがいまいが...

様子の中に

まだ佐一が

いようが

いまいが..

関係ない!!

関係ない!!

母ちゃんが

言ってたぞ!!

ぎゃーッ

お前に勝てる

とすれば

それしか

ないんだ!!

俺は惚れた

様子を

幸せにする!!

それだけだ

いーいいんじゃ

実を言うと

あのあとも

ずっと俺は

不安だった

くかー

佐一...

お前に

謝っておかなきゃ

ならんことがある

梅子...

お前も知って

いるんだろ?

あれだけお前に

啖呵を切ったのに

結婚式の日

佐一が帰って

きていたのを

......

馬鹿なことを

梅子に

聞いてしまった

はい

梅子...おまえは

佐一が戻ってきたら

どうする?

佐一がおまえを

連れて行ったら...

俺がそう言ったら

梅子のヤツ...

そのときは

佐一さんを

ぶっ飛ばして

ください

それでもまた

寅次さんが

負けたら...

そのときは

私ひとりで

この家に戻って

トラちゃんが

泣き止んで

帰ってくるまでに

ごはんを作って

待ってます

...変わって

ないな

梅ちゃんは

歳は40過ぎてるけど

裕福で

素敵な男性でね

奥さんと子供を

亡くして跡継ぎが

欲しいんですって

梅子は美人だし

まだまだ子供も

産めるんだから:

梅子の話を聞いて

会ってみたい

らしくて

お母さん

ここでそんな話

やめてください

でもこんな

いい話

無いわよ?

キツネの罠を

見に行こう

獲れてると

いいな?

杉元

キツネ...

どんな味が

興味が出てきたぜ

まずは生きねば

クーン...

第36話、役立たず

白石は

入れ墨の皮を

剥いだら

肉は臭いから

捨てる

カラスとか

ネズミが食う

ちょっと~!!!

んもお~~~

キツネの罠は

失敗か...

おまえ何しに来た?

おお

そうだ

そうだ

お肉

捨てないでえ?

レタラを

俺に

貸してくれ

......

レタラを

貸せだと?

アシリパちゃん

レタラ

呼んでくれよ!

お願い!

いいでしょ?

さてはお前

レタラの

毛皮を売って

飲み代にする

つもりだな?

もないしない!

オオカミと

仲良く

なりたいんだ

レタラは

私のものじゃ

ないから

貸せない

それに

今後わたしから

レタラに

近づくことは無い

狼たちを

巻き込みたくない

何を企んでるか

知らんが

そっとしておけ

この話は

もう終わりだ

昨日の夜

あちらの方向で

フクロウが鳴いた

求愛とは違う

鳴き声だ

アイヌには

ペウレブ

チコイキ

(子熊を獲ったぞ)

と聞こえる

ヒグマが

冬ごもりの

穴から

出てきてるのかも

しれない

ちょっと

見に行こう

オレ

帰っていい?

フクロウが

子熊を獲った

ということは

その近くに

母熊がいる

ということだ

ダメだ

ずるいぞ

杉元

はやく来い!

これを見ろ

エゾタヌキ

モユクの

糞がある

ど...

どうしたの!?

アシリパさん

また

うんこ

~?

「溜め糞」といって

タヌキは

巣穴の外に自分の

便所をつくる

ヒグマが

近くに

いるはずだ

アシリパさん

うんこイシるの

やめな?

タヌキの巣穴は

ヒグマの

行動範囲の

中にある

でも

ヒグマは

タヌキを

襲わない

ーっ!!

キョロ

なんで?

便所の数で

巣穴のタヌキが

何匹いるか分かる

わからない

タヌキはヒグマの

家来だからと

言われている

イオマンテ

(熊の霊送り)の

ときもタヌキは

かばん持ちとして

一緒に送られる

狩りで先に

タヌキを獲ると

ヒグマが

獲れなくなる

なんだか

猛烈にタヌキが

食べたいッ!!!

タヌキ

獲ろうぜッ

自分より大切に

扱われると思って

ヒグマを獲る邪魔を

するんだって

だからタヌキを

先に獲ったら

一旦帰って

出直さなきゃ

ならない

どうやって

捕まえる?

燻り出すの?

この細長い

アオダモの

枝を使う

溜め糞からの

足跡はこの穴に

続いてる

枝の先っぽを割り

くさびを打って

少し広げておく

「毛よじり」

という道具だ

タヌキの体に

押し付けて

ひねると

毛をからませる

ことが出来る

いだだだ!!

肉球んでるッ

杉元

やってみろ

巣穴の奥に

突っ込んで

タヌキを

探るんだ

あ!いるぞ!

なんか

やわらかいのが

よし杉元

回らなく

なるまで

ひねったら

引っ張り出せ

くす。

出た!!

わあっん

可愛い

可愛い

タヌキを

白石!

絞め殺せ

でもタヌキは

肛門でも息をすると

言われているから

この棒を肛門に

突っ込むんだ

ワイワー

白石落ちるッ

早く捕まえてッ

なんかもう

動いてないぞ

死んでるんじゃ

ないのか?

タヌキは

死んだ

フリをする!

気をつけろ白石

頭を噛まれるなよ?

出来るかぁ!!

絶対に頭を

噛まれるなよ?

...

いだー

逃げられたッ

役に立たねえな

シライシ!!

なんだ!?

リュウ!!

お前ついて

来てたのか

よしよし

おりこうさんだ

あの二瓶鉄造が

しこんだ

猟犬だもんな

さて村へ

帰るか

どうした?

これは...

ヒグマの

足跡がある

小鹿に出くわして

殺したはいいか

ヒグマのにおいも

見つけたみたいだ

追わなくても

いいんだぞ

リュウ

よしよし

いい子だ

穴から出たばかりの

ヒグマはまだ

胃が小さいから

獲物を食べられない

食べられないので

ひとまず

埋めておいたのかも

リュウのおかげで

鹿肉も手に入ったな

白石おまえ...

この肉に手を付けたら、

大変なことに

なるんだぜ

こんな話がある

アイヌの娘が

山で鹿の新しい

死骸を見つけた

喜んだ娘は

鹿を縄で繋いで

川に流し

岸を歩いて

村まで運んだ

村の男たちは

その鹿を見て

娘がビグマの獲物を

持ってきて

しまったことに

気がついた

これは

アイヌ独特の

運搬方法だ

その夜

村人は一晩中

鹿を取り戻しに来た

ヒグマと

戦うはめになった

鹿を川に流して

運んだのに

羆は獲物のニオイを

追って来れたのか?

なるほど...

別にレタラじゃ

なくたって...

いいや...

ヒグマは獲物を

盗んだヤツの

ニオイを追ったんだ

谷垣!

起き上がれる

ようになったか

谷垣...

なんかすっかり

アイヌの村に

馴染んでるな

ところで

谷垣って

マタギだった

よな?

おばあちゃんが

オレの服を

洗ってるんだ

ちょっと

教えて

欲しいことが

あるんだよ

リュウはすでに

しつけも

訓練もされた

頭のいい猟犬だが、

そんな犬でも

相手が自分より

下位な人間と

みなせば.....

命令や指示に

従わず無視をする

重要なのは

服従させる

ことだ

本来犬は

服従する主人を

求めているし

むしろそのほうが

心が安定する

ガルルッ

どうやったら

手っ取り早く

服従させられる?

一緒に

歩けばいい

ただ絶対に

目をあわせるな

話しかけるのも

ダメだ

犬の社会では

相手の顔を

見つめ

声を掛けるのは

下位の犬だ

それだけ?

引き網を

短く持って

歩け

犬が動こうとする

方向の

あえて逆へ行け

犬が右へ

行こうとしたら

左に引っ張る

犬に引っ張られ

先導されるのは

下に見られてる

証拠だ

毅然とした態度で

一緒に歩けば

どんな犬も短時間で

がらりと変わり

主従関係が確立する

いいか?

リュウ

このにおいだ

このにおいを

探せ!

思うようには

いかねえさ

脱獄だって

根気が

必要なんだ

見てろよ!

役立たずなんて

言わせねえぜ

...

クーっ

どうした?

!!

よくやったぞ

リュウ...

探してたのは

こいつのにおいだ!!

第37話「初春

第37話「初春

フキノトウ

エゾアカガエル

!?

積丹の海岸で

また死体が

見つかった

斧で頭を

叩き割られてた

その前は

刃物で首を

掻き切られていた

殺されたのは

ニシン漁の

出稼ぎ労働者だ

例の男の

仕業か?

辺見和雄か...

日本各地を

放浪しながら

百人以上も殺してきた

殺人鬼だ

捕まえるのは

ちょっと面倒だぜ

ヤツが

自慢しているのを

聞いたことがある

同じ場所に

とどまらず

常に移動して

殺すのが

捕まりにくく

なるコツだと

金塊が目的じゃなく

服類したやつらは

すぐに

殺すべきだった

一瓶鉄造

みたいな奴も

厄介だが

辺見和雄は

もはや

行動が読めん

オフッ

あとは...

クソ犬...

うっ

おおっ

!?

関節を外して...

逃げるとは

目ん玉

串刺しに

してやるッ

むんッ

いだぁッ

凶器は串怯だぜ

シライシくん

殺すな牛山

よくここが

わかったな?

白石...

土方歳三!!

ふんッ

こいつは

アホ面だが

油断できない

妖怪だぜ

どうする?

白石...

オメーの入れ墨を

写させるんなら

とりあえず

殺さねえって

言ってんだ

ためらう必要が

あるか?

ひとりで

第七師団とも

渡り合うつもり

だったのか?

実際こうして

オレと

ジジイは

手を組めてる

ほかに仲間が

いるんだな?

こっちは銀行襲って

資金もあるしよぉ

不死身の

杉元

という男がいる

北海道に春を告げる

ニシンの群来(くき)

群来とは

3月から5月にかけ

北海道の日本海沿岸へ

ニシンが産卵のため

押し寄せることである

ヤーレン

ソーランソーヲン

ソーランソーヲン

ソーラン

ハイハイ!!!

ニシン来たとて

カモメがさわぐ

銀のうろこで

海光る

チョイヤンサ

エンエンヤー

アンサーノ

ドッコイショ

アー

ドッコイショ

ドッコイショ

おととい来た

あのモッコ背負い

誰ともしゃべら

ねえしよぉ

不気味な野郎

なんだよ

「モッコ」

船から魚を

陸揚げするのに

用いた運搬具

それにな

ちらっと

見えたんだよ

ヤツの胸元に...

ありゃ

モンモン

だぜ

へえ...

見かけに

よらない

ですね

でも...

ニシン漁で

日銭稼ぎに

来るヤツなんて

いろんなこと

抱えてる流れ者が

ほとんどでしょう

あんまり噂しちゃあ

かわいそうですよ

「ヤン衆」といってな

東北地方などから

季節労働者が

ニシン漁のために

雇われて日本海沿岸に

集まるんだ

脱獄した囚人が

潜伏するには

もってこい

なんだがね

最近

あちこちの

漁場でヤン衆が

殺されてるんだ

犯人は

辺見という男に

間違いない

間違いないと

なぜ分かる?

死体の

背中には文字が

刻まれていたのさ

ニシン番屋

漁師たちが

寝泊りする施設

ニシン漁によって

財をなした経営者たちは

競うように豪華な

木造建築物を建て

まだまだ夜は

冷えますね

外の便所は

堪えますよ

日本海の海沿いにはこのようなニシン御殿が複数存在した

日本海の海沿いには

このようなニシン御殿が

複数存在した

よかったら

僕らと一緒に

飲みませんか?

悪いが

俺は

根暗でね

あ...

ひょっとして

その文字は

「目」じゃないか?

ただの

ヤクザか

僕が待ってるのは

あなたじゃなかった

ようです..

叔父が

その囚人に

狙われないか

心配だ

叔父たちは今

海岸に行っている

ニシンを追って

海岸へ来た鯨を

捕まえるためだ

クジラ?

よしっ杉元

海へ行こう!!

クジラを

食べに!!

アシリパさん?

第38話・フンペ

辺見和雄に

監獄で

初めて会った

印象は..

ごく普通の

男だった

礼儀正しく

人当たりがよくて

すぐに

打ち解けたよ

奴にとって

人殺しは

息をするのと

一緒だという

だから看守から

奴の正体を

こっそり聞いて

震えたね

一度

聞いた事がある

どうして

そんなに殺した

のか...

奴は最初...

自分でも

分からない

みたいで

困っていたが

そのうち

きっかけ

みたいなものを

話してくれた

僕が育った家の

裏山には

竹林があって

大きなイノシシが

住み着いて

いたんですが...

そのイノシシが

僕の弟を

喰っちゃったんです

僕は幼い弟が

泣き叫んでるのを

ただ隠れて見てる

だけだった

必死で抵抗しても

なすすべなく

話の通じない

化け物に

むごたらしく

殺される

身の毛もよだつ

死に方.....

どれだけ

痛くて

怖かったか

絶望して

光を失っていく

弟の目......

あの目を

思い出すと

...

誰でもいいから

ぶっ殺したく

なるんです

その辺見という

囚人は金塊に

興味が無いと

白石にも

言っていたんだな?

矛盾して

ないか?

捕まらないように

移動し続けるような

用心深い奴が

なんだって

他の囚人を

おびき寄せるような

手かかりを

残すんだ?

まあ...

極悪人のほうが

こちらとしても

気兼ねなく入れ墨を

ひん剥ける

辺見の頭の中なんて

理解したくもねえな

飲んだくれてる

ただのブタだと

思った白石が

金塊の手がかりを

持ってくるとはな

私の中で

自石の地位は

グッと上がって

リュウの

ちょっと下だ

うれしいね

海岸に沿って行けば

大規模なニシン漁場が

点在してる

陸揚げしたニシンを

その場で

加工するから

漁師以外にも

働いてる人間が

たくさんいる

辺見和雄は

そいつらに

まぎれて働いて

いるかもしれねえな

アシリパ!!

アチャポ(叔父さん)

お前たち

良い時に

来てくれた!!

早くこっちへ

え?

別のコタン(村)の船が

クジラを見つけて

モリを打ち込んだが

昨日からずっと

沿岸を引っ張り

まわされてる

もうすぐ

こっちに来るから

加勢したいが

ちょうどこっちの

漕き手のふたりが

水を汲みに行って

しまった

いや

アチャボ

私たちは

これから...

急げ急げ

もっと

漕ぐんだ杉元!!

なんで俺たちが..

アチャポ

あの船だ

間に合った

クジラは?

フンペ

くじらは

落ってる

でもそのうち

息をするために

上がってくる

姿を見せたら

このキテ(話)を

投げ飛ばす

二本あるから

杉元も

投げてみろ

気をつけろよ

モリ先の刃には

毒が塗ってある

獲物に刺さると

このモリ先だけが

体内に残り

結んである綱で

獲物を

たぐり寄せる

モリ先には

持ち主の

印が彫ってあって

たとえ逃がして

どこかの浜辺に

打ち上げられても

自分の獲物と

主張できるんだ

あッ!!

来るぞ

杉元!!

首だ杉元ッ

首の皮膚が

やわらかいぞ

どこが首か

わかんねえよ

よ......

よしっ

刺さった!!!

うおぉ

振り落と

されるな!!

すげえ勢いで

引っ張り

出した

この時期の

海でも

死ぬには

充分な

冷たさだぞ

ヤーレン

ソーラン

ソーラン...

不眠不休で働く

「ヤン衆」たちが眠気で

春のまだ冷たい海に

転落などしないよう

大声で歌ったのが

ソーラン節の由来と

いわれている

ああ

やばいッ

オーイ

クジラが

あの漁船たちに

向かってる

突っ込むぞ

気をつけろ

!!

......

なんか

叫んでるぞ

あの坊主

クジラ!?

漁師が

落ちた!

早く

つかまれ

助けよう!!

あっちの船は

デカイから

岸まで戻るのに

時間がかかる

わかった

綱を切る

早く火に当てて

暖めないと

低休温粒で死ぬぞ

白石!!頼んだぞ

クジラの分け前を

しっかり

もらって来い

ええぇえええ

引っ張り

上げるぞ!!

頑張れ

しっかり

つかまれ!!

急げ!!

岸の漁場には

ニシン加工用の

焚き火が

あるはずだ

ありがとう..

ありがとう..

海に落ちて

死ぬなんて

こんな死に方...

絶対イヤだ

こんな

つまらない

死に方...

ゴールデンカムイ●(完)

【アイヌ語監修】

中川裕

【取材協力】

北海道アイヌ協会

博物館-縄走監球

小榊市総合博物館

北原次郎太モコットゥナシ

後藤一信

【写真提供】

門間敬行

松田高範

【アイヌ文七関係参考文聞】

「アイヌ語絵入り辞典J知里高央横山孝銀

「アイヌの民具」喧野俊

「萱野茂のアイヌ語辞典L萱野残

「アイスの民民実実訓政集」武装野美術大学生活文化研究会

「アイヌ式エコロジー生活・冷蔵エカンに学ぶ、白熱の知恵」さとうち藍

「アイヌ神語集」知里幸蕙

「アイヌ民族の軌跡j浪川勉治

「先住民アイヌ民族(別冊太陽)ムック

「シラオイコタン木下清議遺作写真集」

「アイヌの衣服文化」アイヌ民族博物館

「アイヌの四季目H良智子〈銀治明香

「アイヌ植物誌」福岡イト子佐藤が子

「アイヌの民俗」早川昇

「クスクップオルシベリ砂沢クラ

「聞き書アイヌの食事」探中美接_藤村久朝村木美幸知井朝子古原鹸弘

「ニューエクスプレスアイヌ語J中川裕

「アイヌ語千歳方言辞典J中川給

「カムイユカラでアイス語を学ぶり甲府裕中本ムツ子

「語り合うことばの力カムイたちと生きる世界中川裕

「コタン生物記(1)樹木雑草篇]更科誘臓_更科光

「コタン生物記(2)野獣・海賊魚族篇J更科源輳_更科光

「コタン生物品(3)野鳥水鳥,昆塩篇]更幇源薩_更科光

「サルウンクル物語」用上勇治

「エカシとフチを訪ねてJIL上勇治

「アイヌ民族は」アイヌ文色保存対策協議会

ストライバナンス

担当編集・

一能ハロ

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hokoshisuendgo

YJC

DIGITAL

5月25日は、2016年10月20日に

4巻

デジタルカラー版

ゴールデンカムイ

野田サトル

◎野田サトル2015.2021

初版発行

「みんなデジタル版発行-202」年

2015年

発行所・集英社・

スーパー...ベース・http://www.stuesshara.co.

この作品は、著者カラー原画にカラ、ギャカーの原画をもとに

集英社でデジタル彩色を行った特別編集版です。

本作品の内容あるいはデータを、全部・普段にかかわらず

無断で複製、改竄、公衆送信(インターネット上への掲載

を含む)することは、法律で禁じられています。また、個人

筋肉な使用を目的とする複製であっても、コピーガードなど

の著作権保護技術を解除して行うことはできません。