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もらった。
JC-
素人...いつまで
UMPCの
ここまで、COMANSの
ousano
もと...comd
...
Copyrac.
Isoldmylic
...
.cn.tousndyrn.
三秋、縋..田口囁
(メディアワークス文庫「三日間の幸福」
キャラクターデザイン「992」と同じ第一
SHUEISHA
もらった。
寿命をさっきから、
こうして、ここでは、
ousand
the..cond
...
クーラッションに
...は、mylic.
For
ten.thousondyon
er
三秋縋ヮ・田口囁
インデアオークス文章、「三日間の準備が
キャラクターデザン・EDL・HILINEサービス
★この作品はフィクシヨンです。実在の人物・団体・事件などには、
いっさい関係ありません。デジタル配信用に再編集を行っています。
寿命を買い取ってもらった
Isald.mytic.for
terthonusadychPrerver.
thcsecondvolume
三秋絶砂田口囁
(メディアワークス文庫「三日間の幸福」
キャラクターデザイン「5911年11月
WPCOWICSで
CONTENTS
I-saはmyilic.forterthousendyen.perycar.
第一00
話
話
...第一
...
話
第
話
第1
存在の言うまでもない軽さ
番外編
ー!?!
ぎゃあ
その
「何か」は
きっと
夏に
起こるの
十年後の夏
あの日、俺とヒメノが待っていたのは
その時
ようやく
「生きてて
よかった」
って
私たちに
とっても
いいことが
起きて
十年後には
自分の存在を肯定してくれる
心の底から
思えるの
今の
クラスメイトが
私たちは
とっても偉く
お金持ちに
なってる必要が
ある
全てを納得させてくれる『何か』だった。
みんな嫉妬で
心臓発作を
起こすくらい
そうじゃないと
割に合わない
もんね
ヒメノさん
色々
ありまして
十七歳で
出産してるんです
そのまま
高校を
退学
十八歳で
結婚しますが
二年後には
離婚
二十歳の今は
実家で
子育てを
しています
......
そして
二年後...
彼女は
飛び降り自殺
することに
なっています
もしかして
千羽鶴
ですか?
一人で全部
折るつもり
なんですか?
なんのために?
死にゆく
俺の
幸福な
余生の
ために
意味のない
作業は
楽しかった
味気のない
畳部屋は
色とりどりの鶴で
埋め尽くされて
いった
881...88288..
883..
鶴の数を
数えなおして
いると
自分が作った
にしては上手く
できすぎている鶴が
何羽もみつかった
俺が寝ている
間に
どこかの
お節介焼きが
作ったのだろう
意外と早く
完成して
しまった...
鶴を折り終えた
夜
ジーンズの
ポケットを
確認して
いると...
あの日
そこには
こうあった
タイムカプセル
から出てきた
手紙だ
十年後の僕へ
あなたにしか
頼めないことが
あります。
もしまだ
十年後の僕が
売れ残っている
ようでしたら、
ヒメノに会いに
行ってほしいんです。
ヒメノは僕がいないと
だめみたいだし
僕はヒメノがいないと
だめみたいだから。
十年前の
あなたは
それで
ヒメノに
会いに
行くよ
意外と素直で
優しい子だったん
ですね
どうする
つもり
ですか?
これは
十年前の
俺の頼み
なんだ
十年後の
俺は
それを
尊重して
やりたい
確かに
今より余計に
傷つくことに
なるかもしれない
でも
しっかり
この目で
見定める
までは
諦めるわけには
いかないんだ
最後に
一度だけでも
彼女に
会って話が
したい
そして
俺に人生を
与えてくれた
恩返しに
寿命を売って
得た三十万を
彼女に渡したいと
思うんだ
私は
止めませんよ
その
気持ちは
私にも
わからなくは
ないですから
明日の朝にでも
ヒメノの家に
行ってみようと
思う
あいつ今は
実家にいるん
だろう?
そうですね
夫と
別れてからは
ずっと実家を
頼っている
みたいです
.......
あまり様々しくその名前を
あまり軽々しその名前を出さないで欲しいな
特に
あんたの口からは聞きたく
Cからに聞きたくないんだ
そうですか
以後気を付けましょう
...ありがとう
ほっ
どういたし
まして
申し訳
ありませんが
一人で遠くまで
行くのは
ちょっと
監視対象者と
監視員は
百メートル以上
離れてはいけない
ことになっているん
です
離れると?
寿命を
尽きさせ
られます
...でも
このバイク
二人乗れます
よね?
まぁ一応
でしたら
移動することも
可能ですよ
私を乗せるのが
どうしても嫌だ
というのでない
限りは
まさか
気に
しないよ
...
失礼します
ヒメノさんの
住所は
ご存知なん
ですか?
まずは
大学に行って
地図を
手に入れる
......ああ
一度だけ
ヒメノから
手紙をもらった
ことがあるんだ
書かれてた
のは
他愛のない
ことで
皮肉のひとつも
罵倒の文句も
なかった
それが
どうにも
受験勉強が
忙しいとか
ヒメノらしく
ないと思ったん
だが...
結局俺も
同じような
当たり障りの
ない手紙を
返した
返事は
なかった
おそらく
その頃には
ヒメノはとっくに
俺の知らない
誰かの子を腹に
宿していたのだろう
あまりいい
思い出とは
言えないか
ヒメノの手紙は
俺に彼女の居場所を
教えてくれた
俺の知らない誰かの子を腹に宿していたのだろう
今はそのことを
喜ぼう
...なあ
特に意味のない
質問なんだが
あんたが俺と
同じような状況に
なったら
余命数か月
どう過ごす?
んー
その時に
なってみないと
わかりませんね
あまり
こういう場所で
私に話しかけない
ほうがいいですよ
あの:前にも
言いましたけど
一人で喋ってる
変な人だと
思われますから
いいんだよ
実際変なやつ
なんだから
それどころか
人にまったく
記憶されずに
死ぬよりは
人にまったく記憶されずに死ぬよりは
積極的に
怪しまれたい
とさえ思っていた
考えてたんです
考えてたんです
不審者として
記憶されて
死ぬほうが
まだいい
...あの
さっきの
質問の
答え
余命数か月
という状況に
おかれたら
三つほど
絶対にやって
おきたいことが
あります
...一つ目は
ある湖に
行くこと
二つ目は
自分のお墓を
建てること
そして三つ目は
あなたと
同じように
かつて大切だった
人に会いに行く
こと
そんなところです
それだけじゃ
よくわからないな
もう少し
詳しく教えて
くれないか?
湖は
ただの湖です
ただ
子供の頃に
そこで見た
星空が
おそろしく
綺麗だったことを
覚えてるんですよ
世の中には
もっと美しい
景色が
数えきれない
くらいあるん
でしょうけど
私が本当に
「知っている」
美しい景色は
あの星の湖
くらいのもの
なんです
なるほど
...お墓
ってのは
いえ
きちんとした墓地を
購入したいって
ことか?
極端な話
適当な大きな
石でもみつけて
これを自分の
墓にしよう
と決めつける
だけでも
いいんです
大切なのは
...そして
“大切だった人〟の
ことですけど
それが私の死後
少なくとも
数十年は残って
くれるという
ことなんです
これは
そうか
それはやっぱり
まぁ
そんなところ
です
ちょっと
クスノキさんには
言えませんね
男なのか?
傷つくかも
しれなくても
結局は私も
その人に
会いに行って
しまうと
思います
失望するかも
しれなくても
だから
否定する
権利は
クスノキさんが
今からしようと
していることを
私にはないん
でしょうね
あんたらしく
ないな
自分のことと
なると
妙に弱気じゃ
ないか
自分の未来に
ついては
何も知り
ませんから
姫野
ほかに姫野という
苗字の家はない
ピーーン
ここで間違い
なさそうだ
夜になれば
誰かしら
帰ってくる
だろう
時間を
潰そう
死ぬ前に
どんな本を
読みたく
なるのだろう
と昔から
考えていた
それは
言いかえれば
死ぬ直前まで
役に立つ本
とはどういう
ものだろう
ということだ
結局
俺が選んだ
のは..
いかにも
面白みのない
選択だった
監視と読書を
一度に行おう
ってわけか
そんなところ
です
誰かと一緒に
本を読むと
いうのは
初めての
経験だった
そうする
ことで
「自分が
どう感じたのか!!
だけでなく
「同じ箇所を
読んでるであろう
ミヤギは
どう感じたのか」
にまで気が回り
読書はより
濃密になる
ようだった
落ちつく
匂いのする
女の子だな
と思った
と思った
まだ
戻らないか...
出直そう
いや、それは...
お祭り..
でしょうか
この先の
神社だな
寄ってみようか
その祭りを
見るのは
十年ぶり
だった
ヒメノが
いなくなって
からは
近所の祭りに
出向くようなことは
なくなっていた
こんなに買って
どうするん
ですか?
さあ
俺にも
よくわからない
俺一人じゃ
食えそうに
ないから
あんたも
手伝って
くれ
......
いただきます
あ~~~
さすがに
全屋台制覇は
やりすぎだった
割に合
もんね
あの日
十年後の夏
ヒメノは
予告した
「とっても
いいこと」が
起きて
「生きてて
よかった」と
思える巳が
十年後の
夏にくる
のだと
さらに
彼女は言った
売れ残り
同士...
十年後もお互いに
十年後も
お互いに
一緒に
なりませんか
結婚する
ような相手が
いなかったら
その時は
売れ残り同士
結婚しようと
結婚しよう
と
今俺は
その十年後の
夏にいる
一方は
中古品となり
しかし結局
もう一方は
非売品として
一生を終えよう
としている
互いに所有者が
いないという状況
ではある
ヒメノは今
どこで何を
してるだろう?
できすぎた
話だと
人は言う
だろう
しかし
物事は
本人も
気がつかない
ところで
こういった
大邪鬼な
形で
繋がっている
ものなのだ
......
ヒメノ
...クスノキ?
寿命を
買い取ってもらった。
年につき
けど
Iで
第8話
再会した
俺とヒメノが
どんな言葉を
交わしたのかは
ほとんど
覚えていない
それだけ俺は
興奮しきって
いて
考えなしに喋っていたということだろう
考えなしに
喋っていたと
いうことだろう
会話の中身など
なんでもよかった
俺が何か
言って
彼女が何か
返してくれれば
それで事足りた
彼女は
祭りに来た
わけでは
なかったらしい
仕事の関係で
ここに来て
たまたま
神社に車を
停めていたから
ここを通り
かかることに
なったのだ
そうだ
もうちょっと
話してたいん
だけど...
明日は
早いんだ
そうか...
近いうちに
どこかで酒でも
飲まないか?
そうだね...
アルコールは
駄目だけど
食事なら
決まりだ
二日後の夜に
会う約束をして
俺たちは別れた
俺たちは
別れた
よかったじゃ
ないですか
こうなる
とは
俺だって
そうさ
私も予想
してません
でした
できすぎた話
だと思ってるよ
本当に
ええ...
...こんなことって
あるんですね
・大学に行か
・働かない
・美味しいものを食
・綺麗なものを見る
速着を高く
あんたに
ちょっと
変わった頼みが
あるんだ
お酒は
飲めませんよ
そうじゃない
ヒメノに会う
ための準備に
明日一日
つきあって
ほしいんだ
準備...
というと?
今更あんたに
隠し事をしても
無駄だろうから
正直に言うが
俺はこの
三十年間
一度もまともに
女性と交際した
ことがない
だからこのまま
ヒメノに会っても
退屈させたり
的外れなことを
してしまうかも
しれない
その可能性を
少しでも
減らすために
一明日は街に出て
予行練習
したいんだ
...私の
勘違いで
なければ
それは
私にヒメノさんの
役をやってほしい
ということ
ですよね?
そういう
ことだ
ミヤギ
頼めるか?
その
私は構わない
んですけど
実際そうする
となると
いくつか問題が...
あぁ
あんたが
俺以外の人間に
見えてないこと
だろう?
はい..
構わないさ
肝心なことは
「ヒメノによく
思われること」の
一点に尽きる
それ以外の
全員が俺を
軽蔑しようと
周りにどう
思われようと
知ったこっちゃ
ない
ヒメノが俺を
少しでも好きに
なってくれれば
俺はそれで
満足なんだ
ヒメノさんの
こととなると
途端に人が
変わったように
なりますね
あなたは
知ってのとおり
私には
同年代の女性の
考えていることが
よくわかりません
問題は
ないさ
でも
本当に
いいんですか?
サンプルと
しては不適切
かと..
俺が見る限り
あんたも
そこらへんにいる
女の子と大して
変わらない
普通より
ちょっと可愛い
まあ
って点を
除けば
あなたが
構わないなら
それでいい
ですけど
あなたは
別に
凝った服装を
する必要は
ないんですよ
清潔感があれば
それで十分だと
思います
それは
「素材がよい」と
言われてると
思っていいの
かな?
どう
受け止めるかは
あなたの
自由です
わかった
自由に
受け止める
どうやら
俺は
褒められてる
らしい
いちいち
言わなくて
いいです
明日
大切な人と
会うんです
ミヤギの
助言とおり
言うと
美容師は
熱心に髪を切り
いくつかの
実用的な
アドバイスを
してくれた
なんだか
昨日までの
あなたとは
別人みたい
ですね
ああ
とても一年につき
一万円程度の
価値しかない
男には見えない
だろう?
そうですね
まるで
ありがとう
幸せな未来が
約束されてる
人みたいです
ミヤギも
笑っていれば
図書館の
妖精みたいに
見える
......今日の
クスノキさんは
よほど上機嫌
らしいですね
そうらしい
なんですか
その
図書館の
妖精って
知的で
楚々とした
女性の
ことだ
ヒメノさんに
同じことを
言うんですね?
あいつのよさは
それとはまるで
別物だ
......それはどうも
俺は
ミヤギのことを
言ってるんだよ
まあ
私にせよ
あなたにせよ
人間としての
価値はゼロに
近い人です
けどね
不思議な
話だ
ほら
私をヒメノさん
だと思って
口説いてみて
ください
酔っ払いの
クスノキさん
...そうだなぁ
俺の人生における
最良の出来事は
あんたが俺の
目の前に現れた
ことだった
そして最悪の
出来事は
あんたが
俺の目の前から
消えたこと
だった
そして今から
あんたの
返事次第で
よくもまあ
最良か最悪の
どちらかが入れ替わる
ことになると思う
そんな
回りくどい
口説き文句が
すらすらと
出てきますね
それで
感心します
ヒメノはどう
答えると思う?
そうですねぇ
ヒメノさん
だったら...
「突然なにを
言い出すんだよ」
そうか
などと言って
笑って
ごまかそうと
するかも
しれません
じゃあ
ミヤギ
だったら?
...よく
意味が
わかりません
冗談だよ
気にしないで
くれ
クスノキさん
って
本当は明るい
人なんですか?
冗談とか
口にするような
自分でも
わからない
そんなもの
状況によって
どうとでも
変わる
俺は性格とか
気質とか本性とかいう
言葉をあんまり
信用してないんだ
長い目で見れば
人によって異なるのは
どういう状況に
陥りやすいか」
だけだと思うな
一貫性ってものを
みんな過剰信仰
してるか
あれは多くの人が
考えているより
もっと表面的な
ものなんじゃないか
よりによって
あなたが
そんなことを
言うなんて
思いません
でしたね
誰だって
悲しい
一般論の前で
自分だけは例外だと
思ってるんだよ
それも
そうですね
歩くのに
疲れると
車内には数人の乗客がいたが
車内には数人の
乗客がいたが
適当なバスに
乗り込んだ
俺は構わずヒメノに関する思い出をミヤギに語って聞かせた
俺は構わず
ヒメノに関する
思い出をミヤギに
語って聞かせた
この場所を
初めて訪れた
時も
ヒメノは
隣にいたんだ
あの螺旋階段
頂上付近の
踊り場の
手すりが
いかにも
子供が登りたく
なるような
高さと大きさでさ
よく見たら
手すりの先に
絶妙な隙間が
空いていて
当時のヒメノも
その上に登ろうと
したんだか...
危うくヒメノは
そこから地上まで
一直線に落ちる/
ところだったんだ
たまたま
傍にいた俺が
引き止め
なかったら
本当にそう
なってたかも
しれないな
知的な風を
装っておいて
案外抜けた
ところが
あるんだ
あいつには
なんていうか
放っておけない
やつなんだよ
慌ててヒメノを
引っ張った俺は
転んで擦り傷を
負ったんだが
その日一日だけは
あいつ
異様に
優しくなって..
彼女はこの時
俺より
たくさんのことを
知っていた
まだ俺に
まだ俺に
肝心なことを
言ってなかった
展望台は
それを
説明するのに
格好の場所
だったのだが
ミヤギが
それを口に
することは
なかった
限界まで
夢を見せて
やろうと
思ったのかも
しれない
十七時に
書店前...
いや...
焦ることは
ないさ
......
クスノキ!
その日の
ヒメノは
俺が十年間
待ち望んでいた
存在であることを
抜きにしても
ありあまる
美しさを
放っていた
雨でバスが
遅れちゃって
待たせて
ごめんね
何か
奢らせてよ
貸しに
しておくよ
今日は
そのことは
忘れてくれ
ふうん
ということは
次回も予定
してるって
わけだね?
ああ
そして
次回もまた
その次の回を
予定すると
思う
ヒメノは
あの頃と
正直でよろしい
いかにも
ヒメノが
言いそうな
セリフだな
何も
変わっては
いない
十歳の彼女も
こんな風に
皮肉屋では
あるものの
どこか温かみの
ある喋り方を
していたもの
だった
傘を忘れるのは
いつだって
クスノキの方で
こうやって
しぶしぶ
私の傘に
入っていたもの
だったよね
そうだったな
だからこそ
今日からは
逆でも
いいだろう?
なるほど
ところで
一昨日は
あんな
ところで
何してたの?
ヒメノを
探して
いたんだよ
うそつき
ははは
本当だよ
上手く
やってる
つもりだった
俺の好意は
ヒメノに
伝わり
ヒメノも俺に
好意を示して
いる
そう信じて
疑わなかった
この時ヒメノが
腹の底で考えて
いたことを
俺は知りたい
とは思わない
第9話
パルマ産
生ハムと...
ゴルゴンゾーラの
クリームバスタ
あと
サラダを
十年間
これまでの
クスノキが
やってきた
ことについて
知りたいな
ヒメノの
話を先に
聞きたい
まずは
クスノキ
から
...なんの
面白味もない
話だけど
...
そう前置きを
すると
中高時代の
ことを話した
中学三年生になって
徐々に学力に
陰りが見え始めたこと
高校こそ地元で二番の
進学校に通っていたものの
現在通っている大学は
呆れるほど平凡なところ
だということ
九七歳の冬以降
話は五分と
待たずに
終わって
しまった
二度も絵筆を
握っていないこと
俺の人生に
語るべきことは
ほとんどないのだ
そっか
絵は
諦めたんだ
.....残念だな
私
クスノキの
描く絵
好きだった
のに
描いてたら
かと思ったよ
どこかの男とは
大違いだ
いっつも
描いてたよね
なんでも
ないような
顔で
息を呑むくらい
綺麗なものを
描くから
かなわなかったな
気づいて
なかったかも
しれないけど
私よく
クスノキの絵を
持ち帰って
ぼうっと
眺めて
たんだよ
当時は一度も
そんなこと
言ってくれなかった
じゃないか
あの頃の私
クスノキへの
対抗意識が
すごかった
からね
君の
勉強以外の才能を
認めるわけには
いかなかったん
だよ
対抗意識が
強かったのは
俺も同じさ
学力は
同じくらいでも
大人が褒め称えるのは
当時から
華のあるヒメノのほう。
ばかりだった
勉強ができて
美人っていうのは
いくらなんでも
卑怯だと
思ったよ
......
そんな子が
まさか
高校を中退
するとは
誰も予想
しなかった
だろうね
...中退?
そっか
やっぱり
知らないんだ
.....あのね
私のこれも
あんまり
面白い話とは
言えないん
だけど...
そう言って
ヒメノは
高校中退までの
流れを説明して
くれた
予めミヤギから
聞いていた
出産の話は
説明から省かれていた
説明から
省かれて
いた
結局は
ちょっとの
不完全さにも
耐えられずに
私が子供
だったんだと
思う
私の頭の中は
どうやら
物事を根本から
駄目にしちゃう
っていうか
十歳の夏に
転校して
クスノキと
離れた頃から
なんにも
変わってなかった
みたいなの
......十年前の
私は
確かに頭のいい
子供だったと
思う
でもそのせいで
心のどこかに
「もうこれ以上
成長する必要は
ないんだ」っていう
驕りが
生まれちゃったん
だろうね
お陰で
未だに私は
十歳の
夢見る少女と
あんまり
変われないで
いるよ
みんなは
どんどん
変わっていくって
いうのに...
それで
クスノキは
どう?
やっぱり
君も
この十年で
変わっちゃった?
......?
変われ
なかったのは
ヒメノ
だけじゃない
俺も
ヒメノと
離れ離れになった
あの日から
変われずに
いたんだ
この辺り
から
俺は冷静さを
失いはじめていた
それが
ヒメノの耳に
どう響くか
自分がやろうと
していることが
どれほど愚かしい
ことか
何年も
生き甲斐なく
孤独で
無為な日々な
過ごしてきた
世界は俺を
失望させる
ためだけに
存在している
ようだった
理解できている
つもりだった
半分
死んでいる
ようなもの
だったんだ
しかし
それで
俺は
つい数日前
止められ
なかった
ーー寿命を
買い取って
もらったんだ
一年につき
たった
一万円で
俺の中に
溜まっていた
ぐちゃくちゃが
一気に
噴出した
俺は
次から次へと
話した
寿命を
買い取って
くれる店の
こと
未来に
絶望して
三か月だけ
残して寿命を
売り払ったこと
三か月だけ残して寿命を売り払ったこと
それ以来
常に透明の
監視員に
つきまとわれて
いること
ヒメノには
見えない
だろうけど
今だって
そこにいるんだ
ここに
いるんだよ
ミヤギっていう
女の子で
突き放したような
しゃべり方を
するけど
話してみると
案外いい子
でさ...
ねえ
クスノキ
気を悪く
しないで
欲しいん
だけどさ
今自分が
しゃべってる
ことが
どのくらい
非現実的に
きこえるか
自分で
わかってる?
ああ
どんなに
馬鹿げた
話か
わかってる
つもりだよ
そう
馬鹿げた
話なの
......でもね
クスノキ
その上で
私は
君の話を...
どうしても
嘘だとは
思えないんだ
君の寿命が
短いことも
そこに監視員の
女の子がいるって
ことも
長いつきあい
だからね
クスノキが
嘘をついたり
私をだまそうと
していたりすれば
すぐわかるよ
確かに
信じがたい
話ではあるけど
君が寿命を
売ったって
いうことが
嘘では
ないって
私は
信じられる
...後出しに
なって悪いん
だけど...
実を
言うと
私にも
隠してたことが
あるの
ケホッ
ちょっと
失礼
この話の
続きは
食事が
終わってからに
しようか
ミヤギ
悪いけど
女子トイレの
様子を
みてきて
くれないか
ヒメノに何か
あったかも
しれない
ヒメノは二度と
戻ってこなかった
店内を
探しまわったが
ヒメノの姿は
どこにもなく
諦めて
席に
もどった
冷めても
おいしい
ですね
なあミヤギ
ヒメノは
なぜ消えたと
思う?
おそらく
率直に
答えてくれ
頭がおかしく
なったと
思われたん
でしょうね
だが真実は
もう少し
複雑だったし
ミヤギも
そのことは
よく知っていた
隠して
いたのだ
俺のために
お客様!
お連れ様
から
あなたに
お渡し
するように
頼まれまして
...ミヤギ
あんたは
これを
知っていて
ずっと俺から
隠してたのか?
そうです
すみません
謝ることは
ないさ
いい夢
見させて
もらったよ
そして
本来の俺の
人生では
ヒメノの
目的は
達成される
ことになって
いた
そういう
ことだろ?
その通りです
クスノキさんの
目の前で
ヒメノさんは
それを実行
することに
なっていました
俺にそれを
見せつける
ために
積年の恨みを
晴らすために
私のたった一人の幼馴染み
本当はあなたの前で
死んでやるつもりでした。
あの展望台で
あなたを下に
待たせて
すぐ傍に落っこちて
やるつもりでした
あなたは身に覚えがな
言うかもしれませんが
私はずっとわなたのことを
恨んでいました
私の助けの求めに
たじなかったくせに、
今更のうのうと現れた
あなたのことが
暗くてたまりませんでした。
ヒメノから
手紙をもらった
ことがあるんだ
だから私が
あなたにとって欠かせな。
存在になったところで、
死んでやろうと
思っていたのです。
結局俺も
同じような
当たり降りの
ない手紙を
返した
返事は
なかった
でも
この十年間に
あなたは私よりずっと
おかしくなってしまった
みたいですね。
今のあなたに
復讐しても
しかたなさそうです。
だから私は
黙ってあなたの前から
消えます
さよなら
さっきの話
あなたの寿命が
短いことだけは
本当であることを
願います。
馬鹿だなぁ
俺は
こんな思いを
しないために
これまで
一人で生きて
きたのに
最後まで
自分のやり方を
信じてあげれば
よかった
濡れますよ
見ての通り
濡れたい
気分なんだよ
...そうですか
見ての通り
濡れたい
気分なんです
あんたが濡れる
必要はないよ
寿命を
買い取ってもらった。
一年につき、
万円で
第10話
精一杯縮こまり
体を温めて眠る
ミヤギを見て
馬鹿な俺の
勝手に
振り回される
彼女を
不憫に
思った
ミヤギを
起こさない
ように
立ち上がり
辺りを
うろつくと
寂れた公民館が
見つかった
俺以上に
眠りの浅い
彼女が
目を
覚まさなかった
わけかないのだ
しかしミヤギは
最後まで
眠っているふりを
してくれた
それは
落胆した
ときに
ありがちな
願望に基づく
夢だったのかも
しれない
それが
ミヤギだと
わかったのは
そうして
いたのは
匂いの
おかげだ
こんな季節でも
一分に
満たなかった
と思う
冬の朝のような
透き通った匂いがする
ミヤギは
何か呟いた
ようだったが
雨音で
聞き取れ
なかった
まどろみの中で
俺は思う
ミヤギの存在に
俺は一体
どれだけ救われて
いるのだろう?
ミヤギが
いなかったら
どれだけ追い込まれて
いたのだろう?
でも
だからこそ
俺はこれ以上
彼女を困らせては
いけない
彼女が俺に
優しいのは
決して俺という
一人の人間に
好意を向けている
わけではない
俺がこれから
死ぬ人間
だからだ
このまま
大人しく死のう
元通り
他人に何も期待しない
自己完結的で
ささやかな生活に
戻ろう
猫のように
人知れず息絶えよう
そう密かに決意した
翌朝
公民館から四時間歩き続け
公民館から
四時間
歩き続け
ようやく
アパートに
ついた
体中
汗まみれで
足は
まめだらけ
だった
シャワー...
先に使ってくれ
...と言っても
どうせ断られるん
だろうな...
せめて
少しでも早く
上がるか
これまでの
経験からして
ミヤギが
自由に
入浴や食事が
できるのは
俺が
寝ている間のみの
ようだった
クスノキさん
こんなこと
訊くのは
もちろん
もし
クスノキさん
寝てるんですか?
クスノキさんが
狸寝入り
しているように
見えるからです
...おやすみ
なさい
あなたが
そんなことを
するのが
私を気遣っての
ことなら
いいのにな
と思います
シャワー
借りますね
試しに
いつものミヤギの
眠り方を
真似てみた
しかし
いくら待っても
眠気はやって
こなかった
なんでそんな
ところに
いるんですか
それは
こっちの台詞
だよ
布団で
寝たほうが
いいですよ
こんなところで
寝るなんて
やっぱりおかしい
おかしくて
結構ですよ
私は慣れてるから
いいんです
これから
俺は布団の
左端で寝る
もう何があっても
右側には侵入
しないし
見もしない
そこは
俺を近くで
監視するのに
うってつけの
場所だろうな
使うも使わないも
ミヤギの勝手だが
とにかく俺は
左端で寝る
寝ぼけて
るんですか
クスノキさん
......?
今日は...
ちょっと
疲れていた
ので...
明日からは
また元の場所で
寝ます
でも
ありがとう
ございました
口座には
最後のバイト代が
振り込まれていた
いよいよ
することが
なくなった
「死ぬ前に
やりたいこと
リスト」に
書いたことは
すべてやって
しまった
俺はこれから
何をすれば
いいんだろう?
好きなことを
すればいいん
ですよ
ああ
音楽鑑賞と
読書が
それだった
あなたにも
趣味くらい
あるでしょう?
...しかし
今考えると
この二つは
俺にとって
「生きていく
ための手段」
だったんだ
無理に
生きていく
必要のない今
その二つは
俺にとって
以前ほど重要では
なくなってきている
もっと素朴に
好きなことは
ないんですか?
線路の枕木を
数えて歩くのが
好きだとか
昔のゲーム筐体で
遊ぶのが好き
だとか
やけに
具体的
だな
ひょっとして
今までの
監視対象者に
そういう人が
いたのか?
はい
他にも
走行中の
トラックの
荷台に
寝そべって
空を見上げる
ことに最後の
一か月を費やした
人もいました
結構面白い
ものなんですよ
景色が後ろに
飛んでゆく
あの感じが
新鮮で
そういう話
もっと聞かせて
くれないか
アパートに
戻ったら
いくらでも
話しますよ
ただここで
いつまでも
話してると
怪しまれ
ますので
帰宅後
ミヤギの
話を聴いた
子供に絵本を
読み聞かせる
ように
彼女は語った
どんな
くだらない話も
ミヤキの口から
語られると
なんだかとても
温かみのある
話のように
感じられた
翌日は
残っていた
折り紙で
鶴を
折りながら
自分が
するべき
ことについて
考えていた
ずっと
こうしてるのも
それはそれで
いいかも
しれませんね
このまま
折り鶴に
埋もれて死ぬのも
悪くないな
あ
どうしたん
ですか?
実にくだらない
ことなんだけど
思い出したん
だよ
言ってみて
ください
いや
.....
俺にも
心の底から
「好きだ」
と言える
ものがあると
自動販売機が
大好きなんだよ
はぁ...
自販機の
どういった
部分が好き
なんですか?
なんだろうな
俺にも
わからない
ただ
子供の頃
俺は自販機に
なりたかったんだ
?
あの...
確認ですけど
自販機って
コーヒーや
コーラなどを
売っている
あれですよね
ああ
それ以外も
煙草:アイス...
ハンバーガー...
うどん...ビール...
焼酎:カップ麺
いろんなものを
提供してくれる
日本は自販機
大国なんだ
あなたは
そんな自販機が
大好きである...と
そういうことだ
使うのも
好きだし
ただ
見るのも
好きだ
んーと...
個性的な
趣味ですね
くだらない
趣味である
でも
なんとなく
分かる気は
します
自販機に
なりたい
気持ちが?
いえ
さすがに
そこまでは
理解不能
ですけどね
ほら
――自販機って
いつでもそこに
いてくれます
から
お金さえ払えば
いつでも
温かいものを
くれますしね
割り切った
関係とか
不変性とか
永遠性とか
なにか
そういうものを
感じさせて
くれるんです
どうも
すごいじゃないか
俺の言いたいことを
端的に表してるよ
私たち
監視員にとっても
自販機は重要な
存在ですから
私たちを
無視
しませんし
それで
好きなのは
わかりましたが
具体的に
どうするん
ですか?
そこでもう一つの
「好きなこと」の
話になるんだ
こうやって
煙草屋に
来るたび
葉巻屋の
男が
ポール・オースターの
「スモーク」の
エピソードを思い出す
毎朝欠かさず
店の前に立ち
同じ場所の
写真を
撮り続ける
安直な「意味」に
真っ向から
喧嘩を売るようで
痛快だった
そこで...だ
俺もそれに倣って
一見無意味な
写真を撮ることに
しようと思う
どこにでも
ある自販機を
誰にでも
できるやり方で
愚直に撮影
し続けるんだ
...うまく
言えません
けど...
そういうの
私も
好きですよ
こうして
俺の
自販機巡りの
日々が始まった
写真を撮る際
俺はなるべく
自販機の周りに
あるものも
ファインダーに
おさめるようにした
その自販機が
どんな場所に
どんな様子で
佇んでいるか
確認し
記録したかった
何度も通った
道なのに
ずっと
見落としていた
自販機が
いくつもあり
そうした発見が
俺の心を
躍らせた
一日の始まりに
向かうのは
写真屋で
フィルムの現像が終わるまでの三十分で
フィルムの
現像が終わる
までの三十分で
朝食をとるのが
常だった
一日の
終わりには
一枚一枚
アルバムに
丁寧にしまった
朝に受け取った
写真を並べて
ある日
写真屋の
店主が
ミヤギと
笑い合ってる
俺を見て
こう言った
...もしかして
そこに誰か
いるんですか?
そうですよ
ミヤギっていう
女の子です
俺の監視が
仕事なんです
どうも
なるほど
彼は目に見えない
ミヤギの存在を
あっさりと
受け入れた
ということは
これらの写真は
その子を撮った
ものだったり
するんですか?
いえ
これはただの
自販機の
写真です
店主は
わけがわからない
といった表情で
まあ
引き続き
がんばって
ください
と言った
何をしてるん
ですか?
いや
さっきの店主の
話を聞いて
一枚くらい
撮っておこう
と思ってさ
他人にはただの
無意味なバイクの写真
でしょうけどね
そもそも
俺の写真なんて
全部無意味
だろうよ
もちろん
写真屋の
店主のような
人は少数派
だった
当然と言えば
当然の話だ
お待たせ
しました
じゃあ
行こうか
隣の部屋に
住む男は
気味悪そうに
俺のことを
見ていた
まあ
誰にどう
思われようが
知ったことでは
ない
寿命を
買い取ってもらった。
・年につき
万円で。
第11話
風の少ない
からっと晴れた日
俺とミヤギは
聞いたことも
ないような土地に
迷い込んでいた
二時間ほど
さまよい続け...
クスノキさんの
地元のほうですよね
道に迷うと
本能的に
こっちへ向かって
しまうのかもな
知ってる場所に
出たと思ったら..
まあここも
自販機が
ある場所には
変わりない
そうですね
お
駄菓子屋
ですね
小さい頃
よく
来てたんだ
この自販機
すいぶん前に
店じまいした
みたいだけど
...
俺が初めて
ここに来た時から
ある
そういえば
猫は
ミヤギのことが
見えてるのか?
すたた
この通り
犬や猫には
見えるん
ですよ
だからといって
好かれるわけでも
ありませんけどね
そんな趣味が
あったんだな
ええ
意外
でしょう?
ああ
でも
そんなに
上手く
ないな
だから
練習してるん
です
偉い
でしょう
ミヤギが
これまで
描いたもの
見せて
くれないか?
...さあ
そろそろ次に
行きましょうか
次の街へ
向かおうと
して
再び駄菓子屋の
前を通ったときの
ことだ
半日かけて
故郷を
探索
し終え
故郷を探索し終え
こんにちは
俺のことはもう
覚えていない
でしょうね
無理もない
話です
...ファン..
しかし
最後に来たのは
もう十年くらい
前のことですから
俺のほうは
あなたの
ことをよく
覚えて
いるんです
八歳か
九歳の頃
俺は夜中に
母親と喧嘩して
家を飛び出したん
です
後先考えず
飛び出して
きた俺は
駄菓子屋で
時間を潰して
いました
......
お家に
帰らなくて
いいのかい
親と激しい
口論を終えた
ばかりの俺は
涙声で
何かを
答えました
それを聞いた
あなたは..
数時間後
俺の親から
電話が
掛かってきて
「そっちに
行ってないか」
と訊かれて
.....
あと一時間は
いないことに
しておくよ
いるけど
...それは
あなたに
とっては
なんでもないこと
だったのかも
しれません
...でも
俺が未だに
他人に対して
心から何かを
期待できるのは
あの経験が
あったからだと
――少なくとも
俺は勝手に
そう思ってます
俺のことを
忘れてしまった
ということは
ヒメノのことも
やっぱり忘れて
しまっているん
でしょうね
二人でよく
この店に
来ていたん
ですか...
俺もヒメノも
小学校では
爪弾きに
されていました
でも...
隣に彼女が
いるだけで
俺はどんなに
いじめられようと
平気でした
小学四年の夏
親の転勤で
ヒメノが転校
して以来俺は
「二十歳まで
お互いに
良い相手が
見つからなかったら
一緒になろう」
という言葉を
支えにして
生きてきました
しかし
どうやら
ヒメノは
俺のことを
好きでいた
どころか
ある時期からは
殺したいほど
憎んでいた
らしいんです
何が
いけなかったん
だろう
とずっと
考えていました
それである時
ふと思い出したん
です
十七歳の時
ヒメノから
手紙が来た
ことを
彼女は
親しい相手へも
絶対手紙を
書いたりはしない
人間でした
そんな彼女が
手紙を送って
来た時点で
俺は
気づくべき
だったんです
さあ
あの手紙は
ヒメノなりの
SOSでした
答え合わせと
いこう
彼女はあの時
確かに
俺に助けを
求めていたん
です
彼女も
俺と同じように
追い詰められて
過去に
すがりついた
タイムカブセルに
ヒメノの手紙だけ
なかったのは
彼女が先に
掘り出した
からだ
そして
たった一人の
幼馴染みの
ことを思い出して
手紙を出した
彼女の意図に
気づかなかった
俺には
もう資格は
残されて
いませんでした
報いとして
俺はヒメノを
失いました
彼女は空っぽに
なってしまい
ましたし
それを知った
俺も同じです
...そんな
ところで
切りは
悪いですが
この暗い話は
おしまいです
長い話に
つきあわせて
申し訳
ありません
でした
さようなら
ありがとう
ございます
さようなら
クスノキさん
クスノキさん
どうした?
いいことを
教えて
あげましょう
思い出したん
です
この道
私来たことが
あります
監視員になる
ずっと前に
このまま
しばらく
道なりに
行って
ある所で
右折すると
星の湖に
着くんですよ
星の湖?
私が
死ぬ前に
行きたいと
言った
あの湖
です
ああ
そういえば
そんな話も
したな
いいことを
聞いた
でしょう?
そうだな
いいことを
聞いた
Yaubuo.
さて
ここからは
私の言うことを
よく聞いてください
ここからは
私が誘導
しますので
いいと言うまで
目を閉じて
欲しいんです
ギリギリまで
見せたくない
ってことが
ええ
折角の
星空
なんだから
どうせなら
一番良い条件で
見たいでしょう?
さあ目を
閉じてください
ねえ
クスノキさん
ん?
もし私が今
あなたを
騙して
とんでもない
場所へ向かって
いたら
どうします?
とんでもない
場所って
いうのは?
そうですね...
崖や橋の上などの
危険な場所とか...
なぜ?
想像してみよう
とも思わないな
ミヤギがそんな
ことをする理由が
見当たらないからな
そうですか
止まってください
足元に
気をつけて
仰向けに
寝てください
それが
済んだら
目を開けて
いいですよ
死ぬ前に
もう一度
見たいと言った
理由が
なんとなくわかった気がする
なんとなく
わかった
気がする
そうでしょう
それから
とても長い間
俺たちは
空を
見上げていた
俺を思って
嘘をついたん
だろう?
ヒメノは俺を
覚えていない
なんて嘘を
...ミヤギは
私にも..
幼馴染みが
いたんです
それは
以前言ってた
“大切な人”の
ことか?
そうです
あなたに
とっての
ヒメノさんの
ような人が
がつて私にも
いました
世界のあり方に
馴染めない者
同士
共依存的な
二人だけの世界に
生きていました
監視員になって
初めての休日
まず私が
したことは
きっと私がいなくなって
きっと私が
いなくなって
...ところが
彼の様子を
見に行く
ことでした
どうしようもなく
悲しんでいるん
だろうと
考えていました
数週間ぶりに
見る彼は
私のいない世界に
私のいない
世界に
あっさりと順応していました
あっさりと
順応して
いました
その時
私は
気づいたん
です
彼にとって
私は
単なる足枷に
過ぎなかったん
だと
本心を言えば
私は彼に
不幸になって
もらいたかったん
だと思います
絶望しながら
彼が一人で
強く生きて
いけるなんて
私の帰りを
待って...
知りたく
なかった
...以来
私は彼の姿を
一度も見に
いってません
それでも
死ぬまでには
やっぱりそいつに
会いたいんだろう?
ええ
だって私
他に何も
知りませんから
すがるところは
そこしかないんです
だから私
あなたの
気持ち
とてもよく
わかるんですよ
あなたは
わかって欲しく
ないかも
しれませんけど
いや
わかってくれて
ありがとう
どういたし
まして
〝今日はとても
疲れましたので
一度だけ
こっそり
と言って
ミヤギは
俺の布団に
潜った
ミヤキのほうを
盗み見ようと
すると
こんな
日々が
ずっと続く
ことを
俺は流れ星に
願うべき
だったのだろう
次に目覚めた朝
ミヤギは
いなくなって
いた
ノートだけが
枕元に
残されていた
寿命を買い取ってもらった。一年につき、一万円で。図(完)
寿命を
買い取ってもらった。
一年につき、
万円で。
番外編
存在の言うまでもない軽さ
〈真西証明〉《は》
本の状態が
悪すぎるんだ
...百冊以上
あったはずだが?
文句があるなら
他をあたりな
寿命を買い取ってもらった。一年につき、一万円で。
二人でアイス
食べようね
いい案だな
えへへ
おい
金に困ってる
みたいだな?
ああ
お陰様で
ならよ
寿命を
売る気は
ねえか?
...
寿命?
そう
寿命だ
寿命を買い取ってもらった。一年につき、一万円で。
一・二年
売るだけでも
そこそこの額に
なるぞ
一体何の話を
ひょっとして
臨床試験とか
治験の紹介か?
だとしたら
今の俺には
結構ありがたい
話なんだか
寿命を
売る気は
ねえか
と俺は
聞いてるんだ
よく
わからないな
寿命を売る?
どういう
ことだ?
俺にも理解
できるように
説明してくれ
にわかには
信じられない
だろうか
お前の寿命を
査定して
年単位で
買い取ってくれる
機関が
あるんだよ
もし
お前の余生が
価値あるもの
だったら
寿命を数年
売るだけで
寿命を買い取ってもらった。一年につき、一万円で。
一生遊んで
暮らせる
ことになる
どうだ
確かに
夢のような
話だ
夢のような
話だろ?
生憎だが
俺の寿命には
ほとんど
価値なんて
ないと思うぜ
...でも
俺が持ってきた
本の大半と
同様
最低買取
価格になる
だろうな
最低買取
価格か..
ちなみに
お前は
寿命一年分の
最低買取
価格は
幾らだと
思う
当ててみな
答えが
正解に
近ければ
持ってきた本
全部百円で
買い取ってやる
と言っても
これだけじゃ
わけわからん
だろうから
ヒントをやろう
査定の基準は
幸福度・実現度・
貢献度の三つだ
寿命を買い取ってもらった。一年につき、一万円で。
つまり
どれだけ
幸福に
なれたか
どれだけ
目標を
実現できたか
そして
どれだけ
他者の幸福に
貢献できたか
それによって
人物の価値が
決定される
ああ
じゃあ
簡単だ
ほう
幾らだ?
値はつかない
ゼロだ
......
寿命を買い取ってもらった。一年につき、一万円で、
どうして
ゼロだと
思った?
なんて言えば
いいんだろう
な?
そう
つまり...
あんたの
問いは
言いかえれば
自分を
幸せに
できず
他人を
幸せに
できず
何一つ
夢を叶え
られない
要するに...
俺みたいな
人間の
ってこと
だろう?
...続けろ
寿命の価値は
どれくらいか
ざっと
この三十二年を
振り返って
みたんだが
夢は色々
あったが
そんで
他者の幸福に
貢献する
どころか
幸福らしい
幸福を
感じたことは
ほとんどない
積極的に
それを
奪ってきた
奪って
きた?
結局
一つも実現
できなかった
ああ
今は
事情があって
辞めちまったが
寿命を買い取ってもらった。一年につき、一万円で。
控えめに
見積もっても
ちょっと前まで
ポン引きみたいな
ことをやってたんだ
二十人くらいの
人生を台無しに
したと思う
と言っても
俺が生きてく
ために必要な
ことだったし
買い手
だったら
俺みたいな
やつの
寿命には
ただ俺が
一円だって
後悔しちゃ
いない
払いたくないな
って思ったんだ
......?
...なるほどな
さて
それじゃ
あらためて
聞くが
寿命を買い取ってもらった。一年につき、一万円で。
お前
寿命を
売る気は
ないか?
爺さん
俺の話
ちゃんと
聞いてたか
?
値がつかないのに
売るやつが
どこにいる?
はん
俺の見立てに
よれば
五年くらい
売っただけで
余生を
遊んで
暮らせる
はずだ
お前の寿命は
相当高く
売れるよ
何を根拠に
言ってるんだ?
確かに
過去について
言えば
多くの
人間に
とって
お前は一円の
価値もない
肩かもしれない
価値が
ある
どころか
存在しない方が
いい人間だった
かもしれない
だがな
寿命の値段は
余生の値段だ
その価値は
過去には
左右されない
未来がそれを決めるんだ
未来がそれを
決めるんだ
寿命の価値と
過去が関係ない
ってのはわかった
でもよ
寿命を買い取ってもらった。一年につき、一万円で。
爺さん
俺に
明るい未来が
待ってるように
見えるか
......ああ
なら
なおさら
売るわけには
いかないな
それだけの
価値のある
余生を
自ら手放す
道理はない
......
正解だよ
寿命を買い取ってもらった。一年につき、一万円で。
さて
思わぬ
臨時収入が
あった
今なら何でも
買ってやれるぞ
アイスの他に
なにか欲しい
ものはあるか
?
お母さん
冗談
だってば
前向きに
検討しよう
でも今は
お金で買える
ものが
うれしいな
それも
1万円以内で...
特に欲しいものは
ないよ
おじさん煙草
しばらく吸って
ないでしょ
いや...いい
買ったら?
どうせだから
禁煙しようと
思ってるんだ
ふうん?
そっちこそ
寿命を買い取ってもらった。一年につき、一万円で。
あんまり
無理しない
でね?
...
...
...なんじゃ
...
私も
おじさんの
寿命
高く売れると
思うな
なぜ
そう思う?
だって私
三十億円と
おじさんとずっと
一緒にいられるのを
どちらか選べ
って言われたら
おじさんを
選ぶと思うから
寿命を買い取ってもらった。一年につき、一万円で。
...葉月は
俺の機嫌を
とるのが
上手いな
...おじさんは
照れ隠しが
下手だね
その笑顔で
俺は古書店の
爺さんの言葉を
番外編存在の言うまでもない軽さ(完)
少しだけ
信じても
いい気になる
1巻表紙ラフ案
2巻表紙ラフ案
この時、無意味で短い俺の余生に
ようやくひとつ
つの目標ができる
寿命を買い取ってもらった。
年に
最終第3巻最終は2017年秋発売予定
..
コミックスだけの描きおろ
DIGITAL
SNUEESHAJUNPCOMICS
2巻
寿命を買い取ってもらった。一年につき、一万円で。
日口帰っ
©旧II囁-2017.207
三秋縋(メディアワークス文庫『三日間の幸福』
◎三秋縋2017.20!7
初版発行
デジタル版発行-2017年
2017年
発行所・集英社
http://www.shuesshacco.
この作品は、デジタル配信用に再編集を行うったものです
本作品の内容あるいいはデータを、全部・一部にかかわらず、
無断で約30改竄、公衆送信(インターネットト上への掲載
を含む)することは、法律で禁じられていいます。また、個人
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の著作権保護技術を解除して行うことはできません。
FXTRA.PAGES
...
時命を買い取ってもらった。
年につき、一万円で
Twid.mytic
田口隊一
ShoulehiTaguch
田口県一
よー私、綺麗な
描きながらクスノキに肩入
れしてしまってなかなか辛
いものがあります。この巻
も引き続き楽しんでいただ
けますように。
少年ジャンブ+8077年6月、10月、
15号、19号、23号に開催分を収穫
背表紙・カバ一折り返し
家表記はコミックス発売当時のものになります
FXTRALPAGKS
aldmylic
perycar.
tenthousandyen
UMP.CoMICS十
本体・表紙
燃表記はコミックス発売当時のものになります。
2018年10月20日に
日本国民AUPAIGE
寿命を買い取ってもらった
年につき、一方円で
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...
集英社
本体・裏表紙
終表記はコミックス発売当時のものになります。
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