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IsBN4-08-782685-6
cO979¥1000E
定価本体1000円十税
神々の山黄。
神々の山嶺・
作夢枕獏
画谷ロジロー
色々としては、
あっ...
ペロジロー
Q99ERUESINAV/佐藤雄島
作夢枕獏
画:谷口ダソロ
他人の
かみがあのいただき
●「SILIYIDICTALINE
夢枕獏
田oます...
もうひとつの報告ロジロー
神々の
334
第19話総エヴェレスト初登頂の際
第20話【電毒蛇の街】
第21話【ダサイン祭
第2話【銀ターコイス
第23話【N山岳鬼
第24話【ベグルカ
第25話【】回想
第26話【ミシェルバの里】
第27話本一母の首飾り
179
かみかみの
いただき
313
1369
一般の第3番目が
★この作品はフィクションです。実在の人物
団体・事件などには、いっさい関係ありません
大英帝国ーイギリスが最初にエヴェレストの最高峰を
踏むために遠征隊を出し、たのは1921年である
第19話
Sエヴェレスト初登頂の謎
登頂は果たせなかったが、このメンバーの中に
35歳のショージ・マロリーも入っていたのである
二度目の遠征は翌年
―1922年であった
この時の隊長は大英帝国の英雄
C:G:ブルースだった
この遠征にも30歳の
マロリーは参加している
前回と同様、インドからチベットに
入りロンブク氷河の未端が
ペースキャンプとなった
標高およそ5400メートル
酸素は地上の半分である
最初のアタックで8225メートル
フッ
フッ
次のアタックでは
8326メートルにまで遠した
フッ
しかしこの遠征も頂上を読むことが
できず、隊はイギリス。に引き返している
これはそれまでの人類が
最初に体験する高度である
そして1924年
イギリスの第3次エヴェレスト還征隊が
三度この地にやってくる
一行がインドの
ダージリンから
チベットを経て
幾度も悪天候にみまわれ
キャンプ設営が大幅に遅れた
ロンブク氷河の未端に設けたベース
キャンプに到着してから1ヵ月が過ぎた
6月に入ってようやく
第5・第6キャンプを
設けることに成功した
6月4日
第1次アタック隊の
ノートンと
サマヴィルは
頂上をめざした
ハア
しかし登録は過酷を極めた
ハア
それは風と高度との闘いであり、
足もとは雪面の混じる岩場で
傾斜は平均45度
ハッ
ハッ
ゴホッ
ゲホ
ゼエ
標高8356メートル地点で
ノートンとサマヴィルは
体力を使い果たし
エヴェレストの
乾いた冷たい空気に
喉の粘膜をやられ
息も苦しい
ゼエ
頂上アタックから
敗退した
すでに食糧もシェルバの
サポートも不足していた
そしてなによりも
時間切れが迫っていた
例年とおりなら数日のうちに
モンスーンが吹き上げてくる
同じ日の第4キャンプー
第2次アタック隊に選ばれていた
マロリーは決断した
私は
...
この頂上
アタックには
酸素は欠かせない
ものであると
実感しました
...
ひとつには
あれほど頑健で
あった隊長の
フルースカ
今まで
酸素の使用に
ためらいが
ありましたが
無酸素で
キャンプの設営で
心臓を
痛めてしまった
こともあります
他の隊員達も
高所での作業に
次々と倒れていく
そして今回
第1次アタック隊の
あなたたちも
やはり無酸素で
敗退しました
しかし
酸素使用は
アンフェアでは
ないかという
設論もある
...
わかって
います
そのことが
今まで私の
決断を鈍らせ
ていたのです
しかし
人間の高度
順応には限界が
あります
おそらく
無酸素で
行動できる
高度は
7000メートル
まででしょう
たとえ
アンフェアで
あろうとも
酸素呼吸システムの
使用なくしては
このエヴェレストの
頂にいたることは
できない
ならば
酸素を使用
すべきでは
ないだろうか
この三度の
遠征で私は
強く実感
しました
頂上アタックは
酸素ポンペを背負って
登る私のパートナー
としてアーヴィンを
指名したい
アーヴィン?
オデルでは
ないのか?
アーヴィンは
まだ若い
経験不足だ
わたしには
あまり
賢明な判断
とは思えないが
しかし
来質はある
体力と精神力も
申し分ないと
思う
そして
アーヴィンは
なによりも
酸素器具の扱いに
長けている
たしかに
オデルと
くらべると遥かに
経験不足です
私は
この技術と
才能を
優先したい
...???オレルキング
酸素器具の
すばやい改良と
保守点検
その決断にノートシは全面的に賛成した
マロリーは不屈の精神を持った
男だと感嘆した
チャンスがある限り敗北を認めない
これだけの意志の力と神経の強さがあれば
成功させるのではないかーと思わせた
6月6日午前8時40分
「標高7066メートル
マロリー
ポケットカメラ
忘れないで
くれよ
頂上の写真
必ず撮って
きてくれ
あ
オデル
すまない
うん
サポート
よろしく
たのむ
ああ
まかせて
くれ
マロリーとアーヴィンは食糧や
予備の酸素ボンベを担いで
8人のボーターとともに
第5キャンプへ向かった
成功を
祈ろう
翌日
“第5キャンプは無風
前途は有望
第5キャンプから降りてきた
ポーターの手によって
マロリーの手紙が
第4キャンプに届けられた
6月7日――マロリIとアーヴィンは
4人のボーターと第6キャンプへ
向かった
同じ頃、オテルはポーター2人と
第5キャンプへ向かった
オデルは頂上アタック隊が
下降の途中で、サポートが
必要な場合にそなえた
ハア
ハァ
ハア
ハア
オデルは酸素なしで
登った
高度順応がうまくいったせいか
また実験段階の酸素器具は
自分にとってあまり効果的では
ないと感じていたのだった
そしてマロリーとアーヴィンは
最終の第6キャンプに到着した
標高8230メートル
4人のボーターは第5
キャンプに降りていった
あとにはマロリーと
アーヴィンだけが残った
この
天気なら
必ず私が
登ってみせる
明日は
大丈夫だ
アーヴィン
酸素器具の
点検をすませて
おいてくれ
はい
第5キャンプ
オデルは降りてきたボーターから
マロリーから携えてきた2通の
メモを受けとった
1道は第3キャンプにいる
撮影係のジョン・ノエル大尉
宛てだった
そのメモには早朝出発し
午前8時にはビラミッドの下から
もしくはスカイラインを登録中
であるーと記されていた
ちょっと
やっ、やめんじゃ。
...
わたしはわからん
そしてもう1通
オデル宛てのメモには
いや...いやっと、みんな
...
いや...
...
いいんだよーっ
B.twitter.
一明日は明るいうちに婚等の
予定にて間違いなく早目に第4へ
くだられたいーーカ添えを頼む
明日にはボンベ2本ずつで「頂上へ」
向かうだろうーーそれにしても
クライミングにはえらいお荷物だ
天気おあつらえむき!!
G・マロリー
よろしく
6月8日――晴れ
カシッ
よし
今度は
頂上で
撮ろう
今まで
誰もみたこと
のない
世界で最初の
エヴェレスト
山頂の写真だ
[午前6時10分
マロリーとアーヴィンは
エウェレストの頂をめざして出発した
フシュ
フシュ
それを2本と酸素器具
この他には軽い装備しか
持てなかった
まずはイエローバンド
当時の酸素ポンペの
重量は14キロもあった
山頂から600メートル下がった地点から
やっかいな障害物が待ちうけている
これは右灰岩の急な
一枚岩の連なりで
砕けやすく
岩局が乗っている
次に高さ30メートルほどの硬い垂直な
岩壁ーファーストステップがある
アーヴィンが遅れる
フシュ
ゆっくりと慎重に登る
フシュ
フシュ
この高度でも意識ははっきりしている
フシュ
酸素が与えてくれるエネルギーは
予想以上の効果があった
フシュ
午前11時10分
ファーストステップで手間どり
予定より遅れて吹ききらしの
山稜ルートへ出る
フシュ
そしてふりの目的は日頃までの最大の通間である。
セカンドステップが重直に切り立っていた。
そしてふたりの目前に山頂までの最大の難明であるお客様のお客さんをお勧めし立っていた
午前11時40分
マロリーとアーヴィンは
セカンドステップに取り付く
しかしその岩壁の登録にはかなり高度な
クライミング技術が強いられた
フシュ
フシュ
マロリーは慎重にルートを
さぐりながら挙る
岩壁と巨大な丸岩のあいだの
狭い溝を攀じ登り
セカンドステップの中間部に
ある雪田に出る
登山経験の浅いアーウィンが
登録に苦戦する
そう
そこだ
予定の時間より大幅に遅れる
フシュ
ハア
フシュ
右にある
フットホールドで
体を支えるんだ
ハア
ハア
酸素の残量も残り少ない
ハッ
あと
もう
ひと息だ
なんとか
明るいうちに
頂上へ行って
キャンプへ戻れ
そうだな
フッ
フッ
この壁さえ
乗りきれば
頂上は
すぐそこだ
いくぞ!
上へ上へ、
ふたりは蒼穹を目指し
同時刻
標高7900メートル
その頃オデルは第5キャンプを
出て第6キャンプに向かっていた
12時15分
...
...
この時間
あ.....
もしかすると
ふたりはもう
ファイナルビラミッドに
取りついてるかも
しれないな
...
あれは
...マロリーと
アーヴィン
か......?
それにしても
遅い...
まだ
頂上まで
200メートル
はある...
オデルはほんの一瞬だが。さらに
高みへ向かっていく彼らの姿を見た
今...
12時0分
そして次の瞬間ーーこの地上の
どこよりも高い場所でマロリーと
アーヴィンは姿を消した
それがふたりの姿が
人の眼によって視認
された最後となった
あのペースで
いけば...
山頂にたどり
つくまでおそらく
あと3時間はかかる
だろう
オデルは登ったーふたりが
第6キャンプを使う場合に備えるためだ
明るいうちに
下山できると
したら...
第6キャンプ
までがやっと
だろうな
第6キャンプがある高度まで
登ると山は吹雪いていた
ふう
オデルは吹雪をさける
ためテントに潜り込む
テントの中は食べ物の
くずや衣類_酸素器具
の価品などで
散らかっていた
まだ
戻ってくる
には
午後4時40分
オデルは散乱したテント内を整え
ふたりが戻ってくるのを待った
早すぎる
かな...
おれも
明るいうちに
第4キャンプまで
戻っておくか
マロリーのコンパスと予備食糧を
残して第4キャンプへ下っていった
オデルは前日のマロリーの
メモの指示とおり、
第4キャンプでは
その夜
だがふたりの姿は
見えなかった
ふたりに何か動きの気配は
ないものかとオデルとノートンは
夜通し見張っていた
翌日
双眼鏡で第5,第6キャンプ
をうかがってみたが
そこにはふたりの姿はおろか
なんの動く気配も確認
することができなかった
おかしいな
...
どうしたと
いうんだ?
ふたりとも
とっくにキャンプに
たどりついてる
はずじゃないのか?
正午
...なにか
なにか
あったんじゃ
ないのか
そうだな
あの
マロリーが
なんの信号も
送ってこないのが
気になるな..
オデルはいやかるポーターに
はっぱをかけ再び上へ向かった。
ハア
ハァ
まさか
...
下山が遅れて
どこかの岩陰で
ビヴァークして
るってことは
ないだろうな
この時もまだ
オデルはふたりとも
どちらかのキャンプで
避難しているだろうと
思っていた
午後4時20分
第5キャンプに到着する
しかしテントの中はオデルが
2日前に出た時のまま
何も手がつけられていなかった
ハァ
翌朝
ハア
これ以上はといやがる
ボーターを帰し
オデルはたったひとりで
第6キャンプへ向かった
ハア
しかし
第6キャンプでオデルが見たものは
強風でボールが倒れよじれた
無人のテントだった
マロリー
いッ
それから2時間ほどふたりのたどった
ルートをオデルは吹雪の中を登って
みたが何も見つからなかった
その場に立ちつくす
オデルの耳に
非情な壁にたたきつける
強風の咆哮だけが耳鳴りの
ように響いていた
アーヴィ
、
そしてー
この地上と一切の通信を
断ってしまったのである。
マロリーとアーヴィンは
"はたして
エヴァレストの頂上を踏んだのだろうか。
マロリーヒアーヴィンは
―9年後
そして
ふたりの消息についての手懸りが
発見されたのは1933年であった
この年イギリスの
第4次エヴェレスト
隊が結成され
四度大英帝国は
世界の最高峰に
挑んだのである
しかしこの遠征も
敗北に終わるのである
ここの時の最終第6キャンプは
前回より120メートル高い標高
8350メートルに設置された
5月30日
最初のアタックに出発
したのはハリスと
ウェジァーーだった
フッ
第6キャンプを出て
1時間
...
フッ
フッ
.....
これは?
?
ああ..
...
ファーストステップの手前
8350メートル付近で一本の
アイスピッケルを発見した
この前の
遠征隊の
ものじゃ
ないか
なんだ
...!?
それじゃあ
...
.....
これは!
それとも
アーヴィン
のものか
マロリー
の.....?
それは後にアーヴィンのもので
あると確認されたー
そしてこのビッケルが謎を呼んだ
アーウィンがこのビッケルを落とした
のは、登る途中であったのか下る途中
であったのか?
しかしセカンドステップで
ふたりを見たというオデルの
証言が確かであるなら、
下りであると考えるのが
自然である
なぜならピッケルも
なくそこより先へは
進まぬはずである
このピッケル発見のニュースに
世界の登山界の間で多くの
憶測や推理が展開された
ビッケルの発見現場で
なんらかの事故か
あったと考えられた
その事故は下りの最中に
おこったものであろうーーと
しかも屍体がそこにないという
ここは事故者の身体はそこより
下に落ちたと推測される
マロリーがアーウィンガー
どちらかが足を滑らせ滑落した
ここで死んだのがアーヴィンだけで
あったのか、マロリーだけであったのか
それともザイルに繋がれたまま
ふたり一緒に落ちたのが
ただそこにはアーヴィンの
ビッケルだけが残った
いずれにしろ、下りの
途中の事故であったと
考えるのが自然な流れで
あるように思われる
サード・ステップ
セカンド・ステップ
...
ファースト・ステップ
オデルの観察地点1924年
しかし――仮然として大きな謎は残った。
ふたりが下り始めたのは頂上を踏んでから
なのかそれとも頂を踏む前だったのか
C.61924年
ービッケルの発見も、その
問いには答えてはくれなかった
結局
イギリスは第3・第6・第7と
1921年以来1938年まで
17年間エヴェレストへの遠征隊を
送りつづけ敗退を繰り返してきた
souTusunMin
!953年
そして
正式にエヴェレストの頂上が
踏まれたのは第2次世界大戦後
のことである
第1回の遠征から実に
32年後の5月24日だった
ネパールを経てクンプ
氷河を越えサウスコルへ
フシュ
フシュ
エヴェレスト南東稜から
という新たなルートからの
登頂であった
イギリス隊のヒラリーとシェルバの
テンシンがエヴェレストの頂をその
足の下に踏んだのである
しかし謎は残った
マロリーとアーヴィンは
1924年エヴェレストの
頂上に立った!
と考える者は多く
ふたりの最後の目標者である
オテルもそのひとりだった。
"いったいその時
頂上は踏まれた
のか?
その疑問に答える方法が
ひとつだけあった
1924年の項上アタックの際
マロリーは隊員のサマヴィル
から借りた折賞式のカメラを
持っていた
“ベストポケット・オート
グラフィック・コダック:スペシャル
プローニーフィルムを使用する
このコダック製のカメラは当時
発売されたばかりの最新鋭機だった
それはもしマロリーが
頂上に立ったとしたなら、
必ずこのカメラによって
撮影がなされていることは
確かであった
そしてそのカメラの中に入っている
フィルムは即年の歳月を経た
現在でも現像は可能なのである
ゆえ...これはわかりませんでしょう
第20話
毒蛇の街
ネパールーー
出会い系の
首都イカトマンドウ
...
...
なつかしい街だった
耳に飛び込んでくる
異国の言葉
強い排気ガスの臭いも
人や獣の汗の臭いも
心地よくさえ感じられる
深町はこの街に自分の耳や舌や触感までもが
これほど馴染んでいたとは思わなかった
......
羽生王二とマロリーのカメラを
追ってついにここまでやって
きてしまったのだ
ビカール・サン
これが羽生丈二の
ネパールの名前である
ハプーー毒蛇という
ネパール語だ
手がかりはいくつかあった
しかしーそれにしても
羽生丈王ともう一度この国で
出会うことが可能であろうか
いつのまにか
ダルバール広場に出ていた
変わらぬ風景が
そこにはあった
ナマステ
...
ナマステ
グルンの
コータムという
男を捜して
いるんだが
...
カトマンドゥには
来ているのかい?
知らね
ほう
あんたコータムを
知ってるのがい?
それじゃあ
ポカラの方でも
仕事がない
わけでねえ
だれか
コータムが
どこにいるか
知っているものが
いたら
教えてくれ
ああけど...
あいつがどこに
いるかは
知らね
礼はする
...
あの...
コータムなら
たしか半月ほど前に
こっちへ出てきてる
はずだべ
え?
どこに
いるか
わかるか?
いや
訊きたい
ことがあるんだ
何をだい?
だけどだんな
あいつに何の用が
あるんだい?
...
深町はそこにいた男たち
全員に1ドル札を握らせた
それから
もうひとつ
ビカール・サン
という男のことを
誰か知らないか?
コータムでも
いい
ビカール・サン
でもいい
それから
アン・ツェリン
というシェルパ
でもいい
この3人のうち
誰でもいいから
居場所を知って
いたら教えて
くれないか
今より
もっといい
金額でその
話を買う
またここに
顔を出すから
その時までに
思い出すか調べて
おくのでもいい
わかったら
教えて
くれ
今この瞬間から始まったのだと
深町は思った
もうあとへは引き返せない
羽生丈二に
たどりつけるかどうか
とにかく
すでに自分はこの
カトマンドゥで
羽生に向かって
一歩を踏み出して
しまったのだ
羽生丈二
忘れられかけた登山家
すでに日本の登山界にとっては
過去の人間である
近代史のある一時期
間違いなくあったーー夢
地球のあらゆる場所を人の足で
踏んでやるうという世界的な運動
横々な国の様々な人間が
この地上で最も大心近い場所をめぐっ
彷徨したのである
そのような精神、あるいは運動の
そういうものの担い手は時代と共に変わり
あるいは死によってこの世を走っていた
C:G:ブルースショーシマヨリー
モヤモンドレラリーは村長日に長谷が...
おそらく
羽生丈二という男は
その精神の最後の
狙い手なのだろう。
ハフ
ハフ
羽生丈二は未だ現役で
未だにあの天に属する頂を
踏むことに興味を抱いて
いるとするなら
彼らでがその補神風土の中で生きる
最後の委訓象ではないかという気がする
もしかしたら羽生という男は
ヒマラヤをめぐってそのような精神が歩んできた
最後のページを閉じるために生まれてきた
人間ではないのか
1800年代から連続と伝えられてきた
ヒマラヤの登録中の薬が
今、静かに羽生によって呼みされようと
しているのかもしれな
そういうことで、
自分は
G・マロリーのカメラを通じて
その最後の舞台に立ち会おう
としているのだ
んっ...
SAGARMATAR
HIMLALAYAITERA
!!
ナマステ
...
へへへ
もちろん
ですとも
旦那
いつ
カトマンドゥに?
...ナ...
ナマステ
おれを
覚えている
かい?
きのう
それは
それは
で
今日は
どういう
ご用件で?
また
おもしろい
カメラの
掘り出し物が
ないかと思ってね
またまた
ご冗談を
この前の
カメラの
ことだ
カメラだよ
ほう
やっぱりね
というより
あれを持ってきた
コータムや
ビカール・サンの
ことだ
どこにいるのか
知りたい
金なら
払う
...
なるほどね
たぶん
あなたのご希望には
治えると思い
ますよ
私ならね
知って
いるのか?
いえ
知っているという
意味ではあり
ませんがね
私なら彼らが
どこにいるのか
調べることは
充分可能で
しょうね
ええ
まあ..
それで
そのかわりと
いうわけじゃ
ないんですがね
あのカメラ
どれほどの
価値が
あるんです?
じゃあ
たのむ
フラックス?
つまり
ですね
もしも
ですよ
もしもあの
カメラをあなたが
手に入れることが
できて
つまり...その
利益のうちの
いくらかを
ですね
正当な
報酬として
ですね
あのカメラに
価値はない!!
あなたに
大きな利益が
生まれると
するとですね
おれの個人的な
興味だけだ
他にもっていっても
ただの中古カメラだ
高く売れるという
もんじゃない
は...
はあ
あのカメラの
ことはもういい
あんたが
やるのは
ビカール・サンが
今どうしているか
それを調べてくれる
ことだけだ
それについての
報酬は
払うが
それ以上の
ことはしてもらわ
なくていい
は...
はい
2・3日
したら
また
顔を出す
はい
店を出て深町の脳裏に少しずつ
不安が広がりはじめた
あのカメラの事情を
知ったならー
おそらくマニ
カメラを手に入れても、それを
渡してはくれないであろう
ことによったら
事情を知らなくとも
あのカメラを手に入れようと
するかもしれない
あの男なら
そうするだろう
深町はサガルマータに足を踏み
入れてしまった!ことを後悔した
それが合法的な
やり方であるとは
限らない
もしかすると
自分のせいで羽生丈二に
危害が及ぶかも
しれなかった
あ
〝ガネーシャ〟はすぐに
見つかった
カメラマンの北浜がアン・ツェリンを
見たという店だった
外国人専用の
登山用具店
だったのか
!
あの老人
は...!
アン・ツェリン
......
なぜ
...
酸素
ポンペを
...??
深町は送わずアン・ツェリンの
あとを追った
幸運だった!
もしかすると
アン・ツェリンの
行く先に羽生丈二が
いるかもしれない
羽生に会える
第21話
しかし、
深町は10メートルほどの距離をおいて
アン・ツェリンを追った
アンツェリンはヤーカ通りに出て
右手へ折れた
旦那!
...
いいところで
会いましたよ
旦那
カルノス
旦那
ちょっと
待ってくれ
アン・ツェリンを見失った
深町は早足でチェトラバティ
広場に向かって疾った
ハア
ハア
ハア
だが、そこにもアン・ツエリンの姿はなかった
故意か偶然かアン・ツェリンは雑踏の
なかに完全に姿を消した
旦那
どうしたん
ですか
いきなり
疾りだして
いや
人違いだった
らしい
...
すまな
かった
ところで
用件は?
さっきの
ことですよ
旦那が捜して
いる連中の
ことですよお
ほう
早いな
何か
わかったのか?
そうしたら
おもしろいことを
知ってるという
人間がいましてね
おもしろい?
...
というと?
博奕をやる金も
ないし暇な
もんでね
ちょっと
心あたりに話を
してみたんですよ
ええ
でも教えて
くれないんですよ
とにかく
旦那に会って
がらだって言う
もんだから
あいつ
おれが金を
ひとりじめするん
じゃないかと
思ってるんだ
ちょうど
そこから出てきた
ばかりのとこで
旦那をみかけた
もんでわ
で
話は早い方が
いいと思って
その男は
どこにいるんだ?
ええ
そんなに遠く
じゃないですが
...
行って
みますか?
あいつ
たぶんまだ
そこにいると
思いますかわ
わかった
連れてってくれ
それで
ですね
旦那
金のこと
なんですかね
.....
もしその話が
金になるようなら
その男とおれと
半分ずつって
ことで..
ああ
もちろんだ
えへへ
こちらの役に
立つ話なら
払うよ
おれ
マガールの
モハンと
いいます
よろしく
お願いしますね
旦那
...
モハン
今ね
ネパールは
ダサインに
入ってるん
ですよ
タサイン
...
ダサイン祭ーー毎年10月に10日間
行われるこの祭はほぼネバール
全土がダサイン祭一色になる
水牛の
悪魔を
退治した
ドゥルガー女神を
頭えた祭ですよ
ヒンドゥー数の神話が
そのベースになっている
女神ドゥルガーから新しい生命力を受ける
ための供物として水牛が捧げられその首を
落として肉は一家や村で食べてしまう
性力信仰の色彩が濃い
牛は
ネパールでは
大切にされてるん
じゃないのか?
牛と
水牛は別
なんだ
水牛は
殺して食べても
いいのさ
でも
金のない連中は
水牛は無理
だから
山羊に
するんだ
ほう
だから山羊を
連れた連中が
多いのか
もっと
金のない
連中は
ただ肉を
買って喰う
だけさ
ここ
だよ
ちょっと
待っててくれ
どうぞ
入って
ちょうど
よかったって
喜んでたよ
そうか
メエ
メエ
旦那を
お連れ
しました
...
久しぶりだな
深町さん
あんた
...
だったのか
ナラダール・ラゼンドラー・前回
マニ・クマールの店で会った男だった
もしかしたら
おれは騙され
たのかい?
モハンが
言ったように
おれは
ビカール・サンや
アン・ツェリンのことなら
彼らがどこにいるか
見当はついているよ
ハハハ
騙しは
しないよ
場合によっては
あんたにそれを教えて
あげてもいいと
思っている
モハンには
わしの名前は
教えるなと
言っただけだ
クク...
せっかちだな
日本人は
ビカール・サンは
どこにいる?
このネバールには
ビスターリという
言葉がある
ゆっくりと
ゆとりを持って
という意味だが
知って
るか?
ああ
シェルパたちが
その言葉を使って
たのを思い出したよ
ならば
けっこう
ピスターリ
ビスターリ
あなたは
運がいい
日本人には少し
めずらしいものを
見せてあげよう
メエ~~~
話はそれからだ
時間はあるん
だろ?
メエ~
メエ?
何が始ま
るんだ?
今やろうと
していたことだよ
さあ
やりなさい
深町は彼らが何をしようと
しているかがわかった
山羊の首を切り落とし女神
ドゥルガーへの生贄とする
つもりなのだ
メエー
メエー
いくぞ!
いいか!
しっかり
押さえて
おけよ
メエ
メア〜ッ
2撃3撃と何度も
山刀は打ち下ろされた
山羊は数10分で見事に解体された
いかが
ですか?
それまで山羊であったものは生命感の
希導なただの肉の塊内展でおなしみの
物体になってしまっていた
...
骨もその髄を喰べ
頭も頬肉や頭蓋骨に
へばりついた肉も
喰べます
あんたが見たのは
なにも特別な
光景じゃ
ない
喰べないものは
頭蓋骨と角
それから毛皮くらい
のものです
この
カトマンドゥでは
どこでも行われて
いることです
どの地方の
どの村の家でも
日常的にやられ
ていること
なのだよ
深町は初めて見る光景ではなかった
―過去のヒマラヤ遠征のおりにも
見たことはある
他の生命を啖って生きる...
この血膜い光景が人間が生きて
ゆくことの背景には間違いなくある
それは人間ばかりでなく、
およそ生命というものの
維持は基本的に他の
生命によってなされている
山羊のことを
憎んでいなくても
互いに何の関係も
ないにしてもね
山羊にとっては
理不尽な
ことだ
ろう
...
殺して
喰べる
何故人間と山羊とが
一方が喰べ
一方が食べられるという
関係になってしまったか
わかるかね?
さあ..
それはね
理由はただ
ひとつ
山羊が人間より
弱い生きもの
だからだよ
たぶんね
人間と人聞との
関係もこの山羊と
人間との関係に
似ているものが
あるのだと
私は考えている
恨みも
何もない
ただ喰われる方が
喰う方より
弱かったという
理由はそれだけでね
おい
モハン
へい
おまえの用は
済んだ
こちらから約束の
金をもらって
帰ってよい
いいのかし
こんなに
お礼だ
おもしろい
ものも
見せてもらっ
たしね
へへ
こりゃ
どうも
ふう
ビカール・サンや
アン・ツェリンは
どこにいる?
それで
...??
クク...
やはり
あのカメラの
ことですかな
...
いったい
どういう
ことです?
わざわざ
日本からはるばる
ネパールまで
くるほど
あのカメラには
それほど大きな
価値があると
いうことです
かな
...
残念だが
行ったよ
ちっ
なんという
ことを...
あの男も
同じことを
考えているぞ
まさか
あんた...
また
マニ・クマールの
ところへ...?
でもなぜた
あんたと
マニ・クマールは
仲間だったんじゃ
ないのか
違うね
仲間じゃ
ない
ピジネス上協力
しあってるだけで
あの店とは
ビジネス以上の
関係はない
ちょっと
待ってくれ
あんたも
マニ・クマールも
考え違いを
している
ほう
あのカメラの
価値についてだ
世の中には
個人的な金に
探えられない
価値もある
あのカメラは
そういうものなんだ
おれにとっては
価値があっても
他人にとっては
まるで価値の
ない代物だ
わかった
でも
あんたは
間違っている
いくつかの点でね
たしかに
世の中に金に換え
られない価値という
ものがあるのは
私も知っている
けれど
ひとつには
あのカメラが
他の誰かにとって
価値のある
ものであれば
それで私は
商売することが
できるという
ことだよ
あのカメラが
私にとって
価値があろうと
なかろうと
この問題の本質は
変化しないと
いうことだ
......
ふう
それから
もうひと
あの
カメラのことで
マニ・クマールの
知らないことも
私は勉強したよ
...
1924年
ジョージ・
マロリー
こここで!!
“ザ・ストーリィ・オブ・
エヴェレスト!
それから
〝ザ・ミステリィ・オブ・
マロリー・アンド・
アーヴィン!!
フフ
驚かれ
ましたか
フランチェッ
あの日..
あなたはホテルで
カメラを盗まれ
ました
その時
あなたを監視
していた人間が
いたとしたら
どうです?
何故...!?
...
いつ急に
あなたがホテルへ
戻ってくるか
わかりません
からね
それで?
あなたは
ブックショップ
へ寄った
そこで
英語の本を
2冊買ったことが
マニ・クマールに
伝えられました
しかし
あの男は気に
しなかったよう
ですが
私は
なんとなく
気になり
ましてね
調べさせ
ましたよ
それがさっきの
タイトルの
本だったわけです
同じ本を
手に入れたのは
つい10日ほど
前のことです
読み
ましたよ
驚き
ましたね
ふう
...
...???...
あなたが
捜しているのは
マロリーが
サガルマータの
頂上まで
持っていったという
カメラじゃ
ありませんか
深町さん
あなたには
あれが本物だと
信ずる何かが
あるのですね
...???それだろ?
すふぅ
~~っ
どうでしょう
あなたは
こうしてまた
日本から
ネハールまで
やってきた
しかもまた
あのカメラを
捜しているという
ではありませんが
あれは
マロリーの
カメラなん
ですね
いや...
勘違い
しないで
もらいたい
...
あれはまだ
本物であると
わかったわけじゃ
ない
たとえ
同一機種で
あったとしても
あれが
マロリーの
カメラである
のかどうか
わかっていない
客観的に
考えるなら
ほう
別のカメラと
すべきなの
だろう
何故なら
これは夢物語
のような話
だからだ
70年も前
エヴェレストの
頂上へ向かって
いったはずの
カメラか
何故今頃
カトマンドゥから
出てきたのが
おれは
それを確かめる
ためにやってきた
だけだ
しかし
もしあのカメラが
本物であるとしたら
どうでしょうね
それによって
エヴェレストの
初登頂が誰で
あるかわかるの
だとしたら...
.....
なるほど
...???...
これは
かなりの額で
海外のマスコミに
売れるネタだと
思いませんか
まあなた方
日本人には
どうという額では
なくとも我々
ネバール人にとって
それはたいへんな
金額なのです
いかが
ですか?
いかが
とは?
我々は
協力しあえる
ということです
協力?
...
協力しあった時
あのカメラによって
もたらされるものを
等分に分けあうと
いうことです
私はあの日本人が
どこにいるのか
すぐに調べる
ことができる
そうです
あなたと私の
目的は同じだ
あなたは同じ
日本人同士
あのカメラを我々が
手に入れるために
彼と話をつける
ことができる
ついでに
あのカメラを
どこで
手に入れたの
力を訊き出す
こともできる
本物かニセ物
かをね
...
できないわ
言わないよ
あの男は
ならば
何故
あなたは
カトマンドゥまで
やってきたのですか!?
何故あのカメラの
行方を今
捜そうと
している
のですか?
考えて
みてくれ
...
...
この
ダサイン祭が
終わるまで
もし
一緒にやれる
ようなら、連絡
してくれないか
翌日
深町はほぼ一日を
ホテルで寝てすごした
...何故!?
おまえはいったい何を
しょうというのか?
羽生を無理やり捜し出し
あのカメラのことを訊いて
それでどうしようというのか
あのカメラが
マロリーのカメラであったら
という原望
その夢を追う
ことによって
自分は今いる
牢獄のような場所から
脱出できるかもじれない
そう思った
マロリーの
カメラ
このネタをスクープできれば
自分の業界でのポジションは
あがるであろう
しかし、それだけではない...
宮川はそれを
〝夢〟ど言った
自分が最初だ
〝これを他人の手に
ゆだねたくない!
自分が最初に気がついたからだ
そのことによって自分は
その権利を手に入れたのだ
もはや羽生のことも
マロリーのカメラのことも
自分の内部ではひとつのこと
になっている
切り離せない
エヴェレスト
地上の最高峰
答えがあるとするなら
そこになにもかもあるのだろう
そこにたどりつくことによって
自分が抱えているものこの地上のあらゆること
どもはすべて解決してしまうのではないか
もしかしたら
自分はあのエヴェレストの
頂に立とうとしているの
ではないか
ただ一度
山屋なら誰もが
そのことは
一度は胸に思う
思いながらそのまま忘れてゆく
思いながらそのまま
忘れてゆく
羽生丈三
自分が遥か昔に捨て去ってしまったものを
まだ未だにその間に焦らせ続けている男
自分が羽生に魅かれるのは
そういう部分かもしれない
その勇を自分は見届けたいと思った
ごく
ごく
ふう
深町は自分の足で
羽生を捜す決意をした
ルクラまで飛行機で
入りその後歩くという
一般的なルートがある
俗にエヴェレスト街道と呼ばれる
道を通ってクンブ地方へ出る
ともかく現地へ飛んでそこからシェルパの
村を風潰しに捜してゆけばいいだけのことだ
そこはシェルバ族の村から村へ
徒歩で移動してゆく道だ
翌日
深町はトレッキング用の
装備を揃えるために
街へ出た
それから
えーと
他には
なにか
ひとり用の
テントと
単三の乾電池を
10個
サングラスも
ほしいんだか
はい...
いや
とりあえず
それだけを
揃えたいんだ
これは
フライシートも
ついているのか
はい
こちらの
ザックに
入ってます
けっこう
品揃えが
いいんすか
この前シェルパの
アン・ツェリンを
この店の前で
みがけたんだが...
へえ
旦那
アン・ツェリンを
知ってるのかい
ああ
知ってるよ
かなり昔だけど
日本の登山隊が
エヴェレストに入った時
おれも隊員だったんだ
その時に
アン・ツェリンが
ここへは
よく来るの
かい?
おれたち
の隊に
従いてくれ
たんだよ
へえ
そりゃあ
すごい
彼はほんとに
素晴らしい
シェルパ
ですよ
うん
いや
もう歳だしね
登山隊には
めったにつかない
みたいだよ
トレッキングの
案内どこに
申し込めば
いい?
今でも
現役でやって
るのかい
それでも
時々トレッカー
相手の案内人は
しているよう
だけど
ほう
じゃあ
頼めるかな
さあ
今は旅行
代理店とは
契約してない
みたいだし
直接本人に
頼むしかないん
じゃないのかな
どこで
連絡を
とれる?
たぶん
ナムチェ
あたりで
彼の名を出せば
連絡はとれる
だろうけど
エヴェレスト街道を
行くならやっぱり
カトマンドゥで
雇った方がいいよ
直接?
え?
カトマンドゥに
いるのか?
アン・ツェリン
そういえば
この前見た時
酸素ボンベを
狙いでいたみたい
だったけど
あれは
今大きな
登山隊の仕事を
してるって
ことかな
あ
あ
さあ
...?
わからないよ
店長
どうした?
あの...
こちらの
お客さんが
連絡場所を
知りたいんだが
ま..
駄目で
しょうね
トレッキングの
案内はできないと
思いますよ
アン・ツェリンに
トレッキングの
案内を頼め
ないかと
何故?
よっぽど彼と
親しい人か
彼の友人の
紹介とかがなければ
まず無理ですよ
おれと彼とは
顔見知り
だよ
彼の友人の
ビカール・サン
ともね
なら
直接
刺むといい
居場所が
わから
ないんだ
残念ですが
教えられ
ませんね
じゃあ
伝言でいい
こう
伝えてくれ
日本人の
カメラマンで
深町という男が
エヴェレスト方面の
ガイドを頼みたがって
いるとね
...
写真を
撮って歩き
たい
日当は
彼が通常に
もらっている額の
倍でもいいから
頼みたいと
気前がいいね
仕事なんだ
おれが払う
わけじゃない
わかりました
いいでしょう
HINARO!
GAN
近いうちに
連絡を
いれます
これは?
とにかく
話して
みてくれ
それで
駄目なら
おれも納得する
たのむ
待った...
すでにもう半日も
こんなふうに
天井を見上げている
一昨日もこうやって
時間を潰してしまった
なんとなく気力が萎える
!
Who.isit?
どなたですか
わたし
です
......?
岸です
岸です
まさか
ナマステ
涼子さん
ずいぶん
早かったん
ですねえ
ええ
なんだか
じっとして
いられなくて
驚き
ましたよ
翻訳の仕事
大急ぎで
終わらせ
ちゃったんです
ここ
え?
そうですか
それで
今どこに?
チェックイン
すませてきた
ばかりなんです
部屋は
深町さんの
となり
どうして
...
いいんです
こういうとこ
好きなん
です
近くに
もっと設備の
いいオラルが
あったのに
まだ
羽生丈二の
行方はつかめて
いません
あと3日で
ダサイン祭が
終わります
それまでに
何の情報も
得られなければ
トレッキングに
出かけようかと
思っているん
ですよ
ええ
そうです
歩いて
シェルバの村を
回ってみるつもりです
今あちこち
声をかけて
まわってる
ところなん
ですか...
...
それ...
わたしも一緒に
行けませんか?
トレッキング
......?
ええ
でもどれだけ
時間がかかるか
わかりませんよ
それに
いきなりだと
高山病の
危険もある
...
涼子さん
あなたは
羽生と会って
どうするん
です?
......わから
ないわ
正直言って
本当にどうした
いのか
でも
会って
あの人が
今どうしているのか
何を考えているのか
それが知りたい
だけなんです
どうなるにしろ
それからだと
思うわ
とにかく
自分の気持ちに
ふんぎりをつけ
たいんです
...
私たちまだ
何も終わって
ないのよ...
第22話
涼子はネパールは
初めてである
ヤスイヨ
カウ
ヤスイヨ
カウ
センルピー
センルビー
ヨーロッパ・アメリカ以外の国・足を
踏み入れたのはこれが最初である
チャイダイナ
いらない
この異様ともいえる
活気に満ちた喧騒に
ああ...
なんだか
不思議
...
なぜ
かしら?
涼子も初めはとまどいを
見せていたがすぐにそれに
馴じんだようであった
ハハ
たいていの人が
そんなふうに感じる
みたいだよ
この街へ来ると
なにか...
わけもなく
なつかしいって
感じがする
街だわ
ずっと昔
戦後間もない
頃の日本の
ようだ
なんて
言う人もいる
くらいだからね
昼食後ふたりは
〝ガネーシャ〟へ向かった
んはぁ、またないと
...
ナマステ
ナマステ
店長は?
おやおや
お早いお出
ましですね
もし
連絡がとれて
いるなら
ハハハ
今日あたり
話がうかがえるん
じゃないかと
思いましてね
よいタイミング
でしたね
昨日連絡が
とれましたよ
こちらは?
岸涼子
さんといって
わたしの
友人です
ナマステ
ナマステ
ダワと
いいます
岸涼子です
彼女は
ビカール・サン
のことを
わたしよりよく
知っています
ほう
わたしの
言ったことは
伝えて
いただけ
ましたか
ええ
伝えました
というと
...?
ですが
結果は良い
ものでは
ありませんでした
自分も
ビカール・サンも
ミスターフカマチに
会うつもりは
ないと
そして
あの件で
何かの情報を
提供するつもり
もない
そう伝えてくれと
.....
深町さん
あなたは
一昨日わたしに
隠しごとをして
いたということ
ですね
アン・ツェリンが
言ったあの件に
関することです
はっきり
言われてしまい
ましたね
それは
...
カメラの
ことか?
さあ
!!
私は
あなたから何の
説明も受けて
いなかったもの
ですから
いや
あの時
は..
とにかく
アン・ツェリンは
どのような情報も
あなたに
まわす
つもりはないと
そう言っていました
当然家内も
できないと
いうことです
それから
もうあなた
からの伝言も
受ける必要も
ないともね
そう
ですか
まったく
相手にされま
せんでしたね
...
あの
なにか
...
あなた
いや失礼
岸さん
でしたかな
その石
どうやって
手にお入れに
なられました?
あ...これ?
これは
いただいた
ものなんです
はい
誰から?
あなたがたが
ビカール・サンと
呼んでいる日本人
羽生丈二と
いう人からです
おう
......
...
これが
なにか
......?
そこらで
売っている物の
中には偽物が多い
観光客が掴まさ
れるのはたいがい
それです
あ...いや
とてもきれいな
ターコイスだと
思ったもの
ですから
ぜひその
ターコイスを
大事にして
ください
それを
言いたかった
だけです
しかし
それは本物
のようだ
はい
ありがとう
ございます
では
これで
意ぎの用件が
入っておりますので
失礼します
帰るしかなかったー
...
だめだった
みたいわ
でも
これで終わった
わけじゃない
少し歩いて
みるかい
気分を
変えよう
案内するよ
カトマンドッ
ええ
だけど
あれは
どういうこと
だったの
かしら
そのネックレスの
ことかい
羽生から
もらったって
言ってたわ
ええ
3年前に
この石だけ
...
ひとつ
ネバールから
羽生さんが送って
くれたんです
”トルコ石を
送ります。気に
入ったら使って
下さいと
それだけ
書かれた手紙が
添えられて
いました
...
.....
その石
たぶん
ダワには
見覚えがあったん
じゃないかな
おれには
ダワが
その石の
ことを
かなり気にして
いるように
見えたんだけど
なにか...
羽生に
とっては
特別な意味の
ある石かも
しれないよ
...ええ
涼子さんは
羽生に
会いに
ネパールまで
ゆこうとは思わ
なかったのかい?
思ったわ
何度も
でも
羽生さんが
どこに
いるか
わからなかったのよ
いつも一方的に
手紙とお金を
送ってくるだけ
住所は
書いてなかっ
たんです
このトルコ石
だって
羽生さんから
一方的に...
.....
これはきっと
羽生さんにとって
でも..
わたし
とても
大切なもの
だったんじゃないか
.....そう思って
ました
!
アン・
ツェリン
どうして
う...?
...
待って
いた?
待って
いた
おれとは
会うつもりは
ないとそう
言ってたんじゃ
ないのか?
事情が
変わった
失礼ですが
岸涼子
さんですわ
わたしは
アン・ツェリンと
いいます
できれば
それを見せて
もらえるかね
...
これを...?
はい
ええ
そうです
お願い
できますか
いいんじゃ
ないか
見せて
あげても
どうぞ
ありがとう
それで
あなたに
ひとつ
いいえ
いや
ふたつ言って
おかねば
ならないことが
あるのたか
なにか?
その石を大事に
してくれという
ことがひとつ
そして
もうひとつは
悪いことは言わん
このネバールから
日本へ帰ることだ
...
帰る?
何故ですか?
おとなしく、ここで
観光だけをして
そして日本へ
帰り
羽生という
男がいたこと
など忘れて
しまいなさい
そ...
そんな
だから
何故です?
わしから
説明する
わけには
いかんことだ
とにかく
日本へ
帰りなさい
それだけを
言いに来た
待ってくれ
アン・ツェリン
涼子さん
だけでも
羽生に会え
ないのか?
できません
おれは
あんたと会う
までは日本へ
帰らない!
涼子さんもその覚悟
でやって来たんだっ!!
アン・ツェリン!!
羽生に
伝えてくれ!!
ーやはりアン・ツェリン
はカトマンドゥにいた
もしかすると羽生も近くに
いるのではないかー
どうしてわざわざネバールまで
やって来た涼子に会おうとしないのか
思ったよりも
かなりきびしい
状況大丈夫
さぁて
これから
どうした
ものかなあ...
羽生もカトマンドゥに
いるとしたら
シェルパの村を
捜し歩くのも
無駄になる
...
パタン
......?
そう!
パタンよ!
え?
何が?
このトルコ石を
羽生さんが送って
くれた時の消印が
このパタンだったわ
不思議な
名前だったので
よく覚えて
いるわ
ほんとに!?
ええ
間違い
ないわ
たしか..
それまではずっと
カトマンドゥ
だったのが
最後の
その時だけ
消印がバタン
だったのよ
...
最後?
ええ
それが
羽生さんからの
最後の手紙
だったの
それが
3年前
だったんだね
どう
したの?
そうか...
アン・ツェリンを
見失ったのが
チェトラバティ広場
そこから
南へ行けば
パグマティ!!
なにか
わかったの?
うん
考えられることは
アン・ツェリンや
羽生が山から
降りてきた時
そのむこうは
もうバタン
じゃないか
ほとんど歩いて
行ける距離だ
行って
みたいわ
常宿にしている
場所かそれとも何か
関係のある場所が
このパタンにあると
いうことだろう
...
そうだな
もし
今でも
羽生がパタンに
いるとしたら
運が良ければ
そこで出会う
ことができるかも
しれない
翌日
ふたりはタクシーで
パタンまで出かけた
古都パタンはカトマンドゥ
盆地。第二の街である
どこかーというあてが
あるわけではなかった
午前中の時間を潰して歩いた
でも
パタンって
美しい街ね
来て
よかった
見つかると
思ってた
わけじゃ
ないけど
うん
やっぱり
無理
みたいね
ラリトフル
...!!
ネパール語で
“ラリトブル”
美の都と呼ばれて
いるくらいだからね
.....
あのひと
なにを考えて
このネパールで
暮らしてたん
でしょうね
...
羽生が
...ですか?
ええ
兄のことが
あったから
.....
それで
...
...
その負い目が
羽生さんには
あったんでしょうか
きしょう
きしょう
おれも
いきたいけどな
そこへいって
やりたいけどな
もうすこし
まっていればいずれ
おまえのところに
おれは
いってやる
いまはまだ、その時じゃない
おれは、おちるまで、くから
かならずいくから、
ただ、わざとおちる
それだけはできないんだ
羽生のことで
ひとつだけわかって
いることがある
とすればね...
...
どこに
いようと
なにが
あろうと..
生きて
身体が
動く限り
彼は山の
現役だって
ことですよ
第23話
S山岳鬼
涼子が帰ってこない。
日没までにはもどってくると
言っていた涼子が、夜の
8時になっても姿を見せない
どうしたのだろう
いったい何があったというのだ
涼子と別れたのは
まだ夕刻前だった
遅い昼食をとり
・パタンのレストランで
だけど
これに
何があるの
カしら.....
ダワもアン・
ツェリンも
このトルコ石の
ことを知ってた
みたい
...
わたしね
...
これを
いただいて
からの3年間
...
ずっとおとなしく
羽生さんだけを
待っていたわけ
じゃないのよ
ちゃんと
つきあってた
男のひと
いたん
だから...
男と女の
つきあいよ
驚いた?
...いや
そうよね
そんなに
驚くような
ことでも
ないわよね
マッチングラフラステスト
こんな石
ぐらいでさ
3年も待つ
わけない
じゃない
もっと前から
待たされっ
ばなしで
...
いつも
独りでどこかへ
行っちゃって
わたし
フラックス?
いったい
何しにこんなところ
まで来てしまった
のかしら...
帰ってくれば
いつもわたしが
待ってるんだって
思い込んでた
のかしら
やっぱり
...
だまって
日本へ帰った方が
よかったのかな
その後ー
ふたりて
パタンを歩き
夕刻になる前に
タクシー
カトマシドゥにもどった
わたし
ここでくだもの
買っていくわ
いいのか
ひとりで
ええ
大丈夫よ
道なら
わかるから
|涼子をホテルの近くの
ニューロードで降ろし
自分はホテルへもどってきた
夕食までには
部屋に
もどってます
じゃあ
気をつけて
その涼子がまだ
帰ってこない
もう9時になろうと
していた...
何かトラブルがあったのか
事故が
それとも別の何かがあったのか
電話もない
どうすべきか
警察か...正遊ドラベルに
相談すべきが
深町は迷った
!
深町さん
だろ?
もしもし
日本語だった
岸涼子さんは
そちらに
いるのかい
どこに
行っている?
はい
そう
ですが
ちょっと
でかけて
ますが
いえ
おりませんが
どなたですか?
...
ひとりです
こんな時間に?
誰と?
なんだと!
羽生さん!!
あなた
羽生丈二さんじゃ
ありませんか?
そうだ
......
今涼子の
部屋に電話を
入れたか
誰も出ない
あんたの
部屋にもいない
どうなって
るんだ?
...
予定では
目没前には
もどってくるはず
だったんですか
でも
なぜ..
今どこに
いるんですか!?
これから
あんたの
ところへ行く
行くよ
え?
30分はかから
ないと思う
その部屋を
動くな!
ノックがあったのは
23分後だった
羽生
さん?
そうだ
大い獣臭が深町の
鼻の奥を刺激した
入るぜ
どこかへ
登ってたん
ですか?
山...!
おれの
ことはいい
涼子の
ことだ
まだ帰って
こないんだな
......
ええ
涼子さんの
ことで
何か
あったん
ですか?
チベットから
おれがもどって
きたのは
昨日だ
チベット
...??
でも
アン・ツェリンは
彼女に日本へ
帰れと
そうだ
あれは
おれの意志だ
なぜ
アン・ツェリンから
涼子が来ている
ことは聴いた
わざわざ
彼女はあんたに
会うためにこの
カトマンドゥまで
やって来たんだぞ
その話は
あとだ
おれのところへ
手紙が
とどけられた
手紙?
...
こいつだ
石コロを包んで
投げ込んだらしい
部屋にもどったら
そこに落ちていた
そして、これからのアプリケーションの
初めてのブログについては、
そんなことをしていても、
そんなわけで、
そういうわけで
「様涼子という女は今我々と
一緒にいるレジネスの話をしたい
いずれまた連絡する
これは
...
涼子を
拉致して
今
自分たちの
ところへ置いて
いるということだ
拉致
涼子さんが!?
この
ビジネスと
いうのは
例のカメラの
ことか?
しかし
なぜあんたの
ところへ
こんな手紙が?
たぶんな
おれと涼子の
関係を知っている
人間がむこうに
いるということだ
じゃあ
相手は限られ
てくる
“サガルマータ”
のマニ・クマール
力.....
ナラダール・
ラゼンドラ
......か
たしかに奴らなら
少し調べれば
充分その機会は
あったろうさ
ったく
まさか
その紙切れに
書かれてたことが
本当だったとはな
出ろよ
ハロー
...
深町さん
ですね
そうだか
ああ...
いるよ
悪いが
かわってくれ
ませんか
どうだい
そちらに
ビカール・サンは
来てるかね
手紙に書いて
あったのは
本当だったろ?
用件は?
いくらだ?
あの
カメラだ
ビジネス
だよ
こちらにある
商品を適正な
価格でひきとって
もらいたいんだ
それと
あのカメラの中に
入っていた
フィルムも
一緒にね
渡せば
涼子は
無事に
返してもらえ
るんだろうな
もちろん
これはビジネス
だからね
商売は
きちんとやら
なきゃならん
それにね
あんたは
このビジネスから
抜けることは
てきんよ
このネバールには
商品がもう永久に
見つからない
ような場所は
いっぱいあるよ
わかった
取引きに
応じてもいい
その前に
涼子が無事な
ことを確認させ
てくれ
アイスフォールの
クラックに落ちたら
商品はどうなると
思う
いつなら
確認できる!?
明日の昼
またそこに
電話する
今
どこに
いるのか?
いいや
出先な
もんでね
それで確認が
できたら商談に
入らせてもらおう
じゃないか
いいか!
涼子には
絶対に手を
出すな!
もし彼女に
何かあったら
おれが一生かかっても
おまえを捜し出して
殺す!
おまえの
屍体はアイスフォールの
クラックの中で凍り、
ついたままになるんだ!!!
クク...
いいでしょう
この件
他言は無用だ
...
わかった
じゃあ
明日
カチッ
ガチャ
どうする?
渡せば彼女が
もどってくる
のか?
わからん
涼子が連中の
顔を見ていれば
無事にもどって
くるとは思えない
渡すさ
それしかないだろ
警察は!!
だめだ
そんな
ことを
したら涼子は
奴らの言った
通りのことになる
...
.....どう
すれましい
わからんよ
待つしか
ないだろ
今は...
翌日
午後12時
電話
は?
まだです
ふう
ごく
ごく
ごく
本気なんで
しょうかね
何がた
奴ら
ですよ
おれは
そんなことは
知らん
表に出して...
陽の当たる
場所に出してこそ
金になる
外国人を誘拐して
それであのカメラを
手に入れてどうやって
それを金に換えよう
というんです?
あのカメラも
この話もブラック
マーケットに
流したって、たいした
金額にはならない
その過程で
犯罪行為があった
とすれば、表に
出せなくなる
それに...
あのカメラを
手に入れた
ビカール・サンと
いう人間の話が
あってこそ
はじめて
あのカメラは
生きてくる
これじゃあ
むこうは
あんたを
敵にしようと
している
だけですよ
何故だと
思います?
おれは知らんと
言ったはずだ
じゃあ..
ひとつだけ
訊かせて
下さい
これは
あなたが
知っている
ことです
あのカメラは
あなたが手に
入れたのですね
そうだよ
おれが
見つけた
ど...
どこで
それを?
知らない
もしかして
あなたは
マロリーを
見つけたん
ですか!?
おれがやろうと
していることが
何であろうと
それは
あんたには関係が
ないことだ
少しもね
人がやろうと
していることに
横から関わるんじゃない
てめえは
てめえのことだけ
やってりゃあ
いいんだ
ウロウロと
人のまわりを嗅ぎ
まわるのはやめろ
勝手におれを
追いまわして
それが
このさまだ
のこのこと
カトマンドゥ
くんだりまで
やってきて
おまけに女まで
ひっぱってきて
...
ハロー
出ろ!
フフ
待たせ
たな
涼子は?
彼女を
出せ!
彼女と話を
させろ!
どういう話も
そのあとだ!!
オーケイ
今ここにいる
からかわる
せっかちだな
日本人は
あ...涼子さん
大丈夫ですか
怪我は!?
話す時間は
20秒だいいな
20秒だで
もしもし
涼子さん!?
ないわ
いまの
ところ
もしもし
何があったん
ですか?
どうしてこんな
ことに!?
ごめんなさい
ニューロードで
声をかけられたのよ
ビカール・サンが
わたしのことを
捜してるって
ふたりっさりで話が
あるからっていうの
彼はわたしに会いた
がってなかったんじゃ
ないのって訊いたら
そうじゃない
もうひとりの男に
会いたくない
だけで
ふたりきりなら
会いたいって
それで
車に乗せられて
ここへ連れて
こられたの
ここ?
どこなんだ
そこは?
川が近くに
あって..
ここ
まてた
それが
よくわから
ないのよ
場所を
訊いたって
駄目だぜ
一・二度
カトマンドゥを
うろついただけの
外国人にわかる
わけがない
さて
これで女が
無事だって
ことがわかった
わけだ
あんたじゃ
駄目だ
ビジネスの
話に入ろう
ビカール・サンは
そこにいるんだろ
出してくれ
どうした
いんだ
条件を
言え
おれだ
条件を
言え
...
条件が
変わった
どう
変わったんだ
金ていい
ようしいいか
よく聞け
手短に話す
金?
現金だ
先に都合が
つく方を商品と
引き換えに
こちらに
もらいたい
日本円で100万円
米ドルで1万ドル
どちらでもいい
日本人にとっちゃ
どうという額じゃ
ないはすだ
もちろん今日すぐに
そろえろとは言わん
今夜また電話する
明日には用意できる
ようにしておけ
もし警察に
話したりしたら
商品はクレバス
の中だ
じゃ
今夜
8時だ
ガチャ
わからん
何が
あった?
どうした?
カメラよりも
現金が欲しく
なったらしい
やっら
やっぱり
カメラだけでは
儲けられないと
判断したんで
しょうか
わからん
100万といって
ましたね
どうするん
です?
急かなきゃ
お金の
ことなら
わたしも
用立てることが
できますか
それで
警察
には?
1千万円と
ふっかけてこない
のにはおそれ
いったがね
駄目だ
何故?
こんな事件
なのに
なんでも
かんでも
警察に言えば
なんとか
してくれる
と思っているのか
キャンセル
じゃあ訊くが
あんたは警察を
信用してるのか
涼子にもしもの
ことがあったら
どうする?
信用しているか
していないが
という話なら
おれは警察を
信じちゃいない
ネパールの
警察だからじゃない
おれは誰も他人を
信じちゃいない
それだけのことだ
もっといえば
おれは運命
だって信じ
ちゃいないよ
自分自身
だってな
じゃあ
いったい
どうする
つもりなんです
待つ?
アン・ツェリンが
事情を調べ
ている
マニ・クマールと
ナラダール・
ラゼンドラの
周辺を探っている
待つんだ
昨日
手は打って
おいた
どちらがやったか
そこまではわからん
しかしどちらにしても
犯人がいるとしたら
その周辺の人間だけだ
もし
もし
あ...アン..
ツェリンカ
おれだ
どうだった?
...
うむ
それで?
わかった
今すぐ
そっちへ行く
どこへ?
ああそうか
そういう
ことなら
マニ・クマールの
ところだ
へへへ
どうも
どうも
この件については
こちらから
うかがわせて
いただくつもり
だったのですがね
涼子が誘拐
されたのを
知っているのか?
はい存じ
あげております
誘拐したのは
わたしの知人
ですからね
なんだと!!
ま...まあ
もうすこし
わたしの話を
聴いていただけ
ませんか
...
わたしは
商売人です
どういう品物
どういう情報を
どう仕込んでどう
売れば儲かるかを
いつも考えている
人間です
そのわたしから
みても今回の
ミス涼子の誘拐は
よくなかった
あれはバッド
ビジネス
です
ノウ
ノウ
わたし
じゃない
マガールの
モハンです
モハン
そうそう
深町さんは
ご存知のはず
ですね
おまえが
誘拐を命じ
たんじゃ
ないのか?
...
ああ
それから
モハンと一緒に
ミス涼子を誘拐
したのはあの
コータムです
...??
それから
もうひとり
知って
いる...
タマン・
ムガル
という男です
以前
あなたの
カメラを
盗み出した
男ですよ
あと何人か
手伝った人間が
いるかと
思いますが
何者なんだ
そのタマン・ムガル
というのは?
ブータン
から?
わたしの知る
かぎりでは
その3人と
いうことです
プータンからの
雑民です
そうです
この時期
ネパールが抱えている
問題のひとつにプータン
との民族紛争がある
1989年-通商通貨協定に
伴ってインドがネバールに
対して経済封鎖を行った
そのためネバールの物価が
高騰し国民生活が食器する
それを背景にネバールの
共産党の活動が活発化し
学生などを中心として
反政府運動のデモが行われる
市民を巻き込んだ民主化
運動へと発展し
1991年ネパール会議派の
G・P・コイララ首相が
誕生し政権を握った
そしてネバール最高権力者は王室では
なくなり国王はネパールという国の
象徴という存在になった
これに危機感を抱いたのが隣国の
王制国家ともいうべきブータンである
プータンには昔から移住して
住んでいるネバール系の
住民が無数にいる
この住民たちを中心にして
プータンの王制が批判
されるようになった
これを変えたブータン政府が
ネバール系住民の国外
退去を命じたのである
これによってネバールは大量の
難民を抱えることになった
このネパール系住民の中から
ブータン政府に対して武装
闘争に走るものが現れた
フータン政府は
この過激派の取り締まり
のためインドまで
巻き込んでゆこうと
しているのだった
あはははっははああっ!!
まさにこの時期、ネパールは
カトマンドゥを中心に混乱の
最中にあったといっていい
モハンも
ブータンからの
難民でね
どうやら
ムガルとモハンが
この事件の
首謀者
らしい
自分の調べた
ところでは
...
モハンは
過激派に
いたことがあり
ナラダール・ラゼンドラは
その資金調達のような
ことをしていたようだ
あの男が
そういうことを
している
というのは
家の世界では
暗黙の了解
事項らしい
じゃあ
ナラダール・
ラゼンドラが
この件を
全てたのか!?
もちろん
こんな商売を
やってる人間なら
誰でも知ってますよ
いや
そこまでは
知りません
わたしは
彼らから話を
持ちかけられた
だけなんですから
いやあ
驚きまし
たねえ
そのカメラが
どういうものかね
モハンから
聞きましたよ
売り込み方に
よっては大量の
外貨がこの国に
もたらされます
なあマニ・クマール
それであんたのとこは
そのカメラと
フィルムを
手に入れたらいくらで
買ってくれる?
いくらだ
そうだな...
まそれだけの
品物なら
おまえさんたちが
がっかりしない程度の
額は保証するよ
いくらと
いわれてもな
現物を見ないと
はっきり値は
つけられない
ともかく
うちが他の誰
よりもいい値で
買わせて
もらうから
で現物は?
いつ見せて
もらえる
のかね
いや
フフラフラスランスを
まだ
手元には
半分しかない
半分?
手に入れたのは
女だ
ビカール・サンと
関係のある
女だ
ピカール・
サンの女?
そうだ
どういう
ことだ?
誘拐でも
したのカ!?
これから
その女を
カメラとフィルムに
取り換えるんだ
おお!
なんて
ことを!
だめだ
わしは協力
できない!!
この話は
なかったことに
してくれ!
...
何故だ!
わからんのか
これは犯罪だぞ
危険すぎる!
いいか
よおく考えて
みろ
まっとうな
ビジネスで手に
入れるのなら
ともかく
だめだ
だめだ
その方法を
知った以上
わたしは協力
できない
...
外国人の誘拐という
ことで手に入れた
カメラでいったい
どういう金儲けが
できると思って
いるんだ?
悪いことは
いわん今すぐ
女を自由にして
ありったけの金を
持ってインドにでも
逃げることだ
2・3年もすれば
ほとほりも
さめる
わたしは
彼らにそう
いいました
なるほどね
それで急に
奴らは金を
要求してきた
わけだ
ほう
今奴ら
3人と
涼子が
どこにいるか
わかるか
いいえ
わかりま
せんね
そのことは
彼らから
何も聞いてない
それじゃ
金をね
なるほど
なるほど
ナラダール・
ラセンドラが
この件に関係して
いる可能性は?
たぶん
ないでしょう
しかし知っている
可能性は高いと
思いますかわ
わかった
これで
やるべきことが
決まった
...
あの男に
会いにゆく
え?
会って
どうする?
訊くのさ
過激派くずれの
隠れそうな場所をか
ラゼンドラなら
知ってるはずだ
まだ
夜までには
時間がある
考えようによっては
夜までしか時間が
ないともいえるがな
第24話
ナラダール・
ラゼンドラに
会いたい
何の用か
ラゼンドラに
直接話す
いるのか
いないのか!!
なんだと!
あがって
もらいなさい
はっ
はい
ふう
...
タイガーの
アン・ツェリンが
わざわざこんなところ
までお越しくださる
とは光栄ですな
率直に
訊く
マガールのモハンか
タマン・ムガルか
どちらかの居場所を
教えてもらいたい
ところで
ご用件は?
何故
奴は今
どこにいる!?
...???そりゃあああ
あんた知って
いるんだろ
モハンが
ここに出入り
していることは
わかっている
...
そうですわ
フラフラスの
モハンと
ムガルが
やったことを
わたしが
あのふたりの
ことで知っている
ことがあると
するなら
もうひとり
コータムという
男と組んで
日本人の女性を誘拐
したということなら
知っている
あんたが
やらせたのか?
まさか
やる前に
わかっていれば
止めているよ
それじゃ
もう一度
訊く
奴らは
どこにいる?
いずれわかる
今心あたりを
捜している
ところだ
捜してる?
こちらも
多少は責任を
感じていると
いうことだ
3人とも
わたしのところへ
出入りしている人間
であるということ
もあるしね
彼らがわたしの
ところへ来ないで
マニ・クマールの
ところへ売り込みに
いったというのも
よくわかる
しかし
マニ・クマールも
馬鹿じゃない
そう
善人とは
いわないが
馬鹿では
ないよ
あのやり方では
カメラを金に
換えることが
できないことは
すぐわかる
何か?
ちょっと
お話が
...
わかった
今コータムが
見つかった
何だって!
下の部屋に
いる
一緒に
くるかね
コータムに訊けば
彼らと彼女の
居場所は
すぐにわかる
だろう
遅かれ
早かれいずれ
彼らの居場所は
わかると思っていた
だが問題は彼女の
安全ということだ
もちろん
行く
協力?
......
...???...
なぜおれたちに
協力してくれ
るんだ
ちがうね
あんたたちに協力
しているんじゃない
自分たちのために
やっているんだ
出所がわからない
盗品を売るくらいなら、
ともかく
外国人の誘拐事件に
関わるわけにはいかない
ということだ
この件が騒ぎになれば
わたしたちも困るし
騒がれたくはない
だけのことだ
インドラチョークで
縄を持ってうろうろ
していたところを
見つけたので
連れてきました
こいつ
逃げようと
したんですが
こっちは3人
でしたから
どうした?
とんでもない
ことをしてくれたな
コータム
ロが
きけんのか
コータム
モハンとムガル
それと
連れて行った
娘はどこに
いる?
ぐっ
山刀を
はい
お...おし
な...
何するんだ
コータムを
押さえなさい
ちょ...
ちょっと
ま..
まってくれ!!
むがっ
手を
やめろ
~~~っ
ヒ!
や...
や...め
て...
ぎひいいい
くくくっ
言いたくなったら
言いなさい
うがあ
はふ
ーっ
あー
はふ
言う
...
げひ
やべで
くれそう
そうか
げひ
やっと
思い出したよ
ナラダール・
ラセンドラ
あんた
...
グルカカ
言うよ..
みんな..
言うから
うがああ
そもそう
...
おれ
女を縛っておく
親が古くて
切れそうだって
言うから
モハンの
やつだよ
あいつが
いけないんだ
どこで聴いたか
知らないけど
お...おれ
しょうがなく
カトマンドゥまで
縄を買いに
出たんだ
それで
見つかってしまった
というわけだな
そしたら
モハンがムガルに
その話を
持ちかけて
この誘拐を
計画
したんだ
あのカメラに
えらく興味を
持ってた
ああ
...
それでおれ
あのカメラはだいぶ
値打ちもんらしいって
言ったんだよ
だ...だから
少しでもいいから
金を手に入れて
インドへ逃げようって
相談してたんだ
ところが
だれにも相手に
されなかった
おまえ
これが犯罪だと
思わなかった
のか
どうして
誘拐なんて
ことを
...
...
金が
欲しかった
...
金だよ
...
だけ
それはいたらすの
カトマンドゥ市内を流れ下った
パグマティ川は北から流れてきた
ヴィシュヌマティ川と合流し
そこで流れを南に変える
クルマはそのパクマティ川に
沿って南へ向かった
車は2台
...
...
前の車に羽生・深町
アン・ツェリン
ナラダール・ラゼンドラ
後ろの車に
コータムたち
この道はカトマンドゥから
17キロ南ヘダクシンカリまで
続きそこで終わっている
そこから先は車でゆくことはできない
そのダクシンカリへ着く手前の
パグマティ川沿いの家にモハンと
ムガルが展途子と一緒にいると
コータムは言っている
もう少し
スピードを
あげろ
急いだ方が
いい
コータムの
帰りか
遅いので
不審に
思っている
かもしれん
...
ラゼンドラ
さん
ひとつ
訊いても
いいかな
何です?
何故あんたの
ような人間が
汚れた場所に足を
つっこんでまで
難民の過激派
連中の面倒を
見ようとして
いるのだわ
貧困から
だよ...
この国が
貧しかった
からだ
貧しかったから
わたしは
クルカになり
この国が
貧しかったから
ネパール人が
フータンへ
出稼ぎにゆき
同じことが原因で
今またネバールへ
帰って来なければ
ならなくなった
彼女をモハンたちが
誘拐したのも
つきつめれば
同じだよ
...
しかし
あんたは
英国から
ヴィクトリア十字熟益
までもらっている
金ならば今のあんたなら
クク...
それを言うなら
あんただって
そうだろ
イギリスから
タイガーバッジを
もらって......
どうだい
タイカーバッジは
あんたの人生に
なにを
もたらした?
フフラクラス...
...
クルカカ...
勲章も
タイガーバッジも
...おれには
まるで縁のない
世界だな
通称グルカー
これは俗に言う
グルカ兵のことである
グルカ兵とはイギリス軍に
設けられたネパール兵士の
外国人部隊のことである
白兵戦において無敵・地上
最強の部隊と言われている
その主体となっているのは
ネバールのヒマラヤ山岳部に
住むグルン族やマガール族を
はじめとする5部族である
それらの部族を総称
してグルカ族と呼ぶ
1815年
インドを支配していた
英国東インド会社と
«ゴルカ公園»の利害が
対立し英国と戦った
この折、英国が
グルカの勇猛さに驚き
植民地軍の一員として
彼らを迎え入れたのが
英国陸軍グルカ兵部隊の
始まりとなった
もともと山南部に住む住民
でありその肉体の頑張さ
肺活量・忍耐力等の基礎体力は
他の民族よりも遥かに
優れたものがある
走っている状態から地に伏せ
銃を構えて撃つまでの時間が
約0・5秒
イギリスの歴史において
彼らダルカ兵は常に最前線の
過酷な場所で戦ってきた
1915年以来
イギリスが戦ったあらゆる戦場に
グルカ兵がいたと言っていい
グルカ兵はその歴史において
祖国ネバールのためではなく、
他国であるイギリスのために
生命を隠してきたのである
このグルカ兵となるためには
過酷なテストにバスしなければ
ならない
そのためグルカ兵は地元では
大きな尊敬の対象となる
ネバールという国が外資を獲得する
手段としてグルカはヒマラヤ観光貧源と
並ぶ大きな財源なのである
退役後も年金が
保証されている
ナラダール・ラゼンドラは
その元グルカ兵であったーー
イギリスでも最も権威ある勲章
ヴィクトリア十字説章をもらう
ほどの人物である
見え
ました
あそこ
です!
あ...
いたぞ!
.....
涼子!
モハンだ
いかん
気づか
れた!
追え!
はっ
逃がすな!!
大丈夫
です
この道は
行き止まり
ですから
くそっ
まだ
やつら追って
くる!!
どうすんだよ
ムガル
この先車は
走れなく
なるんだぞ!
びくびく
すんじゃねえ
こっちには人質が
いるんだ
わっ
ひどいな
おう
スピード
落とせ
これじゃ
道とは
いえんぞ!!
ゆっくりと
慎重に
行け
路肩が
くずれたら
ひとたまり
もないぞ
やつらの
車は?
見えません
...
土埃
だけです
でも
まもなく
車は走れなく
なってしまい
ます
この先に
逃げ道は
ありません
なんだ?
今のは
やつらの
車か?
落ちた
のか!?
見ろ!
あそこだ
おおーい
涼子
ウ!
うぐぐ
降りる
え?
涼子はまだ
車の中にいる!!
どうするんだ?
持ってきて
くれ!
時間が
ない!
無茶だ
この崖は
もろい!
危険だ
車から
とってこい
早く
ロープだ!
はい
気を
つけろ!
足元の土は
もろいぞ
崖に近づく
なー
...
わっ
わっ
いかん!!
早く
しないと
落ちるぞ
この麻縄
しかないが
...
かまわん
きみは
山の専門家
だったな
そうだ
任せて
いいかな
その
つもりだ
深町さん
あんたも確保を
たのむ
おう
手伝わせ
てくれ
羽生の足元から砂と石が落ちていく。
しかしその量は少ないーー鳥のような
足どりですぐに車にたどりついた
うう
腕は
使えるか
ぐぅ...
た...たす
けて...
そこの木に
しかみついて
いるんだ
あとで
ひっぱり
あげてやる
涼子!
うう...
...
た...
ふ...
ムガル...
たすけて
くれ...
うわーっ
ああ...
ロープが
切れる!!
早く!
他のロープは
ないのかーっ
...
羽生さーん
おお!
生きてる
そー
!
早く
ローフを
降ろせー
...
なんという
男だ
「なんという豚力であろうか
フッ
フッ
幸運
深町の頭にその言葉が
浮かんだか
羽生が助かったのなら、それは幸運などではない
フッ
そうてはないと
その言葉を否定した
羽生は強引に自分の腕力で
運命から命をもぎとったのである
グランドジョラスの時のようにし
力強くリズムに乱れがない
フッ
フッ
羽生さん
大丈夫か
軽々とその身体は動いている
そしてー
たどりついた
うう...
涼子さん
大丈夫か
今はあまり
動かさない方が
よいあとで
医者にみせる
ビカール・
サン...
すごい
男だ
あんたのような
男は...
初めて
見た
...
羽生さん
ハア
ハア
涼子
やっと
...
会えたのね
彼女のケガも
たいしたことが
なくてよかった
骨も内臓も
異常はないと
医者は言っていた
かすり傷と軽い
打撲傷ですんだ
ようだ
あんたの
おかげで
助かったよ
とりあえず
礼は言っとく
いや
礼には
およばない
わたしには
わたしの立場が
あってね
そうか
できることなら
大きな騒ぎにせずに
収めたかったのだ
おれは
がまわんよ
おれも
同じだ
騒ぎを大きく
したくない
では
モハンとコータムの
処分はわたしに
任せてもらっても
よいのだな
涼子は?
ええ
アハハハ
いいでしょう
今晩ゆっくり
ペッドで眠らせて
もらえるなら
かまわないわ
承知
しました
それにしても
今日のきみは
凄かったな
惚れほれ
するような
動きだった
グルカにも
あれだけ冷静な
動きができる
人間はそうは
いなかったよ
...
戦士で言うなら
きみはまだ
完全に現役だな
第25話
回想
眠れない
疲れているはずなのに
意識は明瞭であった
羽生丈二のーー鮮明な姿が
何度も頭の中に想い返される
冴えざえと
闇の中で
眼を開けている
羽生の底力を目の当たりにして
深町は大きな衝撃を受けた
泡町の間に鈍い痛みに似たものが
熱い温度と共に生まれた
そして自分自身の
無力さを
思い知らされた
自分が招いた爽いをし
羽生が見事にぬぐい
去ってくれたのだ
――別れ際
ナラダール・ラゼンドラが
羽生に言った言葉が
思い出された
ビカール・
サン
帰る前に
ひとつ訊きたい
ことがある
!!
何か?
フフ...
わかった
気にせんでくれ
おれは何を訊かれ
ようと答えたくない
時は答えない
あのカメラの
ことだ
いやむろん
訊かれたからといって
あんたが答えたく
なければそれでも
がまわんのだがね
あんた
らしいよ
勘違い
しないでもらい
たいのだが...
今さらあの
カメラをどうこう
しようとは
思っていない
...???!?
あんたは
あのカメラをどこで
手に入れたのか?
それだけを
教えてもらえ
ないもの
だろうか?
ただ
ひとつだけ
気になること
があってね
どうだね
ほう
そりゃあ
すごい
これで答えに
なってるかい
8000メートル
より上だよ
もちろん
充分に
なっているよ
ありがとう
なるほど
8000メートル
より上か...
フフ...
なかなか
刺激的な
答えじゃ
ないか
今回のきみの
姿を見て
これから何を
手に入れようと
しているのか
朧げながら
見当がついたよ
フラフラスラ...
きみが
捨てたもの
捨てようとして
いるものの
大きさを
みれば
人間は両手に
荷物を抱えていたら
もうそれ以上は
持てない
きみの
手に入れようと
しているものの
大きさもわかる
いったん両手の
荷物を捨てなければ
次の荷物は抱え
られないからね
戦場へゆく前の
兵士はみんな
きみのような
顔をしている
グッドラックと
言ってあげたいが
きみは幸運も
拒否するだろう
いや
拒否はしない
だろうか
あてにはしない
...!???
最後に
...
ひとつだけ
アドバイス
させてもら
えるなら
休息も
必要だという
ことかな
...
休息?
戦場でさえ
わずかながら
休息の時間は
あるということだ
覚えておくよ
じゃあ
行こうか
涼子
ええ
送るよ
わたしの車で
みなさんを
送らせる
それから
余計なことかも
しれんか
同じホテルに
部屋をとって
おいた
今晩
ビカール・サンと
タイガー・ツェリンに
ぜひ利用して
もらおうと思ってね
...
気に入らん
ことを
したかな
いや
わたしは
戻らねば
ならんが
ピカール・
サンは今夜は
自由だ喜んで
利用させてもらうよ
な?
羽生丈二がいる
今このホテルに
涼子は今どうしているのかー
おそらくとちらかの部屋で
羽生と一緒にいるのだろう
一緒にいて
話をしているのか
しかしひと晩やふた晩で
話しつくせるものではない
むろんするだろう
話すことならふたり
とも山ほどある
そしてーー男と女だとっては、
どういう会話よりも椎弁な
会話の方法がある
明日になったら・
羽生と話をせねば
ならない
あのカメラをどこで?
「フィルムはどこに?
そして今羽生丈二は
ビカール・サンという名で
いったい何をしようと
しているのか?
あの陽焼けした
どす黒い皮膚
ヒマラヤの高峰の
希薄な大気のなかで
強い紫外線が焼いた
皮膚だ
これまでチベットに
行っていたという
なぜチベットの
そのような場所へ?
様々な想いが深町の
胸に去来する
疲労が濃いはずなのになかなか
それが肉体の眠りの淵へ
ひきずり込んでくれない
うとうとと
まどろむ...
山の夢を
見ていた...
寒い.....
寒い雪の中で
テントに閉じ込められている
浅い眠りに入った
のは明け方近くに
なってからであった
ああ...
それにしても寒い
寝袋のどこかに穴が
あいているのか
そこから外の空気が
入り込んでいるのだ
うう
さあー
一起きて
う...
起きてなんとかじよう
起きるのだ。起きなければならない
うう
......ん
う..
ん...
誰ですか?
岸です
こ...?
あ...
すみま
せん
いえもう
起きようと
思って
ました
から
ちょっと
待ってください
どうぞ
入って
ええ
.....
涼子さん
どう
しました?
起こして
しまいました?
.....
何が
あったんです?
...
あの人が...
羽生さんが
...
いなくなった?
今朝
気が
ついたら
羽生さんが
いなくなって
いなくなって
しまったの
...
これが...
あの人の
部屋で
わたし
眠ったの
...
わたしが
ベッドに
入っても
あの人は
ベッドに入って
来ようとしな
かったわ
おれは
ここでいい
きみの
寝顔を見て
いたいんだ
山に?
そうだ
何故
このネパールに
いるの?
おれは
まだ...
......山に
登るためた
まだ
まだ
楽には
ならないの?
...
!?
登っても
まだ...
収まって
いないんだ
.....
登っても
...いつ
まで?
...
だから
登りつづける
おれはらくになんて
なろうとおもっちゃ
いない
いつかおちる
その日まで
おれはゆくぞ
きしょう
あれがおちるのをこねがって
山をやめたり
おまえのことなんかわすんて
ひとなみなことなんかを
かんがえばじめたら
そういうとき
おれをつれにこいよ
涼子は羽生にはつりぼつりと
これまでのことを語った
長い時間、羽生を待ちつづけたこと、
いくら話しても
話し足りなかった
話をしているうちに
眠くなるー
涼子は眠ってしまった
うとうとと眠りに
引き握り込まれそうに
なりながら話すうち
翌朝めざめると
羽生の姿はなかった
羽生は涼子を抱かなかった。
そしてだまって姿を消したり
ただ、涼子が眠るまでそばにいて
涼子の寝顔を朝まで見つづけて
そして去ったー
馬鹿野郎!
行くぞ!!
えっ
羽生丈二の
ところだ!
でも
どこへ
おれはいい
でもきみには
権利がある!
羽生が何故
きみを避けようと
するのか?
どうして
今また
黙って姿を
消したのか?
フフフラフラララスラス
それを知る
権利が
きみにはある!!
それを言わせずに
姿を消させる
ものか!
おれは
許さない
深町さん...
羽生は束の間の休息を終えて
戦場へ帰っていったのだ
ありがとうございましたー
その言葉に別れを告げる挨拶よりも強く
もう二度と会うつもりのない意志と覚悟が
込められているような気がした
そう
ですか
...
わかって
いたのか?
...???...
そうでは
ないか...と
思ってました
がね
ビカール・サンが
姿を消し
ましたか...
じゃあ
羽生がなぜ姿を
消さなければ
ならなかったのか
その
見当も
ついている
のか?
...
...
ええ
わたしの想像
ですがね
彼に訊いた
わけじゃ
ない
教えてくれないか
いったいどんな
わけがあるんだ?
言えませんね
彼が言わな
かったことを
どうしてわたしが
言えますか
直接
彼に訊く
さことです
おれ
たちだって
そうしたい
しかし
羽生がどこに
いるのか
わからない
ピカール・サン
なら
パタンに
います
パタン
...?
...
やっぱり
場所は!?
わかり
ました
教えて
もらえ
ませんか
御案内
しましょう
わたしはね...
あの男が羨ましい
のですよ
...???そうなのか?
それは
何故
ですか?
あの男と
わたしは
生き方が
ほとんど正反対
だからです
というと?
わたしは
クルカです
17歳で
グルカ兵に
志願しました
グルカ兵は
ネパール人に
よって構成された
軍隊です
しかしこれまで
ただの一度も
わたしたちは
自らの祖国のために
闘ったことは
ないのです
......28年
妻を亡くし
子供もいない...
結局わたしの手元に
残ったのは
ヴィクトリア十字
勲章がひとつ
.....
あの男は
...
わたしは
ビカール・サンとは
まるで
逆の生き方を
してきた...
いつも
自分自身のために
眠ってきた
人間ではないかと
思うのです
車が入れる
のはここ
までです
降りて下さい
すぐそこです
ここに
...?
そうです
ここです
......
ビカール・サンが
カトマンドゥに
いるとき住んで
いる場所です
わたしができる
のはここまで
です
あとは
あなたたちの
問題です
いろいろと
すまなかった
ナラダール・
ラゼンドラ
あなたには
感謝している
ありがとう
ございました
涼子さん
この扉を開くのは
あなたの
仕事だ
では
勇気を
出して
...
...まあ子
涼子
どうして
ここが?
羽生さん
どう
した?
誰か
いるのか?
...
...
あんた
たちか
入って
いただく
しか
ないだろ
...
...
入って
くれ
山でも
行こうと
してたのか
そうだ
このまま
おれだけ先に
出発して
もう
ここには
戻らない
つもりでいた
...
こんなことに
なりそう
だったんでな
どこへ?
...
チョモランマ
エヴェレスト
か?
単独で
...?
無酸素か
......?
そうだ
どこを?
まさか
南西壁
エヴェレスト
南西壁冬期無酸素
単独登頂
おれが
狙っているのは
それだ
まさか
...
本気なのか
...!?
羽生のその言葉は深町の会身を
ーいや魂を激しく打った
身体が小刻みに震えるのがわかった。
【途方もない夢
これだけ登山が技術的にも装備的にも高度に
発達しながらまだ誰も挑戦したことがない登場
それをこの羽生は狙っているのだ!
それがどれだけ困難な登録であるか
もはや神話が伝説のように
なってしまったかに見えた男が
に居た
羽生丈二は――羽生王二と
して現役だった
;:::エヴェレスト
南西壁冬期★
無酸素単独登頂
深町はその言葉を
もう一度胸中で転がした
この10年近い間
このネバールの地で羽生は
たった独りでこの前人未到の
夢を狙いつづけていたのだ
羽生さん
......!?
どうして
あなたは今朝
黙って帰って
しまったの
ですか
おれの
婆と...
え..
...
おれの子だ
すまなかった
きみには早く
言うべきだった
...
アン・ツェリン
の娘だ
名は
ドゥマ
...
ふたりとも
おれの子だ
......?
すまなかった
ネハールに
やってきたのは
初めから
エヴェレストの
冬期無酸素
単独を狙う
ためだった
その計画を
アン・ツェリンに
打ちあけた
結局
居候のような
がたちで住み込む
ようになった
アン・ツェリンの家は
クンブ地方の
パンボチェにある
シェルパの村だ
エヴェレストに
入る外国隊に
...
ここに
シェルパとして
参加するように
なった
おれの求める
暮らしがあった
...
それから...
いろいろな隊で
エヴェレストに
入り
8000メートル
を超える高度まで
何度も上がった
自然な
なりゆきだったん
じゃよ
涼子さん
そういう
落らし
だったんだな
深町さん
我々は
席をはず
そうか
は...はい
部屋には羽生と涼子
だけが残った
310分ほどして涼子が外に出てきた。
ありがとう
ございました
行きま
しょう
ふたりとも無言で歩いた
生き方だ
羽生が選んだ
おそらく羽生は
自分の選択を
貫くだろう
ひはや
他人が目を挟める間題ではない
前の晩・岸涼子の手を握ってすごしたという
それが羽生なりの移持なのであろう
ホテルへ向かう車中でも無言だった
うう
う...
ぐ
深町はかけてやる
言葉がなかった
そのかわり涼子を
抱きしめてやりたかった
それが自分の正直な
欲望だったー
しかしそれができなかった
深町は奥歯を膣んでこみあげて
くるなにものかに耐えていた
第26話
シェルパの里
エヴェレスト街道」
「標高2860メートル
11月11日―午前7時30分分
ハア
パグディンを出発して30分
ハア
ようやくリズムが足に戻ってきた
カトマンドゥを
発ったのが
昨日ーー11月10日
ふぅ
ふぅ
飛行機でルクラへ
飛んだ
そこでボーター1名と
ヤクー頭を雇った
そしてその日のうちに
パグディンまで歩き
テントで1泊した
ヤクとボーターは30分ほど
先行していた
ゆっくり
そう思っているのに自然に
歩くリズムが速くなってくる
深町の内部にある
熱のようなものが
足を運めているらしい
ハッ
熱というより
ハッ
それはたぶん
思いだ
得体の知れない
強い思い
その思いが深町を
突き動かしている
パタンで羽生に
会ったあの日ー
深町の気力が
萎えた
羽生にすでに妻と呼ぶ
女がいて子供までいる
ことがわかった時
気持ちの中で張りつめて
いたものが消失した
涼子はホテルに戻って
からもほとんど羽生の
ことは話題にしなかった
みやげもの屋を
漁りながらったわいの
ない話をした
夜の食事の時には
ふたりともほとんど
しゃべらなかった
何が自分を無口に
させているのかー
自分の中で何が嫌って
いるのか、深町には
わかっていた
わかっていたが、あえて
気づかないふりをしていた
ぼくも
涼子さんと
一緒に
日本へ帰ろう
かと考えて
いるんです
え?
いいん
ですか?
はあ
帰って
しまって
いいんですか
私の用件は
終わりました
でも深町さんの
用件はまだ
終わってないんじゃ
ありませんか?
帰って
しまって
いいんですか?
後悔しま
せんか?
...
ああ...また
自分は逃げよう
としていた
楽な方へー
自分はいったい
何しにここへ来たのか?
もしここで帰ってしまったら
もう自分には何もない
自分は何ものでも
なくなってしまう
すみません
やはり
わたしは
残ることに
します
よかった
そう
ですか
羽生さん
に
もう一度
会うことに
なるん
でしょう
ええ
たぶん
そうなると
思います
じゃあ
頼まれて
もらえる
かしら
これを
...
はあ
何を
ですか...
羽生さんに
返しておいて
下さい
これは
きっと
大切なものだわ...
アン・ツェリンが
このトルコ石を
見た時のこと
忘れられないの
......?
もしか
すると
これは
アン・ツェリンの
身内のひとが
つけていたものかも
しれないわ
それで
これは
お返しした
方がいいと
思ったの
ほんとに
いいん
ですか?
ええ
わかりました
約束します
羽生に
涼子さんの
気持ちを伝えて
おきます
深町さん
そして岸涼子は
日本へ帰っていった
東京で
待っています
......
羽生丈二に
会ったよ
深町は涼子を見送って
すぐに。岳遊社”の
宮川に電話を入れた
これまでの事情を説明
して送金の依頼をした
いくらだ?
どこまでゆけるか
わからないが
...
150万
羽生に
できるだけ
喰い下がる
つもりだ
成功報酬
でいい
失敗だったら
俺持ちで
いい
とりあえず
借用書を
書くよ
トレッキングの
パーミッションで
入る
あとは
なりゆきだ
しかし...
どうやって
エヴェレストに
入山するんだ
わかった
とにかく
金は送る
好きなように
使ってくれ
その金で登山用具を買い揃えた
ーシュラフ・下着・テント・アイゼン・
ザイル・高所服
さらにコッフェルから靴下・
ヘッドランブ・食料・非常食に至るまで
ハッ
酸素ボンベも
2本用意した
ハッ
それだけの準備をして
カトマンドゥを出発
したのであるーー
ただひとりの出発であった
そして今ー
ただひとり歩いている
ハッ
すでに羽生から
半月余りも出遅れて
しまっている
羽生はもうベースキャンブへゆき、そこから
出発してしまっているのではないか
ハッ
しかし冬期の登頂と
いうことであったなら、
その登山行為は12月以降に
行わなければならないという
暗黙のルールがある
基準となるのはベースキャンプ
ー標高約5300メートル
12月前にそこより上に行ったなら
冬期登頂とは認められない
では――羽生丈二は今
どこで何をしているのか
...
ハッ
あ
その時
見覚えのある白い岩峰が見えた
山の斜面の遥か遠く
ナムチェバザール!
標高3440メートル
戸数およそ
百戸余り
シェルパ族の故郷
といわれている
エヴェレストを目指す登山家や
トレッカーが増えクンフ地方の
経済的中心地となった
ナムチェバサールへ
ついてから4日―
は
ふぅ〜〜
深町は村にある空いている
畑を借りてテントを張った
ハッ
深町は高所に完全に
肉体を順応させるため
精力的に動いた
息は切れるが
ハッ
順応はまずまずと
いってよかった
ハッ
着いた日から近くの山に
登ってまた下ってくる
ということを繰り返している
ハッ
さらに、その合い間に
アン・ツェリンと
ビカール・サンがどこに
いるのか訊いて歩いた
...
ピカール・サン
なる
さあ
知らねえ
なあ
そんな男
このナムチェで
見たこと
ねえぞ
ここに住んで
いたと聞いて
いるんだがね
さあ...
おら
知らね
わからねえな
聞いたことも
ねえ
名前だべ
アン・ツェリン
...?
ここにゃ
いわえよ
もう8年ほど
前だったか?
どっかへ行っち
まっただ
しかし―これまで
誰に訊いてもあいまいな
返事しか返ってこなかった
女房が
亡くなって
しもうてな
どこに
行ったのか?
なんとなく妙であった
この村の家さ
売って出て
行っちまっただよ
さあ
そんなこた
おら知らね
狭い村だナムチェの人間の
ほとんどが互いの柔らしぶりを
よく知っているはずであった
アン・ツェリンほどの人物の
行方がこの村に伝わって
こないのはおかしい...
村人が誰も知らないと
いうことが、かえって
奇妙であった
もしかしたら誰かが
日止めしているのではないか...
シ・ツェリン本人が
それとも羽生丈夫か...
結局―深町はダウザンプーを
訪ねることにした
ナマステ
わたしは
フカマチと
いいます
こちらは
ダワ・サンプー氏の
お宅ですか?
ナマステ
そうだよ
なにか
ご用です
かね?
ダワ・ザンプー氏に
お会いしたい
のですが
あんたは
日本人
かね?
そうです
ハハハ
これは
これは
...???...
日本の方が
わぎわざわたしの
ようなものの
ところを訪ねて
こられるとは
驚き
ましたね
あカナカ!
ダワ・ザンブーはかつてのアン・ツェリンと
並ぶ伝説のシェルバの生き残りである
そうです
わたしが
ダワ・ザンブー
です
エヴェレストの頂上に立つこと三度
他にもヒマラヤの8000メートルを
4座の頂に立っている
実は
アン・ツェリン氏
のことをお訊き
したくて...
今どこに
住んでいるのか
御存知ならば
話していただきたいと
思って来ました
ほう
あなた
でしたか
フラフラスラステストを
最近
アン・ツェリンの
ことを調べ回って
いるという日本人が
いるという噂を耳に
しましたか...
ええ
たぶん
わたしのことだと
思います
何故
アン・ツェリンを
理由に
よっては
教えていただけ
るんでしょうか
.....
というと?
これまで
あちこちで
訊ねて
みました
でも誰も
教えてくれません
もしかしたら
皆でそれを隠している
のではないかと...
...
その
ターコイスは?
...あ
これは
羽生..
なにか?
いや...
ビカール・サンに
返そうと思って
持ってきた物です
...
ビカール・
サン...
なるほど..
どういう経過で
あなたがそれを
お持ちなのか
わかりませんが
...
それは
アン・ツェリンの
妻がしていた
ものです
フフフェルの
凍傷
ですよ
この
左手の指は
1972年の
ダウラギリの時に
無くしました
特に昔の
シェルパほど
まともな指を
持ちあわせている
者は少ないのです
両手両足
あわせて
まともな指は
B本しか
ありません
なにしろ
以前は今ほど
よい装備が
ありません
でしたからね
でも
この指に
わたしは
誇りを感じて
います
どうですか?
はあ
...?
ごらん
なさい
ここは
たいへん
貧しい村です
一見賑やかに
見えますが
貧しい...
この村だけじゃ
ありません
ネパール全体が
貧しいのです
...???...
もっとも
...
このナムチェは
他の村よりは
いくらかましなの
でしょうがね
それにしても
見かけほどでは
ありません
あなたは
この国で暮らす
ことができ
ますか?
......
あなたは
この国の女と
結婚して
子をつくり
この国に
住むことが
できますか?
もしかしてそれは
ビカール・サンの
ことを言って
いるのですか?
でき
ますか?
......!!
できません
ほう
好きな女が
できても?
はい
おそらく
.....
わたしは
そういう女性が
できたら一緒に
日本へ連れてゆく
ことを考える
でしょう
その女性が
いやだと言ったら
どうします?
...
わかりません
......
でも
たぶん
まだわたしは
そういうことに
直面していない
ので...なんとも
わたしには
できない
でしょう
アハハハ
正直な方
ですね
では
わたしも
正直にあなたに
答えましょう
わたしは
アン・ツェリン
とは友人です
一生と
なると...
それから
ピカール・サン
という日本人も
知っています
といっても
この問題については
とてもひと口では
言えないものが
あるのです
それは
エヴェ
レスト
南西壁の
冬期無酸素
単独登頂の
ことですか?
ビカール・サン
本人から
聞きました
なるほど
.....
でもそれだけの
ことではない
のです
ほう
ご存知
でしたか
もし
よろしければ
あなたがあのふたりを
捜している理由を
教えてくれませんか?
わかり
ました
長く
なりますが
がまいませんか?
もちろん
かまい
ませんよ
わたしにはたっぷり
時間があります
よかったら家の中で
お話を聴かせて
もらえますが
ナマステ
ナマステ
今は
家内と
ふたり暮らし
なの
です
息子がふたり
おりますか
家内
です
カトマンドゥ
で働いて
います
そうかそうだ
それでは
聴かせて
いただけ
まずかな
その
ターコイスの
ことも聴かせて
いただけると
ありがたいのですが、
わかり
ました
はい
深町はゆっくりと順を
追って語ったー
ナラダール・ラゼンドラや
マニ・クマールのこと
日本で羽生について
調べたことも
グランドジョラスの羽生の
ことや長谷常雄のこと
再びネパールに
やってきた経緯や
岸涼子のことについても
岸涼子がターコイスを深町に
託して日本へひとりで帰って
いったことも!
自分と加代子のことについて以外
全てのことをダワ・サンプーに語った
これが今
私がお話し
できることの
全てです
ズズー
ピカール・サンの
写真を振り
たいと
そういう
ことですか?
ええ
ですが
...
それだけでは
ありません
ビカール・サン
なるほど
羽生丈二と
いう男
そのものに
興味があるのです
たとえ写真が
撮れなくてもあの男が
たった独りでどう登るか
それを見てみたいのです
そして
マロリーのカメラを
彼が発見した経緯に
ついても知りたいと
思っています
しかし
彼は
それを
いやがる
がもしれま
せん...
それでも?
ええ
たぶんうん
とは言わない
でしょう
でもわたしは
彼の邪魔を
するつもりは
ありません
彼を
助けようとも
助けられようとも
思っていません
ただ自分の
体力と技術の
許すかぎり
羽生に喰いついて
ゆきあの男の
やることを
この眼で見届け
たいのです
ズズー
......
これは
...
自分のため
なのです..
...自分の
ための..
わたしの
勝手な思い
なのです
わかり
ました
あなたはすでに
色々なことを
知っておいでだ
...
どちらに
しても
あなたが
ベースキャンプへ
ゆけば
ビカール・サンと
会うことに
なるでしょう
...
はい
もちろん
でも
何故?
しかしこれから
お話しすること
特に冬期の
サガルマータ登頂
については他言せぬ
ようお願いします
あのふたりが
これからやろうと
していることは
このネバールの法に
触れることなのです
おまえさまのお兄ちゃん
何年前の
ことでしたか
...
あれは
...たしか
男の深い...
ダワ・ザンプーは静かに
ビカール・サンとの
出会いを話しはじめた
1986年9月半ば
アン・ツェリンがひとりの
日本人を連れてダワ・ザンプー
の家へやってきた
羽生丈二と
いいます
.....ハブ
おお...
あの
あの
命の恩人
かね
その前年の12月18日本の登山隊が
モヴェレストに入りアン・ツェリンは
シェルハ頭として参加している
そうです
羽生が問題の事件を
起こしたあの遠征だ
この時、登録中にアン・ツェリンが
事故を起こし、羽生に助けられた
彼を自分の
家に置く
ことにした
ほう
そのことはアン・ツェリンから
聞かされダワ・ザンプーも知っていた
...
表向きは
自分の身内の
シェルパと
いうことで
登山隊の仕事を
やらせたいのだが
......
故あって
この男の本名は
隠したい
だから
日本の登山隊に
つく仕事は
できないか
他の国の登山隊で
あればシェルバと
いうことで
仕事ができる
できれば
エヴェレストに入る
登山隊の
シェルパとして
入れさせたい
どうだ
ろうか
...
ダウ・ザンブーとアン・ツェリンは
この地方のシェルバにとって
高くそびえるふたつの巨峰である
ダウ・ザンブーは現役を退いては
いるが、シェルバ族内部での
人望も厚く影響力は強い
問題は
.....
ダウ・ザンブーとアン・ツェリンが
その気になればこの話は、
充分に可能であった
...???..
日本人である
ことを隠すと
いうことにある
何故素性を
隠してこのクンプで
シェルパの仕事を
したがるのか?
トラブルが
あるとすれば
チェック・ポスト
だけだろうな
しかし
何故...
その理由を
聴かせて
くれ
...
冬期の
エヴェレスト
南西壁に単独
無酸素で登り
たいのです
...
そのために
エヴェレストと
いう山に慣れて
おきたいのです
その隅々まで
知っておきたい
のです
シェルバという
ことでなら
各国の
登山隊について
何度もエヴェレストに
入ることができます
なんと
無謀な
冬期エヴェレスト単独無酸楽
それを理解した時ダワ・ザンブーは
しばらく声が出なかった
しかしその途方もない言葉には
その意味を知るものの魂を掻きぶり、
あげるようなものがあった
しかし―それは人類という種が
おごらく小娘でできるマリマリの行為である
それをなし遂げるには
その行為予が神に変されねばならない
それは神の顔はにへってゆくことであり、
神の意志に目らを変ねることになる
この日本人は
神に愛されるのか?
何故
それを
秘密に?
...うまく
言えませんが
...煩わ
しいから
です
それが...
...他の人間に
先を越されたく
ない
自分は
...
それをやる
最初の人間に
なりたいのです
わたしの
本心です
...!???
結局ダワ・ザンブーは
羽生という日本人の
面倒をアン・ツェリンが
みるということを認めた
チェック・ポストの関係者には
内々で話をつけ薬金を渡して
羽生をひきあわせた
羽生が日本人であるということを
知っているのはチェックイボストの
人間とシェルパたちである
わたしには
よくわかり
ましたよ
この日本人は
たったひとつの
ために
全てを捨てて
ここにやってきた
のだという
ことがね
彼は1987年
カトマンドゥで
南西壁無酸素
単独の登山申請を
しました
何故
ですか?
しかし
その登山は
許可されま
せんでした
...
あまりにも
危険だという
理由だからです
事故が起こったら
それは国と国との
問題でも
あるのです
結局
もし日本の山岳会を
巻き込めば
ビカール・サンは
それを
やめたのです
羽生のもくろみは
潰されることに
なるでしょう
まさか
あきらめ
たと?
ビカール・サンは
予定通りに
決行しま
したよ
内緒でね
それは
.....
そうです
無許可で
ということ
ですか?
1989年
12月でしたわ
アン・ツェリンと
だったふたりで
出発して
ペースキャンプから
上はビカール・サン
ただひとりで
登りました
それは...
成功しなかっ
たんですね?
ええ
失敗
しました
その年の
アイスフォールは
特に不安定
でしたからね
ハッ
ハッ
そこで時間と
体力を使いすぎて
しまったのです
その体力の
消耗度が
あとで大きく
影響する
ことになる
そして...
この時は
運もなかった
入山して
4日目...
ようやく
8000メートル
地点にたどり
ついネのナカ
天候が急変し
足止めを喰う
ことになった
そこで
2日間の
ビヴァーク
です
3日目も..
天候が回復
しないため
やむなく
下山を
決断する
その時すでに
体力は限界に
きていたのです
ぎりぎりの
体力と精神力
だけで...下山
ハフ
ハフ
ハフ
ハフ
ペースキャンプに
たどりつくなり
倒れ込んだ
ビカール・サンを
アン・
ツェリンと
ビカール・サン
!!
様子を見に
やってきた娘の
ドゥマと交替で
担ぎ下におろし
たのです
第27話
恩母の首飾り
暗みしめながら登っているー
ハ...
歯を噛みしめながら
登ってゆく
ハッ
ハッ
歯の間に噛んでいるのは
意志である
濃い意志を噛みじめ
ながら登っている
ハア
ハァ
今朝
ナムチェベザールを
発った
体調はいい
はふぅ
~~っ
今日の目的地は
僧院のあるタジボチェだ
高度順応は順調に
進んでいる
ハア
ハア
空気が希薄になっているのは
実感できるが、それが苦にならない
ハア
ハッ
ハッ
正面に標高685Bメートルの
アマダブラムが見える
あの山の麓をすりぬけ
エヴェレストの結界の中
入ってゆくことになる
"人は何故山に登るの
だろうかねえ...
ふいにひとつの言葉が
深町の脳裏に蘇った
ダワ・ザンブーがぽつりと
つぶやいた言葉だった
南西壁
から敗退した
翌年...
もう一度
計画を練り
なおしてな
1992年の
夏
チベット側から
エヴェレストに入り
無酸素で頂上を
踏んでいます
でもこの時は
単独ではなく
アン・ツェリンも
途中まで同行
している
そのおりの
エヴェレスト行
というのは
エヴェレストの
高度において
無酸素で
行動した時
その時に
ビカール・サンは
例のカメラを手に
入れたのです
カメラ
...
マロリーの
ですか!?
自分の精神や
肉体がどうなるか
ということを確認
するためのもの
だった
ええ
8100メートル
あたりにあったと
聞いている
そこで白人の
屍体を見つけたとも
言っていましたよ
フィルムは
どうしたん
ですか?
それは
どこに?
さあ
とにかく
そこまでは
わたしには
わかりません
カメラのことは
秘密にしておか
なければならなく
なったのです
カメラのことを
報告すれば
羽生の名が
出ることになり
無許可で
チベットに入国し
エヴェレストに
登ったことが
知られてしまう
そうなれば
当然彼の
本来の目的である
南西壁をあきらめ
わはならなくなる
ええ
今アン・ツェリンは
デボチェに
住んでいます
タンボチェから
20分ほど下った
ところにある
シェルバの
村です
それでは
あの時
盗まれた
カメラは
羽生が持って
いるのですね
アン・ツェリン
の家にある
はずですよ
...
デボチェに
もしかすると
あのカメラは
ドゥマが持って
カトマンドゥに
下りているかもしれない
ドゥマ
ピカール・サンと
結婚をしている
のですか?
いや
わたしの知る
かぎりではして
いないようです
夫婦
同然には
暮らしています
がね
どうして二人は
そのような
関係になった
のですか
エヴェレストで
失敗した時
ですよ
ズズー
ドゥマがずっと
ビカール・サンに
付き添って面倒を
看ていましたからね
どうぞ
食べま
せんか
はあ
...
いただき
ます
自然にそういう
関係になった
のでしょう
この冬
いよいよやる
つもりですよ
そのため
チベット
なんの
ために?
高度順応
ですよ
なく
え...
ピカール・サンは
この秋にチベット
まで行ってたんです
チョ・オユーに
ひとり無酸素で
行ってたんです
チョ・オユーに
......
標高8201メートル
チョ:オユー無酸素単独ー
それだけでも超人的な登山である
ことにかわりはない
その頂きに高度順応のため
だけに立ってきたというのか
なんということか
...
何故でしょう
ズズー
人は
何故山に
登るのだろう
かねえ
......
ハッ
ハッ
ハッ
ハッ
11月16日――タンポチェ
標高3867メートル
旦那
深町は先行していた
ポーターから
荷を受け取り
テントを張る
ゴンパの
偉い坊さんが
亡くなった
らしいですね
ほう
ナムチェバサールで食糧を買い込み
街が増えヤクが2頭になっていた
あちこちから
大勢参拝に
来たみたい
ですよ
参拝?
へえ
日本人でも
いいのかい
拝んでも?
そりゃ
もちろん
ええ
尊いラーマが
死ぬと皆が
持みに来るん
ですよ
できますよ
深町はゴンパへ向かった
今年の春にもこのタンボチェに宿泊
しているその時隊員たちと僧院へ行き
老いた僧侶から厄を払ってもらっている
ナマステ
ナマステ
...
ナマステ
ナマステ
ナマステ
ドゥマ
やはり
ドゥマさん
ですね
どうして
黙ってゆこうと
したんですか
......
わたし
あなたたちと
関わり
持ちたく
ありません
フフフェラ!
あなた、日本から
女の人呼んだ
あなたたち
わたしたちの
生活に割り込んで
きましたです
...
あ...
これですか
?
フフラックス
ビカール・サンから
もらったもの
ですが
これはきっと
大事なもの
だろうから彼に
返しておいて
ほしいと
これは...
バタンで会った
あの女性から
預かったものです
...
母の形見
です
母?
わたしの
母です
母が死んだ時
それ父が
彼にあげた
ものです
...
彼
もらったそれ
日本にいる
知り合いに
送っていいか
父に尋ねました
...まだ
あの人とわたし
...こうなる前
女か...
そうです
好きな
女か
ええ
...
送ってやれ
...そう
でしたか
わたし
あの女の人
ネパールに来た
わたしとても
不安になる
彼とその女目本に
戻ってしまうので
ないか思いました
彼女は
日本へ帰り
ました
こわかった
です
...
でも...
わかりません
これからの
こと...
あの人
ここ残ったの
山登るためなこと
わたし知ってます
日本語は
...どカール...
サンに?
わたし
いるからでない
...マック
ええ
あの人ずっと
長くいましたから
あの人の国のこと
もっと知りたかった
思いましたから
あなたは
パタンにいると
ばかり思って
ました
ハフさん
大事な時
一緒にいるつもりで
来ました
...やはり
サガルマータを!?
...
ビカール・サン
...羽生に
会いたいの
ですが
いま
家に
いません
どこに
いるんですか?
...
ポカルデ・
ピークへ?
...
ポカルテ
...
そうです
高度順応の
ためです
あの...
わたしの方
から訊いて
いいですか?
あの人
ハプさん
日本では
どういう人
だったんですか
...
どう
ですか
はぁ
何ですか
どうと
いわれても
...
いいん
ですか?
ええ
これから
わたしの家
寄りますか?
ジャガイモと
バターなら
充分あります
食べながら
あの人の日本
のこと
話して
くれますか?
もちろん
タンポチェの僧院から
25分ほど下ったところに
その村はあった
モオ~
どうぞ
ここかー
ここで暮らしていたのか
羽生丈二は
なつかしいような
ようやくたどりついた
安堵感のような
不思議な気持ちが
深町の胸に満ちた
神々の山嶺一第3巻く
もうひとつの山を
目の前からふいに木立の中へ掻き消えたカモシカ。やはり、あれは幻覚ではなかった。
雪面に踏み跡が残っている。並みのものよりふたまわりも大きい。その足跡はシラピソの
瀬木の茂みの奥へ消えていた。
しばらくじっと待ったが、何も起こらない。なにも聞こえない。部長だけがはっきりと
感じとれた。ーーもういちど、あの威厳に満ちたカモンカの姿を見てみたいと思った。
迷わずカモシカの足跡を追う。だが焦ることはない。時間はまだ、たっぷりある。踏み
跡はまばらに生えた低い木立の斜面を山頂へ向かう段丘につづいていた。
ゆっくりと歩く
して峰々の頂へ光輝を放つ。
微風の流れと直角の方向に進む。陽は少しかけ間に傾きはじめている。東の先に気分が
てきた。来年だ。冬の空にどこからともなくあらわれるるるれ気だ。どうやら、夕食だよ
でには風が強まってきそうだ。
雪が深くなってきた。雪が茂みの枝に積もって遠くがよく『見通せなくなる。踏み跡に沿って
って注意味くなる。粉雪のおかげで足音がたたない。
カモシカは不思議な話をもつている。熊も大も人も通えぬ断座を平気で駆けなる事ので、
きる蹄だ。ーーそれは岩に吸い付くものだと言われている。動物たちは山から生きる種を
得ることで、山の体をその体内に取り込んでいるのだ。
谷ロジロー
マヌシ、はこの山に住まう守り神とされていた。山陰に慎ましく立ち、あらゆる日を通
アイツよ、ひとりの山は寂しい...
急に風が止んだ。まるで森がすべての物音を吸収してしまったようにーー耳をよくそば
だてても何も聞こえない。この時、あたりにはほぼ2%感など音状態が訪れた。あまりの部
けさにふいに孤独感に襲われる。カモシカの踏み跡を見つめじっと任む。木立の幹の間か
ら青空がちらつき、雪面の陽をたまりがゆらゆらと揺れる。
たったひとりの山ーテツの死が思い出された。山へ入る時、いつもつれて歩いた犬だ。
四肢のすべての爪が黒く、食犬とされていた。館狩りには欠かせない勇敢な猟犬だった。
テツが死の痛みから解放された時から、おれの痛みがはもまったのだ。それは深い後悔の
念から生じた痛みだった。テツを死なせたのは何だったのかー。溜め込んだ感情がある
れ、体が震えた。テツを死なせたのは他でもない、このお札目身なのだ。
「ヌシ〟を見たものはその事にもうひとつの〝山〟を見る
「ビジネスティンプロ対策セージ」など、
H44年113号まで好評連載されたものを
収録しました。
BLSINESSJUMP愛蔵版
神々の山嶺3
2002年5月21日第1期発行
著者
夢枕獏
@packilyumanakurayo!!
谷口ジロー
>jicofanguchi..2002
編集
株式会社ホーム社
電話・東京は521-265
8050年東京都手代田区一ソ標2-5-10
発行人
山路則隆
発行所
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電話東京033230-6191(現在)
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【2013:323】6076(制作)
Printedinged.japan
大田刷所大日本印刷株式会社
印刷所
大日本田駅株式会社
道本には十分注意しております
これからは、最大には「少生意しておりますが、本のページ調子で間違いや放送されます。
それによってはいつかも楽しかったでしょうか。それでもいいですが、私の人にも同じようになってしまいましたが、それが一番気になりませんでした。
それでも、
あの子が思いないので、今回は自民の仕事を目指しつけているのです。一体何でも確認でも重ねてくれましょうかもしれんかはないと思いました。
これからは、
そのため、これからの
人したものについではお取り替え出来ました。
酒と
ISBNムーO&ー782685-6.cmg7c
・場を科書ってほしい