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Instructions:
累
......
...matsudra
松浦だるま
EVENINGWE
田洋
......
9
松浦だるま
はっ...っmatiutca
第72話「終焉
第73話...
...で、
第75話「夜の、雨の中より@
第76話、夜の頭の中よりの
第77話、彼の頭の中より。
第78話「夜の、雨の中よりは
2019年6月19
199
129
第79話「夜の頭の中より@
第80話「夜の、駅の中より@
169
いよいよ
最終公演直前の
最後の
“交換”...
そしてそれが
咲朱を地獄へ堕とすための
終臨
第72話
最後の関門
困ったわね
こんな日に限って
電気が点かないなんて
ええ
本当ね...
せめて手早く
済ませましょう
携帯で足元を
照らすわ
ありがとう
まるで
暗転の中みたいよ
あらかじめ
蛍光灯を
抜いておいた
最後の。交換への最中
いつもは
床に貼られた
蓄光テープを頼りに
立ち位置へ向かうの
そうなの...
互いの顔が
見えないようにするため
通常
倉庫で交換
するときは
もう一度
キスし直す
ことで
一度目の
キスで一旦
顔を戻し
顔が再び
交換され
効果が
12時間更新
される
しかし今
一度目のキスで
戻るはずの顔が
戻らないことを
咲朱の唇に塗られているのは
私のすりかえた偽の口紅
気付かれぬよう
闇へと誘い込んだのだ
これであとはもう
咲朱出てきて大丈夫よ。
誰もいないわ
開演を待つのみ...:
......
じゃあ
私は
先に..
ど...
どうしたの?
咲朱...
......
初めて
こんなに
緊張してる
怖いの...
ええ
それだけ
今日の上演は
あなたにとって
重要なのね
あのね野菊
「ガラスの動物園」の
ときから
カーテンコールの客席に
あなたを
探すようになっていた
野菊が
見てくれて
いる”...
だから今日も
そう
思うだけで
心強いの
...
最後までしっかり見ていて...
瞬
もちろんよ
約束したでしょう
共に歩むと
もし
生まれかたや
出会いかたを
間違えず
普通の
姉妹として
支え合って
生きられたらと
ありがとう
違う運命を
思ってしまった
在り得なかったことなど
考えても無駄なのに
なんだ?
顔色が悪いな
大丈夫か?
え...ええ
......
羽生田さん
鷺沼さんの件が
あってから
そうかね?
随分
私に気をつかうのね
......?
お前...
父親の話に対する
同情はあるかもな
子を
生ませておいて
踏みにじるような
男は
殺されて当然だ
そういう奴に
他にも覚えが
あってね
...まあいい
そろそろ開場だ
行くぞ
......
かさねの信頼
羽生田の同情
しかしそんなものは
私が都合の良い
協力者である限りの
まやかしだ
「でも」
「わたしだって
乳を飲ませたことがあります」
「乳房に吸いつく赤ん坊が
どんなにかわいいかは知っています」
「わたしはその
やわらかい歯茎から
乳首を引きもぎって」
「脳みそを
叩き出してみせる」
この凶々しさ、
さっきまで
私にすがって震えていた
手の持ち主とは思えない...
しかし
しかし
夫を支えた夫人の気性は
物語が進むにつれ
まるで牙を抜かれたかのように
心の病によって失われる
「消えてしまえ」:
「呪われた
しみ!!
「消えろというのに!
昨日まで以上の表現力で
夫人の見る血の幻覚を
観客にも体感させる:
こうか
この才能...!!
...
あまりに
素晴らしく..
残忍な
嘘を真実へと
ねじ曲げ...
他人の人生を
盗み取るための
凶悪な
カ:!!!
「明日」
「また明日」
「また明日と」:
「小刻みに
一日一日が
過ぎ去って行き」
「定められた時の」:
「最後の一行に
たどりつく」
「消えろ」
「消えろ」
「束の間の」
「ともし火!」...
マクベス夫人も
マクベスも
破滅へと引き寄せられ
同じように
あなたも
いよいよ
〝咲朱〟としての
生命を終えるための
カーテンコールへ...!
ですから、
口紅の効果が
切れるまで
あと数秒...
さあ
この観衆の
視線の中
すべての終わりが
5
5
ついに
1
3
2
........
予定の時間より
1分...
1分半...!
なぜ顔が戻らない!?
いや
今までも
少しぐらい時間が
ずれることはあった...
2分...
まさか..
いえ
そんなはずは
ない...だって
口紅は確かにすりかえた!!
大丈夫...きっと今...
...な.....
え...?
何...急に
眠くなって...
立っていられ...な...
まさ...
か...
この最終公演
すごいと
思わないか
あいつは見事に
演じ切った
きっと
胸の内は
野菊の裏切りによって
ずたずたに引き裂かれていたろうに、
第72話終わり
...っ.....
第73話
なぜ
ふぅっ
オラ!
何が起きた!?
ここは...?
よう
そう
怖がるなよ
別に命をとろうって
わけじゃなし
まあ...
混乱するのは
無理もないがね
何が起きたか
説明しろってツラだな
...仕方
ねえなあ
コト
最初から
順を追って説明するなら、
きっかけは
あの言葉
だった
かさねから
聞いたんだ
あいつを勇気づけようと
お前が使った文句
〝過去や罪は
消えなくとも。
。お前は歩いて
行けるはずだ。
私も共に
その地獄を歩んで
やろう
...だったか?
聞いたことがある
「かさねの母親から
なつかしい言葉だった
若い頃のおれにとっちゃ
苦々しくてね
忘れられずに
いたんだよ
まあ
おかげで
咲朱は
大復活だ
...しかし
普通
人を勇気づけるのに
殺すほど憎んだ
男の台詞を引用するかねえ
何より肝心なのは
さて
>過去や罪は消えなくとも。
という部分だ
お前も
海道は妻の過去や罪»を
知っていたから
この言葉を使ったが、
かさねの悩みの
解決にこの台詞が
有効だと考えた
...つまり
一丹沢ニナを死に
至らしめた〟という
あいつの罪を
お前は
知っていたという
ことになる
...だとすれば
おかしな話だ
おれだって
こればかりは
知られないよう
配慮してきた
つもりだ
なのに
何故
お前が罪を
知っている?
そう
考えて
閃いた
そもそも...
お前は
まるで
ニナの死を
待っていたかのように
うもり
気が変わった
今、一般社会へへの
これらが
何を意味する
のか..
すぐ確かめに
行ったよ
あまりに都合の良い
タイミングで現れた
すみませんね...
急にお邪魔させて
いただいて
いえ...
遠地療養のため
都市から離れて
別荘で暮らす
今日は
天気が良いからか...
丹沢ニナの母親の元へ
気持ちも幾分
楽なんです...
これが
電話でお話しした
物です
随分前ですが
お嬢さんが楽屋に
忘れていった私物
ですね
さすがに居所の手がかり
にはなりませんが...
いいんです
いいえ
ありがとうございます...!!!
.....
:それにしても
ここは
いいところですが
少しさびしくは
ありますね
テレビやラジオ
新聞などは
見当たらない
おそらく
ニナのことを連想しないよう
意図的に情報から
遠ざけられているのだろう
こんなときこそ
もっと
人と話された
ほうがいい
誰も?
旦那さんは?
...
誰も私の話なんか
聞いてくれません
から...
.....
いや...
しかし
誰もと
いうことは
ないでしょう
ひとり...
ぐらい...
.....
...そういえば
別荘に来る前
ひとりだけ
熱心に話を
聞いてくれる女の子が
いました
彼女も
何故か
連絡が
取れなく
なって
しまった
けど...
元気に
してるかしら
野菊ちゃん...
ニナの母親が
別荘に移ったのは
ニナが死んだあとだ
お前が彼女に
接触した時期と
ニナが死んだ時期...
それに
かさねに協力を
申し出たタイミング
この符合があらわす
事実は...おそらく
お前が
ニナを
...
おう
咲朱
ちょうど今
ぷはっ
妹なんですってね
...
野菊
あなたは...
ニナを殺したの?
...
...ニナが...
それを
望んだから...
そうだ
それでいい
い...嫌...
近寄らないで!
咲朱が完成するための
野菊の企みも憎しみもすべて
養分となったのだ
第73話終わり
第74話
まあ
落ちつけよ
顔に傷でもついたら、
損だろう
それにしても
だ...
最初から
腹の底に何か
抱えていそうだと
思ってはいたが
まさか己の父のみならず
丹沢ニナを殺してまで
姉に近付くとは
そんなやつが
ようやく巡り会えた姉を
殺さなかったのは
かさねが最も怖れて
いるものが死ではないと
考えたためだろう
でしょうね
この
醜い貌を
最高の
晴れ舞台で
大勢の
人間の眼に
さらす..
考えただけで
血の気が引くわ
つまりは
死よりも
つらい苦しみ
を
私に
味わって
ほしかった
のよね...?
...
そう
考えりゃ
おのずと
実行の
時期だって
見えてくる
確かお前は
言っていたしな
まるで。終わり”を
望むかのような
迂闊な言葉だ
罵沼の件で
おれたちの疑念を
取り払えたと
油断でもしたんだろう
。かさねの演技が
最高潮をむかえる
瞬間がたのしみだと
だが
あいにく
あの
アクシデントは
こちらにとっても
好都合だったよ
「野菊を
信用した」と
思い込んでもらう
ためにはね
要するに
お前がかさねを
罠にはめようとおこした
行動ひとつひとづが
逆にお前の足を
すくっていったと
いうことさ
っ
それでも
な...
お前の
姉さんは
健気にも
最終公演の
直前まで
お前を信じて
たんだぜ
...
私が
羽生田さんに
従って
したことは
ふたつだけ
上演期間中
倉庫で“交換〟を
するときに
それから
最終公演日のみ
いつものポーチの中身を
ダミーの口紅に
すりかえておくこと
口紅をボーチにしまうところを
あなたに見せておくこと
...それで
何もおこらな
ければ
きっと
あなたへの
疑いも
晴れるはず...
そう思い
ながら
最後の〝交換〟
を前に
ポーチの中の
口紅を
確かめたとき
私が用意した
口紅とはちがう
口紅を見て
ようやく
気付いた
私は...いえ
私だけが
何も知らない英題だった!!
今まで
可笑しかった
でしょう?
醜い女が
まんまと
罠にかかって
だまされて
いく様は...!
まさか
あなたの笑顔も
やさしい
言葉もすべて
どす黒い企みの
ために作られた
ものだったなんて
...倉庫での
最後の。交換〟のときは
部屋を
真っ暗にしてくれて
助かったわ
いくら私でも
あのときは屈辱のあまり
感情をおさえきれなく、
なりそうだった...
じゃあ
あのとき手が
震えていたのは
緊張なんかじゃ
なく...?
そして
ついさっき
ようやく
教えてやった
わけだ
お前が実の
異母妹で
あることと
その妹が
丹沢ニナを殺した
可能性について
.....
やっと
嘘いつわりなく
本音で
語り合えるわね
野菊
これからは
私たち
この
地下室の
中で
長台詞は
もう終わり?
...まるで
被害者のような
言い草だったわね!
いざなの犯した
罪の報いだと
いうのに!
すべては
あなたと...
......
...「いざな」?
本当に何も
知らないのね
もしかして
考えたことも
なかったかしら?
あなたの母親が
«淵透世〟になるため
利用され死んでいった
私の母のことなど...!!
...そうだったの
そういう標的が
いただろうことは
想像に難くないわ
お気の毒にね...
けど
それが何?
母もきっと
あなたの母親の顔が
無ければ...
人として生きることすら
かなわなかったのよ
そう考えれば
当然の犠牲だわ
あなたが恨むのも
無理はないけど
...当然ですって...?
けれどね野菊
あなたの
私の母に対する憎しみは
私やニナには何の
関係もないことだわ
何を言って
るのよ...!?
関係ある
でしょう!?
現にあなたは
いざなの口紅
を使って..
あなたの
母親を
不幸に
したのは
私じゃない
あなたは
憎む相手が
もうこの世に
いないから
やり場のない怒りを
私にぶつけている
だけよ
ごもっともだな
羽生田
さんも
人のこと
は言え
ないわ
とうに死んだ
人間への未練に
私を巻き込まないで
私が
口紅を使うのは
現在
私自身がこの世に
生きるためよ!!
...あ...
あなたは
これ以上は
話しても無駄ね
人間じゃ
ないわ...
帰るのか?
化けものよ!!
どうせあなたに
醜い者の苦しみは
わからない
ええ
ああ
それと
もうひとつ
もし野菊が
自ら顔をきずつけたり
最悪
自殺したとしても
またかわりの標的を
探せばいいだけだから
心配はいらないわ
口紅は無事
手中にあるし
私ももう
手段は選ばない
それでももし
死にたいと言うなら、
そのときは
好きにして
どうせ
無駄死ににしか
ならないでしょうけど
おい
待てよ
あなたは
随分と
うれしそうね
賭けに勝った
からかしら?
へへ...
まあそれも
あるがな
野菊が
裏切るか
裏切らないか...
ヤツ
私は後者に
賭けて
負けたけど
なんだ?
怒ってん
のか?
いいえ
あなたはすでに
裏付けをとってから
私にこの賭けを
持ちかけたのね
おれが勝てば
野菊は監禁
お前が
勝てば
“母親について
何でも話す。
だったな
ちょっと
離し...
...
勝ったのは
おれだが...
いいだろう
頃合いだから
教えてやる
いざなという
女について
第74話終わり
この雨の中よりの
...
!!シャッ
さっきお前は
「口紅を使うのは生きるためだ」と
言っていたな
いざなさんもそれは
同じだった:しかし、
あのひとは
生まれることすら
ゆるされていなかったんだ
生まれる...
ことすら...?
ああ
いざなさんの生まれた土地には
〝丙午の年に醜い子が生まれたら殺せ。
という
当時から考えても
時代錯誤な因習がまだ
息づいていてな
したがって
生まれてすぐ殺される
はずだったんだが
いざなさんを
取り上げた
助産婦が
それを
救い出したんだ
...
そのひとは外から嫁いできた人間でね
赤ん坊は死んでしまった。といつわり
...そんな
母の生いたちを
何故あなたは
知っているの?
いざなさんの命を守るため
村民から隠して育てあげた
信じられん
ような話だろう
同郷だからだ
助産婦...
いざなさんの
育ての親には
おれも世話に
なったことが
あってね
彼女がおれを
いざなさんに
出会わせ
教えてくれたんだ
しかし
隠して育てる
というのは
容易なことじゃない
育ての親以外の人間
とは会うこともできず
社会からまったく
隔離され
10代の多感なときを
あのひとは山奥の小屋に籠って
過ごさねばならなかった
人に
一醜いから生きてはならぬ
とされた事実を
何年も噛み締めながらな
しかし
そんな
あのひとの
運命を変えた
ものこそ
同じ村に住む
槻浪乃という
美少女の顔を奪った
いざなさんは
あの。日和の力だ
自らを
生まれてはならないとした
者たちを殺し
火を放って
村を出た
朱磐事件と
呼ばれ
一時は世間を
さわがせたが
当然犯人は
つかまっていない
殺された
そのは14人
...あなたは
家族を殺され
たのよね?
おれはその事件の
唯一人の生き残りだ
血はつながっていても
殺されて当然と言える
連中だったよ
そいつらから解放してくれて
どれだけ嬉しかったか
おれにとって
いざなさんは
道を切りひらいてくれた
恩人でもあるのさ
...
さて
あのひとは村を出るこことはできた...しかし
まだ生まれた。とは言いきれない
顔を奪った規浪乃は
殺してしまったからな
口紅の効果は
5日ともたなかっただろう
ここまでも壮絶な
道のりだったが...
お前にとってはこの先の話
のほうが重要かもしれんな
誰も知らない
醜い女が
いかにして
女優。淵透世〟に
成り得たか
こんなにも
美しい女で
溢れている...
だというのに
寄りつく者も
寄るべき者も無い私に
街。というところは
奪う機は来ない...
...
...
もう動けない...
・何者にも成れぬ限り
金も
家も得られぬまま:
そして醜い限り
さげすまれながら
死にゆくだけ
このままでは
せっかくあの
忌まわしい地を出られたのに...
のたれ死にだ...
「それは今まで見た
どんな生きものより美しく
蛾が輝きに惹かれるように
気づけば追っていたのだという
はぁっ
楽屋ロ
はぁ...
劇場の
...劇場...?
...アンチんセン
あ...あん大会!!
開業部屋ですが、
...
いらっしゃ...
ん?
なんだ...?
浮浪者か?
悪いけど自分だって
食えてないのに
人にやるものなんて何も...
ち違う!
...
え?
どうせガラガラだから...
一回だけだよ!
もう始まるから
入って!
ん..
これじゃ全然
足りないし..
なんか汚いし...
客?
でも
...いや
まー
いいか...
あ:ありがとう
「海の
おきへ、」
「遠く遠く出ていきますと、」
「水の色は、
いちばん美しいヤグルマックの
花びらのようにまっきおになり、」
「きれいにすきとおった
ガラスのように、」
●ロアンデルセンノ著、大崎亭九郎”駅、人気の返事を考えます。人の絵ーアンフラルセン最低集オープ『所収』より、一部を摂取のうえ、転職しております。
「すみきっています。」
「お姫さまは、
みんなで
六人いました。」
「なかでも
いちばん下のお姫さまが
いちばんきれいでした。」
それは
いざなさんと淵透世との
出会いであり、
そして
ドキドキ
キャ
舞台演劇との出会いであった
朱磐の神楽
以来だ...
ドキ
たかだか
虚構の世界
なのに
見ている間...私は
飢えも疲れも
忘れられた...
やってみー、
早く出てって
おくれよ!
す
すみませ...
ん...
他のお客さんはとっくに
はけたってのに...
え...!?
ちょっと
あんた!!
...う.....
ここは...?
確か私は
”人魚姫”を...
ああ
そうだ
あの
美しい女...!!
ひゃっ
あ:ごごめんなさい
急に起きたから...
びっくりしちゃって...
5話終わり
夜の雨の中よりも
第76話
人魚の...
へ?
うん
それよりも..
大丈夫?
起きたのかい
そんならすぐ
出てってもらいな
居つかれたら
困るからね!
武美さん...
そんなに
急かさなくても...
私ちゃんと
おうちまで送るわ
ばかだねあんた
どう見たってそりゃ
浮浪者でしょうが!
白糸が
あんたを
客席に
入れた
らしいけど
あの...
わかって
ます...
すぐに
出ていき
ますから...
二度と
寄りつく
んじゃ
ないよ
え?
...おうち
ないの?
あああ
かわい
そう...
.....
そうなんだ...
お金も
ちょっとしか持って
なかったって聞いたわ
あそうだ
もしかして
おなか空いてる?
おやつに買った
菓子パンがあるの...
ふざけた
女め...!
い...
いらない!!
そ...そう?
ごめん
なさい...
どうして
怒ってるの?
......
容姿だけでなく
言動や思考に至るまで
まったくちがう世界の
生きものだ..
醜く
何も持たぬ者の
気持ちなど
微塵もわからない
のだろう
そんな
美しい者には...
近付くことは
できても
やはり
関わる
こと
など...
しかし先程のパンを
受け取っていれば
或いはー
そんな屈辱的なこと...
浮浪者さん
あ...あの...
つけて
きたのか?
ごめん
なさい...
でも
こんな雪の日に
外で寝たら...
死んじゃう
わよう
放っておい...
......?
わ私の家に来て!
せめて...
今日だけでいいから
ねっ?
いざなさんいわく
私。淵透世へっていうの
......?
>これがその女の性質だった。
どうぞあがって
これは
すんださん
気が弱く
お人好しで
えっと...
お名前聞いてもいい?
愚鈍な女。
...いざな
穢い野良猫を
戯れにひろうような
ものなのだろう。
哀れみ
”与える
ことで。
...
〝自意識を
満たしているに
すぎない
『それも無自覚に»
ベッドのほう
使っていいのに
いや...いい
美しい上に
裕福で
...
育ちも
良さそうだ...
もし
こんな女と
成り変われたら...
ねえ
いざなさん
きれいだった
でしょう?
人魚姫...
...の
衣装!
王子やお魚のも
全部私がデザイン
したのよ
...?
...私ねえ
これだけが
とりえなの
演技なんて
ひとつも
できないし
衣装とか...
お洋服を
つくること
人前に出るのも
苦手だし
本当は役者なんて
やりたくないの:
でも
頼まれると
断れなくて...
だから
なのか...
これだけの
美しさを持ちながら
あ:ごめんなさい
こんな話
初対面なのに...
人知れず
小さな劇団に
埋もれているのは
つい...
......衣装..
どれも...
きれいだった...
ああ
このまま
淵透世との繋がりを保つべきだ!と
いざなさんは考えた
......
つけいる機を探り
再び美しい顔を手に入れるため
ほんと?
劇場隊界
...掃除婦
として
雇って欲しい?
その子を?
いいよ
君の仕事が
減るんだし
むしろ
喜びなさいよ!
そうです
よお
あんた!!
「砂礫」が使う
ときは私が
掃除するって
言ってるのに
遠慮なさるし...
あんたみたいな
トロいのに
まかせたくないのよ!
いいじゃん
透世ちゃんの
頼みなんだから
...
よ..
よろしく
お願いします
「こうしていざなさんは
......
淵透世の家に居候しながら、
劇場の掃除婦としてて働くことになった
闇より光を
眺めながら過ごす内
透世
待ち望んだ好機はやってきた。
っ
ん...
そろそろ
起きないと
今日は
本番なんだろう
いざなさん...
どうしよう..
38度...
でも行かなくちゃ...
すごい寒くて..
熱があるのか?
だから役者は
いやなのよう
行きたくない..
...透世
まだ少し
時間に余裕がある
ちゃんと私が
起こすから
もう少し
寝ていたらどうだ?
...本当?
ああ
ありがとう..
お願い...
...じゃあ...
すぅ...
かくして
彼女は
再び
この世に生まれることが
できたのだ
〝女優
淵透世〟として、
第76話よ終わり
いざなさんの足は
第77話
夏の雨の中で
惹かれるように劇場へと向かったそうだ
淵透世の顔を
奪ったからと言って
カン
カン
はぁっ
代わりを務める必要など
無いはずなのに
遅いじゃ
ないか!
あと15分しか
ないぞ
早く
楽屋へ!
着がえ
手伝うわ!
演出の
白糸大治郎
と
女優の
多磨智子...
はぁ
はぁ
透世?
なんか
顔色が悪いな
大丈夫か?
ごめんなさい
ちょっと風邪気味で::
でも
出られます!
急ぎますね
透世を知っている人間に
あまり近く接するのは危険だ:
彼女の中にあった
あらゆる不安は
それに普段
稽古を見ていたとはいえ
素人同然の私に
代役など出来るのか...?
光を見た瞬間
消え去った
消え去った
朱磐で
浪乃の美しさを得て
舞った神楽の
私に。生〟を感じさせた
あの高揚感
ああ...
そうだ...
だから私は
ここに帰ってきたんだ
丙午の
雷雨の夜や
晦日の
宵闇を抜けて
妬み
うらやみ
欲しがり
死の暗闇の
底から
「手燭で
往来の方を
てらした」
「そこには」
生まれてくるために
「町家の
内儀らしい女中が」
...「おあいは」
「白い顔をほんのりと
浮しながら佇んでいた」
「内儀の顔が
あまりに鮮やかで」
「小震いをした」...
...?
「美しく整いすぎているのに」
上演作は確か
室生犀星「蛾」の
朗読劇
...なんだ?
「ひやりと
心臓のあたりを
一と撫でせられたようで」
...
『「ちょいと」』
『「手燭をかして
戴けないで
しょうか」
演技のできない
透世の台詞だけは
『「大切なものを
取落し
ましたので」
朗読役が
読むように
していたという
しかし
そ...
「それはお困り
でしょうに」
「お品物は何で
ございます
かしら」
『「申しあげるような
ものでございませんの!!
『「たしか
この辺でしたが」
...あれが
透世ちゃん?
あの
視線の運び...
指先まで
気の配られた
台詞などなくとも
伝わってくるような
演技...
一体
何が起こった...?
すぅ...
すぅ...
......
劇場士
昨日の演技の
記憶が無いって!?
だ...だって私
昨日は...あの
すごい熱で
目が覚めなくて..
気付いたら
夜になっててー
確かに風邪気味
だとは言ってたな...
高熱が
起こした
奇跡って
こと?
意図的でなけりゃ
あんな演技できるはずがない
そこで
ものは試しだ
まぐれで
良い演技に
見えただけ
かもなあ
いや
次回は
台詞のある役を
演ってもらう
自覚がないだけで
才能はあるかもしれんぞ
台詞のある
役なんて私にできる
わけないじゃない...
大体
多磨ちゃんに誘われて
劇団に入ったときは
衣装作ってれば良いって
話だったのに~
どうしよう..
.....
...いざなさん?
私のせいだ
へ?何が?
言葉では
説明しづらい
じっと
している
...!??
何を...
さわぐな
落ちついて
聞いて欲しい
プあぁ
さわぐなと
言ってるだろう
だ...だって...
大丈夫だ
だって顔が...
時間が来れば
元に戻る!
ほ...
本当に!?
でも
怖いわ
こんな
こと...
透世
黙って
話を聞け
は...
この通り
私はくちづけで
はい..
自分と相手の顔を
交換することができる
つまり
昨日
私はお前に
くちづけし
熱で動けない
お前のかわりに
淵透世〟として
舞台に出た
う...ううん
だって...
上演中止にならないように
助けてくれたんでしょ?
...
それに
勝手なことをして
すまない...
だと
したら
すごいわ
いざな
さん
みんな
大絶賛だったのよ!
いざなさんきっと
才能があるんだわ!
い...いや
しかし
私が出たために
今後お前が
やりづらくなって
しまった
そこでだ
今後は
この“交換
の力で...
そうだわ!
これからは
舞台に出るときだけ
あなたに
淵透世になってもらうのは
どうかしら!?
へ?
私は衣装作りに
専念できるし
あなたは女優として
才能を発揮できるわ!
ねっ!!
あ...ああ
きまりね!
よかった~
......
第77話終わり
淵透世との
協力関係を得た
いざなさんは
その評判はじわじわと
広まっていった
透世の美しさと
自身の才能で観客を魅了し
の雨の中よりも
いざなさん扮する。淵透世”が
現れてから数年あまり
客足も増え
彼女は劇団の
看板女優として君臨
したが
一方で
それまで
主演を
務めた者は
助演へと
格下げになり
劇団を
率いる者もまた
人々の
賞賛が
自らの演出作自体に
向けられたものでは
ないことを
わかっていた
元々
元々
人気のなかった
小さな劇団の中で
彼らとの間に
ひずみを生んでいた
彼女のあまりある才能と
淵透世の美しさとが
...ちょうど
そんな頃だ
おれが
いざなさんと
再会したのは
どうやって
再会できたの?
...
どうもこうもない
それより
話を
戻すぞ
ほうぽう捜しまわった末に
見つけたのさ
いざなさんの
評判を
ついにある男が
嗅ぎ付けたんだ
話したがら
ない...?
前売券
お持ち
ですか?
ああ
!
どうか
したんすか?
お前
あの男を
知らんのか?
大手劇団
みさご座から
独立後
自ら企画した
舞台が人気を
博し
俊英の演出家
海道与...!!
演劇ファンのみ
ならず一般層からも
評価の高い
なぜそんな奴が
砂礫に...?
......
...
海道...
与...!!
透世ちゃん
海道の来た
目的はおそらく
君だ
噂によれば
海道は
あらゆる劇場に
足を運び
なんでも
新しいかたちの
演劇集団を作りたいとか...
透世を
引き抜きに
来たってこと?
有能な
役者や裏方を
集めているらしい
そこで...
お願いがあるんだ
透世ちゃん
おそ
らくな
今日...いや当分は
舞台に上がらないで欲しい
幸い以前
智子が主演をやったことの
ある作品の再演だ
代役はきく
君の演技を見たら
海道は必ず引き抜きを
持ちかける...しかし
大ちゃん
それは駄目よ
透世を見たくて来た
お客さんを裏切ることに
なるわ
君は砂礫にとって
なくてはならない存在だ...頼む
......?
智子...
そもそも
客に見て
ほしいのは
一人の女優
じゃない!
しかし
なあ
作品自体
を...
白糸さん
私は..
舞台に上がります
誰が何と
言おうと...!
...あ.....
ごごめんなさい
だって...
多磨ちゃんの
言う通りだと
思ったから...
そろそろ
開演だろ?
何やってんのさ
...仕方ない
じゃあいつも通り
面置に...
透世...
あんた...
本当に透世!なの?
間にあって
よかった..
ハハキャ...
...
間にあってないよ
あんた
学生のくせして
いつも昼間っから
よく来るねえ
学校
早退して
来てます
す...
すみません!
席...まだ
空いてますか!?
ああ...
「貴方が私のものになる
思召しなら」
テオフィル・ゴーチエル「クラリモンドエリー駅・米川崎之の
「私は貴方を
天国にいる神様より
仕合せにしてあげます」
「天使たちでさえ
貴方を嫉むでしょう」
おれは確信していた
朱磐の神楽と
炎の中を経て、
今
照明の下で
舞台こそが
この女の居るべき場所
この姿こそが
この女の在るべき
真実なのだと
「私は貴方を
愛しているの
ですから」
「私は貴方の神の手から
貴方を離してしまい
たいのですから」
...引き抜かれる
かもしれない?
.....
それって
砂礫を
離れるって
こと?
そうだが...
お前はもう減多に
劇場に来ないじゃないか
みんなと
繋がりが無くなるのは...
今とそう
変わらんだろう
いやなの!
それにね..
最近私迷ってるの...
で...でも...
もう
4年も
私たちは
みんなを
だまし続けてる
でしょ...
最初は
みんなが
喜ぶなら良いと
思ってたけど...
でも...
...そうだな
すまない
お前の気持ちも考えす
けど
私は..
お前の顔が
無いと演劇を
続けることが
できないんだ...
...本当にそう?
ねえいざなさん
馬鹿を言うな!!
前から思ってたの
あなたほどの人ならきっと
自分の姿で舞台に出ても上手く...
すべてを
持って生まれた
お前には
わからないんだ!!
ご...
ごめん
なさい..
ででも
だから
そんな
軽率なことが
口にできる!
“すべてを
持って。
だなんて
...
そんな...
そんなことない...
私あなたの気持ちだって
わかるわ..
だって私も
何も持ってなんか:
話にならないな
もういい
...
9時...!?
なんで目覚しが
こんな遅く...
透世...!?
...
そんなの
あいつ...
何のつもりだ?
まさか...
私みんなに
伝えるわ...
もう役者は
やめるって...
君
ごめん...いざなさん
淵...
透世さん
ですよね?
!!
会えてよかった..
私は海道与という者だ
少し..
話せないかな?
はい...
第78話終わり
第79話
夏の雨の中より5
もしかして...
何か気分を
害したかな?
い...いえ...
そんなことは...
だって
目をあわせても
くれないじゃないか
緊張
してる
だけです
...は
...
まあ..もし
警戒しているなら
無理もあるまい
舞台の上では
あんなに堂々として
いたのに?
私がこうして
劇団を巡る理由は
うわさで聞いている
のだろう?
そのうわさの通りさ
私は君を...
自分の舞台に
引き入れるためにここへ来た
言わば...
君とあの劇団とを
引き裂こうという
わけだな
君に限らず
はじめは皆
そうやって
警戒し
私の話を断ろうと
する
今居る劇団への
義理立てだとか
仲が良いとか...
君もさぞ
砂礫の劇団員に
大事にされているの
だろうな
人の良さそうな
団長だった
そそうなんです
白糸さんも
古い友人の多磨ちゃんも
みんな良い人で..
しかし
はっきり言って
数ある小劇場演劇の中でも
砂礫の舞台は陳腐で
時代遅れだ
君があの中に
埋もれて終わって
いくなんて
勿体ない...いや
あってはならない
ことなんだ
......
劇団に対して
ひどいことを
言われていると
思うかね?
しかし私は
本当のことを
真摯にのべて
いるまでだよ
だからこそ
切実に君を手に入れたい
もっと多くの人の前で
輝いてもらうためにも
舞台芸術に
本気でたずさわる
者として
お気持ちは
うれしいし..
あなたの
言うことは..
正しいのかも
しれない..
けど
...
ごめんなさい..
お話は
お受けできません...
...わかった
今日のところは
出直すとしよう
次の上演の
ときにでも
また君を
口説きに...
次は..
ありません
私...
今日
役者をやめるつもりで
劇場に来たんです。
え?
そん...
そんなことは
ゆるさない!!
君は自分で
自分の才能を殺すつもりか!?
君を本当に
必要としているのは
君の仲間だけじゃないんだ!!!
これからの
舞台芸術と
それを観たいと
願う観客たちだ!!
それを
君は..
すまない...
...とにかく
世界中
探しても
君にかわる女優は
いないと思っている
...わかりました...
よく
考えてみてくれ
!?
お話...
お受けします
...そこまで
え...?
...本当かい?
ああ...
なんて
幸運だろう!
淵透世〟を必要と
して下さるなら...
今度企画している
舞台の配役...
君でしか
ありえないと
考えていたんだ!
ありがとう!!
透世...
何故話を受けた?
いざなさん...
聞いてたの!?
...
私に気を
つかったのか?
そ
そうじゃないの
...海道さんの
言葉通りだと
思ったの
あなたの才能は
もっと大きな
舞台で活かす
べきだって
だから
私も
それが見てみたいの!
砂礫のみんなも
きっとわかって
くれると思う
私だけじゃなく
海道さんやこれからの
お客さんたちみんなが
皆の見たいものは
正確には
私じゃない
あなたが
舞台に立つ姿を
見たいはずだわ
透世の美しさ
でもあるんだ
私と
あなたがつくった...
〝淵透世〟?
そういう
ことだ
じゃあ
どちらが
欠けても
いけない
わね
そして
女優。淵透世〟は
海道与のプロデュース公演で
チェーンファットいや、私がもう一度、
「かもめ」の
〝ニーナ〟を演じ
実力派女優として、
一躍注目を浴びた
「わたしは
かもめ」
「いいえ
そうじゃない...」
「おぼえてらして
あなたは獣を射落したわね?」
「ふとやって来た男が
その娘を見て」
「退屈まぎれに
破滅させてしまった」
「かもめ」を
皮切りに
海道は
上演のたびに
〝淵透世〟を
起用した
古典から現代劇まで
最高の演出・最高・美術・
そして最高のキャストで公演を重ねた
その度に
〝淵透世〟の評判は
はね上がり
架空の女は
真実を超えて真実らしく、多くの人間たちを魅了する
やがて
いざなさんの口ききで
おれは
海道の下に
ついて
裏方仕事を
するように
なった
ひそかに
自分の台本を
書きながらな
......?
いざなさんの
演技だけでなく
海道与の
演出家としての
実力は相当なものだった
奴には
一誰も見たことがないものを
見せてやろう。という野心があった
多少派手好きではあったが、
そんなところも受けていた
そんな奴の好みどおりに
淵透世〟は身も心も仕立て上げられてゆく
品も
さわりがたい
芸術品のような女性に
華もある
醜く何も持たなかった女は
いつしか。伝説。の呼び名を
ほしいままにし
そして
得たものは
人々からの賞賛のみならず、
ごめんなさい
そろそろ
帰らないと
いつも決まった時間に
去ってしまうな
どんな理由が
あるやら
私以外に
男でもいるのか?
言えない
ちかって
それは無いわ
じゃあ何故
.....
それなら
それで
かまわ
ない
結婚
してくれ
その秘密ごと
お前を私のもの
にする
かつて
生まれることすら
許されなかった醜い者は
女としての幸せすらも
...はい...
勝ちとったのだ
第79話占終わり
死が二人を分かつまで
愛を誓い妻を想い
妻のみに添うことを
神聖なる婚姻の契約のもとに
誓いますか?
誓います
腕の雨の中より6
第80話
こうして
海道与と
淵透世は
結ばれた
!!
しかし
それこそが
最大のあやまちであり、
崩壊のはじまりだった
...
結婚から
数ヵ月して
いざなさんは
与との子ーつまり、
かさねを身籠った
なぜ...
へ?
昔から
ずっと
考えて
きたの..
母も
もともと
醜かった
なら
生まれてくる子もまた
醜いだろう可能性くらい
想像できた
はずなのに
なぜ
“母は
私を
生んだの
だろう”と
授かった子を
殺すということを
あのひとは
しないし
できない
その生いたち故にな
そうだと
しても...
...いえ
なんでも
ないわ
続けて
?
まあ
それに
加えて
あのときの
いざなさんは
海道与に
心酔しきっていた
奴との子を欲しいと
家庭を持ちたいと
まっ
たく...
本気で考えて
いたようだった
奴と同居し
寝食をともにし
そして子どもを
生み育てる
そんなこと
できるはず無いってのに!!
たとえ
淵透世本人は上手く
コントロールできていた
としても
何年も
どうやって?
自殺未遂
する前の
ニナのようにさ
淵透世〟という
女優が世間で
認められ有名になって
ゆくほどに
あと戻りできなく
なっていただろう
からな
...ファンディ
だとしても
結婚生活には
無理があった
醜い子どもだ
そして破綻の
きっかけは
当然のことだ
海道からしてみたら、
美しい妻と自分との子どもが
あー
どちらにも
似つかないどころか
ふた目と見られぬ
醜い容貌を持って
生まれたのだから
疑心を抱いた夫は
あれは私以外の男との
子だと思うのだが...
調べてみましたが、
男性と関わっている様子は
ありませんね...しかし
妻の身辺を調べはじめる
...それで
どうだった?
妙な
女と
毎日
同じ時間に
会っている
ようなんです
女?
...!
この...顔は...!?
その
不気味なほど娘によく似た女に
そして
海道は接触をこころみる
...??
美しい妻がかつて
言えないとした秘密の
おぞましい真実を目撃する
いや...誰だお前は...?
どういう
こと
なんだ!!
蜜月は終わり
誓い合った
夫婦の愛は
粉々に砕け散った
そのおぞましい子ともども!!
出て
いけ!!!
醜い
化けものめ!!
......?
まだ
生後まもない
お前をつれて...
いざなさんは
路頭に迷う
ことになる
その間の行方は
おれにも
つかめなかった...
知っている人間を頼らず
転々としたらしい
淵透世本人の
元にはいなかったの?
ああ
あの女は..
頼れなかっただろう
何故ならその頃
そいつは
海道与のもとに居たからな
...すまない...
いざなについて
聞くために
君を呼んだ
つもりだった..
それなのに..
...しかし
君は私を
拒まなかったな
つまり
これからは..
ええ...
君が私の。透世になってくれるね?
だって私...
ずっとあなたが..
好きだったんだもの...
海道は
愛した女は架空のものだった。
という現実が受け入れられず、
少しずつこわれていった
そして
何故
そんなことも
できない!?
役に立たない
クズめ!
やっぱり
お前では駄目だ
お前と違って
透世は...
女優としての
才能も
知性も
気高さも
持っていたのに...!!
顔が
同じだけ
余計に虚しさが
つのる...!!
そんな...
ねえ
与さん
あなたの...
取り戻せば...
聞いて
私ね
おなかの
中に
そうか...!
取り戻せば
良いのだ!
材料はここに
あるのだから...!!
累9終わり
あああなる
いや、そんなことは...
ことその
肌をあの女と
してこい
元の美しい遠世に
戻るんだ!!
今へとつながる
始まりの物語、
その終わりの時
の求めた光景だ
Presented
By
DarumaMarsura
EVENTNG/KODANSHA
☆取録されている表現は、作品の執筆年代・執筆された状況を考慮し、
コミックス発売当時のまま掲載しています。
累(9)
著
...
発行
電行者電行所
2016年8月1日発行(O)
松浦だるま
『DavinaMastssuka2016
清水保雅株式会社
株式会社講談社
〒112-8001
東京都文京区音羽2122: