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Instructions:
長田
漫画
羽賀翔二
霍吉野源三郎
マザジンハウス
こきるか
歴史的名著
初のマンガ化!
白者
漫画
“君たちはどう生きるか
m吉野源三郎
あれ、羽賀翔ー
マガジンハウス
1937年
東京の街
人々の生活が
大きく変わろう
としている
この時代に
...
日々自分の中の
疑問と向き合い
人として
成長しようとした
ひとりの中学生と
その叔父さんが
いました
少年は
みんなから
「コペル君」と
呼ばれています
この物語は
1937年に出版され
今もなお多くの人に
読み継がれている
歴史的名著といわれる
小説.....
「君たちはどう生きるか」を
はじめてマンガとして
描きおろしたものです
小説の出版から
80年経った今も
あらゆる世代の人たちが
生き方の指針となる
言葉を物語の中から
見い出しています
この本を
読みおえた
とき
あなたの
中にいる
コペル君と
おじさんは
どんな言葉を
投げかけて
くるのでしょうかー
Rlare-Book
漫画「君たちはどう生きるか」
目次
11、春の朝、
、凱旋
石段の思い出
人間の悩みと、過ちと、偉大さとについて〈おじさんのノート〉
雪の日の出来事、後編、
雪の日の出来事・前編・前線・
ナポレオンと4人の少年
5、貧しき友
偉大な人間とはどんな人か〈おじさんのノート〉
人間であるからにはおじさんのノート
人間の結びつきについて〈おじさんのノート〉
4、ニュートンの林檎と粉ミルク
さっ、勇ましき友、後の
う、勇ましき友、前編
真実の経験について、おじさんのノート
1、へんな経験
ものの見方について、「おじさんのノート
3203002922の
...54.4824
まあ
ひどい熱
いま氷を持って
きますからね...
ハタン...
熱なんて...
もっと
あがってしまえば
いい.....!!
もう...
どうなって
しまったって
いいんだ
大事な
僕は...
大事な
友だちを...
裏切って
しまった.....
僕なんて
死んだほうが
マシなんだ...
やあ
コペル君
おじさん.....
.....
ああ...おまえはそういうことですから、わからない
...わからないのかわかりませんですね
...
みんなに対して
とても...
おじさん....
僕ね...
うん?
とても済まないこと
してしまったんだ...
僕がして
しまったことを
ぜんぶ
おじさんから
渡されたのは
一冊のノート
だった
おじさんに
話した
次の日:...
コメントサロービューして
今まで
ちょっと待ってしまった
ちゃんと食べてくださいよ
んっ...んっ、んんっ
それじゃないのか?
...
コベルを
ちなみに、道に向かうとしているなんだ。
「死んでしょ、だ」と思うほどほど全て言われば
そんエー、まさかを強く求めているからだ。
人間ってもクラスです姿を信じているから、
まるは大きな苦しみを感じている。
なぜそれほど苦しまなければならないのか
それはねっぺんを
おじさんのリートを配慮する読んでくれれば、
きっと君は、自分を取りき戻せる。
あらたな一歩を踏み込みことができる。
僕たち人間は
自分で自分を決定するする力をもっている
まるですと、発見が許されている。
さあっぺじゑいまこそ答えを見つけよう。
ここには多く、決してるんですことがく考えてきた。
そのため、
そういうことで、このようになってしまったのですが、それはそうでしょうか。
あの...お兄ちゃんは何故だろう!!それもそういうことはないのかな
おじさんの
ノートは
そんなことで明らかでし
それで桜のんじゃなかった。
ダイエッターネットショップは
お客さんのサービングから
ぐッゅぐみゅーくれゅと
媚
おじさんが
僕の家の近くに
引っ越してきた日から
はじまっていた
インターネットの
自分が
こんな苦しい
気持ちに
なって
僕は
はじめて
わかった
僕を「コペ
おじさんは
「コペル君」と
呼ぶようになった
あの日から
ずっと
僕のことを
導いてくれて
いたんだ
僕が
立派な人間に
なれるように」
Ry@ste-Book
漫画
君?
艸吉野源三郎
『羽賀翔ー
おい
潤一君
なあに?
おじさん
へんな経験
うしろ
あぶないぜ?
おわっ
すみません
はは
無理しなくって
いいぜ?
潤一君
おじさんが
近所に越してきて
嬉しいのはわかる
けどさ...
なに言ってん
のさ...
これいっぺんに
運べって言ったの
おじさんじゃないか
まあ
まあ
ガラザラ...
ちゃんと
お礼はするからさ
おじさん家って
こんなに本
あったっけ?
会社に
置いといたのを
持ってきたんだ
えっ
へぇー
さすが
編集者
半年会ってない
だけで急に増えて
ない?
まあ今は
元編集者だけど
ね
気に入ったのがあれば
どうぞ
?
手伝いを
してくれた
お返しさ
いいの?
甥っ子を手ぶらで
帰らせるわけにも
いかないしね
ああ
...なんで
センス
国史大全
生命のぼく
『本日の成り立って
フランスキスターに
江戸地図
まぁ.....
本田博士のお眼鏡に
かなうかどうかは
わかりませんが...
おっほん
見させて
いただこう...
へへ.....
その
すっ
うんと難しいのを
とったねえ.....
......
今は化学に
興味が
あるのかい?
......
?
まあだいたい
知ってることしか
書いてないね...
ははっ
そうかい
?
生命
児童文学大の
イスマンネス
ねぇ
おじさん
外でない?
僕がこのへんを
案内するからさ
商店街
や
情報の
友だちと
よく野球をする
広場を
見せながら
僕は
頭のすみで
ぐるぐる
考えてしまって
いた
いまこうして
見えているものは
なんだって
どんどん
どんどん
拡大して
いくと
最終的に
分子ってものに
たどりつく
らしいって
こと
学校ではもう
習ったことだけど
物質を構成する
最小単位のことです
この目では
見えないのに
ある
なんて...
なんだか
とっても
不思議だ
あっ
降ってきた
ありがとな
潤一君
もう
帰ろうか
えっ
霧雨じゃ
ないか...
こんなの
降ってるうちに
入らないよ!!
なんだよ...
急に豪傑
ぶって.....
遊びたかった
からさ
もう少し
......
えっ
...
おじさん?
どこいくの?
おいで
潤一君
この中なら
濡れないぜ
えへ
近所を歩く
だけのつもりが
銀座は人が
たくさんだ...
こんなとこまで
来ちゃうとはね
久しぶりなんだ
よく
来てたの?
デパートの
屋上
うん
お父さんが
まだ生きてる
頃はね...
......
そう
あっ見て見て
おじさん
あの自転車
乗ってる人
僕が今日
ぶつかりそうに
なった人だったり
して...
ははっ
そんなわけ
ないだろう
.....
ここから
見ていると
雨粒くらいに
人が小さく
見えるね.....
...
分子みたいに
ああ.....
そうだね.....
ちっぽけ
だ.....
僕.....?
僕も...
この中に
いる...
ほんとうに
人間って
分子
なのかも...
だってさ
目をこらしても
見えないような
遠くにいる
人たちだって
世の中という
大きな流れを
つくってる一部
なんだ
もちろん
近くにいる
人たちも
おじさんも
僕も
そうか
......
人間は
分子か
じゃあね
おじさん
ああ
またな
...
送ってくれて
ありがとう
......
コペル君
ふっ.....
君のことだよ
コペル君?
今日
君がした
発見は
コペルニクスと
同じくらいの大発見
かもしれないからね
今日から
君のことは
コペル君と
呼ぶことに
するよ
コペルニクス
の.....
コペル君かあ
...
やけに気に入って
たな...
いや...
デパートの
屋上で
僕は...
自分が
この世界に
溶けていって
しまいそうな
気がして
ほんとは
ちょっぴり
恐かった
でも
おやすみ
なさい...
そんな
気の遠くなって
しまいそうな
へんな気持ちも
いつの間にか
コペルニクスの
コペル君
かあ...
おじさんが
つけてくれた
あだ名によって
ワクワクした
気持ちに
変わっていたんだ
派一君。
今日君が経験した貴重な体験を忘れないよう、僕はこのノIトにこっそり今日の出来事
を書き留めておこうと思う。いつか君がこれを読んで、自分のがいかに大きな発見をしたか
思いかえすために。
君がデパートの屋上で「ほんとうに人間って分子なのかも」と言ったとき、君は、自分
では気づかなかったが、ずいぶん本気だった。君の顔は、僕にはほんとうに美しく見えた。
しかし、僕が感動したのは、そればかりではない。ああいう事柄について、君が本気に
なって考えるようになったのか、と思ったら、僕はたいへん心を動かされたのだ。
ほんとうに、君の感じたとおり、一人一人の人間はみんな、広いこの世の中の一分子な
のだ。みんなが集まって世の中を作っているのだし、みんな世の中の波に動かされて生き
ているんだ。
もちろん、世の中の波というものも、一つ一つの分子の運動が集まるって動いてゆくのだし、
人間はいろいろな物質の分子とはわけのちがうものなんだし、そういうことは、君がこれが
ものの見方について、
ことが
ちどうせつ
君は、コベルニクスの地動的を知ってるね。コベルニクスがそれを唱えるまで、昔の人
はみんな、太陽や星が地球のまわりをまわっていると、目で見たままに信じていた。
これは、一つは、キリスト教の教会の教えで、地球が宇宙の中心だと信じていたせいも
ある。しかしもう一歩突きいって考えると、人間というものが、いつでも自分を中心とし
て、ものを見たり考えたりするという性質をもっているためなんだ
ところが、コペルニクスは、それではどうしても説明のつかない天文学上の事実に出会
って、いろいろ頭をなやま、した末、思い切って、地球の方が太陽のまわりをまわっている。
と考えてみた。そう考えでみると、今まで説明のつかなかった、いろいろのことが、きれ
いな法則で説明されるようになった。
そして、ガリレイとかケプラーとか、彼のあとにつづいた学者の研究によって、この説
この正しいことが証明され、もう今日では、あたりまえのことのように一般に信じら
れている。小学校でさえ、簡単な地動認の説明をしているようなわけだ。
しかし、君も知っているようにに、この説が唱えはじめられた当時は、どうして、お
「ら大きくなってゆくにしたがって、もっともつとよく知っててゆかなければいけないけれど、
君が広い世の中の一分子として自分を見たということは、決して小さな発見ではない。
うして、たいへんな騒ぎだった。教会の威張っている頃だったから、教会で教えて
いることをひっくりかえすこの学説は、危険思想と考ええられて、この学説に味
方する学者が年屋に入れられたり、その書物が焼かれたり、さんざんな迫害
を受けた。
世間の人たちは、もちろん、そんな説をうっかり信じてひとい目にあうのは馬鹿らしい
と考えていたし、そうでなくとも、自分たちが安心して住んででいる大地が、広い宇宙を動
きまわっているなどという考えは、薄気味が悪くて信じる気にならなかった。
今日のように、小学生さえ知っているほど、一般にこの学説が信奉されるまでには、何
百年という年月がかかったんだ
人間が自分を中心としてものを見たり、考えたりしたがる性質というものは、これほど
まで根深く、頑固なものなのだ。
動いていると考えるが、それをとも、自分たちの地球が宇宙の中心にどっかりと座りこんで
いると考えるか、この二つの考え方というものは、実は、天文学ばかりのことではない。
世の中とか、人生とかを考ええるときにも、やっぱり、ついてまわることなのだ。
コペルニクスのように、自分のたちの地球が広い宇宙の中この天体の一つとして、その中を
んところはお隣りだ。
それが、大人になると、多かれ少なかれ、地動説のようにな考え方になってくる。広い世
間というものを先にして、その上で、いろいろなものごとや、人を理解してゆくんだ。
場所も、もう何県何町といえば、「自分のうちから見当をつけないいでもわかるし、人も、何々
銀行の頭取だとか、何々中学校この校長さんだとかいえば、それでお互いがわかるようにな
っている。
しかし、大人になるとこういう考ええ方をするというのは、実は、ごく大
体のことに過ぎないんだ。人間がとかく自分を中心として、ものごとを考えたり、
判断するという性質は、大人の間にもまだまだ根深く残っている。
母さんの親類の人という風に、やはり自分が中心になって考えられている。
いる。人を知ってゆくのも同じように、あの人はうちのお父さんの銀行の人、この人はお
りは、うちの間から左の方へいったところ、ポストは石の力へいったところにあって、八
白屋さんは、その角を曲ったとこころにある。静子さんのうちは、うちのお向かいで、三ちゃ
子供のうちは、どんな人でも、地動説ではなく、天動説のような考え方をしている。子
供の知識を観察してみたまえ。みんな、自分を中心としてまとめあげられている。電車通
こういうふうに、自分のうちを中心にして、いろいろなものがあるような考え方をして
すー
いや、君が大人になるとわかるけれど、こういう自分中心の考え方を抜け切っている
まえがって
という人は、広い世の中にも、実にまれなのだ。
妹に、損得にかかわることになると「自分のを離れて正しく判断してゆくということは、
非常にむずかしいことで、こういうことについてすら、コベルニクス風の考え方のできる人は、
非常に偉い人といっていい。
たいがいの人が、手前勝手な考ええ方におちいって、ものの真相がわからなくなり、自分に
都合のよいことだけを見てゆこうとするものなんだ。
宙の本当のことがわからなかったと同様に、自分ばかりを中心にして、物事を判断してゆ
くと、世の中の本当のことも、ついに知ることができないでしまうが、
それと同じようなことが、世の中のことについてもあるのだ。
には、それで一向きしつかえない。しかし、宇宙の大きな真理を知るためには、その考え
方を捨てなければならない。
しかし、自分たちの地球が宇宙の中心だという考えにかじりついていた間、人類には宇
大きな真理は、そういう人の目には、決してうつらないのだ。
もちろん、日常僕たちは太陽何かのほるとか、沈むとかいっている。そして、日常のことを
いるのだ。
それは、天動説から地動説に変えわったようなものなのだから。
ほんとうに大きなことだと、僕は思う。僕は、君の心の中に、今日の経験が深く痕を残し、
てくれることを、ひそかに願っている。
今日君が感じたこと、今日君が考えた考え方は、どうして、なかなか深い意味をもって
だから今日、君がしみじみと、自分を広い広い世の中の一分子だと感じたということは、
の、男ましき友前編
おお
......
そうか!!
すごい
発見をしたぞ!!
太陽が地球の
まわりを回っている
のではない
地球が太陽の
まわりを回っている
のだ....!!
ねぇ?
そんなわけ
ないですよ...
え?
ええ
なかった
ことに...
そんな常識から
かけ離れたことを
言っていると
そう?
あ...
世間から
見捨てられますよ...
コペルニクスさん
じゃあ
今のは
...って
僕なら
言っちゃうかもなあ
コペルニクスなみの
発見をしたから
コペル君だ
おじさんは
あれから
僕のことを
コペル君と
呼んでくれるけど
そんな立派な人と
同じ名前...:
潤一さん
なんだか
恥ずかしいよ...
もう
遅いんだから
寝なさい
はーい
本田君
おはよう
おはよう
北見君
潤一君
おはよう
あ
おはよう
水谷君
?
う〜ん
そろそろ
本田潤一君
にも
何か
あだ名が
あったほうが
いいな
いいよ
え...
いいや!!
はは
ガッチンが
誰がなんと
言ったってと
言ったら
実はさ
誰がなんと
言ったってあった
ほうがいい!!
え
.....
もう
どうにも
できないよ
この間
あだ名つけられた
ばかりなんだ
......
そうなの
?
結局
僕は...
学校でも
みんなから
コペル君と
呼ばれるように
なってしまった
立派な人と同じ
名前で恥ずかしいと
思いながらも
あの
コペルニクス
みたいに
心のどこかで
思っているんだ
まわりの人に
どれだけ
間違っていると
言われても
自分の考えを
信じぬける
立派な人間に
僕も
なってみたい
って.....
お〜い
うらかわ〜
...山口君
胸のとこに
何かついてる
ぜ?
え?
うわあっ
なにっ!?
なに入れたあ?
......?
......
......
ただの
砂だよ
はは...
砂かぁ
浦川君は
さ...
山口たちから
あぶらあげって
呼ばれてるんだ
あぶらあげ
...?
.....
本人は
そう言われて
いることに
気づいてない
みたいだけど
毎日
弁当のおかずが
あぶらあげだけ
だからって...
だからって
そんなの.....
みんな.....
何か言ったら
次は自分が山口に
狙われるかもって
思ってるから...
誰も何も
言えないんだ
...
人間は
分子
みたいに
つながって
いる.....
でも
それは
もしかしたら
いい面だけじゃ
ないのかもしれない
コペル君
メシだってー
えっ.....
おじさん?
家
来てたの
......
失業中の
弟を心配して
姉さんが
いつでもご飯を
食べに来いって
言うからさ
まあそこまで
言うならって
仕方なく
来たわけさ
ほら
これぐらい
食べないと
いつまでも
ちびのまま
だぞ
潤一さん
せっかく
だから
学校の勉強
でも教わっと
いたら?
べつに.....
わからないとこ
今ないもん
ははっ
さすが
コペルニクス!!
でも
おじさんに
聞いてみたい
ことはあるかな
......
ありがとうございましたが、WindowsWeb
それでもいいでしょうかそれでもいいでしょうか
この間
人間は分子みたい
って言ったら
おじさんは
すごい発見だって
言ってくれた
でしょ?
ああ
でもさ
今日
思ったんだ
みんなで
ひとつの大きな
かたまりになって
肩を寄せ合ってる
せいで...
かえって
抜け出せなく
なるときも
あるのかもって
みんなで
見えない
フリをしている
状況からさ...
何か
あったのかい?
学校で...
......
...うん
かげで
あぶらあげって
呼ばれたり
浦川君って
子がね...
誰も手を
さしのべられて
ないんだ.....
いじわるされて
いるんだけど
...僕も
.....ってこと
だけど
つまり
そんなとき
どうすれば
いいのか...
......
おじさんに
聞きたいって
ことかい?
コペル君
そりゃあ
決まってる
じゃないか
自分で
考えるんだ
......
だいたい
おじさんだって
でっかい
かたまりの一部として
流されてる人間さ
おじさんの
ほうこそ
どうするべきか
聞きたいね...
11月のクラス会で
誰が演説するのが
いいか
いま配った紙に
名前を書いて
おくように
あとで
回収しに
くるからな
え...
......
おい
次に回せよ
.....
回せって!!
あっ
まわりの
流れに
まどわされ
ない
......
コペルニクス
のような
人間...
?
アブラアゲニ
......エンゼツ
サセロ.....
どう
すれば
僕が
?
「アブラアゲ」
って...
あ
ぼく...
......
そのヒントを
くれたのは
意外なことに...
そういった
立派な人間に
なれるのか
...
おいっ
......
誰がなんと
言ったってもう
許さん!!
......
浦川君
だった.....
視界に
、勇ましき友後編
山口の
姿が入る
たびに
そのことを
なんとなく
わかって
いながら
びくついて
いた
浦川君
僕たちは
何もできて
いなかった
だから
ガッチンが
立ち上がったとき
僕は
とっさに
こう
思ったんだ
行こう...
ばん
浦川君
今こそ
やり返すんだ
...!!
誰が
なんと言ったって
もう
許さん.....!!
......
弱い者
いじめを
して...
ひきょうだぞ
山口.....!!
ん?
何のこと
かなぁ〜〜〜
......
とぼけるなっ!!
では
......
.....
ガッチン...
だー
この野郎.....っ
おれたちも
ガッチンに手を
貸そう.....!!
.....
......
やめてっ!!
ピタ...
もう.....
いいんだよ
もう...
たのむから
許して
やっておくれ...
おう
おかえり
コペル君
帰るの?
は
まあ
まあ
入りなよ
ああ
また来るよ
ん?
へぇー
そんなことが
あったのか
自分を
いじめてた
ヤツのことを
.....
うん
浦川君は
助けたんだ
とりあえず
そうしとかないと
またいじめられると
思ったのかな...
はあ
.....
......?
おじさんは
考えることが
姑息だね〜
なんだよ
浦川君は
帰り道
こう言って
たんだ
あ
今日は.....
浦川君
ありがとう
どうして...
あのとき
どうして
止めたんだ?
なんか.....
よくわからないん
だけどね
......
......?
へんだよ
ね.....
「いてっ」って感じが
したんだ...
あの場で
僕はやられて
なかったのにさ...
......
ほんとは
浦川君だって
まわりの勢いに
のっかって
あの中で
......
山口に
やり返したい
気持ちも
あったと思う
...でも
きっと
想像してたんだ
一方的に
やられるのが
どれだけ
イヤか...
まわりの流れに
勇気を
ふりしぼって
逆らった
浦川君は
ほんとに
立派だと
思うんだ...
......
コペル君は
ガッチン
みたいに
まっさきに
でも.....
立ち上がることは
できなかった
わけだけど...
いま君が
言ったことを
浦川君に
伝えたら
......
それは
大きな力になるんじゃ
ないかな...
コペル君
君は自分が
感じたことを
中学生で
それができる
君だって
心の中で
言葉にできる
なかなか
立派だと
思うぜ?
......
ははっ
おじさんだって、
...
無職にしては
立派なほうだと
思うよ...
そんな
ほめてくれる
なんて...
さっきは
姑息って言ってた
くせに......!!
...じゃあ
またな
コペル君
おじさん
僕......
頭の中で
言葉にする
だけじゃなくて
浦川君
にも
自分が
正しいと
思ったことを
ちゃんと
伝えるよ
まわりの
みんなにも
ぎゅっ
ちゃんと
伝える
もう一度と
そんなことは...
みんなで間違った
方向に流されたり
しないようにさ...
ああ
頭の中
だけに
そうだね.....
閉じこめている
ものに意味は
ない...
自分が
正しいと思った
ことは
ゴマ化したりせず
行動に移す
あの日
やはり
病床の
本田さんも
同じ想い
だったのだろうか
コペル君
昨日、君が興奮して話してくれた「油揚事件」の結末は、僕にもたいへん面白かった。
君が、北見君と浦川君の肩をもつのを聞いて、あたりまえなことだけど、僕はやっぱり
うれしかった。まあ、かりに君が山口君の仲間で、先生に叱られて出てきた山口君といつ
しょに、コンコンと運動場の隅にに逃げていったのだとしてみたまえ。お母さんや僕は、どこ
んなにやり切れないか知れやしない。
お母さんも僕も、君に、立派な人になってもらいたいと、心底から願っている。君のた
くなったお父さんの、最後の希望もそれだった。
だから君が、卑劣なことや、下等なことや、ひねくれたことを憎んで、男らしい真っ直
ぐな精神を尊敬しているのを見ると、ーなんといったらいいか、ホッと安心したような
気持ちになるんだ。
うばすみ
真実の経験について
君のことを頼むとおっしゃった。そして、君についての希望を僕に言いおいておかれた。
たぁ
私はあれに、立派な男になってでもらいたいと思うよ。人間として立派なものにたね」
この言葉を、僕は、ここにしっかりと書き留めておく。
君は、これをおなかの中にちゃんと息みこんで、決して忘れちゃあならない。僕も、ご
この言葉だけは、おなかの底にグッと収めて、決して忘れまいと考えているんだ。
ることはできないのだから、
こうして、このノートブックに、いつか君に読んでもらうつもりで、いろんなことを書
いておくのも、実は、お父さんのこの言葉があるからなんだ。
ことが
になった。だから僕も、そういう事柄については、もう冗談半分でなしに、まじめに君に
話した方がいいと思う。こういうことについてて、立派な考えをもたずに、立派な人間になる
そうはいっても、一世の中とはこういうものだ。その中に人間が生きている
ということには、こういうう意味があるのだ」などと、一口に君に説明すること
は、誰にだってできやしない。よし、説明することのできる人があったとして
君にはまだ話さながつたけれど、君のお父さんんは、亡くなる三日前に僕をそばへ呼んで
君も、もうそろそろ、世の中や人間の一生について、ときどき本気になって考えるよう
し、教室で実験を見ながら、ははあとうなずくことができる。
ところが、冷たい水の味がどんなものかということになると、もう、君自身が水を飲ん
でみないかぎり、どうしたって君にわからせることができない。誰がどんなに説明してみ
たところで、その本当の味は、飲んだことのある人でなければわかりっこないだろう。
同じように、生れつき目の見えない人には、赤とはどんな色が、なんとしても説明のし
ようがない。それは、その人の目があいて、実際に赤い色をを見たときに、はじめてわかる
まだ勉強して、自分ので見つけてゆかなくてはならないことなのだ。
ていることも、もちろん承知だ。こういうこことは、言葉でそつくり説明することができる
うことにどれだけの意味があるのが、どれだけの値打ちがあるのが、ということになると、
僕はもう君に教えることができない。
それは、君がだんだん大人になってゆくにしたがって、いや、大人になってからもまだ
だいすう
も、このことだけは、ただ説明を聞いて、ああそうかと、すぐに飲みこめるもの
じゃあないのだ。
英語や、幾何や、代数なら、僕でも君に教えることができる。しかし、人間が集まって
この世の中を作り、その中で一人一人が、それぞれ自分の一生をしょって生きてゆくとい
君は、水が酸素と水素からできていることは知ってるね。それが一と二との割合になっ
ことなんだ
ちないことで、はたがちは、どんな偉い人をつれてきたって、とても教えこめるものじゃ
あない。
むろん昔から、こういうことについて、深い知恵のこもった言葉を残しておい
てくれた、偉い哲学者や坊さんはたくさんある。今だって、本当の文章「本当
の思想家といえるほどの人は、みんな人知れず、こういう問題について、ずいぶん
痛ましいくらいな苦労を積んでいる。そうして、その作品や論文この中に、それぞれ自分
たとえば、絵や彫刻や音楽の面白さなども、味わってはじめて知ることで、すぐれた芸
術に接したことのない人にいくら説明したって、わからせすることは到底できはしない。
妹に、こういうものになると、ただ目や耳が普通に備わっているというだけでは足りな
くて、それを味わうだけの、心の目、心ゐ耳が開けなくてはならないんだ。
しかも、そういう心の目や心の耳が開けるということも、実際にすぐれた作品に接し、
しみじみと心を打たれて、はじめてそうなるのだ
まして、人間としてこの世に生きているということがどれだけ意味のあることなのか
それは、君が本当に人間らしく生きてみて、その間にしつくりと胸に感じとらなければな
「こういうことが、人生にはたくさんある。
ていかない。
みるのだ。
そうすると、ある時、あろ所で、君がある感動を受けたという、くりかえすことのない
ただ一度の経験の中に、その時だけにとどまらない意味のあることがわかってくる。それ
して、どういう場合に、どこいつ事について、どんな感じを受けたか、それをよく考えて
真実心を動かされたことから出発して、その意味を考えてゆくことだと思う。君が何かし
みじみと感じたり、心の底から思ったりしたことを、少しもゴマ化してはいけない。そう
かんじ!
の考えを注ぎこんでいる。
たとえ、坊さんのようにお説教をしていないにしても、書いてあること
この底には、ちゃんとそういうう知恵がひそめてあるんだ。
だから、君もこれからったんだんにそういう書物を読み、立派な人々の思想を学んでゆ
かなければいけないんだが、しかし、それにしても最後の鍵は、[
君なのだ。君自身のほかにはないのだ。君自身が生きてみて、そこで感じたさまざまな思い
いをもとにして、はじめて、そういう偉い人たちの言葉の真実も理解することができるの
だ。数学や科学を学ぶように、ただ書物を読んで、それだけで知るというわけには、決し
だから、こういうことについててまず肝心なことは、いつでも自分が本当に感じたことや
ーコペル君、やっぱり
わけでもない。
んでおいてもらいたいと思うんだ。
僕もお母さんも、君に立派な人になってもらいたいと、心から思ってはいるけれど、た
た君に、学業ができて行儀もよく、先生から見ても友だちから見ても、欠点のあげようの
ない中学生になってもらいたい、などと考えているわけじゃあない。
また、将来君が大人になったとき、世間の誰からも悪くいわれない人になってくれとか
世間から見て難の打ちどころのない人になってくれとか、言っている
なってしまうんだ。
僕やお母さんは、君の亡くなったお父さんといっしょに、君に向かって、立派な人間に
なってもらいたいと願っていえ。世の中についても、人間として生きてゆくことについて
も、君が立派な考えをもち、また実際、その考えとおり立派に生きていってくれることを
僕たちは何より希望している。だからなおさら、僕がいま言ったことを、よくよく飲みこ
が、本当の君の思想というものだ
これは、むずかしい言葉でいいかえると、常に自分の体験から出発して正直に考えてゆ
は、ということなんだが、このことは、コペル君!本当に大切なことなんだよ。ここに
ゴマ化しがあったら、どんなに偉そうなことを考えたり、言ったりしても、みんな嘘に
だ。
するならば、ーーコペル君、いいが、ーーそれじゃあ、君はいつまでたっても一人前の
もしも君が、学校でこう教えられ、世間でもそれが立派なこととして通っているからと
いって、ただそれだけで、いわれたとおりに行動し、教えられたとおりに生きてゆこうと
こっきしん
しゅうしろ
そりゃあ、学校の成績はいい方がいいにきまっていあるし、行儀の悪いのはこまで
ることだし、また、世間に出たら、人から指一本さされないだけの生活をしても
もらいたいとも思うけれど、それだけが肝心なことじゃあない。そのまえに、もっと
もっと大事なことがある
君は、小学校以来、学校の修身で、もうたくさんのことを学んできているね。人間とし
てどういうことを守らねばならないか、ということについてなら、君だって、ずいぶん多
くの知識をもっている。
それは無論、どれ一つとしてなげやりにしてはならないものだ。だから、修身で教えら
れたとおり、正直で、勤勉で、克巳心があり、義務には忠実で、公徳は重んじ、人には親
切だし、節倹は守るし...!という人があったら、それはたしかに申し分のない人だろう。
こういう問満な人格者なら人々から尊敬されるだろうし、また尊敬されるだけの値打ちの
ある人だ。しかし、」ー君に考えてもらわなければならない問題は、それから先にあるん
人間になれないんだ。
世間には、他人の目に立派に見えるように、見えるようにと振る舞っている人が、ずい
ふんある。そういう人は、「自分がひとの目にどう映るかということを一番気にする
ようになって、本当の自分、ありのままの自分がどんなものかということを、つい
がなければならないんだ
そうでないと、僕やお母さんんが君に立派な人になってもらいたいと望み、君もそうなり
たいと考えながら、君はただ「立派そうに見える人」になるばかりで、ほんとうに「立派
な人」にはなれないでしまうだろう。
それを本当に君の魂で知ることだ。
そうして、心底から、お立派な人間になりたいというう気持ちを起こすことだ。
いいことをいいととだとし、悪いことを悪いととだとし、一つ一つ判断をしてゆくとき
にも、また、君がいいと判断したことをやってゆくときにも、いつでも、君の胸からわき
出てくるいきいきとした感情に貫かれていなくてはいけない。
北見君の口癖じゃあないが、「誰がなんと言ったってー」というくらいな、心の張り
肝心なことは、世間の目よりも何よりも、君自身がまず、人間の立派さがどこにあるか
子供のうちはそれでいい。しかし、もう君の年になると、それだけじゃあダメなんだ
いうことなんだ。
なお、浦川君については、君は、普段の浦川君は少し意気地がなさすぎるという意見だ。
が、僕もそう思う。浦川君がしっかりしていれば、ああまりで馬鹿にされないですむのだ。
山口君をやっつけている北見君を、浦川君が一生懸命とめているのを見て、どうして君
ぷ、あんなに心を動かされたのか
そこで君は、もう一度あの「油揚事件」を思い出してみたまえ、
何が君をあんなに感動させたのか
なぜ、北見君の抗議が、あんなに君を感動させたのか、
えば、いろいろな経験を積みながら、いつでも自分の本心の声を聞こうと努めなさい、と
お留守にしてしまうものだ。僕は、君にそんな人になってもらいたくないと思う。
だから、コペル君、くりかえしていうけれど、君自身が心から感じたこと
や、しみじみと心を動かされたことを、くれぐれも大切にしなくてはいけない
い。それを忘れないようにして、その意味をよく考ええてゆくようにしたまえ。
今日書いたことは、君には、少しむずかしいかもしれない。しかし、簡単にいってしまう
するなら、その人は英雄というっていい。浦川君がそういう英雄でないからといって、浦川君
を非難するのは、まちがっているね。浦川君のような人は、まわりの人が筧大な目で見て
あげなくてはいけないんだ。
まして、浦川君自身が、自分のをいじめた山口君をゆるしてやってくれと頼むほど、覚太
な、やさしい心をボしたんだからね。
しかし、浦川君のような立場にいながら、少しもひるまずに山口君たちをおさえてゆけ
ホニュートジの林檎と粉ミ
ナイスキャッチ
ガッチン!!
水谷君は
どうだ!?
さあ最後は
コペル君だっ!!
こいっ...
あー
おいおーい
いまのを
落としてる
ようじゃ.....
プロ野球じゃ
即クビだぜ
コペル君
?
無職の人に
「クビだなんて
言われたか
ないよ
わっ
言ったな
なんたって
できたてのプロ野球
から声がかかってた
からね
えっ
本当に?
コペル君のおじさん
ノックがすごく上手
ですね.....
水谷君「話半分で
いいんだよ...
おじさん相手には
うん
浦川君も
元気になったら
さそってみよう!!
......
ずっと
体調わるい
みたいで学校
来てないんだ
浦川君
また何か
あったの?
毎日
来てたのに
な...
山口に嫌がらせ
されてるとき
だって
わーっ
ここが
コペルニクスの
住処かあ
きれいな
お家だね
ありがと
でも
遠慮しないでね
あれくらい
図々しく
くつろいでもらって
いいから...
りんご
むけたわよ
......
ねえ
おじさん
ちょっとやったらしいでしょうか?
...
ああ.....
万有引力の法則って
ニュートンが発見
したんだよね
でも
なんで
ニュートンは
ただりんごが
落ちるのを見ただけで
そんな発見ができたん
だろう....って
さっき落ちてくる
ボールを見ながら
思っちゃったんだ
ふふっ
すごいね
コペル君と
おじさんは
いつもこんな
話をしてるの?
友達の前でちょっと
かっこつけたいん
だよな...
コペル君
もう
いいよ...
まあいつもって
わけじゃない
が.....
じゃあ
ノックの次は
ははっ
すねちゃった
おじさんの
特別講義だ
.....!!
これは
話半分じゃ
だめだぞ
ニュートンは
!
りんごが
落ちるのを見て
何かピンときた
でも
肝心なのは
それからなんだ
彼は想像の中で
木をどんどん
高くしていった
10メートルでも
100メートルでも
りんごは落ちるのか
・?
当然
落ちるはず
だね
そうやって
とうとう月の高さまで
いったときに
はたと立ち止まった
それは地球が月を
引っぱっている力と
月が回る勢いでとんで
いこうとする力が
釣り合っているから
なんだけど...
重力があるなら
どれだけ高くなろうと
どんなものでも
落ちてこなきゃ
いけないはずだが
ニュートンは
地球上の重力と
天体の間の引力が
同じ性質のものじゃ
ないかと考え
月は地球に
落ちてこない
実際にそれを
証明したんだ
.....!!
だからね
君たち
「あたりまえのこと」
っていうものが
曲者で.....
すごい
ひとつの
わかりきった
ことを
どこまでも
どこまでも
ものごとの
大事な
「根っこ」の
部分に
追いかけて
考えてゆくと
......
ぶつかることが
あるんだ.....
根っこ...
浦川君
まだ来れそうに
ないのかな...
.....
浦川君の家
は...
ここ?
...!?
すみません
ごめん
くださーい
あのう...
浦川君は
本田君.....?
え.....
あら
めずらしい
......
病気じゃ
お友達
かい?
なかったの
......?
うちの若い
もんが
風邪でやられ
ちまってね
留には
わるいけど
学校休んで
手伝ってもらってるん
だよ
おかまい
できなくて
悪いねぇ
ちょっと
出ないと
いけなくて留
たのんだよ
.....はい
ごめんね
本田君
これだけ
揚げとかないと
いけないんだ
いつも
食べてる
揚げ豆腐
こうやって
作ってるんだね
うん......何も
めずらしいもんじゃ
ないよ...
ふぎゃ.....
おぎゃああ
ふじゃああ
......っ
...
浦川君...::
お〜よしよし
大丈夫です
よぉ〜
あの
こんなふうに
すいませーん
浦川君
が.....
働いてるんだ
あっ...
お客さん
......だよ?
!
せーッ
うん
「って
どーも
毎度ありです
これ
えっ
おすそ
わけ
ありがとう
ございます!!
あの人は
近所のお肉屋さん
だよ
とっても
おいしいお肉
きっと
本田君家も
あそこで
買ってるんじゃ
ないかな...
え...
.....ああ
ふふ...
どうした
の?
急に
手伝って
みたいだ
なんて
まぁ
なんていう
か...
「どういう風のふき
まわしってやつだよ
だから
それを聞いて
るのよ
これも
なんだ
ろう.....
あれも
みんな...
なんだか
いつもと
違って
見える...
潤一さん
戸棚から
お皿をとって
うん
んん
あっ
......
......?
この
粉ミルクも
ここに
辿りつくまでの
道のりを
ずっと
ずっと
引きのばして
いけば...
その晩は
うまく
寝つけなくて
おじさんへの
手紙として
僕ははじめて
考えていることを
書くことに
した
にんげんぶんし
とにします。お母さんんにも、当分のうち言わないで下さい
はじめ、「粉ミルクの秘密」という名を考えたんですが、「なんだか少年雑誌の探
〈偵小説みたいなので、やめにしました。叔父さんが、もっといい名を考えて下さ
ったら、うれしく思います。
その発見をどう説明したらいいか、僕には、まだうまくいえないんですけれど、
考えていった順序をお話しすれば、叔父さんは、わかってくれるだろうと思います。
最初、頭に思い浮かべたのは粉ミルクでした。だからち僕は、この話をしたら、
きっとみんながひやかすだろうと思うんです。僕だって、もっと立派なものを考え
僕は、こんどの発見に、「人間分子の関係、網目の法則という名をつけました。
あみは
いた方がいいと考えたので、この手紙を書きます。
僕は一つの発見をしました。それは、たしかに、叔父さんから聞いたニュート
ンの話のおかげです。でも、僕が自分で、ある発見をしたなんていうと、みんな
はひやかすにきまってます。だから、僕は、これを叔父さんにだけお話しすること
叔父さん。
こんど叔父さんに会ったとき、話そうと思っていたことなんですが、手紙に書く
です。
僕は、その話を聞いたとき、じゃあ、オーストラリアこの牛も僕のお母さんかな
といいました。だって、うクトーゲンはオーストラリアでできて、かんにも、オ
ーストラリアの地図がかいてあるからです。僕はそのことを思い出しました。その
して、オーストラリアのごことを、いろいろ想像しますした。牧場や、牛や、土人や
粉ミルクの大工場や、港や、汽船や、そのほか、あとからあとから、いろんなも
のを考えました。
その時、僕はニュートンこの話を思い出しました。ニメIトルか四メートルの高
さから落ちた林檎を、もっともっと高いところにあったと考えてみて、どこまで
えたかったんですが、粉ミルクのかんから考え始めてしまったんだから、仕方が
ありません。うちで、おせんべいやビスケットをいれておく、あのラクトーゲン
この大きなかんです。
そうしたら、お母さんのいったことを思い出しますした。僕が赤ん坊のとき、お
母さんの乳がたりなかったので、僕は、毎日ラクトーゲシを飲んで育ったのだと、
いつかお母さんはいいました。今のラクトーゲンのかんは、その時の記念だそう
ためしに書いてみます。
も考えつめてゆくうちに、ニュートンはすばらしい考えを思いついたのだ、と叔
父さんが言ったでしょう。
それで、僕も、粉ミルクに関係のあることを、どこまでも考えていったら、どの
うなるかな、と思いました。
僕は、寝床の中で、オーストラリアの牛から、僕の口に粉ミルクがはいるまで
このことを、順々に思ってみました。そうしたら、まるできりがないんで、あきれ
てしまいました。とても、たくさんの人間が出てくるんです。
【二】粉ミルクが日本に来るまで。
先、牛の世話をする人、乳をしぼる人、それを工場に運ぶ人、工場で粉ミルク
にする人、かんにつめる人「かんを荷造りする人、それをトラックかなんかで鉄
道にはこぶ人、汽車に積みこむ人、汽車を動かす人、汽車から港へ運ぶ人、汽船
に積みこむ人、汽船を動かす人。
(((二)粉ミルクが日本に来てから。
汽船から荷をおろす人、それを倉庫にはこぶ人、倉庫この番人、売りさばきの商
人、広告をする人、小売りこの薬屋、薬屋までかんをはっごぶ人、薬屋の主人、小僧
この小僧がうちの台所までもってきます。
ても長いリレーをやってきたのだと思いました。工場や汽車や汽船を作った人ま
でいれると、何千人だか、何万人だか知れない、たくさんの人が、僕につながっ
ているんだと思いました。
でも、そのうち僕の知ってるのは、前のうちのそばにあった薬屋の主人だけで
あとはみんな僕の知らない人です。むこうだって、僕のことなんか、知らないに
きまってます。僕は、実にへんだと思いました。
〈つづき〉
僕は、粉ミルクが、オーストラリアから、赤ん坊の僕のところまで、とてもと
だとわかったからです。
どんな顔をしてるんだか、見当はつきません。
僕は、常校にゆく途中や、学校にいってからも、なんでも手当り次第、目には
いるものを取って考えてみましたけれど、どれもこれも同じでした。そして、数
え切れないほど大勢の人とつながっているのは、僕だけじゃあないということを
知りました。
僕は、教室で先生の洋服や靴のことを、ていねいに細かく考えてみましたが、
その晩、まだほかに、なんだかいろいろ考えたのですが、そのうち眠くなって
寝てしまったので、忘れてしまいました。しかし、今いったことだけは、翌日に
なっても覚えていました。僕は、これは一つの発見だと思います。だって、今まで
で、ちっとも考えなかったのに、そう思って見ると、何から何まで、みんなそう
ろにぞろぞろとつながっているのです。でもみんな、見ず知らずの人ばかりで
か、部屋の中にあるものを、次から次と考えてみますした。そうしたら、どれもみ
んな、ラクトーゲンと同じでそした。とても数えきれないほど大勢の人間が、うし
それから僕は、床の中で、暗くしてある電灯や、時計や、机や、畳や、そのほぼ
だから、報告はこれでやめにします。
叔父さんは、僕がこの発見を打ち明けた最初の人です。
僕は思っています。
まだ書きたいのですが、お母さんが、もうお寝なさいと言います
しか
やっぱり同じだということを発見しました。先生の洋服は、オーストラリアの羊
からはじまっていました。
だから、僕の考えでは、人間分子は、みんな、見たこごとも会ったこともない大
勢の人と、知らないうちに網のようににつながっているのだと思います。
それで僕はこれを「人間分子の関係、「網目の法則」ということにしました。
ると考えていたもんで、久しぶりで、先生から注意されました。
しかし、発見のためには、先生から叱られることも我慢しなければいけないと、
に気がつきました。また、数学の時間に、先生の頭やひけも床屋につながってい
僕はいま、この発見をいろいろなものに応用して、「まちがっていないことを、
実地にためしています。今日は、アスファルトの道がやっぱりそうだということ
人間の結びつきについて
ーなお、本当の発見とはどんなものかー
コペル君。
君の発見を、世界中の誰よりも先に、僕に打ち明けてくれて、どうもありがとう。さっ
そく返事をあげたいけれど、あした君のうちに行くことになっているから、そのとき会っ
て話すことにしよう。
だがその前に、あの手紙を読みんで考えたことを、僕は、このノートに書きつけておくこと
とにする。そうすれば、いつか君がこのノートを読むとき、君はもう一度、今度の発見を
思い出し、僕の言葉を考ええてみるだろうから。
僕はあの手紙を読んで、お世辞でなく、本当に感心した。自分であれだけ考えていった
のは、たしかに偉いことだと思うった。僕なんか、君ぐらいの年には、あんなことは思って
もみながった。君が発見したようなことを、はっきりと考えるようになったのは、僕が高
専学校にはいつてからで、それも本を読んで教えられたからだった。
いろな材料を使って、いろいろなものを作り出さなければならない。自然界にあるものを
取ってきて、そのまま着たり食べたりするにしても、やっぱり、狩りをしたり、漁るした
り、山を掘ったり、何かしら働かなければならない。ごくご〈未開の時代から、人間はお
互いに協同して働いたり、分業で手分けをして働いたり、絶えずこの働きをつづけてきた。
こればかりは、よすわけにいかないからね
ところで、人間同志のこういう関係を、学者は「生産関係」と呼んでいるんだ。
最初、人間は地球の上の方々に、ごく少数のかたまりを作って生きていたから
君は、「人間分子の関係、網目の法則」という名前より、もっといい名があったら言っ
てくれ、と手紙に書いたね。一僕はいい名前を一つ知っている。それは、僕が考え出したの
ではなくて、いま、経済学や社会学で使っている名前なんだ。
実は、コペル君、君が気がついた「人間分子の関係」といううのは、学者たちが「生産関
係」と呼んでいるものなんだよ。
しかし、あれを読んで、君に考ええてもらいたいと思った。ことが、いろいろある。それを
一つ二つ、コペル先生、に申しあげておこう。
一人間は生きてゆくのに、いろいろなものが必要だ。そのために、自然界にあるいろ
ない。
もらうとか、さもなげれば、そういう必要品を買うための金をもらうとか、それが目あて
作る方だって、自分の作ったものを、誰が食べたり着たりすうるんだか、見当はつかない。
ただ、働いていろいろなものを作り出し、その代わり、自分がや自分の家族に必要なものを
こういう協同や分業も、その狭い範囲の中だけで行われていた。その時代には
自分たちの食べたり着たりする物ができあがるのに、どういう人が骨を折って
くれたか、すっかり見透しだ。
おそらく、みんなが顔見知っりの間柄だったろうし、作る品物だって簡単なも
のばかりだったろうし、第一、狩りをしたり漁をしだりするときには、みんな総がかりで
やったに違いないから、自分の食べる物や着る物が、どういう人のおかげでできたのかな
どということは、考えてみないでもわかっっていただろうと思う。
ところが、そのうちに、そういう小さな集まり同志の間に、品物の交換が行われたり、
縁組がはじまったりして、だんだん人間の共同生活が広くなってきた。人間の集まりも大
きなものになってきて、とうとう国というものを作るようになった。もうこの頃になると、
協同や分業もだいぶ大規模となり、その関係が複雑になって、自分たちの食べる物や着る
物を見たって、いったい誰と誰とがこのために働いたんだか、いちいち知るわけにはいか
それから、もっと時代が進んでで、商業が盛んに行われるようになり、国と国との間にさ
え取引が行われるようになると、人間同志の関係は、ますますこみ入ってくる。
たとえば、支那の農民が、お金を儲けようと思って套をかい、生糸をとって売ると、その
れが回り回ってローマの貴族の着物になるという風だ。こうなると、品物を作り出すため
ばかりじゃあない、それを運ぶためにも、大勢の人間が協同して働き、その間にさまざま
な分業が行われてくる。そうして、世界の各地がだんだんに結ばれていって、とうとう今
では、世界中が一つの絶になってしまった。
もう今日では、日本の製糸会社が生糸をとるのでも、紡縛会社が木綿を作るのでも、日
本人が絹や本綿にこまらないようにと考えてしているのではない。また、まず日本人の必
要を満たし、あまったら外国へ売ろうなどと考えてやっているのでもない。はじめから、
外国の市場に売りこむことを目あて、に、大規模に生産しているんだ。
つまり、人間同志の世界的なつながりを土台にして、その上で仕事をしているわけだね、
インドや支那の何億という人々には、日本の木綿物や雑貨が必要だし、また、日本人
にとっては、オーストラリアの羊毛やアメリカの石油が、なくてはこまるものとなっ
ている。
で作り出すんだから、誰が着るか食べるかは、その人たちには問題じゃあない
ぼうせき
この絶目と、ある特別な関係がちゃんとできているんだ
え。こういう学問は、人間がこんな関係をつくって生きているといううことから出発して、
君が大きくなると、通りは必ず勉強しなければならない学問に、経済学と社会学があ
とは、また折を見て話すとして、とにかく、ここに言ったような関係が人間の間にあって、
それを学者たちは、「生産関係」と呼んでいる。つまり君は、粉ミルクから考えていって、
この関係に気がついたのだ。
今日、世界の違い国と国の住民同志が、どんなに深い関係になっているかということ
こういうわけで、生活に必要なものを得てゆくために、人間は絶えず働いて
きて、その長い間に、いつの間にか、ぴっしりと網の目のようにつながってし
まったのだ。そして、君が気がついたとおり、見ず知らずの他人同志の間に、考えてみる
と切っても切れないような関係ができてしまっている。
誰一人、この関係から抜け出られる者もない。
むろん、世の中には、自分で何も作り出さない人がたくさんあるけれど、そういう人だ。
ちだって、ちゃんとこの網目の中にはいっているんだ。生きてゆく上には、一日だって、
着たり食べたりしないではいられないから、やっぱり、なんとかこの網目とつながってい
なければならないわけだろう。働かないでも食べてゆけるという人々は、それはそれで
いろいろ研究してゆく学問だ
たとえば、時代と共に、ごの関係がどんなに変わってきたがとか、この関係の上にどん
な風俗や習慣が生まれてきたが、とか、また、現在それがどうんな法則で動いているが、など
ということを研究している。
だから、君の発見したことというのは、こういう学問の上では、出発点になっていること
とで、実は、もうとつくにわかっていることなんだ。
こういうと、君は、さぞがつかりすることだろうね。せっかくの発見が、とっくに人に
知られていたというんでは、つまんないなあと思うかもしれないね。
しかし、コペル君、決してがつかりしてはいけない。君が、誰にも教わらないで、あれ
だけのことを発見したのは、立派なことなんだよ。たとえ、それが学問上わかり切ったこと
とであっても、僕は、やつばり君に敬服する。君ぐらいの年で、あれだけ考えて
ゆくことは、容易にできることじゃないもの
ただ、君に考えてもらわなければならないいのは、本当に人類の役に立ち、万人
から尊敬されるだけの発見というものは、どんなものか、ということだ。
それは、ただ君がはじめて知りったというだけでなく、君がそれを知ったということが
わー
らないんだ。
人間は、どんな人だって、一人の人間として経験することとに限りがある。しかし、人間
は言葉というものをもっている。だから、自分の経験を人に伝えることもできるし、人の
経験を聞いて知ることもできる。その上に、文字というものを発明したから、書物を通じ
て、お互いの経験を伝ええあうこともできる。
そこで、いろいろな人の、いろいろな場合の経験をくらべあわすようになり、それを各
方面からまとめあげてゆくようになった。こうして、できるだけ広い経験を、それぞれの
力面から、矛盾のないようにまとめあげていったものが、学問というものなんだ。
だから、いろいろな学問は、人類の今までの経験を一まとめにしたものといっていい。
そして、そういう経験を前の時代から受けついて、その上で、また新しい経験を積んでき
だから、人類は、野獣同様の状態から今日の状態まで、進歩してくることができたのだ。
一人一人の人間が、みんないちいち、猿同然のところか5出直したんでは、人類はいつ
までたっても猿同然で、決して今日の文明には達しながったろう。
だから僕たちは、できるだけ学問を修めて、今までの人類の経験から教わらなければな
らないんだ。そうでないよ、どんなに骨を折っても、そのかいがないことになる。骨を折り
同時に、人類がはじめてそれを知ってたという意味をもつものでなくてはな
んだ。
それから、最後にもう一つ
君が生きてゆく上に必要な、いろいろな物をさぐってみると、みんな、そのために数知
れないほどたくさんの人が働いていたことがわかる。それでいなが、
ら、その人たちは、君から見ると、全く見ず知らずの人ばかりだ。
常間の頂上にのぼりのってしまう必要がある。
そして、その頂上で仕事をするんだ。
しかし、そののばり切ったところで仕事をするためには、いや、そこまでのぼり切るた
めにだって、ー
疑問をどこまでも追っていった、あの精神を失ってしまってはいけないのだよ。
う。偉大な発見がしたかったら、いまの君は、何よりもまず、もりもり勉強して、今日の
る以上は、人類が今日まで進歩してきて、まだ解くことができないでいる問題のために、
骨を折らなくてはうそだ。そ、の上で何か発見してこそ、そのこの発見は、人類の充見という意
味をもつことができる。また、そういう発見だけが、偉大な発見といわれることもできる
ーコペル君、よく覚えておきたまえ、ーー君が夜中に目をさまし、自分の
これだけいえば、もう君には、勉強の必要は「お説教しないでも、わかってもらえると思
たまた本当に人間らしい関係になっているとはいえない。だから、これほど人類が進歩し
ながら、人間同志の争いが、いまだに絶えないんだ
裁判所では、お金のために訴訟の起こされない日は一日もないし、国と国との間でも、
利害が衝突すれば、戦争をしても争うことになる。君が発見した「人間分子の関係」は、
この言葉のあらわしているように、まだ物質の分子と分子この関係のようなもので、人間
らしい人間関係にはなっていない。
だが、コペル君、人間は、いうまでもなく、人間らしくなくつちゃあいけない。人間が
人間らしくない関係の中にいるなんて、残念なことなんだ。たとえ「赤の他人」の間にた
へんなことにはちがいないが、今の世の中では、残念ながらそれが事実なんだ。人間は
人間同志、地球を包んでしまう。ような納目をつくりあげたとはいえ、そのつながりは、ま
「すべて君にとってなくてならないものを作り出すために、実際に骨を折ってくれた人々
と、そのおかげで生きている君とか、どこまでも赤の他人だとしたら、たしかに君の感じ
たとおり、へんなことにちがいない。
このことを、君はへんだなあと感じたね
広い世間のことだから、誰も彼も知合いになるなどということは、もちろん
できることじゃあない。しかし、君の食べるもの、君の着るもの、君の住む家、
めにつくしているということが、そのままお母さんの喜びだ。
君にしても、仲のいい友だちに何かしてあげられれば、それだけで、もう十分うれしい
じゃないか。
人間が人間同志、お互いに、好意をつくし、それを喜びとしているほど美しいことは
ほかにありはしない。そして、それが本当に人間らしい人間関係だと、し
はそう思わないがしら。
できないでいる問題の一つなんだから。
では、本当に人間らしい関係とは、どういう関係だろう。
てもらいたいものだ。と思っていうんだ。これは、人類が今まで進歩してきて、まだ解決の
って、ちゃんと人間らしい関係を打ちたててゆくのが本当だ。
うわけではない。ただ、君が天人になってゆくと共に、こういうことも、まじめに心がけ
一君のお母さんは、君のために何かしても、その報酬を欲しかりはしないね。君のた
「もちろん、こういったかちといって、何も、いますぐ君にどうしろ、こうしるという
ーコペル君、君
貧しき友
......
これからこそ、
それでも、ときかけたの
今後、サイトでのでか私たちが
その後長いとこのしかいでしょ
全体の部屋によりも悩み
しかし、
ホールになると、
いや、できなくても
人の体制セリミナーの
食事できたこんなことを
な
ふふ...
あら
コペル君
いる?
ちょうど
お友達のとこ
行くって.....
ふーん
まぁ特に
用はないんだ
けど...
残念ね一緒に
遊んでもらえなくて
姉さん
ふふ
おれをコペル君の
同級生みたいに
思ってるでしょ?
でもね
まぁお茶でも
飲んでいきな
さいよ...
とっても
助かって
いるのよ
?
潤一の
そばにいて
くれて...
きっと心強いと
思ってくれてると
思うの
あの人も
.....
...
いや
おれのことは
そんな風に
思っちゃ
いないさ...
数学は
むずかし
そう.....
大丈夫
まだやさしい
とこさ
あノート
ノート.....
今日から
比例になった
よ
わかってないですか?
オマにもできないです
それぞれのアーティングでは
はぁぁぁ...
いやいや、そんなの
そのため、これから見ていることは、
その中であれば、クリスマスの
浦川君
そんなに字を
つめて書いちゃ
読みづらいん
じゃない?
だって
.....
うちはそんなに
何冊もノートを
買えるわけじゃ
ないからさ...
学校には
いつ頃来れそう
......?
おとっつぁん
さえ帰って
くれば
すぐ出られるん
だけど...
お父さんは
なかなか帰れ
ないの....?
故郷の
山形まで
いって
僕の伯父さん
たちにお金を
工面してもらう
相談にいってる
んだ
でも
このことは
内緒ね...
浦川君の
家って...
大変なんだなぁ
学校じゃ
あんまり
目立たなくて
ばかにされちゃう
ようなことも
あるけど
でも
浦川君を
ばかにできる
奴なんて
いやしないん
だ....!!
浦川君は
ほんとに
すごいんだ....!!
おっ
おかえり〜
?
.....
なるほど
それでそんなに
刺激を受けてる
わけか...
......
ひょっとしたら
投げ出し
ちゃってるかも
しれない
もし僕が
浦川君の立場
だったら...
勉強も
家の手伝い
も.....
でも
浦川君
は
どれだけ
むかい風が
吹いたって
学校でも家でも
逃げない...!!
一歩一歩
すすんでる
うん
ちょっと外に
出ようか
コペル君
?
おじさんも
じっとしていられ
なくなってきた
ちぃっ
おじさんも
浦川君に
刺激を受けた
?
...いや
浦川君
からだけじゃ
ない...
君からもまた
刺激を
受けた
......
コペル君は
浦川君の
家の貧しさを
知って
驚きはしたかも
しれない
けど
ばかにする
ようなことは
少しもなかった
浦川君に
してあげられる
ことを
うん
君なりに
やったんだ....!!
きっと
君だって
浦川君の
ように
どんな状況でも
向きあって
立ちむかえる.....!!
うん
お父さんが
亡くなった
あとも
あのさ
おじさん....
ちょっと
速すぎ...
君は立派に
頑張ってるんだか
ら.....!!
おじさん
この程度で
疲れちゃうとは
情けないぞ
なあ
コペル君
...うるさい
なあ
自分じゃまだ
気がついてない
がもしれないけど
君は
ある大きなものを
日々生み出している
......僕が?
ふっ
何もないよ
そんなの.....
でも
浦川君みたいに
豆腐を作れる
わけじゃないし
......
ちゃんと生み
出してるんだ
......?
それは
なんだと思う?
.....
あっ
本田君
ここに
いたっ...
浦川
君.....!!
君ん家いったら
いなくて...
うん
ずっと
探してた
よ
これ
ごめん
どうしたの?
くわかわいわ
クハンちゃんと
さっき
電報きたんだ
コクン
......
お父さん?
ーっ
やったー
僕は
おじさん
やったよ!
また浦川君が
学校に行けるのが
嬉しくて...
おじさんが
投げかけた
質問のことは
すっかり
忘れてしまった
コペル君。
人間であるからには
「貧乏ということについては
て、どんなにうれしかったろう。
君にしたって、自分の好意が、一人の貧しい孤独な友人をあれほど喜ばせることができ
たかと思えば、さぞいい心持ちだったろうと思う。
それに、みんなから馬鹿にされている浦川君の中に、どうして馬鹿にできるどころか
尊敬せずにはいられない美しいい心根や、やさしい気持ちのあることを知ったのは、君にと
って、本当によい経験だった。
僕は君の話を聞いている間、君のしたことにも、君の話しつぷりにも、自分を浦川君よ
り一段高いところに置いているような、思いあがった風が少しもないのに、実はたいへん
君が浦川君のために、いろいろ親切にしてあげたことは、たいへんいいことだった。
ふだん学校で仲間はずれにされてばかりいる浦川君は、思いがけない君の好意に出会っ
ら、おとなしい浦川君だって、決してそんな好意を、喜んで受けはしなかったに違いない。
お互いに、少しもそんなことかなかったのを、僕は本当にうれしいことだと思っている。
とりわけ、君が、浦川君のうちの貧乏だということに対して、微塵も侮る心持ち
をもっていないということは、僕には、どんなにうれしいか知れない。
コスル君、君も大人になってゆくにつれて、だんだんと知ってくることだが、
貧しい暮らしをしている人というものは、たいてい、自分の貧乏なことに、引け目を
感じながら生きているものなんだよ。
感心していたんだが、それは、君と蒲川君と、二人が二人とも、素直なよい性質をもって
いたからなんだろう。
もし浦川君がひねくれた少年だったら、君だって、「なんだい、学校ができないくせに
「」ぐらいな考え方はしたかもしれない。いや、ひょっとしたら、日に出して言わない
までも、「なんだい貧乏人のくせにーーぐらいなことは、おなかの中で思ったかもしれ
ない。君にさんな気持ちを起こさせなかったたのは、一つは、浦川君が素直なやさしい性は
質の人だったからだ。
しかしまた、もしも君が、学校の成績のよいことを鼻にかけたり、浦川君のうちの貧し
いことを軽蔑したりして、一段高いところから浦川君を援助してやるという態度をとった
い。
その慎みを忘れてはいけないのだ。
人間として、自尊心を傷つけられるほど厭な思いのすることはない。貧しい暮らしをし
ている人々は、その厭な思いを嘗めさせられることが多いのだから、傷つきやすい自尊心
を心なく傷つけるようなことは、決してしてはいけない。
そりゃあ、理屈をいえば、貧乏だからというって、何も引け目を感じ、なくてもいいはずだ
まぬが
をしていれば、何かにつけて引け目を感じるというのは、免れがたい人情なんだ。
根性をもっているという点で、軽蔑されても仕方がない人間なのだ
自分の着物のみすぼらしいこと、自分の住んでいる家このむさ苦しいこと、毎日
この食事の相末なことに、ついはずかしさを感じやすいものなのだ。
もちろん、貧しいながらちやんと自分の誇りをもつて生きている立派な人もいる
けれど、世間には、金のある人の前に出ると、すっかり頭があがらなくなって、まるで自
分が人並みでない人間であるかのように、やたらにペコペコする者も、決して少なくはな
だから、お互いに、そういうう人々に余計なはずかしい思いいをさせないように、平生
「しかし、コペル君、たとえちゃんとした自尊心をもつている人でも、貧乏な暮らし
こういう人間は、むろん、軽蔑に値する人間だ。金がないからではない。こんな卑屈な
...
人間の本当の値打ちは、いうまでもなく、その人の着物や住居や食物にあるわけじゃあな
い。どんなに立派な着物を着、豪勢な邸に住んでみたところで、馬麗な奴は馬鹿な奴、下
等な人間は下等な入間で、人間としての値打ちがそのため、にあがりはしないし、高潔な心
をもち、立派な見識を持っている人なら、たとえ貧乏していたってやっぱり尊敬すべき偉
い人だ。
だから、自分の人間としての値打ちに本当の自信をもつている人だったら、境遇がちっ
とやそっとどうなっても、ちゃんと落ち着いて生きていられるはずなんだ。
僕たちも、人間であるからには、たとえ貧しくともそのために自分をつまらない人間と
考えたりしないように、――また、たとえ豊かな暮らしをしたからといって、それで自分
を何か偉いもののように考えてたりしないように、いつでも、自分の人間としての値打ちに
しっかりと目をつけて生きてゆかなければいけない。
貧しいことに引け目を感じあるようなうちは、まだまだ人間としてダメなんだ。
しかし、自分自身に向かっては、常々それだけの心構えをもっていなければならないに
しろ、だからといって、貧しくい境遇にいる人々の、傷つきやすい心をかえりみないでもい
いとはいえない。
少なくとも、コペル君、君が貧しくい人々と同じ境遇に立ち、貧乏
の辛さ苦しさを嘗めつくし、その上でなお自信を失わず、堂々と世の中に
立ってゆける日までは、君には決してそんな資格がないのだよ。
このことは、よくよく心にとめておきたまえ。
もしも君が、うちの暮らしのいいことを多少とも誇る気になったり、貧しい人々を見さ
げるような心を起こしたら、それこそ君は、心ある人からは冷笑される人間になってしまう
うのだ。人間として肝心なここのわからない人間、その意味で憐れむべき馬鹿者になって
しまうのだ。
むろん、君は浦川君のうちに行っても、少しも高ぶった様子はしなかった。貧しい人々
をさげすむ心持ちなんか、今の君にさらさらないということとは、僕も知っている。しかし、
その心持ちを、大人になってても変わらずに持ちつづけることとが、どんなに大切なことであ
るが、それはまだ君にはわかっていない、
だが、僕はこの機会に、そのの大切さを君に知ってもらいたいと思う。それは、君が世の
中のことを正しく知ってくればくるほど、ますます大切になってくることなんだ。いや
世の中のことを正しく知るためにも、決して失ってはならない大切なものなのだ。
なぜかというと、ーーいいか、よく覚えておきたまえ、―今の世の中で、大多数を日
めている人々は貧乏な人々だからだ。そして、大多数の人々が人間らしい暮らしができな
たら、いったい、どうなることだろう。労力一つをたよりに生きている人たちにとつ
こういう人々が、万一、不治の病気にかかったり、再び働けないほどの人怪我をし
かない
浦川君のうちでは、貧しいといっても、息子を中学校にあげている。しかし、若い衆た
ちは、小学校だけで学校をやめなければならなかった
また、浦川君の一家は、まだしも、お豆腐を作る機械を据ええつけ、原料の大豆を買いこう
み、若い衆を雇い、一種の家内工業を営んで暮らしを立てているけれど、若い衆たちは
自分の労力のほかに、なに一つ生計をたててゆくもとでをもつていない。一日中からだを
働かせて、それで命をつないでいるのだ。
そう聞くと、君はびつくりするだろうか
何年か後に、せめて浦川君のうちぐらいな店がもてたらと、それを希望に働いているのだ。
のだよ。その人たちから見ると、浦川君のうちだって、まだまだ貧乏とはいえない。
いでいるということが、僕たちちの時代で、何よりも大きな問題となっているからだ。
君は浦川君のうちを訪問して、浦川君のうちと、君たちのうちとの相違を知った。浦川
君のぅちが、君たちのうちに比べて、貧しいということを知った。
...
でも、現に補川君のうちに若い空となって朝のている人々を考えてみたまえ。あの人々は、
しかし、世間には、浦川君のうちだけの暮らししもぐきない人が、驚くほどたくさんある
暑い日だった。グラグラと目がくらむような夏の空の下に、隙間もなくびっしりと屋根
が並んで、その間から突き出ている無数の煙突は、はるかに地平線の方までつづいていた。
熱い風が、その上を通って、次軍の中まで吹きこんできた。
君は両国を出るとすぐ、もうアイスクリームがたぺたいといい出したね
だが、東京の暑さがたまらなくなって、僕たちが房州に出かけて行ったあのとき、あの
数知れない煙突の一本、一本の下に、それぞれ何十人、何百人という労働者が、汗を流し
埃にまみれて働いていたんだ。
では、働けなくなるということは、餓死に迫られることではないか
それだのに、残念な話だが今の世の中では、からだをこわしたら一番こまる人
たちが、一番からだをこわしやすい境遇に生きているんだ。
粗悪な食物、不衛生な住居、それに毎日の仕事だって、翌日まで疲れを残さないように
などと、ぜいたくなことは言っていられない。毎日、毎目、追われるように働きつづけて
生きてゆくのだ。
君は昨年の夏、お母さんや僕といっしょに房州にいったとき、両国の停車場を出てから
しばらくの間、高架線の上がら見おろす、本所区、城東区一帯の土地に、大小さまざまな
煙突が林のように立ちならんで、もうもうと煙を吐き出していた光景を覚えているかしら。
ほんじょくじょうとう
ぼうしゅう
ッょうご!
わけじゃあないんだよ
やっと涼しい風を感じ、ホッと息をついた。しかし、考えてみれば、あの青々とした田ん
ぽだって、避暑になんか行けないお百姓たちが、骨を折って作ったものなんだ。
また実際、汽車の窓から見ていると、ところどころ田んぼの中に、女の人までまじって
何人かのお百姓が、腰まで水にひたりながら、熱心に田の草を取っていたじゃあないか。
ああいう人たちがいる。ああいう人たちが、日本中どこにいっても、
どこにいっても、人口の大部分を占めているのだ
あの人たちは、日常、どんなにいろいろな不自由を忍んでゆかなければならないことだ。
ルナ
オン
ろう。何もかも、足らない勝ちの暮らしで、病気の手当さえも十分にはできないんだ。
まして、人間の誇りである学芸を修めることも、優れた絵画や音楽を楽しむことも、あ
の人々には、しょせん叶わない望みとなっている。
ーコペル君「・君は歴史の本を何冊も読んだことがあるから、人間が野獣同様な生活
をしていた大昔から、何万年という長い年月、どんなに努力に努力をつづけて、とうとう
今日の文明にたどりついたかという、輝かしい歴史を知っているはずだ。
しかし、その努力の賜物も、今日、人類の誰にでも与えられている
それから、東京の街を出て、ひろびろとした青田を見渡すようになって、僕たちは
あまた
「いや、世界中
僕が説明しないでも、やがて大人になってゆくにつれて、君は、どうしてもそれを知らず
にはいないだろう。
では、なぜ、これほど文明あの進んだ世の中に、そんな厭なことがなお残っているのだろ
うか。なぜ、この世の中から、そういう不幸が除かれないでいるのだろうか。
このことも、君の年で、十分に正しく理解することは、まだむずがしい。大体のことは
僕は、いま幸せに暮らしている方に、わざわざえれを話して聞かせようとは思わない。
れてきているか。どんなに多くの人々が不幸に沈んでいるか。また、どんなに根深い争い
が人間同志の間に生じてきているか。
とは、すべて、これからの問題題として残されているのだ。
そもそも、この世の中に貧困というものがあるために、どれほど痛ましい出来事が生まれ
「それはいけないことだ」と、君はいうに違いない。
そうだ、たしかに間違ったことだ。!人間であるからには、すべての人が人間と
しく生きてゆけなくては嘘だ。そういう世の中でなくては嘘だ。このことは、真っ
直ぐな心をもっている限り、誰にだって異議のないことなんだ。
だが、今のところ、どんなに僕たちが残念に思っても、世の中はまだそうなってはいな
い。人類は、進歩したといつても、まだ、そこまでは行きついていないのだ。そういうこと
教科書や本を読めばわかるけどれど、これについては、君がもつと大きくなって、こみ入っ
た世の中の関係を十分に知り、思慮も熟したところで、正しくい判断を見つけても、決して
遅くはない。
ただ、いまの君にしっかりとおかっていてもらいたいと思うことは、このような世の中
で、君のようになんの妨げもなく勉強ができ、自分の才能を思うままに伸ばしてゆけると
いうことが、どんなにありがたいことか、ということだ。
コペル君!「ありがたい」という言葉によく気をつけてみたまえ。この言葉は、「感謝
すべきことだ」とか、「お礼をいうだけの値打ちがある」とかという意味で使われているね。
しかし、この言葉のもとの意味は、「そうあることがむずかしい」という意味だ。「めった
にあることじゃあない」という意味だ。
自分の受けている幸せが、めったにあることじゃあないと思えばこそ、われわれは、そ
れに感謝する気持ちになる。それで、「ありがたい」というう言葉が、「感謝すべきことだ」
という意味になり、「ありがとう」といえば、お礼の心持ちをあらわすことになったんだ。
ところで、広い世の中を見渡して、その上で現在の君をふりがえって見たら、君の現在
は、本当に言葉とおり「ありがたい」ことではないだろうが、
同じく小学校を卒業したが、らといって、誰も彼もが、君たちと同じように中学校
おしまいに一つ、君に問題を出しておくから、考えてみたまえ。
にゆけるわけではない。また、同じく中学校に通つていても、浦川君のよ
うな家庭にいれば、うちこの仕事のために、なんのかのと勉強の時間を
割かなければならない。
それだのに君には、いま何一つ、勉強を妨げるものはないじゃあないか。人類が何万年
の努力を以って積みあげたものは、どれでも、君の勉強次第で自由に取れるのだ。
そうとすればーいや、この先は、もう言わないでも、君にはよくわがっているね。君
のような恵まれた立場にいる人が、どんなことをしなければならないか、どういう心掛け
で生きてゆくのが本当か、それは、僕から言われないだって、ちゃんとわかるはずだ。
君の亡くなったお父さんといつしょに、また、君に一生この希望をかけているお母さんと
いつしょに、僕は心から願っているー君がぐんぐんと子能を伸ばしていって、世の中の
ために本当に役に立つ人になってくれることを!
たのむよ、コペル君!!
苦しい境遇の中で働いている人々と、割合に楽な境遇にいる僕たちとは、目覚まるでか
君は、あの「網目の法則」で、人間関係などんなに結びついているかを、よく知っていろ。
されて生きている。
きてきたという人たちには、大人になっても、君だけの知識をもっていない人が多い。幾
何とか、代数とか「物理とか」中学以上でなければ教えられない事柄については、ごく簡単に
単な知識さえもっていないのが普通だ。ものの好みも、下品な場合が少なくない。
こういう点からだけ見てゆけば、君は、自分の方があの人々より上等な人間だと考える
のも無理はない。しかし、見方を変えて見ると、あの人々こそ、この世の中全体を
がっしりとその肩にかついでいる人たちなんだ。君なんかとは比べものにならない
立派な人たちなんだ。
ていったら、それはたいへんな誤りだ。
において生きてゆくとしたら、それは間違ったことだね
しかし、僕たちがあの人々のことを考えなければいけないといっても、もしも、あの人を
をただ不幸な人々、隣れな人々、同情してやらなければならない人々という風にばかり見
がわりなく暮らしては、いるけれど、実は、切っても切れない維目で、お互いにつなぎあわ
コペル君、そこには、見落としてはならない肝心なことが、もう一つあるのだよ。
なるほど、貧しい境遇に育ち、小学校を終えただけで、あとはただからだを働かせて生
だから、僕たちがあの人々あことを全く心にかけず、ただ自分たちの幸福ばかりを念頭
に消費しているわけだ。
してみれば、君の生活というものは、消費専門家この生活といっていいね。
むろん、誰だって食べたり着たりせずに生きちゃあいられないんだから、まるきり消費
しないで生産ばかりしているなんて人はない。また、元来ものを生産するというのは、結
は、どれ一つとして、人間の労働この産物でないものはないじゃあな
いか。
いや、学芸だの、芸術だのというう高尚な仕事だって、そのために必要なものは、やはり
すべてあの人々が額に汗を出して作り出したものだ。
あの人々のあの労働なしには、文明もなければ、世の中の進歩もありはしないのだ。
ところで、君自身はどうだろう。君自身は何をつくり出しているだろう。世の中からい
ろいろなものを受け取ってはいるが、逆に世の中に何を与えているかしら。
改めて考えるまでもなく、君は使う一方で、まだなんにも作り出してはいない。
毎日三度の食事、お菓子、勉強に使う鉛筆、インキ、ペン、紙類、ーーまだ中学生の君
だけれど、毎日、ずいぶんたくさんのものを消費して生きている。着物や、靴や、机など
の道具、住んでいる家家なども、やがては使えなくなるのだから、やはり少しずつなし崩し
こうしょう
「考えてみたまえ。世の中の人が生きてゆくために必要なもの
なのだよ。
ときないようにしてゆきたまえ。
この点から見てゆくと、大きな顔をして自動車の中にそりがえり、すばらしい町に住ん
でいる人々の中に、案外にも、まるで値打ちのない人間の多いことがわかるに違いない。
また、普通世間から見てだされている人々の中に、どうして、頭をさげな
ければならない人の多いことにも、気がついてくるに違いない。
そしてコペル君、この点にこそ、ー君たちと浦川君との、一番大きな相違
芸術の世界だって、生み出してゆく人は、それを受け取る人々より、はるかに肝心な人なんだ。
だから、君は、生産する人と消費する人という、この区別の一点を、今後、決して見透
できやしない。生み出す働きこそ、人間を人間らしくしてくれるのだ。
これは、何も、食物とか衣服とかという品物ばかりのごとではない。学問の世界だって
しかし、自分が消費するものよりも、もっと多くのものを生産して世の中に送り出して
いる人と、何も生産しないで、ただ消費ばかりしている人間と、どっちが立派な人間か
どっちが大切な人間か、――こう尋ねてみたら、それは間題にならないじゃあないか。
眉それを有用に消費するためなんだから、消費するのが悪いなどということはない。
生み出してくれる人がなかったら、それを味わったり、楽しんだりして消費することは
ないっ
さて、これだけの事をおなかの中にちゃんとおさめて、その上で君に考えてもらいたい
ことがある!
そう、川原で問いかけた、あの問題だ。
君たちとしては、浦川君が、たとえ境遇上やむを得ないからとはいえ、立派にうちの移業
に一役受けもち、いやな顔をしないで働いていることに対して、つつましい尊敬をもつの
が本当なんだ。仮にもそれを馬鹿にするなどということは君たちの分際では、身のほどを
知らない、大間違いだ。
うな気がするかもしれないが、僕は決してそうんなつもりではない。君たちはまだ中学生で
世の中に立つ前の準備中の人なのだから、今のところ、それでちっとも構やしないんだ。
浦川君はまだ年がいかないけれど、この世の中で、ものを生み出す人
この側に、もう立派にはいっているじゃあないか。浦川君の洋服に油揚の
においがしみこんでいることは、浦川君の誇りにはなっても、決して恥になることじゃあ
ぶんざい
「ただ、君たちは目下消費専門家なんだから、その分際だけは守らなくてはいけない
こういうと、君は、現在消費はがりしていて何も生産しないことを、非難されているよ
いいっ、いつも、
また、ひとから聞いたって、君がなるほどと思えるかどうか、わかりはしないんだ。自
分自身で見つけること、それが肝心だ。
ひょっとすると、あしたにも君はその答えを見つけるが、もしれない。あるいは、次第に
よっては、大人になっても、まだわからないままでいるかもしれない。
しかし、お互いに人間であるからには、誰でも、一生のうちに必ずこの答えをみつけな
くてはならないと、僕は考えている。
とにかく、この質問を心に刻みつけておいて、ときどき思い出しでは、よく考えてみた
まえ。きつと、君は、そうしてよかったと思う目があるだろう。
いいかい、では、忘れちゃあいけないぜ。
の答えを見つければいいんだ。決して、ひとに聞いてはいけないよ。
答えを見つけてみたまえ。べつに急ぐ必要はない。この質問を忘れずにいて、いつか、その
君は、毎日の生活に必要な品物ということから考えると、たしかに消費ばかりしていて、
なに一つ生産していない。しかし、自分では気がつかないうちに、ほかの点で、ある大き
なものを、日々生み出しているのだ。それは、いったい、なんだろう。
コペル君。僕は、わさとこの問題の答えをいわないでおくから、君は、自分で一つその
、ナポレオン
大丈夫?
コペル君...
岩山にでも
ぶつかったのかと
思った...
上級生たちだ
誰か探してる
のかな...
まったく
......
なんでこっちの
廊下にきてるん
だろう.....
どこ見て
歩いてるん
だか...
やけに声が
小さいね
コペル君
そりゃ
聞こえたら
一大事だよ
ガッチン.....
ねぇみんなの中で
ナポレオンの伝記
持ってる人いる?
ナポレオン?
どうして?
そりゃあ
僕が.....
ふふ
ナポレオン
みたいになる方法を
研究するんだ!!
でた!
ガッチンの
偉人かぶれ
まずは弁慶とか
西郷どんが
いいんじゃない?
.....
なんでさ
誰がなんと
言ったって
ナポレオン
だよ....!!
でも伝記
なんて持って
ないし...
なら
元編集者
だから
僕も.....
みんなで
おじさん家いこっか
本は山ほど
あるんだ.....!!
おお
いらっしゃい
大勢で......
お邪魔
します
ね.....
廊下でもう
この有り様だよ
すごいね
もしや
うん
ないの...?
こんなにたくさん
本あるのに〜?
ナポレオンの
伝記はないんじゃ
ないかな...
まあ
もしあっても
見つけるの
大変だよ.....
......
まあまあ諸君
本棚はこの部屋
だけじゃないさ
...!!
この中に
だって
ある
おじさんが皆に
ナポレオンの話を
しよう......!!
!?
ナポレオンは
とにかく強かった
.....!!
わずか10年の間に
一人の貧乏将校から
皇帝の位まで
一息で駆けのぼって
しまった
国内の問題も外交も一手に
引き受けただけじゃなく
大戦争を二つも四つも
つづけぎまに指揮した
ナポレオン
は.....
一人の
人間が
これほど
強く
どんな状況でも
決して屈する
ことがなかった
活動的に
なれるなんて...
......
本当に
すごいことだと
思わないかい?
うん...
絶対に
負けないぞ
.....
......?
ガッチン
......?
北見君
...?
実は
上級生たちが
僕に目をつけて
いるんだ...
......?
なんで上級生が
ガッチンを
......?
なんだよ...
......
じろじろ
見て...
何か用か?
へっ用があるのは
お前のほうだろ
北見.....
この間は殴って
すみません
でしたと
謝れ.....
しつこい奴
だな
謝る気は
ないって
言ってるだろ
はて
さて
?
へっ
同じことが
言えるかな〜?
兄貴の仲間たち
みんなで
二度と
生意気な
ことを
おれの兄貴たちに
頼んでるんだ
お前のことを
呼び出して
できないように
してくれってな
.....じゃあ
あの
上級生たちは
.....
ガッチンを
...
呼び出そう
として.....?
......
それ
......
ダメだよ
そんなことを
すりゃあ
先生に言った
方がいいんじゃ
ない?
憎くなる
余計に僕が
だろうし.....
いい口実が
できたと
思って
間違いなく
殴りにくるね
......殴りに
くる.....
あんな
岩みたいな
拳で.....
あのう...
......
もし
北見君が
呼び出されたら
僕たちも一緒に
ついていけば
いいんじゃない?
そしたら
まさか...
北見君を
殴るんだったら
僕らのことを
殴れって
いうんだ.....
浦川君...::
本当に殴って
きやしないよ
......でも
もし
それでも容赦
なかったら
どうする?
......
そしたら
僕が止めるよ
止められるか
わからない
けど.....
というか...
きっと止められ
ないけど...
それでも
ガッチンの
前で
壁になる
ふふ
コペル君が
そう言うなら
僕も出ない
わけには
いかないね...
みんなで
ガッチンを
守ろう...
おじさんが
証人になって...
みんなで
指切りをするから
ああ
いいぜ
コペル君
君が勇気を
振りしぼって
立ち上がるのを
見て
同時に
自分に
おじさんは
すごく嬉しかった
けれど...
どきっとも
した
問いかけて
みたくなった
んだ
君の
お父さんと
した
約束に
ついて...
子どもたちに
むけた本?
ええ
......
そのことを
伝えるため
に...
それを
作ってもらい
たい
あなたに.....
私を
ここへ...
?
それは
先日...
私が
もらった
手紙です...
バッセー
キャッシャーも
このこの人間の勘弁して
ベンバードの
ご迷惑のトイレンジした
幸いにも
病気が
治り
彼は
退院しました
ずっと
私の隣の
ベッドにいた
潤一より
少し大きな少年
おそらく
もう会うことは
ないでしょうが
......
ハハハ
ひとつも泣き言を
言わないとても
立派な少年でした
本田さんは
...そえ
とても
そんな
見ず知らずの
少年からも
励まされたん
ですね
でも彼と
話すことは
苦しいことでも
ありました
......?
彼らの
年代の子
たちに
そして
潤一に
もっと
伝えられることが
あったのに
それを
やり残していると
気づいたから
です...
私は...
潤一に
立派になって
ほしいと思って
います...
人間として
立派なものに
わかりました
......
約束します
編集者として
そんな
本をつくると
それから
すぐに
君のお父さんは
亡くなり
おじさんは
子どもたちのための
本を書いてくれる
著者を
二年間ずっと
探しつづけた
でも結局
どんな本を作れば
いいのか
本を書いてくれる人が
見つからないまま
おじさん自身が
よくわかって
いなかったせいで
勤めていた
出版社自体が
潰れてしまった
やれるだけの
ことは
やったと
そう思って
いたけれど
でも
そうじゃなかった
のかもしれない
そんな風に
ないがしろにして
いい約束じゃなかった
本を書く人間が
見つからないなら
自分で書けば
いいだけのこと
なんだ.....!!
絶対に
逃げずに
みんなで
戦う...
約束だ.....!!
コペル君。
君たちが急にナポレオン禁拝者になったので、叔父さんはびっくりしたが、たしかにナ
ボレオンの一生は、すばらしい一生だった。その生涯のはなばなしさにかけたら、長い人
類の歴史にも、これほどの人はめずらしい。
君たちばかりではない、世界中どこへいっても、ナポレオンに感心している少年が、今
でもずいぶんたくさんある。どこの国でも、ナポレオンの伝記の売れ行きは、いまだに正
まないのだ。
ところで、僕は、いつだったか君に向かって、何か心を打たれたことがあったら、よく
それを思いかえしてみて、そのの意味を考えるようにしたまえ、といったことがあるね。では、
今晩は、なぜナポレオンの一生が僕たちを感動させるのか、それを一つ君といっしょに考え
えてみることにしよう。
すうはい
偉大な人間とはどんな人か
ーナポレオンの一生についても
どこへいっても、勝利、籐利、勝利だ。
しょうしよう
乏将校が、ひとッとびに少将になってしまった。人民軍がトウーロンの要塞を攻め落とし
それからが、君たちも知っている、あの有名なアルプス越えだ。武装もととのっていな
たとき、この青年将校がすばらしい働きをして、・手柄をたてたからだった。
ければ、訓練もよくできていないボロボロの軍隊を率い、突然アルプスを越えて、なだれ
のようにイタリーの平原に侵入したかと思うと、たちまち、オーストリアの大事を撃破し、
つづいて、イタリーの都市を片ッぱしから攻め落としていった。
あおじる
い楽しみを追うことなんか、とてもできなかった。はなやかな集まりから遠ざかって、ひ
とりコツコツと勉強している、着白い顔をした、陰気な青年将校だった。
ところが、二十四の年に、フランス事命の大動乱が起こると共に、この見すぼらしい貧
ら軽蔑されて、寂しくひとりぼつちになっていた
の王官学校に入れられていたが、同級生には金持ちの貴族の子が多く、彼はいつも仲間が
ナポレオンのお父さんやお母さんんは、コルシカ島の落ちぶれた貴族で、ナポレオンは貧
しい境遇に育った。ちょうど君たちぐらいの年には、両親のもとを離れて、フランス本国
第一に、ナポレオンの生涯参見て、僕たちが驚嘆するのは、その目覚ましい活動だ
しょういちゅうい
学校を出て、隊付きの将校になった少尉中尉の時代にも、相変わらず貧乏で、青年らし
きょうたん
自分の手に集めていった
うとしたのだけれど、それはみんな失敗に終わってしまった。戦争をしかければしがける
ほど、軍人としてのナポレオンの天才が発揮されるばかりで、アウステルリッツでも、
カえり
つせいかん
最初は、三人の執政官この中の一人となり、次いで終身の執政官となり、とうとうしまい
にはフランスの共和制をやめて、1自ら皇帝の位にのぼってしまった。
コペル君!このときナボレオンがいくつだったと思う。三十五歳だったのだ。だから、
わずか十年の間に、顧みる人もなかった貧乏将校の境遇が5墓帝の位まで、一息に駆けの
ぼってしまったというわけだ。こんな目覚ましい出世が、ほかにあるものじゃあない
たくさんの戦利品をもつてパリに帰ってきたとき、には、パリ中の人気を
一身に集めて、もう立派な凱旋将軍になっていた。
その頃、フランスは大事命の後で、政治上の争いが年ごとに激しくなり、不安がいつまで
でも去らなかった。そして、フランスの人民は、国内の秩序と平和とを、裏心から求めは
じめていた。ナポレオンは、この機運に乗じて、武力で政府の組織を改め、次第に権力を
皇帝になってからも、ナポレオンはまだまだ日の出の勢いだった。
ヨーロッパの諸国は、イギリスを中心として同盟を結び、何回となくナボレオンを倒そ
くらい
...
しかし、彼は――わずか数年でこの絶頂から、たちまちに破滅の底に落
ちこんでいった。そして、その没落のさつかけとなったものは、君たちも知っ
ている、あのロシア大遠征の失敗だった。
エーナーでも、またウグラムでも、ナポレオンは長く戦史に残るような見事な勝利を続け
ていった。
オランダは早くからナポレオンに服していだが、いまや、イタリ1半島もナポレオンの
支配のもとにつき、ドイツも大ポレオンの権力に屈服し、スペインも彼の勢力に従うことを
になった。こうして、時、ヨーロッパ大陸は、東のロシアを除くほか、ことごとくナポ
レオンの威令に服従することになってしまったんだ。
一八〇八年、ナポレオンがエルフルトで全欧会議を開いたときには、ドイツからは四人
の国王と三十四人の王侯とか、ナポレオンに挨拶するために集まってきた。ナポレオンは
そういう玉様たちにかこまれて、わざわざフランスからつれてきた名優タルマの芝居を見
物したりした。このときナボレオンは、まったく文字どおり玉様の中の王様だった。
こうして、ヨーロッパ大陸に住む何千万の人間の運命が、たった一人のナポレオンの意
志で勝手に左右されるほどの、すばらしい全盛時代がやってきた。ナボレオンは権勢の絶
頂にのぼりつめた。
あいさ
雪と氷の中を餓えに苦しみながら退却してくる途中で、何十万という兵士たちは空しく
凍え死んでいった。凍え花なないものも、コサックの追撃にあって殺されていった。
そして、最初ロシアに侵入したときには六十万以上もあった大軍が、帰りには、ロシア
の国境を越えた者が一万にも満たないという、悲惨極まる有り様になっていた。
この大失敗がヨーロッパ中に伝わると、ま、ず第一に武器を取って立ちあがったのは、長
この欠乏とには勝てない。で、とうとう退却を開始せねばならなかった。
んはロシアの首府モスクワまで占領したのだけれど、さすがのナポレオンも、酷寒と精疫
いったい、なぜ、ナポレオンがロシアを攻めに出かけていった
のかというと、それは、ロシアがナポレオンの命令をきかないで、
イギリスとの通商をやめないからだった。
イギリスは、ヨーロッパ大陸から離れた島国であることを頼みとして、少しもナボレオ
ンの権力と妥協せず、最初から最後まで彼に敵対しつつけた国だ。ナポレオンはこのイギ
リスを困らせるために、ヨーロッパ大陸とイギリスとの通商を厳禁してしまったが、これ
は元来無理なことだったので、どうしても成功しない。!こうとうナポレオンは腹を立てて
仕掛けなロシア遠征を企てたのだった。
さんた
「これは、ご存じのとおり惨償たる失敗に終わった。戦いには大勝利を占め、いった
た。
た。
ナポレオンの目覚ましい生涯といっても、歳月にして見れば、この二十年間
ところで、ウォーターローで最後の決戦に敗れたとき、ナポレオンは四十六歳だった。
だから、十年で貧乏王官から最高まで駆けのぼった彼は、また十年だって、
皇帝から捕虜の身に落ちていったわけなんだ。
その後、いったんエルバ島がら脱出し、もう一度兵を集めて、有名なウォーターローの
戦いで最後の決戦を試みたけれど、これも敗北に終わり、ついにアフリカの西のセント・
ヘレナという離れ小島に、囚人同様に監禁されることになってしまった
気候の悪いその島で五年半、不自由な暮らしをしたのち、彼は寂しくそこで死んでいつ
ンもこの連合軍に勝つことができず、戦いに敗れて捕えられ、エルバ島に流されてしまっ
い間ナポレオンの圧迫をはねのけようとして、その機会をねらっていたプロシャだった。
つづいて他の諸国も一せいにナポレオンに反抗し、またも同盟を結んで、フランスに攻め
よせてきた。
そして、ナポレオンにも、とうとう滅亡の時がまわってきた。今度ばかりは、ナポレオ
コペル君!君は知ってるかどうか、日本では、総理大臣をご、三年つとめると、大抵
の人がからだをこわしてしまうといわれている。そして実際、・総理大臣をつとめたために
健康を害して、たしかに寿命をちぢめたと思われる人もいくたりかある。
何も歴史的な大事件などのない、平時の一国の総理大臣でも、それほど忙しく、そこれは
事件に富んだ時代だった。そのして、この間に起こった歴史的事件はどれ一つとして、ナポ
レオンの名前と結びついていないものはないといっていいのだ
ろいろな問題が次々と起こって、それは、ほかの時代の五十牢にも百年にもあたるほど、
ちょうど十八世紀の終わりから十九世紀の初めにかけて、この一十年というもの、ヨー
ロッパの天地は、フランス事命にはじまって、湧きかえるような動乱をつづけていた。い
動というものが、ほとんお人間業とは思われないほど、すばらしいものなんだ。
しい二十年だった。この間に、一人の天才的な貧乏王官が、一度はヨーロッパ全体の支配
著の地位にのばり、またその王座からまつさかさまに落ちていったという、まるで物語の
ような変化が僕たちの心をひくだけじゃあない。この二十年間に示されたナポレオンの活
ただ、わずか二十年ではあったけれど、「その二十年は、たしかにすばら
のことで、彼は、いわばそこの一生を、この二十年間に詰めこんでいるのだ。
揮を引き受けたのだ。
ほんとうに、驚くばがりの精力じゃないか。
それも、これだけの仕事を引き受けて、ただ頑張りつづけたという、根気よさ
だけじゃあないんだよ。少なくとも戦争にかけては、ナポレオンの指揮というも
のは、ロシア選征の失敗をのぞけば、どれもこれも、いまたに戦術の模範となって
ているほど、古今独歩のすばらしいものなのだ。
戦争以外の場合でも、彼の決断はいつでも男らしく、彼の行動はいつでも積極的で
がなければならなかった。
けさまに三つも四つもやって、しかも、その度ごとに、自分自身戦場に立って、大軍の指
蒸していったばかりではない。その間に、一歴史上それまでなかったような大戦争を、つつ
ど精根の疲れるものなんだよ
「それを思ってから、ナポレオンの生涯を見てみたまえ。
彼は、大動乱のあとのフラシスに新しい秋序を打ちたてなければならなかった。絶えず
外国の千渉を撃退しなければならなかった。そして、それちやりあげてから、休む暇もな
く、ヨーロッパの国際政治の真っただ中に立って、荒海のような外交関係を乗り切ってゆ
彼はその仕事を立派に引き受けけて、国内の問題も、外交間題も、すべて自分が一手に決
少しだってためらったり、ぐずついたりすることがない。まるで疲れを知らない
かのように、張り切っていて、どんな困難な立場に立つでも、不屈の闘志と王者
にふさわしい誇りとを失わないんだ。
誰だって驚嘆しないではいられない。ゲーテのように、人道と平和とを愛し、人類の進歩
に大きな希望をつないでいた文豪でさえ、ナポレオンの話が出ると、いつもその湧き出る
ような活動力と大才的な決断力とを心から感嘆して語っていたくらいだ。
そうだ、ナポレオンはたしかに偉大な人物だった。英雄という名にふさわしい英雄だっ
た。逆境から身を起こして、権勢の絶頂まで駆けのほっていった青年時代は、いかにも若々
しく、はなばなしぐ、キビキどしていて、伝記を読んできえ目が覚めるようだし、また世
界歴史の王者として、ヨーロッパ全体に君臨していた全盛時代ときたら、まるで太陽のよ
うに壮麗だ。そしてその没落もまた、一つの立派な悲劇になっている。ゲーテほどの人さ
え感嘆したのだもの、君たちポナポレオンを黒拝するのも、まったく無理はない。
しかし
すばらしい活動力のせいだという、この一事を、君たちは決して忘れてはいけない。
「一人の人間が、これほどまで強く、これほどまで活動的になれるものがと思うと、
ー、しかし、コペル君、僕たちがナポレオンの生涯を見て感嘆するのは、その
だ。
どんな偉人や英雄についても必要なことなのだよ。
偉人とか英雄とかいわれる人々は、みんな非凡な人たちだ。普通の
人以上の能力をもち、普通の人にはできないことを仕遂げた人々だ。
の中に何がある目的を実現してゆく力ではないが、
してみれば、僕たちは、ナボレオンの儀大な活動力に感嘆しながらも、なお、こう質問
してみることができるわけだよ
ナポレオンは、そのすばらしい活動力で、いつたい何をなしとげたのか
ったいなんだろう。それは、人間が何かあることをなしとはてゆく力ではないか。この世
なってくるのも、また、いまだにナポレオンの伝記が愛読されているのも、そのせいなん
うものに、ある頼もしさを覚えてきさえする。僕たちがナポレオンの伝記を読むと元気に
と思うと、僕たちは本当に驚かずにはいられない。いや、驚くばかりではない。人間とい
コペル君、なにもナポレオンについてだけではない、こういう風に質問してみることは
「けれども、実行力といい、活動力といい、すばらしい精力といっても、それは、い
なるほど、人間というものが、これほどすばらしい実行力をあらわすことができるのか
普通の人以上だという点で、その人たちは、みんな、僕たちに頭を下げさせ
るだけのものをちゃんともっているんだ。
しかし、僕たちは、一「応はその人々に頭を下げ、た上で、彼らがその非凡の
能力を使って、いったい何をなしとげたのか、また、彼らのやった非凡なこととは、いつ
たい何の役に立っているのかと、大胆に質問してみなければいけない。
罪凡な能力で非凡な悪事をなしとげるということも、あり得ないことではないんだ。
長い長い進歩の歴史を思い浮かべていることが肝心なのだよ。なぜかというと、ナポレオ
シだろうが、ゲーテだろぅが、ーいや、太間秀吉だろうが、乃木大将だろうが、すべて、
長い長い人類の歴史の中から生まれてきて、またその中に死んでいった人々なのだから、
君もよく知っているとおり、人間は最初から人間同志手をつないでこの世の中を作り、
その協働の力によって、野獣同然の状態から抜け出してきた。はじあはごく簡単な道具を
使い、やがていろいろな技術や機械を発明し、自然界をたんだんと人間に住みまいものに
変えてきた。そして、それと共に学問や芸術というものをも生み出して、人間の生活を次
第に明るい美しいものに変えてきた。
ところで、ヨベル君、こう質問するとき、僕たちはしつかりと、何万年にわたる人類の
たいこうひでよし
第一に君は、今まで君の目に大きく映っていた偉人や英雄も、結局、この大きな流れの
中に漂っている一つの水玉に過ぎないことに気がつくだろう。
コペル君!君の精神の目を一度この広大な眺めの上に投げ、そのはるかな流れの中に、
偉人とか英雄とか呼ばれている人々を眺め直してみたなら、君はどんなことに気がつくだ
ろうか
河のようなものだ。
日本の歴史は神武天最以来、千太百年というわれ、エジプトの文明は六千年前にはじまつ
たといわれ、たいへん古いものに思われているけれど、実はそれ以前に、書物にもなんに
も書かれていない数万年の歴史があるんだ。そして、これからも、何万年つづくか、何十
万年つづくか、人類はまだまだ進歩の歴史をつづけてゆくだろう。
この悠々と流れてゆく、大きくな、大きな流れを考えてみたまえ。二千年、三千年の歳月
さえ、短いものに思われてくるではないか。まして、一人一人の人間の一生などは、ほと
んど一瞬間にもひとしいものに思われてくるではないが、
ゆうゆう
それは、遠い大昔か5悠々と流れてきて、まだこれからも遠く遠く流れてゆく、大きな
次いで、この流れにしつかりと結びついていない限り、どんな非凡な人のし
た事でも、非常にはかないものだということを知るに相違ない。
一彼らのうちのある者は、この流れに目をつけて、その流れを正しく押し進めてゆく
ために、短い一生をいつぱいに使って、非凡な能力をそそぎつくした。
また、ある者は、自分では個人的な望みを遂げようと努力しながら、知らず識らずのう
ちに、この進歩のために役立った。
また、中には、いかにもはなばなしく世間の目を驚かしながら、この大きな流れから見
私は、一向役に立たないでしまった者もある。いや、偉人とか英雄とかいわれながら、ここ
の流れを押し進めるどころか、むしろ逆行させるような働きをした者も少なくはない。
そして、一人の英雄のしたことでも、そのうちのある事はこの流れに沿い、ある事は流
れにさからっているという場合、もある。さまざまな人間が歴史の上にあらわれてきて、さ
まざまなことをやっているんだが、結局、人の人間のなしとげたことは、この流れと共
に生きのひてゆかない限り、みんなはがなく亡くんでいってしまうのだ。
そして、コペル君、ナポレオンほどの人でも、この一例であることを免れるわけにはい
かないんだ。僕たちは、ごこで、もう一度ナポレオンにかえって見ることにしよう。
ほろ
民衆だった。
彼らは自分たちの愛する祖国のために、喜んで命をささげる人々だった。自由、平等
友愛、の顔面のもとに、新しい時代を生み出すしたばかりのフランスの人民には、雇います。
んかが夢にも知らない、勇気と精力とがあふれていた。
だから、彼らは、武器や弾薬が乏しく、正規の訓練も届いていなかったのに、す
ばらしい元気で外敵に立ち向けかい、とうとう、追いしりそけて、その祖国を守りとお
も
きゅうきん
兵役の義務を負い、大急ぎで軍隊を組織して、八方から寄せてくる外敵にあたったんだ。
その当時、ヨーロッパ諸国の軍隊は、一般に傭兵制度というって、雇い兵で軍隊を組織し
ていた。兵士たちは給金を貰って、その給金のために戦うのだった。ところが、フランス
の軍隊を作りあげている兵士、たちは、新政府によって新たに自由を与えられたフランスの
がいかん
フランスは、内乱と外患と一時に起こって、たいへんな苦しみだった。しかし、その苦
しい中で、フランス人は、実に勇敢に戦い、決してその肉難に屈しなかった。男はみんな
きることを恐れて、それぞれ軍隊を出し、協力してフランスの新政府を倒そうとした。
その頃ヨーロッパの諸国は、まだ封建制度を守っていたから、フランスに新しい国家ので
ナポレオンが出世の一歩を踏み出した頃、フランスの人民は、腐り切った封建制度を打
ち倒して、新しい世の中を生み出すために、血みどろになって努力していた。ところが
ようへい
た。
封建制度を除いたあと、この、新しい世の中の秩序がどういうものであるがということは
わかるだろう。
その後、フランスの人氏がうち続く内乱に疲れて、国内の秩序と平和とを求め出したと
き、彼はそれに乗じて権力を一身に集めていったけれど、彼の力によって新しい世の中の
秩序と落ち着きとが生まれてきた限り、この野心的な行動さえ世の中のために夜立ってい
事させた。それが、どんなにその後のエジプト学の発達に役立ったがは、このとき発見さ
れたロゼッタ石という石碑が、後にエジプト文字を読み解く大切な鍵となったことからも
ようれ
したのであった。そして、この新しい軍隊を率い、新しい軍隊にふさわし
い戦術を考え出し、ヨーロッパ諸国の旧式な軍隊を、片ッぱしからなぎ倒
していったのが、ほかでもない、ナポレオンだったのだ。
だから、ナポレオンは、少なくとも彼が皇帝になるまでは、封建制度を打ち倒して新しい
い自由な世の中を作ろうと努力していたフラシスを守るために、たしかに役に立っていた
のだね。
いや、そればかりではない。一彼は学芸の奨励のためにも、ずいぶん力をつくした。エジ
プトに選征したときにも、大勢の学者や芸術家を軍隊に同行させて、エジプトの研究に従
こういう風に、ナポレオンは、封建時代につづく新しい時代のために役
立ち、また、その進歩に乗じて、輝かしい成功を次々におさめていったのだ。
が、やがて皇帝になると共に、ようやく権力のために権力をふるうようになっ
ているんだよ。
日本も、明治維新と共に封建制度を廃して、四民平等の世の中となった。ところで、そ
の新しい世の中の秩序、殊に人民同志の関係をどう定めたら、いいかということが、すぐに
問題になってきた。それで、わが国で最初の民法が定められたんだが、そのとき模範とな
つたのが、『ナポレオン法果』だった。
この民法は、その後いろい多改正が行われたけれど、そのこの根本は変わりがない。そして、
新しい日本は、このレールの上をなめらかに進んでいって、とうとう日本はじまって以来
の、目覚ましい商工業この発達をなしとげたんだ。
このおかげではっきりとわかっつたんだ。彼は学者を集めて、その新しい秩序を、はっきり
法律に定めさせた。これが有名な「ナポレオン法典』で、その後、方々の国の法律の模範
になったが、おそらく、ナポレオンの事業のうちで、これが最大のものといえるだろう。
君はびっくりするかもしれないが、僕たち日本人までが、この法曲のおかげをこうむつ
し、みんひょうどう
買ってしまった。
を困らせることだった
して、ナポレオンの抗力の政策は大阪におおり、おまけに彼は何十万という人民の怨みを
人々は、さしあたって、毎日使う砂糖にも事欠くようになってしまった。ヨーロッパで
は、どんなに砂糖大根を作っててみても、人口に必要なだけこの砂糖は取れないんだ。そして、
何千万という人間の生きてゆくための必要は、いくらナポレオンの権力が強くとも、押し
殺してしまうことができない。
厳重な罰を設けて取り締まったけれど、どうしてもこの命令は実行されなかった。こう
しかし、その頃世界この海上賞易を一手に独占していたイギリス・と通商しないということ
は、当のイギリスを困らせるよりも、もっともつと、ヨーロッパ大陸に住む何千万の人々
てきた。そして自分の権勢を際限なく強めてゆこうとして、次第に世の中
の多くの人々にとってありがたくない人間になっていった。
その一番大きな失敗は、自分のにあくまで楯突くイギリスを苦しめようとして、ヨーロッ
バ大陸全体に、イギリスとの通商を禁じたことだった
ナポレオンは、自分の権勢をもってすれば、そのくらいな事はできると信じていた。ま
た、自分の権勢のため、には、それをやり抜かねばならぬと考えていた。
いものは何ひとつなく、ただ大ポレオンの権勢に引きずられてロシアまで出かけ、その野
心の犠牲となって、空しく死んでいったのだった
六十万の人々には、それぞれ家族もあれば、友だちもある。だから、ただ六十万人が死
んでいったばかりでなく、そ、の上になお生きている何百万という人々が、あきらめ切れな
い、つらい涙を流したのだ。
ここまでくればーー、そうだ、これほどまで多くの人々を苦しめる人間となってしまっ
た以上は、ナポレオンの権勢も、「もう、世の中の正しい進歩にとって有害なものと化して
しまったわけだ。遅かれ早がれ、ナポレオンの没落することはもう避けられない。
そして、歴史は事実をの通りに進行していった。
れば、自分たちの信仰や主義のために戦ってたのでもない。俺にかけて守るなければならな
そこへ起こったのが、ロシア還征の失敗だった。六十万もの人間がはるばるロシアまで
出かけていって、水や雪の中で、ほとんど全部みじめな死に方をしてしまったということを
は、考えてみると実に大きな出来事だった。
この人々は、ヨーロッパの各地から集まった兵隊たちで、何も自分たちの国のためにせ
シアまで出かけていつたわけではなかった。彼らは祖国の名誉のために戦ったのでもなけ
なければならない。
コペル君。ナポレオンの一生を、これだけ吟味して見れば、もう僕たちには
はっきりとわかるね。
英雄とか偉人とかいわれている人々の中で、本当に尊敬ができるのは、人類の進歩に役
立った人だけだ。そして、彼らはの非凡な事業のうち、真に値打ちのあるものは、ただこの
流れに沿って行われた事業だけだ。
もし暇があったら、君は『人類の進歩につくした人々』という本を読んでみたまえ。同
じ偉人といわれている人々の中に、ナポレオシとは全く別な型の人々のあることを君は知
るだろう。
そして、これだけの事をしつかりと理解したのちに、君は、改めてナポレオンから学び
得るものを、うんと学はなければならない。
彼の奮闘的な生涯、彼の勇気彼の決断力、それから、あの鋼鉄のような意志の強さ!
こういうものがなければ、たとえ人類の進歩につくしたいと考えたって、ろくなことはで
きないでしまうのだから。妹に、どんな困難な立場に立つても微塵も弱音を吐かず、どん
な苦しい運命に出会っても逃げなかった、その毅然たる精神には、僕たちは深く深く学ば
君はナポレオンについてて、こういう話のあるのを知っているかしら。
リスに占領されていて、彼はついに捕われの身となってしまった。
彼はロシュフォールの港からアメリカに渡ろうと企てたが、その時すでに、この港はイギ
イギリスの海軍は、とりあえず彼を、イギリス本国へつれていった。ナポレオンの乗っ
ているベルロフォーンという汽船がテームズ河口に碇泊していた間、波止場は毎日見物の
人でたいへんな混雑だった。
ていたナポレオンが、とうとう捕虜になってつれて来られたというのだから、イギリス人
が驚喜したのも無理はない。
妹に、イギリス人にとっては、ナポレオシンは最初から最後まで戦いつづけて来た相手で、
彼のために苦い失敗をなめるせられたことも、一同や三回のことではなかった。
それがついに捕えられ、しかも自分たちの国につれて来られたのだ。せめてナポレオン
の乗っている船だけでも見ようと、大勢あああ人は、毎日波正場に群がってきた。
イギリスに着いて以来、ナポレオンはずっと船室にとじこもった
まま暮らしていたので、波上場に集まった人々は彼の姿を見たいと。
ウォーターローで敗れたナボレオンは、もうヨーロッパには身を置くところがなかった。
ていは!
なにしろヨーロッパの天地に風雲を巻きおこし、二十年間も無敵の英雄として恐れられ
て立っていたのだ。
何という強い人格だろう。
運命を、男らしく引き受けてしっかりと立っていたのだ。
そして、その気味が、数万の人々の心を打って、自然と頭を下げさせたのだ。
をさらしはしながったのだ。とらわれの身となっても王者の誇りを失わず、自分の招いた
えられて、その本国につれて来られていながち、ナボレオンは、みじめな意気泪喪した姿
思っても見ることができなかった。ところが、ある日、ナポレオンは久しぶりで
外の空気に触れたくなり、とうとうその姿を甲板にあらわした。
思いがけず、有名なナポレオン帽をかぶった彼の姿を「ベルロフォーン号の申
仮の上に認めたとき、数万の見物人は思わず息を呑んだ。
今まで騒ぎ立っていた波正場が一時にシーンとしてしまった。
そして、その次の瞬間ーー、コペル君、どんなことが起こったと思う。
数万のイギリス人は、誰がいい出すともなく帽子を取って、無言で彼に深い敬意を表し
「君も大人になってゆくと、よい心がけをもっていながら、弱いばかりにその心がけ
戦いにやぶれ、ヨーロッパのどこにも身の置きどころがなく、いま長年の宿敵の手に捕
来るだろう。
世間には、悪い人ではないが、弱いばかりに、自分にも他人にも余計な不幸を招いてい
る人が決して少なくない。
人類の進歩と結びつかない突雄的精神も空しいが、英雄的な気魄を欠いた善良さも、同
じように空しいことが多いのだ。
君も、いまに、きっと思いあたることがあるだろう。
を生かし切れないでいる、小さな善人がどんなに多いかということを、おいおいに知って
雪の日の出来事前編
おはよー
つもったね
放課後
......
ね...!
校庭で
遊ぼっか
でも.....
大丈夫
だよ
きっと
上級生たちも
いるよ.....
ねぇ
ガッチン
ああ
みんなで
結局
何も
起こりゃ
しないよ
ガッチンを
守ろう.....
あれから二週間たっても、
カッチンが呼び出される
ようなことは起きていない
校舎で上級生と
すれ違わなきゃ
いけないとき
なんかは.....
考えすぎなの
かな...
ほとんど生きた
心地がしない
けど...
もしか
したら
山口の
でまかせなの
かもしれない
ガッチンに
仕返しするように
兄貴たちに
頼んだなんて
ああ
たしかに!!
いかにも
山口が思い
つきそうなこと
だもんね
水谷君
名推理!
はは
ほら
浦川君
終業の鐘だ
はやくはや~
うん
それっ
やったなー
コペル君
あっ
ひゃー
つめたく
ありゃりゃ
大丈夫?
ひゃっ
雪合戦は
油断大敵だよ
よーし
2対2だ
浦川君
ガッチン
あっちの広いほう
いこう!
うん
あっ
すいません
ははっ!!
雪だるまに
謝ってら
ね...
浦川君
雪玉補充してる
から先行ってて
うん
よし
ふふ...
えっと
みんなは
ガッチン
.....!!
全然
聞こえ
ないぞ
もっと
はっきり言え
うそを
つけ.....!!
でも僕
知らなかったん
です...
ああ
でも
あれは...
おれたちが
せっかく作った
もんを.....
壊してる
とこを見たと
弟は言って
るんだ.....
体当たりして
壊してた
わざとじゃ
ない...
いいから
......
あやまれ
......
すみません
でした...
もっと
はっきり!
.....
すみません
でしたっ
なんだ
その言い方は......
生意気だぞ
.....!!
待って.....
?
ください...
浦川君
...!
ただの
粗相なんですっ
わざとじゃ
ないんですっ
うるさい!
豆腐屋は
どいてろっ!!
兄貴.....
こいつらなんだよ
.....
よって
たかって
そうか
おれのことを
いじめた連中は
...
こんな生意気な
奴らを上級生が
見過ごしていたら
学校の規律が
乱れてしまうな...
おいっ
他にも
仲間がいるなら
出てこいっ!!
きゃー
いないのか?
本田は
一緒じゃない
のかよ......?
みんなで
ガッチンを守ろう
ガッチンの前で
壁になる
どの
いないんだな
.....
覚悟しろっ!!
制裁を
加える.....!!
へへっ
いいざま
だぜ...
うう...
くやしい
...
立てる?
ガッチン
僕は...
どうして...
みんなを
見捨てた...
どうしたの?
ずっと黙って...
......
気分でも悪いの?
まあ
ひどい熱...
いや...
みんなから
見捨てられた
...?
病気なんて
悪くなって
もっと
悪くなれ....!!
悪くなって
そのまま
僕なん
死んでしまった
ほうが
いいんだ...
8、雪の日の出来事後編
ガッチン
浦川君
水谷君!!
ち
自分を
広い広い世の中の
一分子だと感じた
ということは
ほんとうに
大きなことだと
僕は思う
僕は思うじの中に、
今日の経験が深く涙を
楽しくくれることをご
ひそねに頼っている
スルル
いまはできなかみんな
生きがいまーぶっちゃんが、
それはいっぱい!!
あんまり急に切るときさんが、
「んぐぅっ...ですから!!
あっか、そうしてみてさんだ。
はぁ...うん。アパーですか
えええ俺を知りたんだ
世間の目
よりも
何よりも
やっぱり、
そーまでのう...そ?そこまでと
ジェイ
ここである
ロイン
くぅ...ん
君自身が
まず人間の
立派さがどこに
あるか
このノートを
コペル君が見たら
どんな反応を
するかな....?
それを本当に君の
魂で知ることだ
もし
え
ふっ
おじさんって
これぜんぶ
おじさんが書いた
の......?
なんて
言われるだけ
だったり
して...
でも...
意外と
マメなんだ
このノートを
書き続けて
きて
あの日から
RloTe-Be
よかった
いまや
大事な
本のもと
だ...
え?
疲れた
.....
ずっと
寝こんでるの?
そうよ。もう
何日も...:
熱は下がっている
の......?
うん...
まあ
寝てるなら
あがらずに
帰るよ
もう起き上がって
いい頃なんだ
けど...
.....
おじさんの
声.....
おじさんなら...
そうか
なら
おじさんが
ちゃんとみんなが
仲直りしてくれるよう
説得してやるさ
...って言って
くれるかな
そんなことが
あったのか...
コペル君は
あのとき
阿度も何度も
とび出そうとした
みたいなんだ
その
気持ちを
くんで
許してやって
くれないか?
もし.....
そうして三人が
許してくれたと
して...
僕は
平気でいられる
かな...
僕はあのとき...
おいっ
仲間がいる
なら出てこいっ
みんなと
いたことを
知られないように
したんだ.....
雪玉を
かくした...
僕は...
本当は
...
あんなにも
卑怯な人間だったん
だ.....
本田
...は今日も
休みか
やあ
コペル君
おじさん
・?
まだ学校には
行けそうに
ないのかい?
.うん
もう学校には
行かないんだ
ははっ
すっかり
さぼり癖が
ついちまったんだな
みんなとした
約束のことだって
あるんだろ?
でもそろそろ
行かなきゃ
まずいんじゃ
ないか?
もしものとき
コペル君だけ
いないわけには
いかないじゃないか
あのね
おじさん
うん
ぼく.....さ
......
ぼく.....ね
やっぱり
なんでも
ない...
ふっ.....
なんだよ
コペル君....?
!
おじさん
どうしたんだ?
もう.....
僕.....
どうすればいいのか
わかんないんだ...
......
コペル君
いったい何が
あったんだ
.....
そうか
ガッチンを
守るって約束
でもね
何を?
守れなかったん
だね.....
うん
ガッチンたちには
わかってもらい
たいんだ...
何をって.....
僕のしたことは
ほんとに悪い
ことだけど...
ほんとに
すまないことを
したと思って
るんだ...
同度も何度も
あのときのことを
思い出しては
死んでしまいたい
気持ちになる
あの日から
ずっとずつと
後悔ばっかり
押しよせて
だからって
いつまでも
うずくまって
いても
......ねぇ
おじさん
一歩も身動きが
とれないような
感じなんだ
何も変わらないよ
.....コペル君
僕の気持ちを
おじさんが
ガッチンたちに
話してくれない?
それを
聞いたら
みんなは
許してくれる
かもしれない
そんなの...
わからないよ
じゃあもう
ずっとこのままで
いる.....
なぁ
コペル君
起きろよ
潤一君!!
君の
考えは
間違ってるぜ
君は勇気を
出せずに
上級生の
ゲンコツが
こわくて
......
大事な約束を
破っちまったん
だろう?
いま苦しい
思いをしたから
許してもらおう
なんて
君一人だけ
皆のところに駆けつけ
られなかったんだろう?
君は
そんなことを
言える資格は
君にはないはずだ
絶交されたって
しかたないことを
しちまったんだ
.....じゃあ
僕は...
いったい
どうすれば
いいんだよっ...
おじさん...
そんなの
本当はもう
わかってるはずさ
......
でも...
コペル君は
さっき
後悔ばかり
押しよせるって
言ったよね...
ガッチンたちが
どう思って
いるかを
いくら考え
たって
君がして
しまったことを
いくら思い返し
たって
だったら
それは君に
変えられること
じゃない
一度考えるのを
やめてごらんよ
考えるのを
やめる......?
そう
変えられないことを
考えるのをやめれば、
じゃあ
余計な
感情に
足をとられ
ない...
いま自分が
しなければ
ならないことに
同じ間違いを
まっすぐ
むかっていける
二度くり返しちゃ
いけないよ
コペル君
おじさん
...
僕.....
ガッチンと
水谷君と
浦川君に
ちゃんと
謝らなくちゃ
.....
いますぐ
手紙をかいて
ああ
僕がして
しまった
ことを
...
ああ
正直に
謝る.....
こんなことで
〈こたれる
そうさ
コペル君じゃ
ないんだ....!!
ようやって。
9、石段の思い出
お母さん
外に出るなら
この手紙を出して
おいて...
ずいぶん
休んでるから
手紙?
学校のこと
友達に聞いておこう
と思って...
スッ...
......
...いって、
どうしたの
姉さん?
おお...
手紙を
読んで.....
みんなは...
どう思うん
だろう......
こんなのを
書いてよこし
たって...
もう
絶交だよ......!!
.....
いけない...
たまには
勉強でもしよ...
.....
いまはそんなこと
思っちゃいけないん
だ.....
あら
お勉強?
ここで
編み物してたら
迷惑.....?
うん
ううん
へーキだよ
......
なに?
お友達への
手紙...
ううん
出して
きたわよ
...あ
ありがとう
僕が...
お母さんはすごく
悲しむだろうな...
大事な友達を
裏切ったって
知ったら.....
がっかり
するよね
お母さんね
こうして
編み物を
していると
よく思い出す
ことがあるの
その話を
してもいい?
......?
お母さんが
まだ女学校に
行っていた頃
うん
それはね
あれから
20年も経つのに
ずっとはっきり
覚えていて
潤一さんと
同じくらいの
歳にあったこと
なの
いままで
同度も何度も
思い出している
湯島天神下の
石段の思い出...:
カッッ
......
次おばあさんが
立ち止まったら
.....
「荷物を持ち
ましょうか」って
声をかけよう
そう思って
お母さんはあとから
ついていったん
だけど...
いま声を
かけたら...:
「どうしてもっと
早く言ってくれ
なかったのかしら」
.....って
おばあさん
そう思う
かしら...
ううん.....
そんなこと考えても
仕方ない...
次こそ
声かけなきゃ...
あっ...
もう
止まって
くれない...
やっ
......
いや、いやいや...
結局
階段を登りきって
しまうまで
言い出せずに
おわってしまった
.....
どうして
思ったことを行動に
移せなかったん
だろうって
なんだか
情けないような
気持ちになったの
ささいなこと
だけどね...
ずっと時間が
経った今でも
あのとき
ぐずぐずして
しまった自分は
それを
忘れられなくて
心の中で
はっきりと
残っているの
いやな気持ちに
なる.....?
ううん
そんな自分に
お礼を言いたい
くらいなのよ...
自分の中に
「今度こそ
それを生かさ
なきゃ」って
少しでも
きれいな心が
わいてきたら
くれることが
背中を押して
あるから...
もしかしたら
潤一さんにも
もっともつと
大きなことで
やるべきことをできずに
後悔することがある
がもしれない...
でもね
たとえそのときは
苦しくても...
その経験を忘れては
いけないの
これからの
長い道のりの
中で.....
きっと何度も
背中を押して
くれるから...
うん
お母さん....
それで僕に
こんな話を...
おじさんから
聞いて知って
いたんだ.....
今までたくさん
流した涙とは
まるで違う
涙が一粒
落ちたあと
お母さんが
持ってきて
くれたのは
コペル君に
渡して
くれって...
RIOPE-Bepl&
おじさんの
ノートだった
のである」
それほど偉大である。樹木は、「自分をあわれだとは認めないい。なるほど、『自分をあわれ
だと認めることが、とりもなおさず、あわれであるということだ』というのは真理だが、
しかしまた、ひとが自分自身をあわれだと認める場合、それがすなわち偉大であるという
ことだというのも、同様に真理である。だから、こういう人間のあわれさは、すべて人間
の偉大さを証明するものである。...:それは、手位を奪われた国王のあわれさである」
「玉位を奪われた国王以外に、誰が、国王でないことを不幸に感じる者があろう。...た
だーつしか日がないからというって、自分を不幸だと感じるものがあろうか。また、眼が一
つしかないことを、不幸に感じないものがあるだろうか。誰にせよ、眼が二つないから悲
しいと思ったことはないだろうが、眼が一つしかなければ、慰めようのない思いをするも
人間の悩みと、過ちと、偉大さとについて
「人間は、自分自身をあわれなものだと認めることによってそのの偉大さがあらわれるほど、
僕たちは人間として生きてゆく途中で、子供は子供なりに、また大人は大人なりに、
ろいろ悲しいことや、つらいことや、苦しいことに出会う。
もちろん、それは誰にとっても、決して望ましいことではない。しかし、
こうして悲しいことや、つらいことや、苦しいこここに出会うおかげで、僕たち
ちは、本来人間がどういうものであるか、ということを知るんだ。
コラペル君。このことを、僕たちちは、深く考えてみなければいけない。それは僕たちに、
大切な真理を教えてくれる。人間の悲しみや苦しみというものに、どんな意味があるか
ということを教えてくれる。
生まれたら、とんだ片輪に生まれたものだと考えて、それを悲しむに相違ない
いからだ。
同様に、片目の人が自分を不幸だと感じるのも、本来人間が二つの目を備えているはず
なのに、それを欠いているからだ。人間というものが、もともと目を一つしかもっていな
いものだったら、片目のことを悲しむ者はないに違いない。いや、むしろ二つ目をもって
悲しく思う。彼が、現花の自分を悲しく思う。のは、本来王位にあるべき身が、王位にいな
本来王位にあるべき人が、王位を奪われていれば、自分を不率だと思い、自分の現在を
痛むものよりも、つい手当てがおくれがちになるではないか。
あ!
ないということを、苦痛が僕たちちに知らせてくれるということだ。もし、からだに故障が
できているのに、なんにも苦痛がないとしたら、僕たちはそののことに気づかないで、場合は
によっては、命をも失ってしまうかもしれない。
僕たちがそれに気づくのは、苦痛のおかげなのだ
どうき
へいぜい
心に感じる苦しみや痛さだけではない。からだにしかに感じる痛
さや苦しさというものが、やはり、同じような意味をもっている。
健康で、からだになんの故障も感じなければ、僕たちは、心臓とか胃とか腸とか、いろ
いろな内臓がからだの中にあって、平生大事な役割を務めていてくれるのに、それをほと
んど忘れて暮らしている
ところが、からだに故障ができて、動悸がはげしくなるとか、おなかが痛み出すとかす
ると、はじめて僕たちは、自分の内臓のことを考え、からだに故障のできたことを知る
からだに痛みを感じ、だり、苦しくなったりすそのは、故障ができたからだけれど、逆に
だから、からだの痛みは、誰だって御免こうむりたいものに相違ないけれど、この意味
実際、むし歯なんかでも、少しも痛まない。でもんこんとりけが大きくなってゆくものは
苦痛を感じ、それによ。ってからだの故障を知ってるということは、からだが正常の状態にい
では、僕たちにとってありがたいもの、なくてはならないものなんだ。
間のからだが、本来どういう状態にあるのが本当か、そのことをもはっきりと知る。
同じように、心に感じる苦しみやつらさは人間が人間として正常な状態にいないことが
5生じて、そのことを僕たちに知らせてくれるものだ。そのして僕たちは、その苦痛のおか
げで、人間が本来よういうものであるべきかということを、しっかりと心に抑えることが
できる。
人間が本来、人間同志調和して生きてゆくべきものでないならば、どうして人間は自分
たちの不調和を苦しいものと感じじることができよう。お互いに愛しあい、お互いに好意を
つくしあって生きてゆくべきもこのなのに、憎みあったり、敵対しあったりしなければいら
れないから、人間はそのことを不幸と感じ、そのために苦しむのだ。
また、人間である以上、誰だって自分の才能をのばし、その才能に応じて働いてゆける
このが本当なのに、そうでない場合があるから、人間はそれを苦しいと感じ、やり切れなく
思うのだ。
人間が、こういう不幸を感じじたり、こういう苦痛を覚えたりするということを
は、人間がもともと、憎みあったり敵対しあっだりすべきものではないからだ。
「それによって僕たちは、自分のからだに故障の生じたことを知り、同時にまた、人
だ。
その場合にも、人間は、そのんな自分勝手の欲望を抱いたり、つまらない見栄を張るべき
ものではないという真理が、この不幸や苦痛のうしろにひそんでいる。
もっとも、ただ苦痛を感じるというだけならば、それはむうん、人間に限ったことでは
ない。犬や猫でも、怪我をすれば涙をこぼすし、寂しくなると悲しそうに鳴く。からだの
痛みや、飢えや、のどの渇きにかけては、人間もほかの動物も、たしかに変わりがない。
心を捨てれば、それと同時になくなるものなんだ。
てこなければいけないんだよ
ない虚栄心が捨てられないということから起ここっているのであって、そういう欲望や虚栄
うな人もある。また、つまりらない見栄にこだわって、いろいろ苦労している人もある。
しかし、こういう人たちの苦しみや不幸は、実は、自分勝手な欲望を抱いたり、つまら
んなみじめなものであってはならないからなんだ。
コペル君。僕たちは、自分この苦しみや悲しみから、いつもでも、こういう知識を汲み出し
また元来、もって生まれた才能を自由にのばしてゆけなくてはウソだから
もちろん、自分勝手な欲望が満たされないがらといって、自分を不幸だと考えているよ
およそ人間が自分をみじめだと思い、それをつらく感じるということは、人間が本来そう
を流して傷つく。やさしい愛情を受けることなしに暮らしていれば、僕たちの心は、やが
て堪えがたい渇きを覚えてくる。
しかし、そういう苦しみの中でも、一番深く僕たちの心に突き入り、僕たちの
目から一番つらい涙をしぼり出すものは、―自分が取りかえしのつかない過ち
を犯してしまったという意識だ。自分の行動を振りかえってみて、損得からでは
なく、道義の心から、「しまった」と考ええるほどつらいことは、おそらくほかには
ないだろうと思う。
では、人間だけが感じる人間らしい苦痛とは、どんなものだろうか。
からだが傷ついているので、もなく、からだが飢えているのでもなく、しかも傷つき飢え
渇くということが人間にはある。
一筋に希望をつないでいたこととか無残に打ち砕かれれば、僕たちの心は目に見えない血
けが感じる人間らしい苦痛なんだ。
として、しみじみとした同感を覚えたり、深い愛情を感じたりするのだけれど、しかし、
ただそれだけなら、人間の本当の人間らしさはあらわれない。
人間の本当の人間らしさを僕たちに知らせてくれるものは、同じ苦痛の中でも、人間だ
だからこそ僕たちは、犬や猫や馬や牛に向かうっても、同じくこの地上に生まれてきた仲間
のにーー、と考えるからだ。それだけの能力が自分にあったのにーー、と考えるからだ。
正しい理性の声に従って行動すするだけの力が、もし僕たちはにないのだったら、何で悔恨の
苦しみなんか味わうことがあろう。
自分の過ちを認めることはつらい。しかし過ちをつらく感じるということの中に、人間
の立派さもあるんだ。
二王位を失った国王でなかったら、誰が、王位にいないことを悲しむものがあろう」
正しい道義に従って行動する能力を備えたものでなければ、自分の過ちを思って、つら
い涙を流しはしないのだ。
かいこん
ということは、およそ無意味なことではないが、
苦しむということは、それこそ、天地の間で、ただ人間だけができることなんだよ
人間が、元来、何が正しいかを知り、それに基づいて自分この行動を自分で決定する力を
持っているのでなかったら、「自分のしてしまったことについて反省し、その誤りを悔いる
しかし、コペル君、自分が過っていた場合にそれを男らしく認め、そのために
そうだ。自分自身そう認めることは、ほんとうにつうらい。だから、たいていの
人は、なんとか言い訳を考えて、自分でそう認めまいとする。
僕たちが、悔恨の思いに打たれるというのは、自分はそうでなく〝行動することもできた
めるのだと。
「誤りは真理に対して、ちょうと睡眠が目醒めに対すると、同じ関係にある。人が誤りか
ちら覚めて、よみがえったように再び真理に向かうのを、私は見たことがある」
これは、ゲーテの言葉だ。
僕たちは、自分で自分を決定する力をもっている。
だから誤りを犯すこともある。
しかし
僕たちは、自分で自分を決定する力をもっている。
だから、誤りから立ち直ることもできるのだ。
そして、コベル君、君のいうつ人間分子」の運動が、ほかの物質の
分子の運動と異なるところも、また、この点にあるのだよ。
「正しい道に従って歩いてゆく力があるかうら、こんな苦しみもな
てゆこうではないが、」
人間である限り、過ちは誰にだってある。そして、良心がしびれてしまわない以上、温
ちを犯したという意識は、僕たちに苦しい思いをなめるせずにはいない。
しかし、コペル君、お互いに、この苦しいいい思いの中から、いつも新たな自信を汲み出し
おじさんの
ノート...
Q、凱旋
.....
ひゃっ
なぜそれほど
苦しまなければ
ならないのか
氷点追い批んきちゃんと、
これはどこより『お母さんは
コペル君
いま君は、
大きな苦しみを
感じている
それはね
コペル君
君が正しい道に
向かおうとして
いるからなんだ
正しい
道.....
見か
シンピさんは
シ谷「クインなんじゃないか」
色々なのですが、
また、死んだ
そんなサービスについては、
そんなことなんですか
バーガンベンドの
ちゃんとは
どー
やっぱりこんな感触した。
おじさんのノートを
最後まで読んで
くれれば
やっぱり
僕たち人間は
きっと君は
自分を取り戻せる
おじさん
自分で自分を
決定する力を
もっているの
だから
ほか物質の分子の
またまにあるのだよ。
他のスクノロイの
やーんってこれ
だから誤りから立ち
僕たちは見学
...目元を
ここまで部屋に帰ってきたのか
そんなことなんですかわかったんだ
クリギタトートの利用ですが、
申込時間になるのでしょうか。
が課りから
僕のために
ずっと
このノートを
書いてくれて
いたんだ...
いいわ...わかってん
無理だからなんのんじゃ
なんだか不思議な
感じ...
このノートの
中にも
気づかずきりねーんじゃんは
キャッシュアルはどうするの?
だからこそらもそもそれじゃないのか。
僕がいる
ような...
そもそも何これどいいんですか
いやすくなることはあなたができないんですから
ねぇ
早く
行こうよ
...うん
おじさん
僕.....
明日から
また
ありがとう
学校
行くよ
いってきます
気を
つけてね
!
カチャ...
返事は...
きてないか
僕を見て
どう思う
だろう...
みんな...
浦川君.....
もう
......
大丈夫なの?
え?
ごめんね
僕が学校
休んでる
ときは
ずっと顔
出せなくて...
何度も
来てくれて
進んだところ
教えてくれた
のに.....
あのさ
浦川君.....
まあコペル君に
勉強教えられるか
わからないけど...
手紙って...
あ
うん
読んだよ
.....
ガッチンと
水谷君と
一緒に
三人で
返事を書こう
って
おととい
読んだんだ
......
それは
イヤだって
僕と水谷君で
言ったんだけど
.....
......
ガッチンが...
そっか.....
君は
絶交されたって
しかたないことを
しちまったんだ
そうなんだ
何をされたって
僕は文句を
言えやしないんだ...
返事を
書かないって
ガッチンが
決めたってことは
もう...
元通りには
なれないって
こと...
あっ
......
ガッチンと
水谷君.....
あっ
うん
次にできる
ほ真理
日本から大学園にしても、
それでもそれは生き物語の
これは
ゲーテッ言葉だ。
そして、コベルを
その
「〈間〉《すみ》
運動が
またの出
御り外くん
浦川
君
水谷君
ガッチン
手紙にも
書いたこと
だけど...
約束を
守れなくて
.....
本当に
ごめん.....
許して
もらえなく
ても
仲直りでき
なくても...
僕はずっと
待ちます....!!
いやだ.....
......
仲直りできない
なんて
え
いやだっ.....!!
手紙の返事
出さなくてごめんよ
コペル君
文章を
考えるのは
でも学校に来たら
直接話そうって
きめたんだ
はじめは
ガッチンが
苦手っていう
からさ.....
でも
そりゃあ
「もう絶交だ」って
気持ちになった
けど.....
コペル君が
いない学校は
やっぱり
熱は
もういいの?
つまらないんだ
ううん
大丈夫だよ
謝るために
無理して
来たんじゃない
だろうね?
校門の
目前にいながら
遅刻だよ
みんな...
ありがとう
わっ
鐘だ!!
まずい!
これは
誰がなんと
言ったって
コペル君の
せいだっ
ふふっ
ごめん
一歩一歩
足から
根っこを生やす
みたいに
僕は地面を
踏みしめた
コペル君
はやくう...
おじさーん
僕でーす
コペルでーす
へへ
自分で
「コペル」ってのも
へんだね
......
いない...
おじさーん
みんなと
仲直りした
あとも
まだ難しいことも
たくさん
書かれていた
けれど
僕は何度も
おじさんのノートを
読み返した
ひとつ
わかったことが
ある
おじさんが
僕を
「コペル君」と
呼ぶように
なったのは
忘れないように
させるため
だったんだ
宇宙が
地球を中心に
回っていない
ように
世の中が
自分を中心にして
回っているわけじゃ
ないってこと...
あの屋上の
日よりも
誰か一人の
人間を中心に
今の僕のほうが
そのことは
よくわかる...
世の中は
回っているわけ
じゃない
でもだとしたらさ
おじさん...:
この世の中は
いったい
何を中心にして
回ってるの
...?
やめ
かや
がや
どうだった?
コペル君
答案を
うしろから
回して
やっと
おわった〜
うーん
思ってたより
できたかな
休んでいたのに
さすがだね
コペル君
...もう少し
休んでいても
よかったのかも
いやいや
わっもう調子に
のってる!
ふふ...
ともかく
学年末試験も
おわったし
今日は野球
ざんまいだ.....!!
へえ
どうせなら
おじさんも誘えば
よかったね
いや
それがさ
ここ数日
おじさんいないんだ
つまん
ないね
.....うん
まあね
なんだか...
......
死んでしまいたい
ような気持ちで
このノートの
中にだけは
この天井を
見ていたのが
ウソみたいだ...
あのときの
自分が
いる...
やあ
でも.....
いつでもいいですから、
あんこそよそも
銀ッは長時に対し
問題はふあんのほうがお
みび長時に『へん』おけ見た...
俺たちが見て見ると決まってる
これはゴーラの言葉だ。
コペル君
といっても
僕もコペル君
だけど...
すっかり元気に
なったんだね?
うん
そりゃ
なにより
あのときは
ちょっと違う
考え方が
できてきてる気が
するんだ
なんだか自分の
ことばかり考えて
悩んでしまった
けど...
でも
......今は
君のお父さんは
亡くなる三日前に
僕をそばへ呼んで
君のことを頼むと
おっしゃった
そして君についての
希望を僕に
言いおいておかれた
私は
あれに
立派な男に
なってもらいたいと
思うよ
人間として
立派なものにだね
おじさんの
ノートは
まるで
太陽みたいに
でも
いろんな疑問に
光をさして
くれたり
心を温かく
はげましても
くれる...
だからこそ
それを......
自分のものに
だけしてちゃ
だめだ...
このノート
は...
RDefferCoo
僕が
大事に持っている
ものじゃない...!!
あっ
おじさんっ!!
おじさーん!!
えっ
えっ
ちょっと
おじさん!?
なんで
..?
た...
はぁ
たっ
はぁ
する
なんで
はあ
はあ
?
逃げたんじゃ
ないさ...
はあ...
逃げるんだよ
おじさん...:
ただ
ぐんぐん走りたく
なったんだ
またそれ...
......
おじさん...
IngFarfeck
おじさんに
返そうと思って
いつか
あのさ
これ...
.....
実はさ.....
いま出版社を
回っていて
僕みたいな奴が
あらわれたら
その子に渡してよ
本?
そういう
ことなら
返す必要は
ないぜ...
?
本を出せるかも
しれない
ああ
君たちに
向けて
書いた
本なんだ
なんだか
ゴト
ガタン
すごいね
おじさんの文章を
見知らぬ人たちが
読むかもしれないん
だね
まあ
......
もし
そうカンタンに
広まるかは
わからないけどさ
その本を
読んだ誰か
が.....
何かに
気づいたり...
行動を起こす力が
わくようなことが
あったと
したら...
それは間違い
なく...
コペル君の
おかげなんだぜ
......
おじさん
......
もう一回
あの場所に
いかない?
さすがに
銀座は
一緒に
ここに来た日
から
夜でも
ずいぶん明かりが
あるね
おじさんは
ノートを書きはじめ
たんでしょ?
ああ
そうだね
だったら
僕もここから
始めるんだ
コペル君も
ノートを
書く?
うん.....
おじさんより
いいこと書いちゃう
かもね
へ
......
うん...
そうするよ
ふっ
そしたら
おじさんにも
読ませてくれよ
僕は
その日
こんなことを
あえた
世の中を
回している
中心なんて
もしかしたら
ないのかも
しれない
太陽みたいに
たったひとつの
大きな存在が
世の中を
回しているの
ではなくて
誰かのために
っていう
小さな
意志が
ひとつ
ひとつ
つながって
僕たちの
生きる世界は
あの日の
屋上で
なんだか
世界の中に
溶けて
動いている
消えてしまいそうな
へんな気持ちに
なったけど
でもヘラは
っかりと
飛び込んで
けっこういう
するんだ
...
おじさんの
ように...:
がうう
君たちは、どう生きるか
コペル君は、こういう考えで生きてゆくようになりました
そして長い長いお話も、ひとまずこれで終わりです。
そこで、最後に、みなさんにおたずねしたいと思います
吉野源三郎
吉野源三郎(ようけどさえう)
編集者・児童文学者。1899明治39)年〜1981.昭和30年
雑誌『世界』初代編集長、岩波少年文庫の創設にも尽力。
羽賀翔一ほがしょうち
漫画家。2010年、『イシチキ君』で第27回ここANGAOPDN、奨励賞受賞
2011年に『ケシゴムライフ』をモーニングで短期集中連載し、
2014年には単行本発売。近刊に「昼間のババは光ってる」
本文中に、現代では不適切な表現。
あまり使わない表現と思われる箇所もありますが、
原作を重視するため、当時この表記に則って掲載しています。
この作品は2017年8月にマガジン/ハウスより発行された
「漫画「君たちはどう生きるか」の電子書籍版です。
漫画
日者行
発行日著編集協力装¬丁発行者祭行所
君たちはどう生きるか
/
発行所
2017年8月24日
吉野源三郎(原作)
羽賀翔ー〈漫画〉
柿内芳文ノコルク
川名潤
石﨑孟
「株式会社マガジンハウス
〒104-803東京都中央区銀座3-13-0
書籍編集部,00-3545-7201
マガジンハウス・ホームページ
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