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茶虫
まず、まとも
ほらゆらこ
原百合子
繭、纏う...
原百合子
例えば
袖を通した時
ねえ
制服が息する音
聞いたことある?
校章を
つける時
風で
スカートが
ひらめいた時
変な話だと
思うでしょ?
けどね
この高校では
あるんだよ
だっていこう
たって私たちの制服は...
第1話
2017年7月
都心から電車で2時間走ると
林がまるでふたつの帽子を被ったように
大きな白樫が見えてくる
白樫の樹に
見守られるように
伸びる長い小道
楽園を隠すような
深い深い林
そこに
私たちの星宮女学園はある
さようなら
さようなら
もう下校時刻ですが
大切なお話なので
最後まで聞いてくださいね
冬休みが明けると
すぐに制服づくりが
はじまります
この制服のために
我が校へ入学した子も
多いのではないでしょうか
高等部の制服は
長い歴史を持っています
あなたたちの
ずっと上の先輩も
伝統を守り制服をつくって
新1年生に渡してきました
中等部の子たちは
貴方たちの制服を
楽しみに待っていますよ
12月にしては
暖かい午後
こういう日は
貴方たちを見守ってきた
白桜の樹に恥じないように
よい制服をつくりましょうね
制服が
浮かれている気がする
今日の
日直は
えーと
じゃあ
横澤さん
あら
星宮さんなの?
はい...
いっもいつも
私ばっかり
あんのババア
手空いてる子なんて
いくらでもいるだろ
あんっ、
レギ
引っかけそう
だったよ
佐伯さん
だめだよ
横澤さん
君の髪は
とても綺麗なんだから
その荷物
一緒に持つよ
被服棟まで
かい?
...どうも
うん
大丈夫だよ
口はつけて
ないから
耳はなし...
おかしいな
みんなには
好評だけどな
完璧な
王子様だよね
ホント
佐伯さんって
だろ?
3学期には
佐佐さんも
ショートが
今以上の
王子様に
なれそう
はは
それは
僕も思うな
思うんだ
僕
かっこいいし
星宮さん
ああ
教室に来て
ないの?
図書館で
見た子は
いるみたい
そういえばさ
日直じゃないよね
みたいって
最近寮に
篭もりっぱなしだよ?
窓は開いてるから
生きてるんじゃない?
学園長の孫娘か
知らないけどさ
先生たちも
口出ししないしね
繭の君
なにそれ
まるで
繭の奥にいる乙女
みたいだって
えーそれ
自分で考えたの?
僕も
聞いただけ
いやだな
その姿見たら
ほとんどの子が
百年の恋から
冷めちゃうよ
そうかなー?
ずっとやるの
しんどいんだよ
アレ
キラキラ〜っ
それにさ
この姿は
他の子には
見せないよ
うね
洋子
どうして顔だけ
いいんだろうね
華さんは
こえきこえて
ますよー
どうしたの?
息?
あー
聞いたこと
あるかも
この制服
息したなあ
って
都市伝説が
なんかかと
思ってたけど
自分の制服は
特にね
私の心と連動して
嬉しいなー
とか
しんどいなー
とか
引いた
でしょ?
そういうところまで
わかる気がする
どう
わかる?
どうって...
人のは
わかんないよ
ね?
お願い
ムッ...
やってみる
だけだから
私この制服
つくりたくて
ここに入ったんだ
ありがと
どんな子に
私がつくった制服が
届くんだろうって
うん
でも
この制服
本当に綺麗
あのね
大切に使ってくれれば
それだけでいいんだけど
すごく気にならない?
うん
ねえ
どんな子...
うん
気づいてないとでも
思った?
貴方が
私から目を
そらす時
王子様の顔をして
あの窓を
見てること
王子様なんて
やめちゃえ
あ
すごー
しんどー
.....って
でも
謝ったり
しないから
やっちゃった...
あれ
この制服
息がふたつ
ある......?
昔大きな戦争がありました
それはたくさんのものを。
奪っていきました
誰かと笑うことも
悲しむことも
大切な人も
服さえも...
長引く戦争で
国からはわずかな糸までも
なくなってしまったのです
そうだ
髪の毛が
あるじゃないか
すぐに髪の長い女性たちが
集められました
軍服をつくるだめに
そこで偉い人は
考えました
それを
そっと見ている
女たちがいました
私たちの髪の毛も
切られてしまうのだね
そう思うといてもたっても
いられませんでした
誰の手にも
触れさせない、
私たちだけのドレ
「そうよ切られる前に
私たちの秘密のドレスを
つくってしまいましょう」
彼女たちは
自分の髪を切り
ドレスをつくりました
それは
とても美しかった
そうです
そして、
ドレスを着た人は皆
こう言ったそうです
「まるで服が
息をじているようだ
秘密のドレス作りも、
戦争が終わった今では
昔の話
本当に
お美しいですわ
もう
大丈夫よ
一部の伝統を
除いては
お姉様の
制服をもらう
新入生が
うらやましい
ですわ
私6年間
ここに通ってても
寮組のアレには
慣れないわ
そそー
自通
僕も
言える通じゃ
ないと思う。
王子様が
もう12月なのに
暖かいよね
ねえ
うん
行こうか
そういえばさ
ふたつ先の駅のケーキ屋さん
柴犬マカロン出たらしいよ
えっ
行く!!
あら
どうしたん
ですの?
いま星宮さんの
部屋から...
きれい
私たちの制服は
髪で出来ている
繭、纏う
第2話
肩幅36
腰囲80
袖丈25
胴囲59
胸囲80
そういえば
星宮さんは?
頭囲51
別室
みたいだよ
いいなぁ
これすごく
デリカシー
ないよね
わかる
わかる
私
みーこの
聞かないから
えー
本当に?
自営者はもう
構澤洋子
今2階で
高3の先輩たちの
断髪式やってるよね
どんな感じなのかな
わかるー
気になる
よね
ここだけの
話
髪の毛の長さが足りないと
髪の毛切らないで
帰されちゃうんだって
私足りるかな
小2からしか
伸ばしてないし
ええ
失格って
こと?
制服つくるための量が
足りないんじゃない?
横澤さん?
だよね
え
なかなか順番
こないね
そうですね...
敬語とか
いいのに
佐伯さんのほうが
長いんだ
前から
思ってたんだけど
横澤さん
髪綺麗だね
不愉快
髪のことで...
そうやって
からかわれるの
不愉快
ずっと髪伸ばしてる
みんなと違って
私なんて小6からしか
伸ばしてないし
誰も
こんなこと
言いたくないんだけどな
高いトリートメント
とか買えないし
私の
制服なんか
言わないで
横澤さんの髪
優しくて
壊れそうなほど
繊細で
すごく素敵な
制服になると
僕思うよ
綺麗だね
って
絶対あれ
お世辞だよ
でも
早く
戻らないと
雪だ
冬休みが終わった日
高等部3年生と
中等部3年生は
被服棟に集められる
中等部は
制服の採寸を
高等部は
別に
先生もダメって
言ってなかったし...
けど...
ちょっと...
ちょっとだけなら
失礼
します
3年A組
前園咲です
よろしく
お願いします
少し待って
いただけますか
すみません
今まで
ありがとう
失礼します
3年A組
山崎佳奈美です
新潟県は
よろしく
お願いします
繭、纏う
第3話
高等部8年
は、はっはっ
羽生結夏
「それ」が
星宮さんのものだと
すぐにわかった
一度だけ
星宮さんと
話したことがある
ずっとワルツが
好きだった
はい
三拍子を
体で感じてね
午後から
ワルツの授業が
ある日は
お昼休みに髪を結う
そう決まっている
男役の子は
相手の子を
ちゃんと
リードして
だから
その日は
少し悪いことをした
気がしたの
長い髪をきちんと纏めて
踊る彼女たちが
ナチュラル
ターン
調和のとれた
ワルツが
好きだったのに
リバース
ターン
見惚れ
見惚れてしまったかっ
星宮さんの
髪に
ワルツの中に漂う
彼女はあまりにも自由で
艶やかで
ねえ
どうして髪
結ぼうと
するの?
そのまま
一緒に踊って
羽生さん
髪結ぶの
手伝うよ?
そういえば
星宮さんって
いつも
ありがとう
どうして髪
結ばないの
かな
ね!私
踏んじゃいそうで
ヒヤヒヤしたよ
いいよいぃよ
気にしないで
絶対
結んだほうが
いいよね?
そんなことないと
思うけど...
そうよね
綺麗な髪だもの
引っかけて
切ることになったら
すごくもったいない
だよね
だよね
そうだ
私たちで
星宮さんに合うような
バレッタかシュシュ
買いに行かない?
ねえ
羽生さん
...どうかな?
そうね
星宮さんに似合う
髪留め...
次の休みに
外出届けをもらって
買いに行きましょう
星宮さんは
確か
最上階の端部屋:
星宮
...さん
ここから先
立入禁止
ここから
見れば
なにか...
バタン
星宮さん!
星宮さん!
星宮さん!
「そのまま一緒に
踊って」
このワルツを
壊してみたら
どうなるのかしら
ふっ
ははっ
あはは
すがすがしい
あぁ
ほんのすこし
繭、纏う
そうかな
佐伯さん
もう
コート着て
風邪でも
めされたの?
ねえ
また背伸びられ
ました?
佐伯さん
クッキー
焼いて
きたんだけど
ねぇ
佐伯さん
ごめんね
ちょっと僕
急いでるから
年
高等部1年佐伯華
あとでね
今日こそ
クッキー受け取って
もらえると思ったのに〜
個人のプレゼント
なんて受けとるわけ
ないじゃない
みんなの
王子様なのよ
第4話
遅れて
すみません
いいのよ
王子様は
遅れて登場
するものだし
被服棟に入るのは
採寸以来でしょ
高等部の授業には
ついていけてる?
はい
はい
なんとか
なんというか
カタコンべ
みたいですね
あぁ
地下のお墓?
よく知ってるね
電気つけるから
待ってて
被服棟の
お墓かぁ
その表現いいね
ごめん
電気反対側の壁
だったみたい
そっち探して
くれる?
あ
どうかした?
誰かに触られた
ような.....
卒業した子達が
置いていった制服を
ここに閉じ込めて
いるから
また
着てもらえるって
嬉しくなったん
じゃないかな
それも
王子様に
選ばれるかも
しれないって
何十年も
卒業したら
持って帰って
いいんだけど
置いていく子も
いるんだよね
私もここは
教師に
なってから
知ったけど
それよりも
ここ開けたの
佐伯さんの
ためなんだから
準備して
これは...
聞いていた
あー
佐伯さん
すごく伸びたね...
背......
合う制服が
見つかると
いいんですけど
どうされました?
いや
なんというか
制服の気持ちも
わかるな
あー
この中にも
ないね...
えーっと...
言いにくいん
だけど
被服科の檜山先生と
話したんだけど...
ここになければ
佐伯さんの身長に合う
制服
今着ている制服に
普通の糸を足すしか
ないみたいで...
わかりました
それで
いいです
ん
そうと決まれば
どうしようか
僕しばらく
ジャージ通学でも
いいですよ
ダメでしょ
そういえば
どうして
佐伯さんは
この学校
入ったの?
母さんが
女の子が生まれたら
絶対ここに
入れるんだって
あぁ
わかるなぁ
結構ここって
お母さんの人気
高いよね
僕ですか?
上のふたりが
男なんで
母さんも
こんな男みたいな
真似事してるとは
思いもしない
だろうけど...
おっと
ごめんね
僕の不注意で
いえ
それも髪に
なにかあったら
本当に大丈夫?
怪我してない?
本当に
大丈夫ですので
今のは...
星宮さん?
すごく軽い
髪だった...
軽い...
どこかに飛んでいって
しまいそうなほど
あぁ.....
この制服も
飛んでなくなって
しまえはいいのに
しんど...
繭、纏う
イケメンの兄貴に似て
中等部の頃から
割とそんな役割
一佐伯さんて
かっこいいよね」
けれど
この制服に袖を通してから
みんなの視線が少し変わった
王子様
そう言われるのは
嫌じゃなかったし
こういうに学校生活を送れたから、
どうでもよかった
誰かが言った
その言葉はすぐに
自分の代名詞に
なった
まるで
第5話
この制服によって
王子様に
変えられていくみたいに
ん~...
6時...
帰ろう
さすがに
この時間まで
残ってる子は
いないと思うけど
取り巻きの子も
ほんと
懲りないよなぁ
といって
このまま帰って
母さんに学校の
こと聞かれるの
面倒だしなぁ...
あの窓
昨日の.....
星宮さんの
ちょ
なにやってんの!?
うわっ
てて
君がどんなに
軽くても
空は飛べないよ
そうね
飛べなかったわ
もしかして
ちょっと
イタイ子...?
ケかない大丈夫?
「自分も人のこと
言えないけどさ
ずっと遠くに
逃げられるような
気がしたのだけど
じゃあさ
僕と一緒に
ここから
逃げる?
ねえ
ねえ
えうそ
本当だ
テレビでしか見た
ことなかったけど
マジで長いんだ。髪
今
こっち見て
笑いかけたよ!!
あれ
星宮学園の子
じゃない?
まさか本当に
星宮さんが
来るなんてなぁ...
電車に乗って
1時間半...
周りの反応も
まぁこんな感じか...
ただの綺麗な
お人形さんかど
思っていたけど
式典とかで、
学園長の横に座ってる
つーか
自分もだよな...
小さくて
まつげが長くて
髪の長い
逃げるっていっても
どうやってって
感じたし、
でも
なにか起こるかも
しれないと
期待したから...
...
終点近くまで
来たら
なにか変わるかなとか
思ったけど
別にどうなるわけでも
ないしなぁ
2000
やっぱ
帰ろうって言おう
ねえ
星宮さん
どうか
されました?
ほら
喉かわかない?
ちょっと
買ってくるよ
こんなささやかな
逃避行に
見飽きたピル街に
あんな嬉しそうな顔を
するなんて
連れ出した自分は
星宮さん
こういうの
飲むかな?
本当の里子様になった気になるし
君どうしたの?
星宮の子でしょ
誰か
待ってるの?
お兄さん
ゴメンね
その子
僕のだから
行こうか
星宮さん
おい
どこへ?
どこって
もっと
もっと
遠いところ
本当
ずっと遠くに
逃げることが
出来そう
どうしたの?
こんな僕が
ううん...
嘘っぽいかも
しれないけど
本当に
どこかに行って
しまいそう
だったから...
こんな自分が
言っても
じゃああなたが
連れ出してくれる?
制服も
届かない場所へ
僕は君を...
王子様がたとえ誰かに
作られたものだとしても
わかった
君のためなら本当の
王予様にだってなれる
そんな確信があるから
ごめん
なさい...
今のは
忘れて...
どこにも
逃げられるはず
ないもの
お嬢様
捜しましたよ
おばあさまが
心配なさって
ます
さあ
学園に
帰りましょう
あの...
君も気をつけて
帰りなよ
そういえば
あなたのその制服
苦しいのでしょう?
ハサミある?
うん...
お嬢様!?
もしまだ
この学園に残るなら
これを使って...
使うも使わないも
あなた次第だけど
おやすみなさい
王子様
楽しい夢
だったわ
あら佐伯さん
おはよう
ございます
コートはもう
よろしいの?
うん
もう
大丈夫
繭、纏う
第6話
先輩方
はい
みなさん
ご指導のほど
どうもありがとう
ございました!
洋子なにを
見ているの?
雑巾がけ
ありがとう
もう戻って
大丈夫よ
ちゃんと最後まで
やってくれないと
中等部に示しが
つかないわ
おもしろいなあ
って
?
高等部2年
横澤洋浮
ちょうど
バラ園は
見頃だけれど...
佐伯さんと
佐伯さんを取り巻く
寮組のお姫様方
そして
その輪に入れない
佐伯さんの取り巻き
あの中に
私に押除をおこつけた
やっかいろ
取り巻き
ザマアミロって
感じ
佐伯さんに見てほしくて
掃除の時間にせっかく
髪を結い直したのに
かわいそうに
佐伯さんは
寮組の美しいお茶会に
取られてしまったとさ
このままあんまり
サボるようだったら
私から注意するわ
それよりも
お友達が
欲しいのに
悪口や妬みを
言っていては
逆効果よ
友達のひとりや
ふたりは...
いるようには
見えないけど?
それだから
小言女とか
言われるんじゃ
ないの?
そう
ああもう
うるさいな
ごめん
そうね
幼馴染だから
許せるけど
他の子に
言ってはダメよ
そんなこと
わかってるよ
でももうみんな
自分の繭を見つけて
その中で肩を寄せ合って
生きているんだ...
もう帰ろう
協調性のない
私なんか
お呼びじゃない...
私の嫌なところを
知っても
それでも
ももし
受け入れてくれる人が
いるとしたら?
そんな人
佐伯さん
どうか
されました?
いるわけ...
いや誰か..
ああ王子様
こっち見たのね
いた
そういえば
佐伯さん
えあ
うん
いいんじゃない
友達に
「横澤さんの髪綺麗だね
ど
どうして
前に話してくれたじゃない
一回話した時に
洋子の毒のある言葉にも
ちゃんと返してくれたって
ほほら
みんなに言ってる
お世辞だよ
うん多分それ...
ううん
絶対そうだって...
思ってないこと言って
その気にさせれば
いいって感じなんだよ
言ったことすら
覚えてないんじゃない?
ほんと
軽薄だよね
自分で言ってて
泣きたくなる
ぐらいなら
そんなこと
言わなきゃ
いいのに
ごめん
もしかして
慰めてくれてるの?
うん大丈夫
君だけいれば
大丈夫
これ以上望んしだりしないから
ちょっと
ごめん
佐伯さん
見なかった?
職員室に来て
欲しいんだけど
横澤さん
呼んできて
くださる?
それなら
そこ...
佐伯さんの
場所ですか?
私
今日の古典で
質問が...
横澤さんが
先程見ましたって
ちょっ!
しかえし
まあ!
こんにちは
どなたかしら
あら可愛い
迷ってしまったの?
どなたかのご招待?
お名前は?
紅茶か
珈琲はお好き?
今日のケーキは
私のお母様の
手作りなの
一緒にどう?
そうだわ
今お話が
いいところでしたの
あの
あの...
それとも
クッキーのほうが
お好きかしら?
こちらの席で
一緒にお話ししません?
やっぱり
覚えているはず
だよね
横澤さん
そうだ
今日の放課後
僕が君のこと
呼び出したんだ
忘れていて
ごめんね
歩ける?
敬語いいって
言ったじゃん
え
採寸の日
そんなの...
はい..
そんなの..
覚えてないんじゃ
ないの....?
ちゃんと
覚えてるよ
僕あの日
横澤さんと話したくて
声をかけたんだよ
やめて
やめてよ
そんなこと。
言われたら...
勘違いするから
優しくなんてしないで
繭、纏う
第7話
被服棟で待てって
言われたけど...
というか
覚えてると
思わなかった..
高校入学式から
一週間経った日
あーもう
つり革ひとつも
残ってないじゃん...
なんで春って
こんな人多いんだろ...
もうやだ
学校行くだけで
疲れちゃうよ...
佐伯さん...っ
う...
うそっ...
いつもは
こんな時間に
いないのに..
そ...
そうだ
こういう時って
普通だったら...
声を
かげるとこだよね...
採寸の日に
いちおう
話してるんだもん...
だいじょう...
どうせ
お世辞だよ
...そうだよ...
そうに決まってるって
ひとりで勝手に
勘違いするとこ
だった...
見つかる前に
早くここから
逃げよ...
この先
電車が
揺れますので
ご注意ください
お立ちのお客様は
つり草や手すりに
おつかまりください
すみません
いえ
髪の毛は...
大丈夫...
靴も鞄も
磨いてきた
ばっかだし...
次は
星宮女学園前
星宮女子医部
もじ本当に
あの時のこと
覚えているなら...
知ってた
これで
もう
覚えてるはず
ないよね
でも少し
安心してもいてま
誰かと関わって。
辛い思いを
しなくて済むって
だから...
はい
少し濡らしてきたから
目を冷やすといいよ。
いらな...っ
他の子に
言ってはダメよ
あ...
ありがとう
お礼を言うのは
僕のほうだよ
ちょっと
抜けだしたいなと
思ってたから
横澤さんが
呼びに来てくれて
嬉しかった
べ...別に
私は頼まれただけ..
だから...
というか
どうして
被服棟なの?
ああ
それはね
これのため
外履きとか鞄が
校内に残ってると
取り巻きの子たちが
僕のこと捜すでしょ?
まくためにたまに
ここに隠すんだ
正直
しんどいよね
え
そういえばさ
どうしてさっき
覚えてるはずない」
って言ったの?
そ
それは...
...入学式
終わったすぐ
ぐらいに
電車で...
一緒になって
すごく...近くに
いたけど
気がついて...
くれなかったから:
なんだ
そんなことか
それなら
話しかけてくれれば
よかったのに
遠くに
いたわけじゃ
ないんでしょ?
そんなに
難しいことじゃ
ないよ
私にとっ
私にとっては大きな問題なの
そんなこと
じゃない
やば...
言っちゃった...
やっぱり
横澤さん
おもしろいね
おもしろいって
どういう...
もしも気を
悪くしたなら
謝るよ
ごめん...
お茶会で
疲れてさ...
ちょっと
もう無理...
えっ
...ねえ
というか
近っ...
え
こういう時
どうする...
あ:そ...そうだ
ねえ
寝ちゃダ...
ひどい
クマ...
綺麗に
切りそろえられた
爪とか
手入れされて
傷ひとつない髪の毛
ほこりひとつついてない
制服
綺麗なシーツについた
シミのように
見た目は
・完璧な王子様だから
いやでもクマが
目立って
本当はここまでして
すべてから
逃げたいはずなのに
そんなそぶり
ひとつ見せずに
あそこに
参加してたんだ...
ねえ
本当は
佐伯さんも...
言葉になんて出来ない想い。
触れずにはいられなかった唇
甘く、ささやかな秘めごとは
けれど.....
決して誰にも知られてはならない
第2巻へつづく
作画協力
制服デザイン協力
志賀昌子
志賀純子
中村歌子
金子売介
菅沼ハコ
【初出】月刊コミックビーム
2018年3月号〜9月号
繭
...
まゆ、まとうはらゆりに
原百合子
いらっちこ
BEAMCOMX
繭、纏う1
著者「原百合子
2018年9月12日発行
cHARAYuiko2018
本電子書籍は下記にもとづいいて制作しました
BEAMCOMX『繭、纏う1
2018年9月12日初版初刷発行
発行者「青柳昌行」
先日、当時期の11発行・株式会社KADOKAMA
わたしは、1987年10月19日から2018年4月10日(火)(水)までのお客様についてのお
1004/14MANAWAVの編集、コミックはキャラクター局
コミックビーム編集部
本作品の全部または一部を無断で複製、転載、配信、送信すること、
装幀内川たくや()UCHKAWADESCNInc.
エンターブレインカスタマーサポート
[メールアドレス]support@rnl.enterbrain.co.jp【かならず商品名をご明記ください)
あるいはウェブサイトへの転載等を禁止します。
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本作品の内容は、底本発行時の取材・執筆内容にもとづきます。
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