まゆ、まとうはらゆりと このようなお手紙を書くのは初めてなので つたない文章になっでしまったらごめんなさい お姉ちゃん仮にも星宮の教員でしょ? 教員はあんな胃にくるやつ食べないの.. あんたも寮の年間生クリーム摂取量知ってるでしょ.. というか今時手紙書いてるの? 覚めてしまった瞬間に忘れてしまって名前もわからないんだけれど 夢を見たって言ったらおかしいかな 彼女すごく意地っ張りで 誰とも関わろうとしないんだけど 女の子とずっと一緒にいる夢 そんな彼女のことを誰よりも近くで見ているんだけれど 私は決して触れられないの それでその子に書いてるんだ お姉ちゃん笑わないの? 私はよくわからないけど そういう話ないわけじゃないし あんた星宮卒業してからずっと上の空だったから ちょっとホッとしたというか 髪の毛はまだ伸ばさないの? 誰かとの繋がりが欲しいのならもう一度つくってもいいんだよ さっきの喫茶店に忘れ物した ちょっとそこらで時間潰してて あなたの心には触れられないし 多分いつかこれも忘れてしまうと思うの けれどひとつだけ覚えていたいな いはった。この日を見て彼女は学園から忍びて姿を 続けていた寮の部屋の小窓から、美しい髪の毛が舞 何のかと思うんですようになってしまったのですが、私の経験にはちょっというのでしょうかといっていう事はありません。そしてもらっしゃいましたようだろうかもしれますよね 「蘭の君」と噂され、誰よりも美しい髪を持つ学園 髪を切り、新入生のために想いを込めつくられる ほし星宮女学園高等部に受け継がれる伝統の制服。そ 唇にキスをしたのはあなたを知りたかったから じ込められていく... 少女たちの髪が幾重にも絡まり、学園という蘭に閉 年生は、華の拒絶になすすべもなく、立ちすくむ そして、華への想いを唇に託し告げた、横澤洋子っ また、星宮に翻弄されるひとりだった 妹関係になる。誰しもが賞賛する美しさの九条も 誰よりも学園の伝統を重んじる寮組の九条絢音 庭のような学園に大きな波紋を呼ぶ なんの前触れもなく起きたその事件は、小さな箱 お兄ちゃんが久しぶりに帰ってきたよ お前絶対これバグ使ってんだろさっきからずっと増殖してるぞ 別にやらなくても亮兄弱いけどね 煽り耐性つけてからどうぞ こらっ律ちゃんソファに足のっけないの! 売ちゃん出張ついでにこっち寄ってくれたんだって ねぇ亮兄まだ会社でみんなの王子様続けてんの? 亮兄顔はいいし表の性格は完璧じゃん お前らあとで本当に投げ飛ばすからな... みんなにまんべんなーくいい顔して王子様してあげるのは楽なんだけどな けど俺はもう〝みんな〟の王子様に戻らないよ お前にはわからないだろうけどな 今日人数多いから華ちゃん支度できたら、先にお風呂入ってね〜 本物の王子様みたい... 制服の上からじゃなにもわからないの 今日はなんだったのラロはなん変だよ、華 まずは、まん時代を付けて帰っておいて 洋子あんたなんて顔してんの ちょっと母さんなんで入ってくんの ごはん食べに来ないから だからって声ぐらいかけてよね 何度も同度もかけたわよ 私もうよくわかんないや... 華と何話して良いか分かんないよ 私は右手にハサミを持っている とても細く切れてしまいそうな もうこれ以上関わっても傷つくだけ... みんな行っちゃったよ移動教室 ああの...行かないんですか? だったら一緒に行って怒られるのも半分にしようよ がんばって急いでもチャイム鳴っちゃうから 入学してすぐにできたはじめての友達だった 横澤さんに似合うと思うな 見た瞬間わかっちゃった 本当の自分を見せてしまったら ひどく傷つけられてしまいそうで怖かった もう一品おかずを作ろうかって言うんだけどもう十分だよって もっと...うまく返事しなくちゃ... じゃないと傷つけちゃう... 私がなに話してもいつも聞いてないよね... 洋子ってそうやってすぐに黙っちゃうし 目だってほとんど合わせてくれないし 友達になりたいというほんの小さな願いですら叶わない 傷つけたくないという私の思いもなにひとつ伝わらない わかりたいなんて...わかってほしいたなんて... はじめから無理だったんだ 勝手に入らないでって! いいから着替えて行きなさい! 今日学校行きたくない... 見つかると怖いん。だよな... スマホ持ってきちゃった これも全部あんな夢を見るから... 結局華になにも送れなかった たった一度傷つけてしまえば こんなの簡単に切れるのに まだいらしてないですよ おことづけくださればいらした時にお伝えしますけれど そこまでは大丈夫だか... 気持ちのいい朝なのですからたまにはいいでしょう? 洋子昨日なにがあったの? お待ちになって横澤さんもう少しお話ししません? ちょ...ちょなんで... 星宮さんになにかあったって聞いたんだけど洋子知ってる? 今ちょっとした騒ぎになってんのよ あぁ...そっちか.. あの子新しい友達とすごく幸せそうだね とても仲が良いと思うわ 幸せかはわからないけど あの子が他の子と幸せなら洋子も幸せ...!? 幸せじゃなきゃいけないよ... 来月にはすぐ断髪式なのに どうするのかしら... それに佐伯さんが関わっているんじゃないかって ってなんで連絡しようとしてるんだよ自分 こんなことしてる自分もバカだけど 悩んでることとか...っ あははそんなんじゃないって 洋子にも海のおすそわけしてあげるよ 卒業前だし遊んでおきたいなって なかなかそんな機会ないからさ だからさもし心配してくれて電話をくれたのなら ねぇ華...横浜にいるのって なんかごめんねけど本当に大丈夫だから 星宮さんに関係してる? 華...っ私は...私はね... 田中さんありがとうございます 前身頃の刺繍の処理がとても難しくてご相談さしあげて正解でしたわ ええまたわからなければ聞きにいらしてください 私でよければご協力いたしますわ 星宮さんとなにかあったみたい 佐伯さんと星宮さんふたりは付き合っていたらしいわ フラれた腹いせに星宮さんは今回のことを ここはなにも変わらないわね... 根拠のない噂でも一度広がれば その噂が嘘か本当かなんてここには関係のないこと 共通の話題を持つことこそが彼女たちの絆 それはあたかも真実のように枝を伸ばす だから洋子はまざれなかった 彼女はあまりにも自分の心に素直でそして臆病だから 積極的に聞き耳を立てている私も同類だけど 輪の中で嘘をつきつづけられなかった 彼女はここでは輪を乱す異物 洋子自身もそう感じているから そして誰かと関わることで自分の心が傷つくのを恐れたから 彼女は静かにひとりでいることを選んでしまう だからなにがあったかはわからないけれど 洋子は今回のことで、佐伯さんとも縁を切るわね... だから洋子に言ったのに.. 星宮は絶対むかないって... ひさしぶりに慰め会:か... どうし...どうされたの横澤さん 皆さん驚かれてますわよ 授業もはじまりますし手に持たれているそれもしまわれて ちょ...ちょっと洋子 いきなり来てなんなの? 横浜行くためのお金が足りないの... 現実的ではないですよ授業だってありますでしょう? 冷静になられて横澤さん これ以上傷つきたくないでしょう? 自分でも意味わかんないけど 今行かなくちゃいけないの... シュウマイ弁当買ってこないと容赦しないから これで私の手持ちは全部 私...行かなく... 私は右手にハサミを持っている それは私が私でいるためのたったひとつの方法 傷つけられてしまう前に 横澤さんって髪綺麗だね なにもないことにしてしまうのが多分一番しあわせなこと 今ここで切ることが正解 切らないでいたらこれから先 触れようと関わろうとする度に ...傷ついてすり減って たとえどんなに傷つくことになったとしても 私は華のとなりにいたい 繭を纏う少女たちは透明になる 身体を溶かしてつくりかえる 流されるままずっと王子様を演じてきた 幻想の王子はみんなが望む姿 私話しかけに行こうかな 星宮の生徒?はじめて見たかもすっごく雰囲気あるね 僕がそこにいれば勝手に虚像がつくられてゆく 女の子だよね?カッコイイかも... ただ与えられた役割をこなすだけ 誰のためでもない王子様 誰かに僕を理解してほしいわけじゃない... 誰かを知りたいわけでもない... 静かにやりすごせさえすればそれでよかった 君が透明な僕を見つけだしてくれるまでは 僕と一緒にあの向こうへ逃げようと言ったのに 君と僕との唯一の制服を残して 学園から消えてしまった... 僕は君のために王子様になったんだ 君がいなければ何者にも...: 電話で来なくてもいいって 午後の授業抜け出してきた!? 僕を探してくれたのはすごく嬉しいけどさ学校を休むほどじゃないって って...僕が言えることじゃないか それにこうやって手を繋がなくても 僕はどこにも行かないよ どこにも行かないってそんな保証ないじゃん ここに来るまでに色々やらかしたから学校にだって戻りたくないし: ほんと大変なことばっかり... かばんとかも学校にあるし...靴はぎりぎり替えたけど 洋子強くなったね... 怪我してまで洋子はここに来たんだ... 本当にすごいな僕は...そんな強くなれないよはは... 私でしかいられないから 私でしかいられなかったから ...私本当は星宮の生徒みたいに美しくいたかったの けどそんなものにはなれなくって 私が強かったら寮組みたいにもっとそつなくこなしてるよ それどころか私はいるだけで星宮の和を乱しちゃうから... だから誰にも気づかれないように 息をひそめていようって そうすれば誰かを傷つけて傷つけられちゃうんじゃないかってもうおびえることもないから... ひとりで生きていこうって... ひとりで生きていこうって... そう決めてた...はず..なんだけどな... そんな全部を差しおいてでも 王子になりそこねちゃったよ... エ子という形を成そうとしていた 華は、その想いの行きつく先を失う 王子はふたたび透明と化す その傍らに寄りそうことを願う あまりにも眩しく、華を追い詰める 恋は突然の抱擁にかき消され...!? そろそろ戻ってください 冷えてもきましたしそれに... でもごめんなさいもう少し薔薇の手入れをするわ 来年咲く花のためにも今やっておかないと わかりました時間になりましたらまいります せめて体を冷やさないように 貴方たちも本当は来年花を咲かせるはずだったのよね 私たちが死んでしまうことにかわいそうと言ってくれる人は誰も... 被服棟ってどこですか...? ごめんなさい感傷的になってしまって 弱々しい薔薇を今の時期に切っておくことで 養分が咲く花に行き渡るの 来年も美しく咲くと思うわ 見渡すほど咲き誇る大輪の花 けれど今日この髪を切る私には関係のない話よ この剪定された薔薇と同じ ごめんなさい断髪式はとても素敵なことなのにこんな姿を見せてしまって 来年はなにも残らないわ 被服棟を探していたわよねなら... 先輩の髪とても綺麗です 先輩の髪とても綺麗です 素敵な制服で来年だって 先輩の髪とても素敵だから 来年だって再来年だって 僕貴方の制服着たいです 佐伯さんいらっしゃいますか? ここで美しく咲けますよ 高校に入られたらぜひまたここにいらして 採寸する日の朝にここで断髪式前の先輩に会ったなぁって そのお話気になりますわ けれどここの薔薇を大切にしている方だったよ そうなのですね素敵な話ですわ 今は高安さんが手入れをされてますわ 毎年こうして綺麗な花が見られるのも 志賀昌子志賀純子中村歌子 【初出】月刊コミックビーム 自合子煙づはらゆりこまゆ、まと・ まゆ、まとうほらゆらこ 本電子書籍の全部または、一部を無断で複製、転載、配信、送信すること、あるいはウェブサイトへの転載等を禁止します。また、本電子書籍の内容を無断で改変、改ざん等を行うことも禁止します。本電子書籍購入時にご承諾いいただいた規約により、有償・無償にかかわらず本電子書籍を第三者に譲渡することはできません。本電子書籍の内容は、底本発行時の取材執筆内容にもとづきます。本電子書籍を示すサムネイルなどのイメージ画像は、再ダウンロード時に予告なく変更される場合があります。 また、ご覧になるりーディングシステムにより、表示の差が認められることがあります。