[うえお久光×綱島志朗] 紫色のクオリア第02巻

紫色のクネリア

紫色のクオリア

ＮＥスキャーミュラーターの

時間、うえお久しぶりにいたの

『綱島志朗。．．．

戻ろうえお久光．．．。

龜綱島志朗ｅ

ＮＳＢＮ９７８－４０４９９１８７０

２５Ｎ３／８４：０４８Ｃ９９７９＼５７０Ｅ

．．．ええと、ＡｍａｚｏｎＡ

発行●アスキー・メディアワークス

．．．なんだったのか、定価、「一杯５００円」や顔が聞かれます。

雑誌４９０６５７３

ＤＥＮＧＥＫＩＣＤＭＩＣＳ

警告しよう。

ここから物語は、急転する

ＧＩＮＳＬＩＮＧＥＲＧＩＲＬＯ～＠

苺ましまろ０〜０よっげと

よつばと！●〜０

よしはと．．．とある科学の超電磁砲Ｏ～Ｏ

冬川基ノ鎌池

この３ドナのｄｅｗｓマブラヴオルタネイティヴＯ～Ｏレンドニーの

蒔島梓／アー

とらドラ！●〜６

絶叫ノ竹宮ゆは

こういって天元突破グレンラガンＯ〜の私が高ぶんだぜ

我が家のお稲荷さま。●〜のこいーいーだよ

こいこい★生徒会の〜の

こんにちは、ミさんと七人の仲間たちは一駅揃えてください

それが彼女のセイギならの

やさしいセカイのつくりかたな〜の

ログーｓｕｒｉｏｓｌｏｇｌｅ－０〜０．．ｃｏｌ

ｒｉｔｅ：ＳＩＤＥ－ＲＯ〜の

フラスメイト（♀）と迷宮の不適切な攻略法

リコとハルヒハルと温泉とイルカウンの

うるわし怪盗アリスの

ＭＯＴＬＩＮＥＮのＮＯＴＩＬＩＶＥＳ－ノットライヴスへのサービスサイトを

あしたの今日子さんの

紫色のクオリアＯへの

三島凛は信じない（＠〜＠

あの夏で待ってるね〜ねゴールデンタ

ルデンタイムＯ～＠

埼界線上のホライゾンＧ～＠

あれっていなまでもマララオカルネイケアトークルーイクラスになるのは

ＯＨＥＵＮＶ「吉宗綱紀（ｋｉｘｔ／ｅｇｅ）土地表する

ＱＵＡＬＡ、ｔｈｅｉｐｕｒｐｅ

ｅｐｉｓｏｉｄｅ：Ｃ／

ｅｐｉｓｏｄｅ．０８

ｅｐｉｓｏｄｅ：０９

ｅｐｉｓｏｄｅ：１０

１０３

ｅｐｉｓｏｄｅ：ｌｉ

ｅｘｔｒａ：Ｏｌ

ｅｘｔｒａ：Ｏ２

１３３

１６３

１６９

ｅｐｉｓｏｄｅ：０

あらゆる物語には

「はじまり」があって、

物語を終わらせるためには、

はじまりから語りださな

ければならない

ーとはいえ

あたしはどこから

はじめるべきだろう

その気になれば

あたしは自分が生まれた

瞬間からはじめられる

父と母が

あたしをつくった

その日からでも

二人が出会ったところから．．．

その二人が生まれたところから

さらに祖父母の花先からでも、

「物語はいつから

はじまるのだろうか

物語となるべき状況が

生まれたときからか：

それとも語ろうと

決めたときからか．．．

いくらでも

さがのぼれる

だとしたら．．．

やっぱりあたしは

あの日をはじまりとしたい

なんですか

！！！？

吸いこまれるような

紫色の瞳をもつ少女

毬井ゆかり

あたしの

ファーストキスの

相手

毬井ゆかりは

ニンゲンが

ロボットに

見える

それはどうしても

変えることのできない

彼女の絶対条件

「そしてあたしは

彼女の友だち

あたしとゆかりの

出会いこそが

すべての物語の

はじまりだったと思う

残念でした

ゆかりは今日

休みだよ

彼女は天条七美

ゆかりとの付き合いはふる！！

それは幼稚園までさかのぼる

かつてゆかりは

笑えない子供だった

笑うどころか

意識的に表情を

つくることさえ

できなかった

ゆかりは人間が

ロボットに見える

そして一般的にロボットは

表情というのを持たない

つまりゆかりは

「人間の表情」というものを

見たことがなく感情による

表情の変化がわからないのだ

「表情」というものが存在

することすら知らなかった

ごめーん

ありがと♪

それ

それは．．．

．．．

あなた．．．

なんで

笑わないの？

．．．え．．．？

怒ったり

泣いたりしたのも

見たことないわ

こうよこう

できるでしょ？

．．．．．．

そうそれ！

！！

なによ

やればできる

じゃない

．．．．．．

表情を

つくれないだけで

当然感情はある

子供ながらに

それを感じた七美は

考えつく限りの

手段をとった

いまあなたが自然に

つくっているものが

「表情」というもの

なんだよと

あなたがだれかに

いまの気持ちを伝えるための

とびきりの手段なんだよと

ーこの時

まちがいなく七美は

ゆかりのいちばんの

友だちだった

あの事故が

起こるまで：：

廃棄前のジャングルジムの

下敷きになり瀬死の重傷を

負った七美は、その場で

ゆかりに修理してもらった

それ以来七美は

ゆかりを恨み、邪険に

扱うようになった

ジャングルジムの

部品を使って．．．

いちいちつっかかり

挑発してくるように

なってしまった

七美の気持ちは

わからなくもない

あたしもあの事件で

左腕を失い．．．

ゆかりに

修理された

使われたのは

あたしの携帯電話

まぁあたしはそれで

ゆかりを嫌ったりは

しなかったが

「お互い「正規の

ものではないパーツ」を

持った者同士境遇を

共感できたからだろうか。

ある日七美は

こんな話をし始めた

波濤は

「クオリア」って

言葉知ってる？

初耳

クオリアって

いうのはね

「百聞は一見にしかず」

ってことなんだと思うの

ええ、たとえばこの空みたいに

青色ということをどれだけ

知っていようと、実際に見て

みなければわからないことは

あるし

それって

ことわざの？

逆に青というものを

見たことない人間は

どれだけ青について

くわしくても「青」を

知っているとはいえない

百のことを聞いても

本当に知ったとはいえず

でも一見すればわかるもの

クオリアなんだと

思う

ーその「一見」が

あたしたちは

こういうことを

大真面目に話した

話さずには

いられなかったの

かもしれない

あるときは

「量子」について

「シュレディンガーの猫」に

ついて話した

量子っていうと．．．

電子とか分子どか

モノの最小単位だっけ？

そう人間も星も

この世のあらゆる存在は

「量子」という材料で

つくられている

でこの量子っていうのは

「粒子」であると同時に

「波」の性質も持ってるの

．．．わかる？

ようするに「形ある物質」

であると同時に

「形のないエネルギー」

でもあるということ

「確率の濃度」？

そこにある可能性が

高いか低いか

量子は観測するまで

「決定」されないの

観測されてはじめて

存在が「確定」される

波であるからこそ確固

としてあるものではなく

確率的に存在する

確率の濃度で表されるもの

ーーそれが量子

だから観測するまでは

存在する確率の高さ低さで

考えるしかない

「知ることができない」

じゃなくて本当に

「決まっていない」

それが

量子の性質

不思議がもしれないけど

科学者たちが現実として

考えてることなのよ？

目にするまでは

わからない

あたしたちの身体は

そういうものがたくさん

集まってできてるわけ

．．．．．

じゃあ波濤は

「シュレディンガーの猫」

っていう思考実験

知ってる？

聞いたことあるような

ないようなー

．．．

簡単にいうとね

スイッチが押されると

致死性の毒ガスが

発生する

そんな箱を用意して

中に猫を入れておく

すると猫は

どうなるか？

かわいそうだろ

思考実験つったでしょ

真面目に答えなさい！！

だれかがスイッチを

押すまでは生きてる

けど．．．

押されたら

死ぬ？

普通ならそうね

でもこの実験では

スイッチを入れるのは

「だれか」ではなく

「量子」なの

量子があったら

スイッチが入り

量子がなかったら

スイッチは入らない

という装置なわけ

でも量子は確率的な

存在だから観測されるまで

あるのがないのが決定

されない

だから量子によって決まる

スイッチのオンオフも

観測されるまでは確率的な

ものということになる

押してる状態と

押されてない状態も

同時に確率的に

存在する

ーなにを

いいたいか

わかる？

そうなるとスイッチで

生死が決まるその猫も

箱を開けるまで量子や

スイッチと同じように

生と死の確率が同時に

存在するはずなのよ

ええっと．．．？

この実験はようするに

こういってるのよ

量子というのは不思議な

性質を持っているけれど

それはミクロの世界での

話であってマクロの世界ー

現実の世界には通用されない

―そう考えるのは

間違いだ！．．．って

ミクロの世界で不思議な

ことが起きているなら

それはマクロの世界でも起きて

なければおかしい

量子が本当にそういう

存在ならあたしたちもまた

観測されない限り

生と死の状態が同時に重なり

合っている量子のような存在で

なければおかしい

．．．ええ？

つまりそういう話なの

「シュレディンガーの猫」は

本当に？

でも実際にあたしたちは

ちゃんとこうして存在

してるじゃない！！

確率的じゃなくて

確実に――

だれかに見られてなくても

消えたりなんかしないでしょ？

いやそう

本当にって．．

．．．まぁそうよね

シュレディンガーさんも

そういいたかったわけ

．．．でもコペンハーゲン

とかの物理学者は

そう思わなかった

生きてるのと同時に

死んでいる

そんなわけのわからない

猫なんてありえない

だから量子も

あっだりなかったりする

ようなことはないって

彼らは量子は確率的で

ある以上「生と死の状態が

重なり合ってる猫」も

そもそも思考実験だから

実現できないだけで

そしていまでは

その考えが主流

そのせいで

シュレディンガーさんは

晩年物理学者を

やめちゃったんだって

熱とかゆらぎとか

そういう邪魔な「系」

つまり外的要因を

排除して正確な実験さえ

すればありうるのだと

．．．本当だったら

おもしろいよね

「ジュレディンガー方程式」を

作った本人がそれを

認められなかったなんて．．．

待って

じゃあ本当はあたしたちも

「確率的な存在」だっていうの？

その外的要因とやらが

なかったらだれかが

目を離した瞬間

生きているのか

死んでいるのか

わからなくなるような？

．．．実際わかってないのよ

わかっているのは量子が

確率的にふるまうと

いうだけで．．．

そもそも量子の「状態」が

「確定するーこれを

「波束が収縮する」と

表現するそうだけど

「観測」というのが

どういうものか

わからない

シュレディンガーの猫で

いうなら「観測される」のは

どの過程？

ふたを開けた人が

猫を見たとき？

見たものが脳に

届いたとき？

それとも単に

ふたを開けたとき？

あるいは猫が

なにかを感じたら？

逆に箱のふたを開けた

人間もまた大きな箱に

入れられていたら？

その箱をさらに外から

ながめてる人がいて

その人間もまた箱に

入れられてて．．

最初の猫の生死が

決まるのはいつ？

最後の人が「ふたを開ける」

まで決まらないの？

ミクロの世界では

確かに量子は波であり

粒子でもある不思議な

状態で存在している

もしかしたら

ウィルスでも確認

できるかもしれない

それがなぜ

マクロの世界になると

確認できなくなるのか？

量子が組み合わさった

大きな分子でも

量子的なふるまいは

確認できる

本当に観測によって

存在が決定される

「波束の収縮」なんて

ものがあるなら

いつどの段階で

起きているのか？

いろんな解釈はあるけど

本当のところは

わかっていない

．．．ただ「結果」が

あるだけで

その「過程」は

科学が発展すれば

すべて明かされると

考えられていた

でも現代の科学は

それを否定する

なぜならミクロの世界では

ただ観測するだけで対象の

状態が変わるから

そんな小さな変化が

現実に大きく複雑な

変化を生みだすことが

あるから

どれだけ科学が進んでも

一〇〇％的中する天気予測は、

ありえない

少なくとも現在の

科学体系では．．．

長々と話したけど

ようするにあたしが

いいたいのはね

この世界はそれほど

確固としたものじゃ

ないってこと

たとえばこういう

考え方もある

量子が確率的な

わけじゃなく「観測」

された瞬間に存在が

決まるのでもなく

それがミクロのレベルで

干渉し合っているために、

量子は確率的に見える

不思議なふるまいを

するという

この宇宙には無数の

「平行世界」が

あるの

．．．平行世界？

そう

平行世界

この世界とは

ほとんど同じ

でもわずかに違っている

世界

量子は平行世界の自分と

千波することで奇妙にふるまい

その「千渉性が喪失」することで

決定されるの

この考え方でいくと

箱の中の猫は最初から

生死が決まっていて

つまり猫が

「生きている世界」と

「死んでいる世界」が

無数にあって

「自分」もまた

それぞれの世界に存在し

干渉しあってるんだけど

自分には自分自身の

世界しか感じられない

信じられる

平行世界よ？

「波束の収縮」で

考えるのは

コペンハーゲン解釈

こんなことが

冗談じゃなく

まじめに研究

されてるの

「平行世界」で

考えられるのは

多世界解釈って

いわれてて．．．

多世界解釈なんて

量子コンピューターとか

いうのの元にもなってて、

どちらが正しいか

どうかはわかんないけど

でもありうるかも

しれない可能性としてー

ＳＦでも

なんでもない

これがあたしたちの

―現実の

世界なの

―中学生ながら

こんなことを知ったかぶって

話してるあたしたちを

バカなやつらと笑うなら、

一度死んでみるといい

そして生き返らせて

もらうといい

怪我した身体を

シャンクルシムの廃材で

補ったり

損なわれた左手を

携帯の部品で直して

もらうといい

そうすれば少しは

あたしたちの気持ちも

わかるだろう

．．．だからさ

話はちょっと

飛んじゃうけど

まりぃの目も

そういうものじゃないか

って思うのよ

つまりコペンハーゲン解釈だったら

あの子が「観測」したものは「渡来が収縮」

させられてあの子にとっての

「ロボット」になるのかもしれない

あの子には人が

ロボットに見えてる

わけでしょ？

「多世界解釈」なら

あの子の目はロボットとして

存在している「違う世界のあたしたち」

を見てるのかもしれない

．．．いいや

もしかしたらー

見たものからのクオリアが

生まれるんじゃなく．．．

クオリアこそが

「見たもの」を「あるべき姿」に

「確定しているのかもしれない

．．．確かにいきなり

飛躍したわね

自分でもそう思うけど

仕方ないでしょ

あたしは科学者じゃ

ないんだから

でもそう

考えられなくも

ないじゃない？

あたしたちの目では

わからないけど、それを

いうならそもそも

量子なんて見えない

わけだし

つまり

実際にはなにでできていようと

あたしがあれしのクオリアで

あたしの体を「肉体」として

「観測」するかぎりそれは

人間のものとして確定していて

まりいが見ているものは

ミクロの世界とか違う

レベルの世界で変化してて

だからあたしたちの体も

そういう具合に変化していて

同じようにあなたの左手も

あなたがそう「観測」してるから

携帯ではなく左手に

見えていてー

そう考えると

まりぃの「カ」だって

実は当たり前のこと

なのかもしれない

あたしたちが

よく知らないだけで

異常じゃなく普通のこと

なのかもしれない

本当は天条も

ゆかりが大好きで

大切な友だちだと

思ってて

自分が助けられたことも

ゆかりに悪気がなかった

こともわかってて．．．

．．．そうか

ゆかりの言葉が本当なら

天条の身体の半分は鉄骨

でもそんなゆかりを

認めることは、自分の身体の半分が

ジャングルジムの部品でできてるのを

認めることになってしまう．．．

それでも七美は

必死に現実を受け入れ

ようとしていた

クオリアとか

量子力学など

少しでも関係

ありそうなことを

中学生なりに勉強して自分を

納得させようとしていた

自分でいうのもなんだが

あたしの存在も

大きかったと思う

もう少し時間があれば

七美も過去の事件から

立ち直れていただろう

ゆかりと友だちにもどれ

昔のように仲良くやれて

いたのだろう

あたしがゆかりに「直してもらった」

自分を受け入れてる姿を

見せることで、七美もまた

自分に起きたことを受け入れ

られるようになってきていたのだ。

あたしと七美のつながりは

ゆかりを介したものだった

ーゆかりか

転校さえ

しなければ

年度が替わり

ゆかりが外国へ転校

してからはまったく

話さなくなった

クラスも同じになったが

心にどこか罪悪感が

あったのだろう

お互いに避け合い

無視していた

こうしてあたしと

七美の仲は終わった

こうしてあたしと七美の仲は終わった

ー実はある世界での

同窓会で成長した七美と

再会したことがある

現時点から十一年後

二十五歳のときのこと

なんと七美は

人気のある若手女優と

して売れていた

あたしのほうは

フリーのライター

七美は同窓会に

やってきて親しげに

話してきた

あたしのこと

覚えてる？

二次会には出す

あたしは七美を

自宅に誘った

ゆかりとは

お互いの家で

よくお泊まりをしたが、

七美を泊めたのははじめてだった

七美を泊めたのは

はじめてだった

そういえば天条

三年になってから

加則と付き合ってたんじゃ

なかったっけ？

うわ

知ってたの？

いやぁけっこう

バレバレたったけど

あだったら今日

邪魔しちゃった？

いやまぁ

なんというかねぇ．．．

加則智典

実はゆかりの

思い人だった男

隠し通せてたつもり

だったんだけど．．．

加則のやつも

来てたわよ

まぁこいつの話は

またの機会に

．．．そういえば

天条．．

．．．毬井さんのこと

覚えてる？

うんおぼ

覚えてる！

そういえば

いたわね

毬井ゆかり

おもしろい子

だったわよね

小さくて

それにすっごく

かわいくてー

．．．

――その時

あたしは悟った

七美はもうゆかりを．．．

自分がまりいと呼んでいた

ことすら忘れて

しまったのだと．．．

人はたやすく

記憶を改ざんする

過去をつくりかえる

自分の都合のいいように．．．

［自分自身を守るために

七美はいわば過去を

「観測」しなおしたのだ

自分が

受け入れられるモノに

構成しなおした

ゆかりの目のことも

ジャングルジムで

修理されたことも．．．

すべて

「おもしろい子」

「冗談」として

真実ではなかった

ことにして！

少しショックだったが

別に腹は立たなかった

そもそも

あたしに怒る

権利はない

真実から目を背け

過去をつくりかえた七美を

だれよりも責められないのが

「あたし」だったから．．．

そういえば毬井さん

来てなかったわね

あそっか

二年の終わりに転校

したんだっけ

いまなにしてるの

かしらね

．．．さぁ

波濤ともクラスが

一緒になってからはあまり

遊ばなかったわね

あのときはほとんど

話さなかったのに．．．

いまこうして二人で

話してるなんて

なんか不思議

．．．そうだね

本当にー

そうだね

と思う

きっと

あのときだって

あたしたちは

仲良くなれた

ゆかりが転校

しなければ

ゆかりさえ

いてくれたら．．．

都合よくゆかりを忘れた

七美に怒りはない

嫉妬も後悔もなく

むしろほっと

していた

それでいいのだと

ーーそのほうが

しあわせなのだと

．．．あのさ

波濤

ん？

これからも．．

ときどき連絡して

いいかな？

じつはあたし

こういうふうに

話せる相手

いなくてさ

売れっ子の芸能人が

なにをおっしゃいますやら

いいわよいつでも

連絡してきて

あたしたち

友だちでしょ？

そう友だち

ーかつての

ゆかりを介しての

だけど．．．

だからいつでも

連絡してきて？

ただし

あたしは決して

ゆかりを忘れ

られない

「だから

こんな世界は

必要ない」

．．．．．．話を

先走ってしまった

ようだ

なるべく

混乱させないよう

順々に語っていこう

あれは

夏休み明けの

その日

二学期の

始業式の日

クラスに留学生が

やってきた

こんにちは

日本の皆さん

ワタシは

アリス・フォイルと

いいます

短い期間になるかも

しれませんがどうぞ

よろしくお願いします

――とくに

毬井ゆかりさん

ワタシはアナタに

会えるのを

とても楽しみに

していました

え．．．？

ｃｐｉｓｏｄｅ：０８

ユカリー！

ドコ行くの

ですか？

図書室に借りてた

本を返しに．．

一緒に行く

ですーー！！

．．．

！

．．．誰よ

あいつ？

［金色の髪に琥珀色の瞳

まるでおとぎ話のなかから

出てきたような少女

名前は

アリス・フォイル

実は彼女はまだ

十一歳の子供

それもアイビー・リーグを

掛け持ちで卒業しているという

――にもかかわらずすでに大学を

才媛だった

そしてアリスもまた

ゆかりの「見え方」の

ことを知る人間だった

いっておきますが

ワタシはアナタたち

凡人と馴れ合うつもりは

ありません

赤色に混ざると

こちらも赤色になると、

いいますから

ワタシが仲良く

したいのは

同じ「天才」である

ユカリだけです♪

はぁ！？

まりぃが天才

ですって？

ええユカリは

天才です

ユカリはあなたたち

凡人にまぎれていい

人間ではないのです

な．．．なんなのよ

この子は．．．？

天条

さっきから

天才だの凡人だの．．．

これはゆかりを通して

聞いた話だけど．．．

．．．．．

いき嫁！！

あなたまりぃの目と

同じように数式が絵に

見えるんですって？

あやしいわぁ

本当かどうか見せて

もらおうじゃない！！

やれやれです

言ってわからない

ところがいかにも

凡人

問題！

ａは０ではない実数とする

開数／ｘｙｌａｘｉｌｌｘ－ａｒｌａｙ

の極大値と極小値の差が最小となる

ａの値を求めよ

そんなもの

はいできた

ふざけんなっ

あんた日本人だからって

バカにしてんじゃ

ないわよ！！！

旅世です！

そこ持つなです！！

日本人じゃなくても

最初からバカに

してるです！！！

そこっ

静かに！

よせてんじゃ

天条！！

わーーん

二人とも

やめてよー！

だったら凡人にも

わかりやすいように

言ってやるです

！

．．．

．．．あってる

答えはａｌ±１

です！！

ど．．．

どうなんだ？

そんな．．．

東大入試レベルの

問題よ

日本の大学は

この程度の絵で

十分ということです

．．．くっ

ま．．

まだまだ．．．！

すべての正の実数

メ．．ソに対し．．．

ａｎ！？えに１～～～

！

ど．．．全部

正解よ．．．

それ

バナ．．．

１／１９（２）！

ｂｌｌｌｏｇ！

アリスちゃん

すごーい！

ーアリスの目には

数式が絵に見える

数学に対する

「視点」こそが彼女の

真の才能

アリスは単純な足し算から

波動方程式のような

難しいものまで絵にして

直感的に計算できる

ーというと意味はまったく

わからないのだが、つまり

アリスは絵を描くことで

方程式を組み立てられる

と思ってくれればいい

もし量子コンピューターを

つくることができたら

ＰＩＮＰ問題だって

解いてみせるわ！！

．．．これもなんのことを

いってるかわからないが、

とにかくすごいらしい

また彼女は一般とは

まったく異なるアプローチで

「万物の理論」の完成を

進められるのではないかと

期待される少女でもあった

「万物の理論」

「超大統一理論」と呼ばれる

それは自然界に存在する

様々な力を統一して

記述することを可能と

する理論

それを見つけられれば

量子の不思議なふるまいも

いまだはっきりしない宇宙誕生の

謎も解き明かせるのではないが、

という科学者の夢であり、

ひとつの到達点でもある

でもユカリは

もっと天才なの

です！

だから自信を

持ってください

価値があるのは

アナタのほうです

自分たちと異なる存在を

受け入れられない凡人など

ほうっておけばよいのです

アナタを認められない

ヤツラこそ、生きていることを

恥じるべきなのですよ

ずいぶんな

言い草ね

天才だかなんだか

知らないけどあたしたちは

ちゃんと友だちやれてる

わよ？

本当にそうですが？

アナタがそう思ってる

だけではないですか？

クラスの

みんなとだってー

ハトウはともかく

ソチラはどうです？

・テンジョウ

あたし？

冗談じゃないわ

波濤と一緒にしないでよ

まりぃなんてむしろ敵？

そんな異常な目をしたやつ

友だちなわけないじゃない！！

うう

テンちゃん．．．

ーこのとおり

アリスは才能を

持たない人間

一般人を凡人と呼び

軽蔑を隠さなかった

憎んでいたと

いってもいい

そういう点でも

アリスは見事に「典型的な」

天才を体現していた

子供でありながら

大人をはるかに凌駕する

才能を持ちそのため

周囲から浮いて異物と

して迫害を受ける

まだ小学生の年齢で

その態度はいやでも過去に

なにかあっただろうことを

想像させた

うがった見方かも

しれないか

だからこそ子供の

アリスを差し向けて

きたのだろう

「ジョウント」は

ワタシたちのような

子供はほかにも

存在するのです

ワタシやアナタは

まだ幸運なのです

こうして出会えて

いるのですから

ユカリ

ワタシはこれから

大事なことをいいます

えっ

アナタのように

知られてないだけで

世間から隠されて

いるだけで

ほとんどの場合

ワタシたちのような

存在はその機会さえ

与えられず消えて

いくのです

消えていくしか

ないのです

これまでだって

いたはずです

ただ知られて

いないだけで

世界を変えうる

すばらしい才能を

持ちながら周囲に

理解してもらえず

ねたまれ

そねまれ

芽を摘まれてきた

子供たちが

「ＪＡＵＮＴ」はそうした

子供を保護育成する

ために設置された組織

なのです

人数は少ないですが、

スクールだってちゃんと

あります

デリケートな問題があるため

非公開となっていますが

国からも支援を受けている

きちんとした組織なのですよ。

もともと「ジョウント」は

アルフレッド・ベクターという

作家の書いた小説に

出てくる超能力の呼称です

「テレポーテーション」

．．．日本語では「瞬間移動」

といえばイメージしやすい

でしょうか

壁も距離もものともせず

意思の力で人間を瞬時に

移動させる架空の作用

それが「Ｊａｕｎｔｅ」

ただし「Ｊａｕｎｔｅ」は

単なる「移動方法」ではなく、

世界を変革し新生する

ための手段、そのメタファー

でもあります

力を求める苛烈な意思の

ダイナミックな象徴

人は「Ｊａｕｎｔｅ」によって停滞した

状況を打破し「Ｊａｕｎｔｅ」によって

新たな高みに昇るのです

事新適応ひらけた未来を

示す道標ーー

それがジョウントと

呼ばれる現象なのです

その理念を名に掲げ

よりよい未来を目指して

類まれなる才能が

世界に埋没しないよう

探し保護し支援する

もっとも「ＪＡＵＮＴ」と

いうのは組織の設立者たちの

頭文字からアナグラムによる

通称で．．．

正式な組織名は別にあるの

ですけどー

．．．

「ジョウント」に見つけて

もらうまでワタシは

自分になにができるか

知りませんでした

それがワタシたち

「ＪＡＵＮＴ」：

ドたれや

それらの屋や

「現在Ｎｕｂｅｌｌｅｔ」

ＮセメントーＫのＣ－

ですがいま

ワタシがこうして元気で

いられるのは

ただただ情性で

生きているだけの

存在でした

「ジョウント」との出会いの

おかげなのです！

後日あたしは

知ることになる

フォイルという名字は

ジョウントの現会長から

もらったものだと

アリスというファーストネームも

また、親からではなく自分で

決めたものだということを

「ジョウント」に保護され

大きく環境が変わった日

彼女は自分に名前を

つけ直した

おそらく、不思議の国のアリス」を

なぞらえて、アニメ映画に

出てくるような金色の髪の

女の子になりたくて、

．．．なんか

うさんくさいわね

おやテンジョウは

そういうものに

くわしいのですが？

あとになるまで気づかなかったが、

彼女の金髪は地毛ではなく、

黒髪を染めたものだった。

開運グッズや

宗教の勧誘みたい

そうでないなら

沈黙なさい

理解したくないことには

わかりやすいレッテルを

貼って正当化

これだから

凡人はいやです

まぁいわれのない

迫害には慣れて

ますけどぉ

本当にいわれの

ないものか

天才の頭でよぉく

考えてみたら！？

さわんなですー

この天才女！！

いいからやめろ

天条！！

ここは図書室

しずかにしなさーい！

――言い訳を

させてもらうなら

わわー

テンちゃん！

あたしとゆかりは

お互いに時機が

悪かったのだと思う．．．

なにしろ

「東京バラバラ殺人」に

巻き込まれてまもないころ

だったのだから

襲われたことも

左手を「直して」もらった

衝撃からもあたしは

立ち直っていたと思う

ただ実感できていなかった

だけかもしれないが．．．

少なくともあたしは

犯人を警退したゆかりを

怖いとは思わなかったし、

叫んで遠ざけることも

しなかった

時期七美はそんな

感じだったらしいが

ゆかりの「力」はただ人間が

ロボットに見えるという

だけではない

なにしろ切断された左腕を

その日のうちに完全に元通りに

したのだから

殺人犯を写真を

見ただけで見抜く

「力」

現代の医学で

そんなことが可能

だろうか？

ゆかりが「友だち」と

呼んでいた存在

ゆかりの持つ才能は

間違いなく貴重なもの

ではないのか？

ただ頭がいいだけでは

天才とは呼ばれない

この世界を変えるほどの

「なにか」を示せることが

天才の天才たるゆえん

科学も．．

文学や絵画や音楽も

政治思想だって「天才」が

現れジャンルをつくり

だしてきた

一人では世界を変えられない

そう考えるのは凡人だ。

天才はまさしく

一人で世界を動かす

世界を変える

きっかけとなる

人間がロボットに見えると

いつのはあくまでゆかりの

言葉で実証はできない

ちょっとおかしな女の子

と思われるだけで

ゆかりは普通に

暮らせていた

だけど、あたしや

七美に起きたことは

紛れもなく現実で

「見え方」とは違い

再現可能

――実証が

可能

ゆかりのしたことが．．．

その「紫色の目」のことが

知れ渡ったら間違いなく

世界はパニックを起こす。

だろう

その力が解明できるなら

それはもはや現代科学の

「革命」だ

あたしの友だち

毬井ゆかりは確かに

世界を動かす「才能」を

持っているー

！

どうしたの

ガクちゃん？

えっ

ううん

なんでもない

そしてあたしは

友だちではいられても

ゆかりの「才能」に対して

なにもしてあげられない

助け導くことも

隠して守ることも

できない

そう．．．

ならいいんだけど

．．．

いっほうゆかりも

ゆかりを狙った存在が

あたしを襲ったことに．．．

ゆかりのことであたしが

事件に巻き込まれたことに

負い目を感じているように

だった

本当に言い訳だが

．．．時期が悪かった

最初のうち

アリスはただひたすら

ゆかりを説得しようと

していた

だがゆかりの

あたしたちとの信頼が

揺るがないことを悟ると．．．

戦法を変えてきた

！

また明日ですー

ユカリ

．．．あんたどこまで

ゆかりにくっついてる

気よ？

車で送り迎えして

もらえるんでしょ？

そういうハトウこそ

自転車通学では

なかったのですが？

ユカリにあわせて

徒歩に変えるなど．．．

い．．．いいでしょ

別に！

．．．

ハトウ

アナタが本当にユカリを

受け入れてるというなら、

わかるはずです

ユカリの才能が

どれほどすばらしい

ものか．．．

ええ

わかります

それをこんな場所で

くさらせておくなんて

人類の義務に対する裏切り

だとは思いませんか？

そんなの．．．

関係ないよ

帰かりにはゆかりの

生き方が．．

でもそれは

甘やかされた子供の

言い草なのです

人には社会に

果たすべき義務が

ありー

．．．

そもそもアナタや

ユカリの気持ちはどうあれ

いつまでも隠し続けて

いられると思うのですか？

確かにユカリの才能は

わかりにくいですが：

それでもワタシたちは

ユカリを見つけたのですよ？

あの事件でなにかあったのか

残念ながらユカリには

まだ話してもらえて

いませんです

でも考えられる

頭脳があればたとえ

凡人でもそれだけで

じゅうぶん気づけるの

です

いまのところ

状況証拠しかなく．．．

だかワタシは

来たのであり！

ですからもう

一度いいます

アナタは

本当に

いつまでも隠れて

いられると思って

いるのですか？

ワタシたちとは違った

ただ才能を悪用することしか

考えないような凡人集団に

見つかったとき．．．

ワタシたちなら

可能です

ユカリを守って

あげられるの

ですか？

そういう凡人どもから

ワタシやユカリのような

「才能」を守るために

つくられたのが

「ジョウント」であり、

そのための

「組織力」なのです

ハトウ

アナタはユカリを

守れるのですか？

凡人のアナタに

そういう力が

あるのですか？

――わかりきってることに

答えられるはずもなかった

おそらくアリスは

ゆかりにも似たような

ことを告げたのだろう

いつまでも隠れている

ことなんてできないと．．．

やがてゆかりの才能に

目をつけるものが現れる

興味を持つだけならいいが

なにかに利用しようと

してくるかもしれない

そのために人質を

あたしのときのように

取るかもしれない

そんなとき

「次もこんない

「今回のように」

友だちを守れると

自信を持っていい

きれるかーー．．．

もしアリスが

そんな風にゆかりを

説得していたとしても

あたしはアリスを卑怯と

非難することはできない

ゆかりと友だちでいる以上、

そういうこともありうると

いう事実から目をそらす

のは逃げだから

致命的な「なにか」

が起きてからでは

遅いから

！

この番号に

かけてくるのは

ゆかりしかいない！！

電話だ

ゆかり？

．．．．．

．．．．．．お願い

このままじゃ．．．

ゆかりが

死んじゃう．．．

．．．．．．

ーーそれは決して

ありえないはずの

電話だった

ゆかりが

死ぬ．．．？

そう左手から

聞こえた声

受話器の向こうに

いたのは．．．

あたしだった

ｅｐｉｓｏｄｅ：０９

あの電話は

なんだったのか．．．

左手から聞こえた声は

普段の自分の声とは

違う感じがした

にもかかわらず、

あたしはそれが自分の

声だと確信していた

．．．って

さすがに

それは

ありえない

――このままじゃ

ゆかりが死んじゃう．．．。

ゆかりやアリスのことで

そのストレスで．．．

いろいろあったから、

ハトウはユカリの

見え方のことを

どう思いますか？

本当は気味が

悪いですか？

ううん

そんなことない

そうですハトウ

そのとおりです

凡人にしては

的確です

この準凡人

ゆかりの目は

素敵っていうか．．

豊かだと思う

ユカリの紫色の瞳は

この世界を豊かに見せる

とてもすばらしいものです

祝福されてしかるべき

天からの贈り物なのです

それなのにっ！！

どうしてユカリはそれを

まるで悪いことのように

隠さなければいけないの

ですか！？

どうしてユカリは

ユカリのままでいては

いけないのですか？

どうして！？

「ジョウント」に来れば

目のことを隠さなくていい

「ジョウント」に

いればありのままの

自分でいられる

異形の才能があるからって

誰も「彼女」を否定も

迫害もしません

ユカリは絶対

「ジョウント」に来るべき

なのです！

同じ「仲間」である

ワタシたちの

ところに！

ガクちゃん

お弁当

いっしょに

食べよ

うん

今日はねー

あーちゃんと

おーちゃんが

いっしょに作って

くれたの

あ．．．

あははは

．．．あのさ

あ

これは

どっちだろ？

やっぱり

おーちゃんかな

ゆかり．．．

．．．アリスの提案

なんだけどさ

その．．．あくまで

選択肢のひとつとして

考えてもいいんじゃ

ないかな．．．？

海外に行ったら

いつでも会えるわけじゃ

ないんだろうけどさ

休みの日とか帰って

こられるでしょう？

なんだったら

こっちから会いに

行ってもいいし

連絡だってほら

あたしには

ゆかり専用の

携帯電話も

あるしね

．．．とにかくさ

もしゆかりがそっちを

選んでも．．．

あたしはずっと

待ってるから

たとえゆかりが

どこにいても

あたしたちが

友だちなのは

変わらないから

そうでしょう？

．．．うん

そうだね

子供の友情なんて

転校すればほとんど

終わってしまうのに

バカな偽善だ

あたしは

そんなことないと

いつまでも友だちで

いられると

信じ込んでいた

ー結局

ゆかりを決心

させたのは

そうだ

あたしに

こんなことを

言われて．．．

あたしの言葉

あたしの賛成だった

ほかに選べる

はずもない

ーあたしが

友だちであるあたしが

ゆかりのことを

追い込んだ

三学期の終業式まで

待ってゆかりはアリスと

ともに転校していった

「ジョウント」の

スクールには寮があり

そこに入ることに

なったのだ

転校してからも

しばらくは電話で

連絡を取っていた

この携帯

国外通話も

平気らしい

ただが時差などの関係で

ほどなくして電話は

手紙に変わった

そうなって最初の手紙には

これからあまり頻繁には

連絡を取れない旨が

遠回しに書かれていた

落ち着くまでいろいろ

大変で時間が取れないと

．．．忙しいのは

いいことだよな

寂しいけど

ゆかりのためだ

．．．．．

ゆかりからの

電話がないんじゃ

携帯の使い道も

ないよなぁ

あの電話も

あれから一度も

かかってこないし．．．

．．．自分に電話を

かけたらどう

なるんだろう．．．？

もちろん自分に

電話が繋がるはず

そう．．．

自分にだ

別に本気で

「あの夜の相手」に

繋がると思った

わけじゃない

そうではなく

あたしは電話を通した

自分の声を聞きたく

なったのだ

あらためて聞けば

あの時の声が自分の

ものではないと判明も

するだろう

ー安心できる

思い違いだったと

納得できる

そう思った時にはすでに

自分の番号にかけていた

普通に考えれば

話し中になるだけ

なのだが．．．

もしもし

ゆかり？

！！

．．．うわ

うそっ

でた！

．．．ホントに

でた！！

ええ！？

あ．．．あなた

だれ？

．．．あたし！？

それは間違いなく

自分の声

．．．もしもし？

ええといちおう

聞いておくけど．．

あなたはあたしで

いいんだよね．．．？

．．．うわぁ

こんからがって

きた！

もしもし

あたし！？

あたしは「あたたし」と

話すことになった

信じられない話だが

現実に起きているの

だからしかたなく

そうなんだ！

そしてあたしは

バラバラ事件の時のように

ほどなくあっさりその状況を

受け入れた

それからほとんど毎晩

自分に電話をかけたり、

時には受けたりしたが、

最初の夜の自分に

繋がったことは

一度もなかった

いやそもそも同じ自分．．．

妙な表現だが一度話した

ことのある自分に繋がる

ことはなかった

電話の相手は

常に初対面のあたし、

えっ

何人目？

同時に「知識」と「経験」を

「共有しているあたしだった

細部で異なる

部分もある

電話が繋がった瞬間

相手の情報が溶けるように、

頭にしみこんできた

えーっと

４：：０５．．．

たとえば今日かけた「あたしは

あたしよりたくさんの

「あたし」と会話していた

そっち３ケタ

いってるでしょ！？

最初の電話の時

言葉を交わさぬうちから

相手が自分だと

わかったように

相手の思考やいまから

言わんとすることが

まるで自分のもののように

頭の中に湧きだした

時にはどちらが

話しているのが

わからないくらいに

それでもあたしたちは

言葉にして会話をした

最初のうちは戸惑っていた

「あたしたち」だが「受け入れてからは

むしろ当たり前のように話ができた

こうして話し出した時は

すでにお互い理解している

ことも承知の上で

とにかくその後、

あたしたちはたくさん

話をした

暗黙の了解で

そうしなければ

混乱しそうだったから

電話の相手も

「すでに受け入れたあたし」

ばかりになっており

どうやらいま」のあたしが

基準となるようだった

特にこの状況について

あたしがいま話している

この「あたし」はいったい

なんなのか？なぜ

こんなことになったのかを

やっぱりあれかな？

天条が言ってたみたいな

平行世界の「あたし」？

もしくは違う可能性の

「あたし」かもね

コベンハーゲン解釈か

それとも多世界解釈が

ハイロット解釈

なんてのもある

そうよ？

その言葉は初耳だったが

「あたし」が口にした時には

もうあたしも理解していた

あくまで「あたし」の

理解でだが

まぁ頭のいい学者さんが

いまだに結論たせて

いないんだから

あたしたちに

わかるはずないわよね

それより

いま考えるのは

なぜあたしに

こんなことが

起きているかよ

パイロット解釈．．．

ええと科学者じゃなくて

「あたし」が考えた

ことだから

話半分に聞いてよ？

ええ

わかりやすいよう

コペンハーゲン解釈で

説明するけど

まず量子の性質として

観測するまで確定しないと

で天条の身体は

鉄骨で修理された

ここまでは

いい？

それなら昨日話した

「あたし」がこんな

仮説を立ててたわ

この左手のせいじゃ

ないかって

けれど天条はそれを自分の

身体としか「観測」できないから

天条の修理された部分は言って

しまえば「普通の肉体」なわけ

続けて

ところがあたしの場合

ゆかりが言ってたじゃない？

汎用型で周辺機器が使えて

適応力がすごいって

だからあたしは

天条と違ってこの左手を

そのままそういうものとして

受け入れ適応しちゃったのよ

「左手」でありながら

「携帯」でもある．．．

そういうものとして

つまり量子的に言うなら．．．．．．

いまあたしの左手は「左手」と

「携帯」の重ね合わせ状態に

なってるんじゃないかってこと

しかもそれに適応

しちゃってるから

左手としても

携帯としても使えている

こんな感じでー

現在あたしの左手は

コベンハーゲン解釈なら

「無数の可能性」が

重なり合ったもの

多世界解釈なら

「無数の平行世界」が

干渉性を失っていない

ものとしていまだ「確定」して

いないのかもしれない

そして

どちらが正しいにせよ

結果は変わらない

左手の向こうにはあたしがいて

無数の可能性あるいは

平行世界の「あたし」と

つながっているー

だから「波束の収縮」

あるいは「千渉性の喪失」によって

本来出会えないはずの

あたしたちはこうして話が

できてるのかもね

．．．なるほど？つまり

今のあたしは実際にこうして

「左手」を「携帯」としても

使っているわけで．．．

左手としてだけではなく、

携帯であることも認めるここで

ほかの世界「あるいは

ほかの可能性のあたしまで

一緒に受け入れたから

こうして話せるってこと？

わ．．わかるような

わからないような．．．

本当はどうなん

だろう．．．？

もしもあたしが

「あたしの可能性」と

話してるのならこの電話を切って

「携帯」が携帯でなくなった瞬間。

「左手」の存在だけが確定されて

あなたは消えちゃうわけ？

次にまた「携帯」に

なるまで！

ちょっと待って！

なんであたしが

消えるの？

消えるのは

そっちの方じゃない？

いやいや、いや

だってこの電話は

あたしがー

．．．ってあれ？

．．．．．やっぱり

平行世界ってことに

しとこうか

よくわかんない

けど．．．

．．．だね

そういえばゆかり

夏休みには帰って

くるかな？

帰ってくるよ

もしかしたらアリスも

ついてくるかもね

できればその時までに

あたしのこれをどうにか

形にしたいけどね

でも実際生活には

あまり役立ってないよね

．．．あたしはともかく

ほかの人間には意味ないし

そもそもこれ人前じゃ

使えないし．．．

――ああ悩ましい！

ゆかりもこんな気持ち

だったのかな？

え．．

．．．だとしたら

うれしい．．．

かな

ゆかりのことが少し

わかった気がして！

帰ってきたら

たっぷりと聞いて

もらおうね

じゃ

おやすみ

そう．．．ゆかりに

聞いてもらいたい

こと．．．

聞きたいことだって、

たくさんあるん

だもんね

！

マナブー

ゆかりちゃんの

お母さんから

電話よー

．．．お母さん？

どうして．．

ゆかりなら

左手にかければ

いいはずなのに．．．

夏休みになってもゆかりは帰ってこなかった

夏休みになっても

ゆかりは帰って

こなかった

「遺体すら

警告しよう

Ｉここから物語は急転する

ｅｐｔｓｏｄｅｘ１０

お盆を

過ぎた頃

あたしはゆかりの

死を知らされた

ジョウントによると

なにかの実験に

巻き込まれたと

いうことだった

施設が損壊するほどの

事故で死体も一部しか

残らなかったとか

おとずれた代理人は

くわしいことは知らないが

事故の詳細は機密に

属するため話せないと

ゆかりの両親は

驚き涙し

怒りをあらわにした

留学してから半年も

たっていないのに

いったいどういうことだと

ゆかりの父親は

静かに聞いた

いったいなんの実験を

行っていたのか？

そもそも子供の

いる場所で？

国家機密？しゅひ

守秘義務がある？

では人権はどうなる？

くわしいことを教えて欲しい

事実をさらんと把握したい

ゆかりの死をあやしいと

思うのはたとえ子を失った

親でなくともその目のことを

知っている人間なら当然だろう

ゆかりの父親はかつて

警察庁のお偉いさん

だったらしい

ゆかりの「見え方」が判明

してからは仕事を引退して

この土地に引っ越してきた

ゆかりはそのことを気にしてか

時期記録を残さないことを

条件に父親の知人の仕事を

手伝ったりしていたらしい

引退してなお

警察庁に影響力を持つ

ゆかりの父を重く見たのか

「ジョウント」は組織の

査察を認めた

誠意を示し

見てもらえれば

ことの重要性はわかって

いただけるだろうと

前置きをつけて

ゆかりの葬式の参列者は

大人ばかりで警察や

政府の偉い人も来ていた

ようだったが、子供は

あたししかいなかった

クラスメイトはもちろん

七美でさえ．．．

いまにして思えば

ゆかりの両親は

七美のトラウマを

知っていたのかも

しれない

ゆかりが転校したことで

結果的に七美が

立ち直りかけていた

ことも．．．

冷たいとは思わない

実際そのときの

あたしは七美のこと

などどうでもよく

ただ一目に映るもの

すべてがほんやりとー

．．．アリス？

．．．ひっ！！

アリス！！！

．．．

．．．！

．．．．．．う

うぅ．．．

ーアリスが

逃げた

あたしから

あたしたちを

凡人と呼んで世界に

けんかを売っていた

アリスが

アナタでは

ゆかりを守れない

自分たちなら守れると

豪語していたアリスが．．．

―．．．

逃げたんだ！！

なぜ逃げる？

あのプライドの

高いアリスが

なにか責められる

ようなことを

したのか？

ゆかりを守れな

かつたから？

ゆかりを死なせて

しまったから？

おまえはゆかりの

友だちじゃなかった

のか？

どうして逃げた？

ネズミのように

こそこそと

友だちとして

胸をはれないことを

やったのか？

そうでなければ

葬式の最中に

なぜ逃げるー

そうでなければ葬式の最中になぜ逃げるーー

冷静になれば

どれほど大人びていようと

天才でもアリスはまだ

子供なのだと

だから顔を合わせられず、

逃げ出したとしても

おかしくないと

思うこともできただろう。

だがあたしは信じたくない

現実に対抗するための

拠りどころが必要だった

なにかにすがってないと頭が

どうにかなりそうだった。

だからあたしは

決めつける

アリスが逃げたのは

後ろ暗いところが

あるからだと

真っ白な頭を

埋めつくすための

色が

――ゆかりの死は

事故じゃなかったの。根拠なんてないけれど

かもしれない

あたしはそれに

しかみつく

なにも考えないために

感情のまま燃やせる

なにか

目的が

．．．逃げるなら

逃げるがいいわ

アリス

あたしは絶対

逃がさない

後ろ暗いことが

あるのなら

その真実を

知るまではー

悲しむのは

そのあとだ！！

あたしは絶対

アリスに会うわ

そして問いただして

やる

もう日本にいないなら

アメリカまで

追いかけてでも

ええでも違うわ

追いかけるのは

あたしじゃない

「あたしたち」よ

ええ

そうね

そう

「あたしたち」で

つかまえる！

「あたし」と相談した結果、

あたしはまずゆかりの

父親に頼むことにした

「ジョウント」の査察に

行くときはあたしも

連れていってくださいと

そうなると学校を

休むことになる

ゆかりの父親は

渋った

あたしの親も．．．

学校を休むのはいいこと

ではないー下手すれば

受験に影響が出るかも

しれないと

それでもあたしは

退かなかった

毎日

毎日―

ゆかりの家に

押しかけては

直訴した

あたしはだれよりも

ゆかりのことを知っていたと

恥ずかしげもなく主張して

秘密の約束があったように

あたかも遺言を受け取って

いたかのようなことも

におわせた

残念ながら

そんなものは

なかったか

あたしは考えつくあらゆる

ことを試して．．．左手の

携帯のことさえ話した

もっともこっちは

証拠がないので

信じてもらえたか

どうかは疑わしいが、

の申請案内

いちばんの

決め手になったのは

パスポートの申請書を

手に入れてきたことだろう

あなたが連れていって

くれないのなら

あたしにも考えが

あります

できないと思って

いるのなら甘く

みないでください

少なくともやれることを

全部試してみるまで

あたしは決して

あきらめない！！

あなた．．．

ここに

「ジョウント」からの

航空券がある

私と妻

あかねとあおいの

５人分だ

にんぶん

！

その日

木曜回

あたしの

「ジョウント」行きが

決定した

うああぁ！！！

はぁ

くそっ！！

まさか．．．

あいつら

飛行機を爆破

するなんて．．．

「ジョウント」が査案を

避けるためそして

後顧の憂いを絶つため

ゆかりの家族を

始末したのだ

あたしやなんの関係もない

乗客まで巻き込んで

飛行機事故に見せかけて．．．

一般人を凡人と

呼ばせるような教育を

するヤツラなら

やってもおかしくはない

身内に天才が

いるというのなら

そうした工作だって

きっとー

．．．だがこれで

もう決定的

「ジョウント」は

クロだ！！

ゆかりは

事故ではなく

「ジョウント」に

殺された

なにしろゆかりの家族や

あたしまで殺すやつらだ

きっとゆかりにいうことを

聞かせようとしてでも

ゆかりがそれを拒否して

だからー

だからーー

．．．．．．あれ？

ここは

あたしの部屋？

あれ？

布団の上で

あたしは寝ていて！

でもどうして？

飛行機に乗ってたんじゃ

なかったの？

飛行機に乗っていて．．．

突然揺れたしてー

９月４日！？

今日って

たしか．．

．．．今日はゆかりの両親と

一緒に渡米する日で

いまごろは飛行機に．．．

乗っていたはずで．．．

ーってバカ！

なにを言ってるのよ

あたしは！！

．．．

そうだ．．．．．

あたしはゆかりの

両親に頼んで

査察を取りやめに．．．

してもらったんだ

ゆかりの両親は渋ったが

あたしは必死に頼んだ

ゆかりのことは

あたしに任せてほしいと

いまはまだいえないけど

あたしには協力者がいて

ゆかりのことを調べられる

からお願いだから

査察はやめてーーと

そして信じられないことに

ゆかりの両親はそれを

了承してくれた

．．．だから

飛行機に乗って

なくて当然だ

これは．．．

この世界はー

もしもし？

だれも死んでなくて

当然だ．．．

あ．．．あのごめん

こんな時間に電話して．．．

ううんただ．．．

たぶんあなたもそうだと．．．．．．

思うけどこの電話

今日で二回目だと思う。

じゃあそっちも

感じたのね？

あたしたちは

記憶を共有し

お互い理解していた

いったいなにがあったのか

さっきのあれは．．．

査察に行った世界の

あたしたちで

夢ではなく．．．

本当に起きたこと

あるいは査察に

行ったという可能性で

ただし「確定」は

しなかった

あくまで．．．

可能性として

生まれ

消えた

平行世界での話

じゃあ

あたしたちのほうは

査察に行かなかった

場合の世界？

ええたぶん細部では

あたしとあなたの世界も

異なっているんだろうけど

そういうことだと思う

．．．．．ククッ

けど

「ジョウント」はやばい

やばすぎるわ

そうね敵は強大だわ

いまにして思えばアリス、

世界を変えられるとか

なんとか危険なこと

いってたものね

．．．それって洗脳よね？

まったくそんなことに

思い至らなかったなんて

あのときのあたしは

本当に許しがたいわ

あたしたちを殺すために

飛行機を丸ごと爆破

するなんて．．．

いえアリスが

やったとは思わないけどでも

間違いなくアリスのような

子供にそういう思考を

植えつけてるってこと

でしょう？

ええ

同意見

でもいま

話してるのは

大事なのは

そういうことじゃない

確かに「ショウント」は

強大な組織よたかが

中学生の小娘なんかじゃ

とても勝ち目がない

ーでも

あたしはひとりじゃない

無限のあたしが

ついてる

無限に平行する世界

無限に存在する可能性が！！

ｅｐｊｓｏｄｅ：ＬＩ

左手の「携帯」

これにはいくつかの

使用制限があった

以前は夜にしか

使えなかったが

今はある程度暗い

場所なら使用可能

そして何より

恐ろしく

体力を使う

一度ゆかりと話していて

お腹の空きすぎで

倒れたことがある

当然ながら携帯には

電力が必要ででも

あたしの「左手」は「肉体」でも

あるからして電気の代わりに

あたしの体力を使っている

そもそも

ひとりでいなければ

携帯としては

動かなかった

ガクちゃん？

ガクちゃん！！

もともとが左手なので

「携帯」として使用すると

そのぶん余計に体力を

消費してしまうらしく

たった二時間で体重が

一キロも減っていた

結局その日は

ゆかりに来てもらい

またも助けてもらった

それからあたしの

部屋には常に

電話用に蜂蜜や甘い

お菓子がおいてある

あんまり無茶な

使いかたしないでね

ガクちゃん

．．．無茶なんか

しないよ

ゆかり．．．

わたしはあたしに

できることを

するだけよ！

覚えてる？

前に天条が話してくれた

光の性質のこと

「二点間を結ぶ光は

取りうるあらゆる経路の

なかで最小の時間で到達

できるルートを通る」ってやつ

ほら、なんだっけ

フェルマーの定理？

違う違う

フェルマーの原理

ー奇妙に聞こえるかも

しれないが光は目的地まで

もっとも時間のかからない

道を通って進むという

性質を持つ

一点の間に何もなければ

当然ながら光は直進する

それが最短時間で

たどり着ける道だから

だが途中に

水やら空気・重力と様々に

邪魔するものがあると

話は違ってくる

光の進む速度は

水中のほうが遅くなるため

なるべく水中を進む距離が

短くかつ空気中において

余分な距離を取らずに済む

屈折した経路を選ぶ

例えるなら

水中は渋滞した道路

いくら最短距離とはいえ

渋滞した道をのろのろ進むのは

誰だって避けたいだろう

だが渋滞を避けるために

大回りをして、ガズって余分な

道を走り時間がかかっては

本末転倒というものだ。

可能な限り渋滞を避け

かつ余分な回り道を

しないでいいキリギリの

バランスを保つたルート

光はそういうルートを

たどる名人なのだ

それがいわゆる

フェルマーの原理と

呼ばれるもの

この原理の奇妙なのは

まるで光が目分が到達する

目的地をあらかじめ知っている

ように思えるところだ

光は一瞬でその

経路を見つけ出す

目的地どころか

途中でどんな「媒質」を通り

どう入射し屈折するか

すべて把握していてもっとも

最短時間で到達できる

ルートを選んでいるように

なぜ光にそれが

可能なのかー

量子力学ではね

こう考えるの

「二点間を結ぶ最小時間で

到達する経路」以外をたどると

光はお互い干渉しあい

打ち消しあう

光は最小時間でたどり着ける

経路だけを選んでるわけじゃなく

たどることが可能なすべての経路を

同時にたどっているの

その結果

「二点間を結ぶ最小時間で

到達する経路」だけが残る

だから光はいつでも

もっとも短い時間で通れる

ルートを取ってるように

見える

そう

光もまた量子であって

波と粒子の性質を持つのよ。

だから光も

自分の可能性

または平行世界と

干渉しあう

量子として同時に

あらゆる経路をたどり

最終的には「一点間を結ぶ

最小時間で到達する経路」

という正解だけが残る

それが量子力学的に見た

光の性質ー

わかるでしょ？

あたしはただ

アリスにたどり

着くことだけを

目標にすればいい

そうだ

あたしは光のように

なろう

光のように

ただただ最短時間で

アリスにたどり着くことを

考えればいい

そうすれば

ありとあらゆる

「あたし」が

アリスを探す

あらゆる世界で

アリスを求める

「ジョウント」がどれだけ

強大で恐ろしかろうが

関係ない

あたしにはあらゆる

可能性無限の

平行世界がついている

この「携帯」で

「あたしたち」は

干渉しあえるのだから

光は光であるだけで

最小時間で目的地に

たどり着く道を探し出す

難しいことは

考えなくていい

ただ目標のことだけ考える

あたしはそういうものでいい

飛行機で死んだ

「あたし」ではなく

飛行機に乗らなかった

「あたし」が残ったように

正しい可能性

だけが

打ち消されずに

残るー

必ず、まずは

アリスにたどり着く

そうまずは

―悲しみの

いちばんの特効薬は

怒りだった

それは劇薬だったが

おかげで胸が

張り裂けずに済んだ

劇薬は身体に悪いからこそ

劇薬というのだが、

例によってあたしはすぐに

適応する

ーたふん

あたしは

この時すでに

「波濤マナブ」を

やめていた

恋を

したこともある

恋だと思った

でも結婚は

しながった

別れるときに

悲しくなかった

ーそれでも

あたしには

大学に行き

就職しフリーに

なった

ボランティアをして

それが原因で身を

持ち崩したこともある

失恋しだれ

また誰かを

好きになり．．．

どうしても忘れられない

「目標」があった

公園で遊んでる

子供を見て、なぜか

涙が出たことがある。

ある世界の「あたし」は

四十七歳まで生き

ある世界の「あたし」は

十五で死んだ

十五歳で七回

十六歳で三回

死んだ

そのほとんどが

殺された

外国へ行くため

密航したこともある

女がすることじゃ

なかった

アメリカは

自己防衛の

国だった

あたしは銃を

撃つことを学び

護身術を

学んだ

結局最後に

頼りになるのは

体力で

あたしは子供の頃から今日まで

ずっとなぎなたの鍛錬を休ます

続けていてよかったと思った

この時はまだ

矛盾に気づいて

いなかったが

絶対に変わらないと

考えていた価値観が

あっさり変わる瞬間を

感じた

ある「あたし」は

ゆかりの両親と

アメリカに渡り

ある「あたし」は

日本の大学に入り

「目標」をたぐり

寄せようとした

ある「あたし」は

中学卒業後すぐに

留学した

うまくいかない毎日に

嫌気がさしたことも

ある

頼る相手が欲しくなり

あたしはまた恋をした

それでも「目標」は

あたしのすべてと

してあった

相手はなんと

加則智典

あたしは加則と

付き合って

加則があたしより前に

七美と付き合っていたことを

知ってショックを受けた

そのすべてが

あたしの人生

そして別れた

クオリアというものを

研究してどうなるのかと

いった人がいる

クオリアの探求なんて

何の役にも立たないと

それに対して

こう答えた人がいる

クオリアこそが

人生を生きるに値する

ものにしているのだと

自分の人生ー

それもたくさんのを

振り返ってみて

おたしはあたしの人生に

満足している

自分を知る

それでもあとから

考えてみるとそれなりに

納得のいく人生だった

ひどい目に遭ったり

無駄なことも

したけれど

どの世界も

そう悪いもの

ではなかった

ーーでも

あたしには

「目標」があり

「目標」にたどり

着けない「あたし」は

必要のない

ただの可能性だった

だからあたしは

いつでもあっさりと

それを投げ捨てた

ーそう

あたしはいつからか

どこかが

間違っているのを

感じていたけれど．．．

とまれなかった

最終的に選ばれたのは

「左手」のことを

「ジョウント」に

知らせた世界だった

ゆかりの葬式後

あたしは「ジョウント」に

連絡を取った

そして演じた

ゆかりの死を受け止めて

前向きに生きようとする

女の子を

「紫色の瞳」によって

目覚めさせられた

「才能」にとまどう

女の子を

ゆかりの目について

知っている『ジョウント』は

すぐにあたしの言葉を

確かめにきた

人目があると使えない

「携帯」だったが、あたしは、

身体をチェックしてもらい

何もないコンテナの

なかから電話を

かけたりしてみせた

話はとんとん担子に進み

あたしは望みどおり

「ジョウント」にスカウト

された

間違いなくこれがあたしの

「最短時間で到達する経路」

だったろう

．．．．．．？

．．．あ．．．．．

．．．そんな．．．

あぁ．．．

ひぅ．．．！

う．．．．．

うぅ．．．

あたしは「目標」

アリスにたどり着いた

しかしアリスから

話を聞き出すのは

簡単ではなかった

――ある世界では

泣き落とし

――ある世界では

力任せに屈服させた

世界を渡って

いくうちに

あたしはすでに

人間としての一線を

越えていた

ある世界では

協力を求め

ある世界では

脅迫した

ただいたずらに

楽しんだことさえ

ある

自分がまさか

こんなことをできる

なんて思わなかった

ーーでもそれもまた

否定できない

自分の可能性

そうした「可能性」が

この世界を導いた

あたしがアリスを

説得できた世界を

「ジョウント」がゆかりを

スカウトした目的は

最初から保護育成など

ではなく、ゆかりの目で

「何か」をさせることだった

アリスはそれを

知らなかった

そしてあたしの想像通り

ゆかりはそれを拒否して

「ジョウントは協力を強いただめ

ゆかりに過酷な実験を行った

「ジョウント」の誤算は

ゆかりが普通の子供に比しても

それほど強くないことだった

ゆかりはたちまち「壊れ」

もはやこれまでと悟った

科学者たちは研究のために

ゆかりを解剖した

アインシュタインの

「それ」と同じように

ホルマリン漬けにして

保存するために

ゆかりの脳を

取り出した

そうだなぁ。

でも

ごめんなさい

ごめんなさいー

．．．ねぇ

アリス

あたしは何でも

知ってるの

あなたのことも

アリスという名前や

母親のことも

だからあたしは

この世界で

あなたを許し

あなたのプライドも

トラウマも優しさも

あなたがゆかりを

守ろうと助けようと

したことも

でも何も

できなかったことも

ある世界ではあなたを愛そう

ある世界ではあなたを憎もう

ある世界ではあなたを助け

突き放し支え壊し

裏切り「あたしのために

利用しよう

新たに見つけた

次の「目標」のために

ゆかりの「身体」が

たとえ一部分だけでも

残っているなら取り戻す

ついでにゆかりを

「そうした人間」たちも

見つけてたずねよう

ゆかりはいつ

どの段階で

死んだのか

無限の世界の

無限の可能性で

おまえたちに

最上級の苦しみをー

あたしは

光のように行動を

開始した

ＢＥＯＯＮＴＮＵＥＤ

学校での昼休み

食後の戯れに

ゆかりの好みの男性の

タイプを聞いてみた

ｅｘｔｒａ：０１

．．．加則くん

加則ぅ！？

！！？

！

はっ、

．．．よその

クラスにきてまで

なにしてんだか．．．

！

！？

．．．加則って

あの加則？

言っちゃ悪いけど

あんな特徴

ないやつの．．．

どこが？

あのね

「ドリルは漢のロマン」って

言葉があるんだけど．．．

それって

男のヒトだけじゃ。あたしにとっても、

なくてね

ロマンなの

は？

．．．えっとね

加則くんは

デザインはリアル系なのに

すっごいドリルを

持ってるの

大きくてぎらぎらしてて

見てるだけで震えちゃう

ような．．．

．．．．．．

いまは止まってるけど

いざ回転したらもう

どうにもできないぞー

って感じの

．．．よくわかんないけど

それってあいつは危ない、凶器でしょ？

やつってことじゃない？

ドリルって

わ

それ誤解

ドリルはもともと

ちゃんとした

切削工具なんだよ

それに．．．

ああ！！

ロマンだし♡

．．．はぁ．．．

ほかにもドリル

持ってる人はいるんだけど

やっぱり加則くんのが

いちばんかな

生徒会長さんのも

なかなか惜しいけど

生徒会長？

あの人も持ってるの？

女なのに

オトコのロマンを？

うん

会長さんのは加則くんと逆で

いつも回転してるんだけど

すごく速いからまるで

止まってるみたいなの

．．．ふぅん．．．

氷の刃みたいな

かっこよさがあって

あたし会長さんの前だと

いつも緊張しちゃうな

．．．ちなみにあたしは

そういうのある？

前も言ったけど

ガクちゃんにはすごい

換装システムがあって

だから追加で

いくらでも．．．あっ

ガクちゃんも

ロマン感じた？

．．．いや別に．．．

ちょっと

聞いてみただけ．．．

ーその日からなぜか

天条の攻撃が加則にも

及ぶようになった

理不尽、極まりない話だが

．．．まぁ立派なドリルを

持っているという加則なら、

あたしとゆかりの

助けがなくとも

切り抜けられるだろう

あたしの友だち

毬井ゆかりはニンゲンが

ロボットに見えるという

ｅｘｔｒｕ：０２

今日はそんな彼女を

敵視（？）している

天条七美がまた妙なことを

いいだした．．．

いい？今回量子とか

そういうのは

おいといて．．．

まりいが観測かぎり

あたしたちは人であり、

ロボットでもある

それを認めた

うえでの話

ならロボットにしか

できないようなこと．．．

目からビームをだしたり

空を飛んだりすることだって

まりいが見てる前なら

できるはずなのよ

そうよね？

まりい！！

う．．．

う〜ん．．．．．

というわけで

波濤

飛んで

ユカリがいうすごい

探索システムとやらを

見せるといいデス

はぁ！？

ガクちゃん

がんばって！

あんたもなんで

天条のほうに

ついてんのよ！？

まぁ

できるだけ．．．

そう

いわれてもなぁ．．．

どうしたです？

早く飛ぶデス！

もう１０分以上

たってるわよ！？

どう？ゆかり

あたし変わってる！？

ガクちゃん

スタビライザーは頭に

つけるものじゃないよぉ

うわいつにもまして

わかんないこと

いってるし！！

波濤あなたが

その程度って

いうのなら

まりぃの目も

ぜんぜんたいしたこと

ないってことになるわねぇ？

．．．．．天条．．．

あんた自分で

言ったんだからね？

ロボットにしか

できないこと．．．

目からビーム

だって！！

！！

ーっ！！！

でやー

この一件以来

あたしはゆかりの前で

フザけるのをやめた

天条やアリスも

おそらく同様だと

思う．．．

ＱＬＡＬＡｔｈｅｐｕｒｐに

原作

ＤＥのＣＥＸＣＯＭＩＣＳ

紫色のクオリア＠

２０１２年１１月２７日初版発行

うえお久光郷曽士郎

綱島志朗

カバー・

装丁

印刷・製本

塚田正晃

－株式会社アスキー・メディアワークス

〒１０２－８５８４東京都・千代田区富士見１８１９

【電話０３５】《小説「１９時間の電話（３５日（編集）

株式会社角川グループパブリッシング

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電話２０：３２：３８４８６５（営業）

イン一伸童舎〈冨山高延〉

朝倉哲也（ｄｅａｉｇｏｒＣＲＥＳ）

まー一日版印刷株式会社

＠２０１２ＨｉｓａｍｉｔｓｕＵｅｏ／ＳｖｏｕＴｕｎａｓｉｎａＰｒｉｎｔｅｄｉｎ，Ｊａｐａｎ

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初出月刊コミック電撃大王２０１１年１１月年４月号、６・７月景、９〜１１月号。

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