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虫瑯

むしし

漆源友紀

タイミング

うるしばらゆき

...

4.063142556

997900533で

雑誌55721-55

ISBN4-O6-314255-8

C9979、¥533E〈O〉

アフタヌーンKC

講談社

定価:本体533円(税別)

緑の座

柔らかい角

枕小路

瞼の光

旅をする沼

...

...

それは

...

あれっていいんだ

...

...

...

まあ、

...

それで、

...

およそ遠しと

されしもの

下等で奇怪

見慣れた動植物とは

まるで違うと

おぼしきモノ達

それら異形の一群を

ヒトは古くから

畏れを含みいつしか

総じて「遠」と呼んだ

緑の座る。

誰か来る

なんか妙な

やつが来る

誰か来る

......

猿かね

何か今

いたな

...しかし

緑が

異様なくらい

鮮やかな所だな

ここは...

生来

そういうものを

持つ人間が

稀にいる

緑や水

生命を呼ぶの

体質とでも

いうのか

おー

左手でも

文字なら

大丈夫だな...

日までして

徐々に和らぎ

本冬は朝え

自分も!

さら

さ~っと

元々左が

きき手だし

書きやすい

なー

!!

......

しまった

そうだったか

これらの字は

元々は

「絵」なのだ

象形文字と

いうやつ

これらは

これで

いいとして

おいこら

「鳥」っ!

勝手に外に

出るんじゃ

なーい!

何だこりゃ

見た.....?

墨......?

.....これって

もしや.....

あっ

あー

「そりゃもう

バッチリと...

...きみ

五百蔵しんら君?

はあ

書簡

読んでもらえた

かな?

じゃあ

あなたが

蟲師の

ギンコ.....

さん...

...お断りの

手紙を書いて

いたんです

これまでも

何度か

蟲師の方から

祖母の

遺言なんです

こういった

「調査」の申し入れは、

ありましたが、

全て断ってきました

僕のこの性質を

広めてはならない

...そして

できる限り

眠らせておくこと

...

ごらんになった

ように

昔から僕が

ものの形を

象ると

それは

既存の生物で

なくとも

生命を持つんです

でも......新たな

生物を生み出すなど

人のしてよい

所業ではない

右手で描くと

何もないん

ですけど

こないだ指

ケガしちゃい

まして

八百万の神々の

怒りを受ける

...と言って

左手で

ものを描くことを

祖母に禁じられ

ました

それで

先刻のような

ことに

なるほど

あれは

驚異の

造形物だった

僕も驚いた

あんなものまで

動き出すとは

今までも

さんざん妙なもの

動き出したり

したけど

調査は

お断りします

へー

例えば?

コウモリ傘

とか孫の手

とか

こいつけこう、意外間が

しゃべりだなわりとよく

はっ

だか〜

嘘にまえのか

でも

そのまま

すぐ帰れとは

言いませんが、

こんな山奥まで

入ってくるのは

大変だったでしょう。

今晩はゆっくり

してって下さい

それに実は

人に会うの

久しぶりで

世間話なら

ぜひとも

つきあって

ほしいんですよ

どうぞ

へー

僕がつけた

果実酒です

普段は

ここで一人で

やってるんだ

けど

こんな人気の

ない所に一人で

住んでんのか?

四年前に

ばあちゃんが

死んでからは

確かに

こんなふうに

ばあちゃんが

この家を出ては

いけないと

言ったから

もしこいつが

里に住み

人前でうっかり

何かを生み出して

しまったら

平穏には

生かしてもらえん

だろう

ばあさんってのは

なかなか賢明な

人だった

みたいだな

その性質は

...うん

あまりに

人智を

離れてる

人の心を

ざわめかせる

いつも

僕のこと

考えてくれてた

......

だけど

お前が

描いたのか

これ...

見てくれる?

うん

一体何なのだろう

いつも

と思ってた

一人になると

時々そういうのが

どこからか

出てくるんだ

僕は

それらを見るのが

楽しくて

写生しては

ばあちゃんに

見せてた

けど

お前はなぜ

こんな幻ばかり

見ているのか...

きっと

あんな

おそろしい力が

あるせいだ

こんな幻は

忘れておしまい

おそろしい

おそろしい

哀れな子

そう言う

ばかりで、僕の

見ているものの

ことを...

亡くなるまで

信じては

くれなかった

だから

僕自身ですら

本当は自分は

どこかおかしいのかと

時々思ったりした

ばあちゃんと

僕は

そこだけは

わかりあえな

かった

大雑把に

言うと

こうだ

それは

これらが皆

「蟲」だからだ

この手の

こっちの四本が動物で

親指が植物を

示すとするぜ?

蟲?

ああ

昆蟲やはっぽるい

爬蟲類とは

一線を引く

「蟲」だ

すると

ヒトはここー心臓から

いちばん遠い中指の

先端にいるって

ことになるだろ

手の内側に

いく程

下等な生物に

なっていく

辿っていくと

手首あたりで

血管がひとつに

なってるだろ

...うん

ここらに

いるのが

菌類や

微生物だ

この辺りまで

遡ると

植物と動物との

区別をつけるのは

難しくなってくる

ーけど

まだまだ

その先にいる

モノ達がある

腕を遡り

肩も通りすぎる

そしておそらく

...ここらへんに

いるモノ達を

「蟲」...

あるいは

「みどりもの」

と呼ぶ

生命の

原生体に近い

もの達だ

そのものに

近いだけあって

それらは

形や存在が

あいまいで

それらが

見える性質と

そうでない者に

分かれてくる

うん

透けてるの

もいる

幽霊みたいに

障子や

ふすまも

通りぬける

いわゆる

幽霊って

やつの中にも

正体は

蟲だという

ものもある

ヒトに

擬態できる

モノもいる

からな

......お前の

ばあさんには

それらが

見えなかったん

だろう...

そういう

五感で

感知しにくいものを

感じる時

捕っているものを

「妖質」という

それは

多少の

差こそあれ

誰もが持つ

無い者は

いない

ただ

普段、必ずしも

必要な能力ではないため、

眠らせていることが

多いし

何かの

ちょっとした

きっかけで

その感覚を操れる

ようになったり

逆に忘れたりする

感覚を

分かちあうのは

難しいー

相手の

触れたことのない

手ざわりを

相手に

そのまま

伝えることは

できないように

見たことの

ない者と

その世界を

分かちあうのは

難しいさ

でも

ばあちゃん

僕は、その

おかしなもの達が

この世界に

いるってことが

嬉しくて

たまらないんだよ

ミシ

カワヤは

.....と

しかし

だだっ広い

家だな

相当

古いし

しッ

こんなとこ

よく一人で

今何か

横切ったな

この家に

蟲がいない

わけないか

...どこへ

へえ

蟲ピンだ

そいつで蟲を

串刺しにして

飾るのか

卑しい風柄っ

蟲師め

卑しい?

蟲に

言われたか

ねえよ

!?

蟲だよ

お前と

同じ

かわいい

奴だろ?

なっ

何だ

こいつっ

煙のくせに

同胞には

巻きついて

離れない

すぐ

消える

けどな

ひょい

...あっ

ほおー

半欠けだが

きれいな色の

盃だな

お前もこれで

月見酒でも

してたのか?

うるさい

返せっ

人の家って...

お前の家かよ

由紀のりとに

ん?

ずうずうしく

人の家

あがりこみ

やがって

とっとと

出ていけ

はー

ああ

そうだ!

そういう

ことか

お前は、元々

ヒトだったのが

蟲の性質を得た

類のものだろ

......

なるほど

蟲として

不完全だから

そんなに

弱いんだな

緑の半欠けの盃

お前が

誰かって

こともな

お前の

名は

「廉子」だ

俺に、この盃を

元に戻す案があるが

聞いてみるか?

これで

何故お前が

そうなったかも

見当がつく

ここへ来る前に

しんらの

血筋のことは

調べさせて

もらったからな

...廉子ばあさん?

......

ばあちゃんが

まだ

この家に

いる...?

と言っても

むろん

ヒトとしてでは

ないがな

ヒトと蟲の

中間のモノと

してだ

蟲の宴

...どういう

......こと....

時に

蟲がヒトに援態し

宴に客を招く

ってものだ

という

現象がある

そこでヒトは

盃を手渡される

そして

つがれた「酒」を

飲みほすと

生物としての

法則を失う...

つまり

蟲の住人と

なる

ばあちゃんが

それに?

半分を

あちら側に

置いてきて

しまったんだ

しかし宴は

途中で中断されて

しまった

ああ

おかげで

お前のばあさんは

蟲にならずに

すんだが

家に戻ったばあさんは

もう以前のばあさんでは、

なくなっていた

しんら

けどその

もう「半分」も

同じように

そんな...

お前の知ってる

ばあさんは

「半分」でしか

なかったんだよ

お前が

生まれた日から

ずっと

この家の中で

見守ってたんだ

全然

気づかな

かった...

彼女は

完全な蟲では

ないから

お前には

見えんのだ

だが

お前の力を

使えば

ばあさんを

完全に

「蟲にすることが

できる

そうすれば

もう決して

こちら側に

戻ることは

できないが...

...どうする?

本当に

...はあさんの

迷いは

そう長くは

なかったよ

そうすれば

しんらに

会うことが

できるのか.....?

力を...

がしてやれるな?

しんら

......

本当か

家の中では

支障がある

ここで

やろう

...描くとこ

見ちゃ

だめだよ

じゃあ

しんら

わかった

って...

さっきした

ばあさんの話の

蟲の宴の中で

ばあさんが

蟲にもらった

盃を

左手で描いて

みてくれ

でも

.....どんな

色とか形とか

聞いてないよ?

......想像....

描けるはずだ

いいんだ

それで

想像で

描いて

みてくれ

ばあさんが

受けた盃の

半分は

子から孫へと

体内に

受け継がれていく

ものだから

見るなって

言われたら

見んわけには

いかんだろう

やっぱり

何も

つけずに

緑.....

筆に色が

にじみ出た

のような

気がする

この国の

緑のような

......濃くて

鮮かな

...それで

平たくて

丸い形...

ご名答!!

すげえ

割れる

......廉子!

...

..?

...そこに

いるの?

ばあちゃん

合わせるぞ

...何だこれ

さあ

飲んでみろ

麻子

はあちゃん:::?

......

......

照れてんだよ

お前ら...

兄ってたよ

だかっ

ほら

お前も

いっとけ

祝いの

盃だ

.....?

うん

これは...

ばあちゃんの

記憶だ.....

急がないと

陽が落ちる

な...

蟲......

列から

出られない

さあ.....

飲みなされ

なんですかわいいんだから

五百蔵廉子

どの...

これは

そなたの為の

異なのだ

なんて

馨しい

ひと口

飲むほどに

ものを考える力を

失わせるー

お気に

名されたかの

それは

光酒という

生き物

それを抽出

ことのできる

その盃を持別に

普段は

真の闇の底で

巨大な光脈をつくり

泳ぎまわっておる

ものだが

そなたの為に

...

それは、この世界に

生命力生まれた時から

流れ出でーー

それか

そづいた土

草蒼ズ命芽吹

速さかれば

酒島する

つまり

命の水

この世に

これより

美味いものは

ない

これより

三十一年後に

誕生する

そなたの孫は

盃を交わし

最高の

もてなしをしたのには

そなたに

「頼みたいことが

あるからだ

生物世界を変える程の

持異な性質を持って

生まれてくる

それが

その子供と

この世界に

とって

幸福なこと

なのだ

そなたには生涯

その目付けを

してほしいのだ。

.....私の孫

それを

望まれるなら

そなたに

あを与えよう

さあ

残りの酒を

すべて

飲みほされよ

乾いてる

...

帰らなきゃ

...しんら?

あれ

しんらの涙は

止まらなかった

廊子の感情

感覚がつぶさに

流れ込んできたのだという

ただ

ただ

どうしたんだろ

僕.......

「盃が割れてしまったことが

悲しくて仕方なかったの

だという...

そして

それに

感応する

ように

光酒も

盃から

湧き続けた

とめどなく

流れ続けた

もう

行くのか?

すごいな

一面の音だ

ああ、昨晩、

光酒がしみ込んだ

一帯だな

...しんらの

調査とやらは

あきらめる

のか?

そーなあ

面倒な

お目付け役が

復活しちまった

からなー

ふふ

調査抜きでなら

近くへ来た時

寄るといい

.....仕方が

ないとはいえ

こんな所に

一人では

しんらも

さみしかろう

...別に

その必要は

ないんじゃないか

いつでも

あんたが側に

いるんだから

これからは

あれ

ギンコは

もう

行ったぞ

何だよ

あいさつも

なしに...

......

でもこっちも

大した礼も

してないし

悪かったな

いや.....

でも

緑の盃が

ないけどね...

それ以後

神の筆を持つ

少年についての

新しい噂は

ふっつりと途切れた

緑の座おね

...あれが

両手で耳を塞いでいたら額が盛りあがって

角が四本生えてきた

中、やわらかいつの

柔らかいを

雪の降る夜

音が消えた

誰かと話すか

耳を塞げ

ようこそ

おいで下さい

ました...

蟲師の...

ギンコさん

でしたね

村長の白沢で

ございます

ええ

村を代表して

お呼び

致しました

ここは

ご覧の通り

深い山の底...

風の通らぬ

静かな里で

ございます

特にこのような

雪の晩には

物音ひとつ

しなくなり

話し声すら

消えてしまう事も

あるといいます

そして

そういう時

耳を病んで

しまう者が

出るのです

私も片耳ならば

さして障りは.....と

思っていました

それは

両耳ですか?

殆どの者が

片耳です

ですが

片耳を失うと

人は真っすぐに

歩けないのですね

まして

この山道

踏み外せば

谷底です

麓の町の

お医者方は

首をひねる

ばかりで

もしや

異形の影響

やもしれぬと

思い致ったのです

なるほど

この粘液...

原因は

蟲ですな

『広』と

いいます

普通

森の中に棲息

する蟲ですが

雪は音を

吸収する

これが音を

喰ってるんです

だから

音を求めて

里へ下りて

来たんでしょう

かなり

大きな群れが

巣くってますね

あー

ここにいました

これじゃ音を

喰いつくして

しまうわけだ

そうなると

群れを離れて

獣に寄生を

し始める

一見だって

蝸牛の

ようだな...

消えた

耳の中に

.!!

蝸牛に

そっくりな

器官が

あるのを

ご存知ですか

移動したん

ですな

飢えた広は

自らの殻を捨て

そこに寄生し

入ってくる音を

全て喰って

しまうんです

ですが

器官が壊された

わけでは

ありません

あの...

お湯って

.......

これぐらい

で?

どうも

ガザッ

これを耳に

流し込めば

これ

この通り

塩ですよ

うわっ辛っ

何だこれっ

耳から口に

へってきた

あ!?

......

聞こえるぞ

あとはそれを

屋根裏中に

吹きつけておけば

問題ないでしょう

驚きました

蟲師の仕事と

いうのを

初めて見ました

わ...

あとは

一人だけ

両耳を病んで

しまった者

が.....

私の...

孫なんです

が...

両親もおらぬ

あの子が

さらに何故と

ふびんで...

孫の様は

村の者には一切

漏らさないで

頂けますか

他の者とは

明らかに

様子が違う...

ぶっ

うるさい...

静かにしろっ

真火です

突然

その角が生えた

かと思うと

前の冬から

このような

事に...

それまで

聞こえていた音が

聞こえなくなり

「これまでに

聞いた事もない

音」が聞こえ

出したと

言うのです

こんな

物音ひとつ

しない夜でも

家の内で外で

音がする

囁くような音

轟くような音

耳を塞いでも

隙間を

埋めても

変わらない

角から音が

入ってくる

...と

...これは

え?

もしや...

『阿』

広と共に行動し

嘘の作った

「無音」を喰う

蟲です

これに

寄生されると

見境なく

音を拾うために

近くの音だけを

聞く事は

できなくなります

ーですが

版に比べて

非常に数の少ない

蟲でして

それによると

ISと同じように

塩水を用いても

伝えられてる

治療の記録は

一件のみです

阿は

耳から出ては

こなかった...

さらに様々な

生薬などを

試してみたが

効果の

あるものは

なかなか

見つからず

昼も夜も

洪水のように

押し寄せる

「音」の中で

患者が

発病した

その次の

冬の終わり

患者は

精神を

すり減らし

やがて

衰弱死して

しまった

と...

:::その次の

ではまだ

治療法は

冬の終わり...

わかりません

蟲の対処法と

いうのは

長い長い時間の中で

先達が幾度もの

遭遇を経て

あみ出してきた

ものです

蟲なんぞ

わかっていない

事が殆どです

のでー

兎にも角にも

相手を

知らねばね

俺の声が

聞こえるか?

うん

俺はどうも

蟲を呼ぶ

体質でね

お兄さんが

来てから

ますます

「音」が増えて

頭が割れそう

だったんだ

周りの音が

...少し

静かになった

そりゃ

悪かったな

蟲ってのは

がチャガチャ

うるさいだろ

この煙で

遠ざけて

おいた

蟲?

この音が?

人間ってのは

特別に耳の悪い

動物でな

殆どは

そうだろうな

多くの獣たちは

もっと多彩な音を

聞きわけて生きてる

が獣たちでも

聞きとれない

でかい音の層が

あるらしい

蟲はこんなに

大きな声で

話してるの

それが

蟲の声の層

そうじゃない

一匹一匹の

つぶやきは

微小な

もんだろう

だが蟲は

数える事など

できんほどいる

それだけの

モノどもが

一言つぶやけば

どうだ

それは

すさまじい音量で

谺のように呼応し

世界を這いずり

回っているという

お前の耳の

奥にいる

阿という蟲が

お前の「静寂」を

喰うーすると

その角が生え

そこから

あらゆる層の音が

流れ込み始めた...

おそらく

そういう事

だろう

耳の方には

何ら変化は

見られなかった

からな

その角

どんな風にして

生えてきた?

耳を

塞いでたんだ

去年の冬.....

母さんが

死んでしまった

から...

母さんが

...よく

そうしてたから

思い出して...

真似して

みたんだ

額が盛りあがって

角が生えてきた

耳を

塞いでた?

思い出せないんだ

どうして

お前の

母さんは

わからない

母さんも

おれと同じ...

角が生える病気で

耳を塞いでも

音は防げなかった

はず...

あの時

母さんは

何か言って

弱り果てて

しまってた両手で

強く

おれの耳を

塞いだ

でも

頭の中にも

どんどん音が

流れてきて

...そうか

あの時

何て言ったか

覚えてるはず

なのに

いつも

思い出そうと

するのに

聞きとれない

これは

悪いが

運がいい

全く同じ

環境での

症例が

あるとは

どこかに

処置法の鍵は

あるはずだ

...娘の

末期...ですか

音のために

ろくに眠りが

とれぬのです

真火の前では

決して日に

しません

でしたが

...そりゃあ

可哀相な

ものでした

しきりに

言っていました

「どんな音も

届かない所で

ゆっくりと眠りたい」

先ほどの

お話と同じ

その望む所へ...

行ってしまいました

最期まで

音に

苦しめられた

わけですか

......発病した

次の冬の終わり

ええ...

...いえ

母さん

音が消えたの

いいえ

違います

あの子

あの日

急に言い出し

ました

今度は

ぴんっと

何も

聞こえなくなった

怖いの

あんなに

恐ろしかった音が

なつかしい...

そして

そのまま

間もなく

消えるように

...死んで

しまいました

死に際に

なって

音が全く

聞こえなく

なってしまった

.....はい

他には何か?

...いいえ

ですが

おそらく

さっき真火が

言っていたのは

この時期の

事でしょう

私も当時

奇妙に思っては

いました

あの子...

一体何の

ために...

宿主の死期を悟って

阿は逃げ出したのか

なら聴覚は

元に戻るはずだ

死に際に訪れた静寂

何も聞こえなくなるとは

どういう事だ?

ピオン

なのに

一体.....

何から耳を

塞ぎたかったん

だ.....?

......

どこ

行くんだァ

お前

つっても

言えん

大丈夫

ちょっと

散歩.....

するだけ

ばあちゃんには

内緒...

ずっと家の中

いたら...よけい

おかしくなる...

...か

母さんの

死んじゃった時の

事ばっかり...

思い出すからさ

自分と

同じ病で

母親を

看取ったんだからな

降って

きた

行かすんじゃ

なかったか

仕方ないか

真火!

真火!

ああ

ギンコさん

真火が

いないんです

大丈夫

どっちへ

行ったか見て

ましたから

ええ!?

何で

行かせたん

ですか!?

行ってきます

だが

決して

無音じゃない

静かだ

だが

耳を

そばだてれば

あらゆる音を

拾うとなると

>一つの音は

もう聞こえなく

なるのか

音はある

雪の積もるのにも

周りに音がなくなれば

聞こえてくる

自分の心臓の音が

それが極限まで

高まれば

もしや

もしや

それが

「音が消える」と

いう事か?

そうか

ごめん...

なさい

でも

ちゃんと

すぐ帰るつもり

だったんだ

途中で

吹雪いて

きたから

止むまで

ここで待って

ようと思って

だけど

どんどん

強く

...え

声が....?

焚火の

音も

!!

......

コラコラ

お前ら

ケンカするない

阿は

どいつだァ

お前だ

阿は左巻き

Bは右巻き

..と

んん

真火

両手を

かしてくれ

お前の

母親の

ようにな

...こう?

溶けた...!?

両手で

耳を塞いでも

無音には

なりません

彼女は

死ぬ直前に

その時

聞こえる音を

何かから

耳を塞ぎたかった

わけではなく

聞こうと

していたんだと

思います

聞こえますか?

...小さな

地鳴りのような

音が...

それは

腕の筋肉の

運動している

音だといいます

つまり

しかしその音は

生物に寄生すれば

常に体内に

響いているもの

阿の弱点は

〝他の生物の

生きている音の

だろうと

阿にとって

そこは

居心地のいい所

ではないはず

だから..

消そうと

する

何が溶け出すか

宿主が衰弱死

するか...

その答えが出るのが

およそ一年後、と

いうことなんでしょう

彼女はそれに

気づいてたんじゃ

ないでしょうか

もはや

手遅れと

なっていた...

真火

...聞こえる?

けれど

その時には

衰えが進み

すぎていて

これが

母さんの

音だよ

むかし

母さん

見たんだよ

父さんとねぇ...

火を噴く山...

ほら

お前も...やってごらん

お前の中にも溶岩が

この音は

あの

溶岩の音に

そっくり...

だから

母さん...

消えそうなくらい

不安な時...

この音を聞くの

何でも溶かす...

溶岩みたいに

不安も辛さも

みんな.....

溶かし込んでしまえる

気がするの...

真火?

真っ赤な

溶岩が

流れてる

よ...

では

これが

報酬と

いう事で

ええ

...本当に

それで

よろしいの?

いいのね?

真火.....

結構

ですよ

..うん

世界は

静かだろう

真火

慣れるまでは

落ちつかない

だろうし

断たれた世界を

恋しく思う事も

あるだろう

だがそれも

春になって

賑やかになれば

忘れる

......

おれ...

忘れない

ずっと

聞いてたんだ

母さんと

同じ音...

......ぞっと

するくらい

きれいな音ー

柔らかい色...お

...

蟲師?

ギンコと

申します

予知夢を

ご覧になる

そうですね

巷で

評判ですよ

ですが

その夢ちょっと

問題があるんじゃ

ないかと

思いましてね

どういう事だ

ーおそらく

蟲が絡んで

ますな

夢の中に

棲む蟲です

そいつが

予知夢を

見せるんですよ

今は

どれくらいの

割合で予知夢を?

十の内

一つ二つ...

そして

どんどん

増殖する

じきに

四、五回

にはなる

そしたら

これを

飲むといい

それ以上飲めば

毒となります

だが

放っておけば

この薬で

数を調整

した方がいい

無くなる頃

また来ます

夢から醒めなく

なっちまう...

大切なのは均衡です

必ず飲んで下さいよ

どうぞ

それまで

よい夢を

まくらのこうじ

寝言と会話をしてはいけない

其れは彼岸の国の言語

.....あれから

...これは一体

一年と経って

いないはず

なんだが...

どういう

わけだ...

来たか

待ってたよ

蟲師

お前に

聞きたい事が

あってな...

あんた一人か?

この町の

有り様

もしかして

ああ

そうだ

聞かせてやるよ

全部な...

やれやれ

おっと...

...どっこい

っと

すごいぞ

ん...

こりゃ

水脈だ

これで田を

広げられる

な...

また

ジンの夢が

当たったぞ!

おー

ーい

出たぞ!

町に

知らせて来い

ああ...

何か

悪いわね

農家の方が

夢のお礼にって

こんなに...

わぁ

山桃

だが刃物研ぎだけじゃ

なかなかいいもの

食わしてやれんからな

...有り難いよ

でも

ジン

お前

信じてる

のか?

蟲が夢を

見せている

だとか...

予知夢の回数が

増えてる...

わからないわ

でも...もしも

あの蟲師って人の

言った通りね

もしも

それが

本当だったら

わかったよ

...あの薬は

飲んでおく

...そう

西の崖が

崩れたぞー

ーっ

よかった

ありがとう

ございました

本当に

何とお礼を

言ったら

よいか...

もし

予言が

なかったら

今頃は...

きぬ

夢に見たままが

真になると

そんな...

.....俺は時々

恐ろしく

なるんだよ

まるで俺が

しでかした

事のように

思えるんだ

ジンさん!

なわしらにも

いい夢を

見てくれよ

さあ

そりゃあ

ちょっと

無理

言うなよ

夢だもん

なァ

これ

この間の

お礼だ

取っといてくれ

じゃ

また

期待

してるよ

どうも

大丈夫よ

ジン

だって、皆

あなたのおかげで

幸せそうじゃない

...ああ

そうだな...

きっとあなたは

皆を救うために

予言を授かって

いるのよ

恐れる事なんて

何もないわ

妻は

そう言ったが、

俺の

予知夢への

恐れは消えず、

進んで薬を

飲むように

なった

津波だァ

......だが

まゆ

が.....

あの子が

浜に...!!

...そんな

こんな

夢は

一度も...

...全くだ

こんな

大災害を何故

予知できなかった

んだ......

......

...ああ

まゆ...

この薬を

飲んだばかり

だったから

だ...

だから

まゆの命を

救えなかった

すると

たちまち

予知夢の回数は落

増え

内容も

より正確に

なっていった

俺は

薬を飲むのを

やめた

.....見て

ジン...

家の前に

お礼の品が

元気...

出さなく

てはね...

そんな

ある日だった

はっ

...夢を見たの?

ひどい汗...

ひどい汗...

は...

......

はっ

悪い夢?

.....いや

そして

翌日

体調が悪い

だけだ...

夢じゃ

ない...

......

きぬ:::っ

全身に

広がり...

泥のように

...夢に見た病

そのものだった

指先から...

青い微が生えて

崩れて

そして

俺一人が

町に残された...

......

その夢が

真になった時

俺は気がついた

あの時

ギンコと

言ったな

お前が俺を

騙したって

事にな....!

俺の中にいるのは

予知夢を見せる蟲

なんかじゃない

そして

あの青い病...

俺の近くに

いる者から

感染していった

俺の見た夢を

現世に持ち出し

伝染させる蟲なんだよ

眼前に夢と同じ

光景が作られた...

隣家

向かいの

筋...

俺がこれまで

「予言」してきた

事はすべて

なのに

何故

あんな嘘を

ついた!!

俺の夢が

「創り出した」

事だったんだ

...そうだろう

......

この蟲は

完全に断つ事が

できないからだ

寄生されたが

最後...

だが

悪かった

生涯

均衡を保ち

共生してゆく

しかないんだ

蟲本来の

性質を告げれば

宿主は自分の

創り出すものの

大きさに

耐えられなくなる

そう

そして死ねば

よかったん

だよ!

何故

生かして

おいた

こうなっちまった

以上...

...こんな

災いの元は

何故...

蟲を断つ術を

何としても

見つけてみせる

いののあわい

夢野間

宿主の

夢の中に

棲むが

...生きてくれ

そして

その時

宿主が見ていた夢を

現に伝染させる

媒体となるんだ

時折夢から

出て来る事も

ある

「つまり

すべての夢を

予知夢にする

わけじゃない

が.....

増殖するほど

夢から出て来る

回数も増えて

ゆく...

そして

再現できる

規模や範囲も

大きくなって

しまう...

だが

だが

どこかに

蟲自体は

日に晒されれば

消える

弱々しいものだ

それが何故

現世に出て

来たがるのかは

わからない

夢現を結ぶ

蟲達だけの

通い路があり

それを

見つけられれば

何とかできるかも

しれない...

宿主が

目覚めている間

蟲達はそこで

眠っているという

しかし

これほどの早さと規模は、

見聞きした事がない

あの薬では

食い止められ

かと言っ

服用を

増やせば...

おいっ

しっかりしろ

全部.....

飲んだのか!?

解毒剤

を.....!

構うな...

もういい...

!!

とても...

生きられん

眼球が

動きだした

夢を

見始めたんだ

許してくれ...

蟲にも

罪などない

死ぬんじゃ

ない

寝言?

......

互いに

ただその生を

遂行していた

だけだ

お前は何も

誤っちゃいない

お前に

罪など

ないさ

誰にも

罪など

ないんだ

あれは

雁か...

は?

...やっぱ

寝言か...

脈絡が

ない...

お前

一体どこに

いるんだ

早いとこ

戻って

来いよな

......

葦の原に

いる...

返事をした

........

くっ

何だ

この

耳鳴り...

これは

一体...

今の会話で

こいつの夢が

現世とつながった...:?

これが...

雁に見えている

のか.....?

これは

全部...

ギャ

夢野間の

群れだ....!!

お父ちゃん

お帰り

お帰り

なさい

...すまない

...まゆ!

きぬ.....

すまないな

お前達...

......憎んで

いるだろう

では

俺が...

お前達.....皆を

殺してしまった

んだ...

...いいのよ

ジン...

あなたは

悪くないわ...

あなたの

せいじゃない

...誰か

いるのか

俺だ

屏風に

何か

映ってる

熱い...

誰か

...火?

俺の夢か....?

映っているのは

ボ...ッ

枕から

!!

そうか

こっちにも

夢が燃え移った...

起きろ!!

水を.....

夢は

...!

枕を通って

やって来た

『蟲達だけの

通い路

目覚めている時

そこで蟲達は

眠るという...

まさか...

こんな所に

いたのか....?

忌々しい...

やめろ!!

蟲どもめ...:

ふ...

.....な

何故...

俺まで...

...応急処置が

良かったようだな

何とか

助かるだろう

...こうなるのが

わかってたのか?

枕を

切っただけ

なのに...

知ってるか

「枕」の語源は

「魂の蔵」だって

説がある

生きている内

三割近くも

頭を預けている

場所だ

そしてそこは

夢野間の

巣であり

そこに

魂が宿ると

考えられて

いたんだろう

夢と現を

つなぐ通路と

なっていた

夢と

...切れば

何かを失うのは

お前だろうと

思った...

現の

間に在るは

魂の歳

その後

男は

その村で

再び研ぎ師を

始めたという

腕は確かで

評判を呼んだ

しかし

何故か次第に

心を病んで

いったという

誰もこの路を通らねば

彼岸の国は見て来れぬ

時に往来で

刀を振り回し

最期は

自らに刃を

突き立てた

「あの男は

眠るのをとても

恐れていた...

人々は言った

...服ると魂が

すとんとどこかへ

滑り落ちて

ゆくのだそうだ」

男は

枕を断った

あの日から

一度も夢を

見なかったという

枕小路

えっと昔のいい

おばあちゃん家で

話していた

時。

うりふたつなわたたち

地元の音話とか

知ってるっとふると

自らの不思議

体験談を

してくれた。

BZ和十年

当時

あばあちゃんは

身重で

運動のために

よく近くの

土手を合わ時に

散歩していた。

その日も

近所の子と

歩いていると

はぁて

ありゃあ

何じゃろかいの!

山の松の本の後ろへ入ったり決たりしている

それは

連れていた子には

見えていなかった

そうだ

後日。

土手の端のお客に

修験者がいたので

この事を話してみると

あの城山からこのお客さん

までは狐の通り道に

なってある

それは

私に化かされ

たのだ

他にもこの河原にまつわる

初めの話がいくつかあった。

私には

机の姿をか

よく見える

あんたに

見つかりそうに

なったので

《いたのだろう。

このあと

この河原原辺に

お稲荷さんが

やたら多い事に

気が付いた。

みんな相当狐を

あなれていたんだろう。

おはよう

スイ

蟲がいるのよ

今日はどう?

目はまだ痛む?

ねえ

ビキ

ん?

ビキには

教えて

あげるね

棲んでるの

ずっと

あたしの

目の中に

あたし

知ってるの

この病気の

原因

スイは

本家の

未娘で

半年程前

光が当たると

目が痛むという

病を患った

それはどこの眼医にも

原因の分からぬ奇病で

治療法も

見つからないうちに

わずかな光にも

ひどく痛がる様になっていった

そのため

より光を遮る

丈夫な蔵のある

僕の家に

一人あずけられ

たのだ

僕には

それは

スイのため

だったのかも

しれないけど

スイがここに

捨てられて

いった様に見えた

瞼の裏にね

もうひとつ

瞼があるの

そこは絶対に

外の光が

届かない所で

蟲はそこにいるのよ

ふたつめの

瞼......?

そうよ

ビキは閉じ方

知らないの?

じゃあ

教えたげる

目を閉じて

...うん

何か

見える?

ううん

何も...

あでも

何か

チカチカ

したものが

目の中

動いてる

だから

本当の

まっ暗闇が

欲しい時

でしょ

一度

瞼を閉じても

目はまだ

その瞼の裏を

見ていて

本当には

閉じていないの

そのチカチカを

見ている目玉を

そうしたら

上の方から

もう一度

閉じるの...

本当の岡が

降りてくる...

...できないよ

そう?

僕たちは

深い闇の中で

遊ぶ

蔵の中へ

入ってすぐは

本当に何も

見えないけど

まっ暗な

はずなのに

しばらく

すると

闇の向こうから

物たちがおのずと

輪郭を現してくる

...どうして

見えるんだろ

地面の下に

光の河が

流れてる

からよ

え?

遠くの方から

光の粒が

見えてきて

ふたつめの

瞼を閉じると

見えるよ

ーっと

ずー

本当の闇を

見ているとね

それが

どんどん

洪水になるの

その光は

よく見ると

全部小さな

蟲でね

だめだ

でも

もっと近くで

見ようとして

近付くと

それ以上

その河には

近付くな

う...会った事ない

知らない人よ

片目の男の人が

いつも河の

向こう岸にいて

そう言うの

僕は

だから

いつも少し

遠くで眺めて

いるの...

ふさがれた目で

スイが見てる

物たちは一体

時々ふと

不安になる

一体

何なのだろう

ビキ!

...ちゃんと

取り替えた

眼帯は焼いて

捨てたよ

あんたいつも

蔵の中に

長く居すぎ

だよ!

手も

食器も

消毒したし

......

本家の

人達も

それが怖くて

スイを

見放したんでしょ

...それでも

伝染しない

保証なんて

ないんだよ...

だから

僕らは

分かってる

それは

そうよ

お前まで

あの病には

なってしまわないで

あの子は

いい子だよ

...とても

母さんは

こらえなきゃ

いけないね

あの子が

心の中まで

光を失って

しまわない

ように

ついてて

あげるん

だよ

...でも頼むから

...ほんと?

...ここへ

来てくれるの...??

!!フッ

ぐ.....っ

カリガリッ

何だ今の...!?

...まさか

違うよ

母さん...

違うよ

ビキー

まだ

寝てるのー?

ビキ!!

あなたの

病気

あの子に

伝染したの

ビキ?

どうしたの

ビキは

もう

来させないわ

あなたが...

悪いんじゃないわ

他人に

情けなんか

かけたのが

悪かったのよ...

!?

誰?

雨戸を

開けたら

ビキが...

治療薬と

鎮痛剤を

与えておきました

闇に

閉じ込めておくと

病気は悪化する

一方ですよ

大丈夫

ですよ

こちらは

この道の

プロですから

あなたは...

何者なんです

あー

これは

失敬

あれは

眼医ではなく

我々蟲師に

まわしてもらわねば

治りませんよ

蟲師の

ギンコと

申します

蔵の娘の事を

風の噂に

聞きましてね

ビキは...

この子は

治るん

ですか

ああ

そっちの蟲は

まだ孵化直後

みたいっす

......ビキ

薬による

治療だけで

おそらく

効くでしょう

ビキ

ごめんね

ごめんね...

スイ

目はまだ

痛むか?

目が

覚めたか

...ううん

ようし

効いたな

スイの病気の

原因は

"マナコノヤミムシ〟

つってな

闇を通して

繁殖するんだ

お前はスイと

闇を共有

しすぎたんだな

スイを

知ってるの

片目...

ふたつめの

瞼を閉じる度

あの子が

対岸にいた

左目が

ある

あれ

あの光の河は

地上の光とは

異質なもので

できている

あまり

近くで

見すぎる

目に毒だ

スイが言ってた

片目の人とは

違うのかな

うん

陽が落ちたら

スイの治療を

始める

分かった

スイ

お前...

あれほど

あの河には

入るなと

言ったのに

スイ

...スイの

目玉はもう

死んでる

ふたつめの瞼は

長い時間

閉じすぎると

闇に目玉が

喰われるんだよ

え...

だが

何とかは

してみる

...じゃあ

いいか

スイ

月の光で

蟲を

おびき出す

ふたつめの瞼を

閉じたまま

目を

ゆっくりと

開くんだ

...!

出て来い、蟲ども

光だぞ

Win

......晶!?

!!

いた!

スイ

いいぞ

目を閉じろ

さて

これで

いい...

あとは

スイの

目玉だが

......上手く

いくか

わからんが

やはりもう

使いものに

ならんな

キミちゃんこうさっちゃうます

なんかわかった

これを

スイにやる

まあそう

焦るな

義眼だよ

これは

さっきの

液状の

「蟲」だ

これを

吹き込めば

ただの

ガラス玉も

眼球として

生命を持つ

はずだ

...あの

聞いていい?

......

あなた達が

見ていた

光の河の

正体って...

一体

ふたつめの瞼を閉じてごらん

お前は

忘れて

しまったのか?

すると闇への通路が開く。

お前も

昔は..

あんなだった

じゃないか...

人間は光を

手に入れた頃から

ふたつめの瞼の

閉じ方を

忘れたのだという

それは

生きるもの

としては

良かったの

かも

しれない

かつて人間は

「そのもの」を

見すぎたばかりに

目玉を失う者も

多かったというから

ふたつめの瞼

本当の闇

異質な光

我々の足の下を泳ぐ

忠数の生命原生体の

群れのこと

ボンッて

周りが明るく

なったと

思ったら

そのあと一瞬

まっ暗闇がきて

足の下が抜けて

ずうっと下の方に

光の河が流れてるの

見えたんだ

すごく

綺麗で

あの「蟲師」さんが

スイに目玉を

入れた後の

ちょっとの間だけど、

体が

引き込まれる

みたいで

ずっと

見てたくなった

できたよ

......

もう...

暗闇の中で、あの

不思議な光に

魅せられる事も

ないだろう

わあ

スイは

蔵を出た

木々や花や光を

たくさん見る

あの人も

スイと

同じようにして

本物の片目を

失くしたんだろうか

瞼の光、おわり

いっと昔の出てく

生前はそんな話

した事もなかったけど

ひぃじぃちゃんも

結構不足議体験な人

だったらしい。

え?

山で炭を焼いていると、

周り二面に女の玉や技灯が、

灯り糸当のおかずが、

消えてる、という事も

しょっちゅうだったという。

ある日隣のダンナと

町び飲んで

帰って来ると

田んぼで

ケモノが2匹

じゃれている

だじゃ

だいや

ケモノは山へと

逃げて行ったので

清さんや

投げちゃ

ありゃ

狐じゃったかも

しれんのう

不安がよぎったそう

窓のすぐ外から

呼び声がする。

しかし誰も

いないので

気持ち良く

うどしねめると

清槌なという名前

せいづち

清さんや

これは私の仕業かと

隣の家の様子を

見に行くと

その繰り返しで

結局朝まで

眠れなかった

という

子供が急に

熱を出し

やはり

眠るどころでは

なかったそうだ

浅さんや

私は妖怪で用事は完全には〈今の〉《う》

信じていないのだけど、とてもいいではいい」と

えっています。なら、身近なんの、信用できて

3怪異談はとても嬉しい

というのは、20辺のコレンタから生じた。

「妖怪」の形でもあります。

それにしてもちょっと前までは「妖怪」が

すごいにいたんだなぁ。なっと笑ましい。

静寂を喰う蟲

”阿”に

寄生された時

できる角が

なるほど

こりゃ珍しい

そっちは?

うー

ーす

〝神の筆を持つ

少年”の

描いた盃

なにぃ

あの人物が

蟲師嫌いなのは

有名だぞ

いやいや

も少しマシな

嘘をつけよ

ギンコ

無理に売る

つもりはないんだ

化野先生

こいつは

ただの収集家には

勿体ない代物でね

...まぁまぁ

よく見せろよ

売っても

いいが

ちょっと

協力してほしい

って話なんだよ

ああ

聞いた事ないか

ここへ来る途中

妙なモノに

会ってな

それを

捕獲したい

.....妙な

モノ?

液状の蟲の

その成れの果て

〝生き沼〟だ

たびをするぬま

旅をする沼

その山脈を

越える間

よく沼を見た

.....また

沼だ...

しかし

迂回をし

後々山腹から

見返ると

決まって沼は

跡形もなく

消えているのだ

そして

またひとつ

山を越えた頃に

次なる沼が

姿を現す

狐狸にでも

化かされ

てんのかね

...お前.....

この前の沼に

いたよな

目を疑った

この山は

どこか

抜け道でも

あるのか

その髪の異様な緑さだ。

沼の水で

芯まで染めた様な

...あの

んー

...そのまま

行くと...

何かある

の.....?

この沼...

普通の沼じゃあ

じゃあ

俺もちょっと

聞きたいんだが

いいかな

...この沼は

旅をしているの

ないよな...??

何度も...

地中へ潜ったり

浮いたりしながら

あなたと同じ様に

この山を越えようと

してるみたい...

何でまた?

.....

蟲かね

ほお

そりゃすごい

生き沼か

で、あんたも

一緒に移動して

来てるわけ

......

ともかく

このまま

まっすぐ行けば

海に出る

俺が

目指してるのは

そこの漁師町

海に出たら

もう沼には

ついて行けん

なぁ

......

ところ

でさ

沼の水

明日の朝

ちょっと調べ

たいんだが

......

沼が...旅を

してるなんて

信じてもらえ

ないかと思った

どうぞ

新種っぽい

なー

ああ

仕事がら

たいがいの現象は

受け入れるさ

仕事......?

例えば

“水蓋”って

やつで

蟲師と

いう

蟲の起こす

現象ってのが

どれも奇妙でな

液状の蟲

なんてのも

いるんだが

無色透明の

液体だが

生きている

古い水脈の水に

好んで棲み

常に水に

触れていないと

呼吸が

できなくなり

それを

放っておくと

池や井戸に

留まる事もある

体が

透け始める

液状化し

流れ出して

しまう

水と誤り

水盤を

飲み続けると

...そういうのが

いるくらいだから

そして

当の蟲は

ある時、突然

消滅している

まぁ沼が

自分で動くのも

ありがな

思えてくるのさ

そう言う

あんたこそ

気味悪いとは

思わなかったのか

力強い

...?

どんな姿だ

.....私

は...

恐ろしいと

思った事は

ないわ...

...

泳いでいたの

増水して

荒れ狂う

河の底

初めて見た

姿が...

私は流れに

飲み込まれ

浮き上がる事も

出来ずにいた

あまりに

力強くて

神々しかった

から...

緑色の

巨大なものが

そこへ

激流の底を

悠然と

遡って来たー

気が付くと

山あいの

沼の淵だった

この色...

この沼は

沼のふりをしているが、

私は

気付いた

あの時の

緑のものだと

...その時には

髪はもう

この色に

染まっていたの

多分...もう

私は一度

死んでいるのよ

でも

この沼が

だから

私にとって

この沼は

唯一の

居場所なの

生きていて

いい...!と

言ってくれた

せめて

これを着ておゆき

水神様の

母親の事は

皆で助けてゆくて

心配するてない

嫁に

なるのだと

思っておくれ

水禍から

村を救った

誉れ高き

娘として

お前の名は

語られるだろう

......

......

......

飲み続けると

やがて

流れ出す...

体が透明に...

..?

ん...

...行くのね

......

地下に

落ってく...

おいっ

もう行くのか!?

ちょっと

待たせろよ!!

調べてみてく

いろいろ

教えてくれて

ありがとう

この沼の

一部になるの

・っ

おいっ

待て!!

消えた

くそ

水盤は

井戸から

消えた後

自ら

移動して

いたんだ...

何で

気付かな

かった...

あれは

水蠱の

成れの果て

だったんだ

この沼の

一部になるの

生きていていい...と言ってくれた

......バカな

それが

どういう事か

わかってんのか

お前

生きて

いたかったん

だろう.....?

...沼は海へ

向かってるん

だったな...

......

何か

知ってる

のか

古い漁師に

聞いた事が

ある

何でも、鯨以上も

ありそうな

緑のものが

河を下って来て

海へ向かう

沼か

海へ入ると、まるで

分解されるように

死んでしまう...

て事があるそうだ

実際

見た事はない

そうだが

まるで

死に場所を

求めるように

海へ来るんだと

ともかく...

急ごうか

漁師達が騒いで

ないところを

見るとまだ海へは

出てない様だ

振り子で

「水脈波」の反応を

調べて作ったもの

らしい

これが

この辺りの

地下水脈の

地図

あった

あった

珍品だぜ

.....確か

なんだろう

な...

試しに井戸を

掘ったら

五分ってところ

だった

沼を見た場所と

この水脈が

一致するな

やっぱり水蠱は

地下水脈内で

移動するのが

.....でも

ここで

枝分かれしてる

なあおい

ギンコ

こーゆー

地図もあるぞ

これじゃ

進路は

予測できんな

数万年前の

河の予想地図

そこの河も

河口の位置こそ

同じだが

昔はずいぶん

よそを流れて

いたようで

面白いぞ

あのな今

お前の

収集物自慢を

聞いてる

ヒマは

見せてくれ

重なった

...どういう

事だ?

河が河でなくなり

地中に埋もれたら

小石の層となって

残る事が多い

かつて

河だった場所は

地中に埋もれても

この水脈は

もともと

河だったんだ

雨水はそういった

層に向かって

浸透していく

地下水の通う

河となるんだ

あの沼は

がつてのこの河を

記憶していて

辿っているの

かもしれん

死に場所を

定めてか

人を集めて

くれないか

まるで

鮭や鮎だな

ともかく

いずれ

この河口へ

やって来るはず

化野

河口付近に

網を張る

海へ

出ちまったら

手が出せない

悪いな

こんなに

大勢...

良かったのか?

うおー

いいぞ

引っ張れーーッ

なァに

漁師は今、皆、

暇こいてんのさ

医家ってのは

役得だな

この頃の

海ときたら

死んだみてぇに

魚がいない

それに

化野先生の

頼みだしな

いやいや

人徳?

みたいなね

しかし

ギンコ

この網に「まだ...

娘が引っかかる

状態かどうか

わからないんだろう?

...いや

何故

そうまでして

助けたい?

無論、お前に

自責の念も

あるんだろうが

ああ

だがそれに

賭けるしか

ないだろう

娘が何としても

生きたいと

言っていたのなら、

わかる

だが

娘はもう

沼の一部に

なる事を

望んでいたん

だろう.....?

その方が本人に

とって幸せ

...って事情も

この世にはある

酷な様だがな

例の

緑の盃だが

あ?

あれは元々

件の少年の

祖母の物でな

.....だが

蟲でも人でも

なくなっていた

彼女が、少年の目に

映るためには

蟲から授かった

というあの盃を

復元するしか

なかった

本当に

そうして

良かったのかは

わからない

そうすれば

決して人には

戻れなくなるが

.....俺は

蟲の側へ

行くという

事は

彼女の

希望のもとに

......蟲にしたんだ

普通に

死ぬ事とは

違う

蟲とは

生と死の間に在る「モノ」だ

それは

一度きりの

〝瞬間の死〟より

想像を絶する

修羅だとは

思わんが

少しずつ

人の心は

磨減される

あいつは

最後に見た時

そんな所へ

行こうと

いうのに

大事そうに

晴れ着を着ていた

「者」のようで「物」でもある

死にながら

生きているような「モノ」

それ以上の

酷な事情って

のは...

そうあるもんじゃ

ないだろう...

何も

来ないねぇ

...

何か

音...?

...

ひ...

来たぞオオ

...何だ

こりゃあ...っ

勢い殺せ!

......網

持ってかれっぞ!

撃つな!!

え!?

中に

人がいる!!

!!

踏んばれぇー

...す

すり抜け

ちまった...

人がいたぞ

!!

赤い着物

の.....

...もう

手遅れ...

だったのか...?

......

っぎゃあああぁぁ

うおおい

どうなってんだ

この大群は!

こっちも

だー

ーっ

何だ

こりゃあっ

ギンコ!

娘が

見つかった

生きている

ただし

「寒天状」だった

そうだ

海水で、あの

緑の奴の成分は

抜けたみたいだな

うん

今は

白玉状

くらいかね

先生ーッ

あの緑の奴の

死骸を喰いに

魚が集まって

来てんだ

娘は

どんなだい

沖は魚で

真ッ黒だ

ひと目

拝ませとくれ

あの娘は

よいものを

連れて来てくれた

.....!

おい

聞こえるか

あ...

......

海へ出たら

......沼が....

死んでゆくのが

...わかった

う.....っ

自分が...

沼に溶けてゆくの

.......すごく

すごく怖かった...けど

......

.....あれは

数万年は

生きている

お前はその

最期の旅に

同行した

わけだ

沼が死んでゆくのが

.....悲しかった...

会えて

よかったな

...うん....

やあ

いお

化野先生

おおー

今日も

大漁だな

ええ

遠方の魚も

集まって

来てるんです

沼の死骸を

食べて

すっかり

黒くなったな

こんなに

大きく...

ええ

だからもう

水の中で息は

できないんだ

けど...

もう

それでいいの

沼の死んだ

この海で

自分の力で

生きてゆきたい

......

また

沼だ...

四...

浮上しながら

進んでたのは

子孫を残すため

だったんだな...

沼は

生まれ

やがて

淀み

その懐に

築き続けた宇宙の

終焉には

自らの

足を持ち

動き始める

あとかき

お客様を投稿した帰り、私はあり

これでもう投稿する事もないんだろー

なーと感傷に浸透された。自分が驚く

に見切りそういてある探し始めたのが、

すがり営業された頃、風接の

前日。受賞の連絡を頂いた。現実、

ファイスティーグリスラムだとかだった。

その後理作化が決まってからもう

カ食が変わるわけもなく、担当たり

は本当に辛抱強くお付き合い頂いた

たぅというか、頂いている。

高熱という存在は、難儀だけどいと

い、物語を通じて、外界にそういう

微小なモノ道を感じてもらえたら、

とても嬉しいと思う。

全て独り住〉近くにいる森の推談にお

Pのネムを送り付ける新たなどに

Google研究で、前者も怖いものだ。

「おだが後者も家胆、恋謝。〈弐〉

「柔らかい角」雪里描けて幸せで会う。

祝小路〉暗号を少しとかった。やはり

か?えばかりだしな。〈四瞬の光〉《、

当院。当時の題は「意師」は生きて

もを開に無理がある。もうみんボン

「お友(五)旅とする22)海描いてから

「は幸せ。へた、ギンコンジ描きたい」

時代設定について。〈巴〉の時は孤立

代の毛りで描いたが他の話については、

時代は特定していないと「鏡国し続けて

いろいろあるか、ジュアと明治の間にもうひと

時代ある感じにしていうイメージだろうか。

チーフアシ咲まみちん、

おね、ひろやよいちゃん

各川西のおばあちゃん。

ありがとう。

アフタヌーンKC次

蟲師っ

二〇〇〇年十一月二二十二目第一刷発行

二〇〇一年三月十六日

奮査漆原友紀

発行者「五十嵐隆夫

発行所

所、株式会社講談社

東京都文京区音羽2-12月

郵便番号_ligool:

電話・編集部、東京への3)539513463

印刷所_図書印刷株式会社

製本所「誠和製本株式会社

販売部東京(035395-360x

装って、住吉昭人【フェイク・グラフィックス】

泉栄一郎ラェイク・グラフィックス,

編【集】宮崎孝士(アフタヌーン編集部

〈定価はカバーに表示してあります〉

その第三制発行の

講談社

落丁本-乱丁本は小社雑誌業務部宛にお送りください。

送料小社負担にてお取り替えにたします(徹話(3-5595)-3600)。

なお、この本についてのお問いい合わせはアフタヌーシ編集部宛にお願いいたします。

アフタヌーン1999年3月号に掲載された作品に、描き下ろしを加えて収録しました。

[本書の無断復写(コピー一)は著作権法上での例外を除き、、然じられています。」

◎YUKIURL「SHIBARA2000

編集部では、この作品に対する皆様のご意見・ご感想をお待ちしております。

「装飾」第1巻は、アフタヌーンシーズン地印象1号から第4号、

N.D.C.26.224p.19cm

15日N4-06-314255-8(A)

PrintedinJapan

また、今後「アフタヌ・一シKCJにまとめてほしい小作品がありましたら、編集微までお知らせください。

〒112-8001東京都文京区音羽2-12-2

体験社「アフタヌーンにも梨部アフタヌーンKC像