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Instructions:
ISBN4-253-23044-X
C9979¥533E
佳奈と4940-37
秋田書店
宗価:|本体533円十税
ア84:2532330445
92997900533で
執念の剣鬼と天才剣士
剣の魔物に愛された一人が
斬り合うは定め
殺し合うは宿命、
しかし今はまだ
ともに若い
美しく若い
老いた魔物は虎の眼
鈍く暗く怒りに光る
皿剣が舞
HD
無惨の詩が響
残酷錘惨蒔代劇衝撃の第2巻
ChampionBin
REDCO
原作●南條範夫
漫画●山口貴由
秋田曽店
ChanpionPel.
Q.@noo!Rap.comics.
原作南條範夫
「駿河城御前試合」より
漫画山口責由
Shigurui
REDCC
チャンピオシREDコミックス
熱くなれ少年は!!
誠を震わせる新世代コミックス!!
こいこいて...。
RAYur.Googl
真説_魔獣戦線
鼻..「石川賢と
素晴らしい日間になるとダイナミックプローー
理解士星矢ansoro「原作・中田正美
そわから2016周作・車田正美『..◎●』漫画・岡田芽武
「もりしげ」とミック
降魔伝手天童子「原作・永井豪
ひー、今者と漫画「夏元兆人
JURNKI時間中ですが、
HEAVENイレプン
シグルイ~Shigru-原作:南條範夫週南...
onesul.minker.co.Co.cet.漫画・山口貴由
プラレスラーVAN「原作・牛次郎!!
「A.coman-Touter」の参考に漫画・神矢みのる」
「もりしげ
【麻宮騎亜】
@~@巻||大和田秀樹]
開服ぬいだら〉《..》き
それはそれが不思議なのでニーズの巻、
・2018年11月26日フロンティア全国巻
エイリアンターコンツート〜
[渡辺航]
[哲弘]
「石渡洋司
[富沢ひとし]
エイリアンタ・エレクス・「富沢ひとし」
ちちんぷいッ!
プリンセスチュチュ「原作・
全2巻1週間・東雲水生・
プリンセスチュチュ「チャンピオンPED
アニメ公式ガイドブック
ふふふ!!こ期の章〜
ブリンセスチュチュ「チャンピオンPED
アニメ公式ガイドブックこんな風の音。
へへ!!へ雛の章〜
[岡田和人J
編集部編
ACW
ああ、あれでも出来ればいいですが、
なら判り
えに☆さむ◎巻「しまだわかば」
ラヴラビイズのも
不安の種...ひとりを
編集部編
[松本英]
「中山昌亮!
殷河城東御門
前巻までのあらすじ
覚える年、徳川忠長によって催された銀河、城内にはいつかの価格が入っています。
鬼水の中、ぬんぷにあ城内における真剣御前試合っその第1試
今に臨むのは片腕の剣士・藤木源之助と
盲目数足の剣士・伊良子清女であった。
自分を手に対峙する本人の剣鬼。その過
去には一体何が?
遡ること7年前、濃尾無双と呼ばれた虎、
返ることは、眼流の道場に現れ僕も無条こりは...このたみ良子は、師範代を
務める藤木を破るも、師範・牛股権左衛
初めに敗れ、虎眼流にあ、何も大門する。栄達を夢に
見て、恐るべき天賦の剣オにより実力を上
げてゆく伊良子。一方、藤木は異常なま
での鍛錬を自らに課し、藤外は美雨ままその剣力を極限
ヘと研ぎ澄ましてゆく。へと明き澄まえしてゅく。
1年余。最強の跡日を欲する虎眼流頭首・
岩本虎眼は娘・今回ご来場の朝にどちらかを選んで
お試しとして、二里の朝にニックなどの伊良子と藤木に、別剣派
舟木流の後継者A.ここで、例外の舟木数馬兵馬兄弟の暗
殺を命じた...。
教育で補山準備は100XXAme-
原作南條範夫
漫画山口貴由
shiguru
原作●南像範夫
漫画●山口貴由
秋田書店
...
...
...
...
...
こちらこそ、
REDComins
原作南條範夫
漫画山口貴由
shigurui
チャンビオンレッド掲載
日汐
第六景・鎌鼬かもしたらる第1日、土曜
第七景童唄わらべうな。30
第八景談けだもの
第九景傀儡くぐっ、113
第十景簪かんざし、149
「狂気について」山口貴由178
この作品はフィクションであり、悪し、同体薬にはいっきい地域を
実在の個人・団体等にはいションとあり、っさい関係ありません。
今では聞かまいたお
かけがわりょう
掛川領
掛け小夜卵のお
なかじやまとうげ
中山峠
小夜は。さえぎるんと
いう意味の
「塞」であり
中山は
「境界」を示す
言葉である
沓掛からの登り坂の
途中にある丸石は
悪霊をさえぎり
旅人を守護る
塞の神で
あったが
ある時このあたりで
お石という妊婦が
菊川の里べ働きに
行っての帰り
にわかに腹が痛み出し
苦しんでいたところ
通りがかりの侍が
これを見つけ、
介抱していたが
その時
陣の風と共に
かまいたち
あくりょう
悪霊が
...
呼ばれる
さむらい
この時に
...
それ以来
丸石は女の声で
夜な夜なうめく
ようになったのである
石言遺響異聞
藤木源之助と
伊良子清玄が
夜泣石に黙とうを
捧げているのは
妊婦の霊を
供養するため
ではない
ぬふぅ
舟木道場の
兵馬数馬は
その日も
同時に達した
相手を務めた
男娼の体には
いくつもの
痣が残り
骨を折られた者もいる
誰がそれを
とがめられる
だろう
この双子こそ
宙空の兜を両断する
ほどの業前を持つ
日坂最強の
剣士なのだ
あにじゃ
兄者
そろそろ嫁を貰って
親父殿を安堵させて
やってはいかがかな
己とおまえ二人の
相手をする嫁だ
酒と色に
おぼれた後は
汚れを落とす
意味で
ワハハ
ワハハハ
日坂宿にほど近い
比乃坂神社に
参拝してから
帰宅するのが
常であった
ヤ
なにやつ
何奴!
舟木道場の
数馬兵馬と
知った上でか
立ち会いたくば
あらかじめ
時と場所を
告げておくのが
武士の作法
我らものか
武士に
あらず
中山峠の
鎌鼬なり
舟木兄弟の刀は
波遊兼光と
呼ばれる大業物で
ある
背中合わせの
上段に構えた
双子の姿は
まさしく一心同体
二刀を携えた
金剛カ土の
ようである
兜割り
藤木...
己の方が速い
あ方が...
相討ちでは和るの
相討ちでは...
ふり上げた刀を
勢いよく下ろすだけの
双子の剣法だが
その間合いに入ることは
死を意味していた
早よ来い
日が昇ろうぞ
がんりゅう
虎眼流
憶したか
かまいたち
いや
掛川の
藤木か
虎眼流が
太刀をか
用心せい
で何が
出来るというのだ
その間合から
とお
遠い!
数馬は
父一伝斎の言葉を
思い浮かべた
とお
遠すぎる
兄者..
遠い
かすりも
せぬわ
...
虎眼流に
「流れ」と呼ばれる
特殊な〝握り〟が
ある!
遠間から
放たれた
横なぎの
一閃の最中
源之助の
右手は
っばもい
鐔元の
縁から
柄尻の
頭まで
どこすべ
横滑り
していたの
である
切先は
予想以上に
伸びていた
せー
精妙なる握力の
調節が出来な
ければ
刀は
あらぬ方向へ
飛んで行った
ろう
流れ」は
虎眼流中目録
以上の
秘伝であり
道場稽古で
使用することは
禁じられている
兄兵馬が
討たれた時
弟数馬にも
異変が生じた
虎眼流は
最少の斬撃で
斃す
三寸切り込めば
人は死ぬのだ
伊良子
ゆすげ
藤木
伊良子
両名ともに
仕遂げまして
ございまする
くっ
いくぅ
わらべうた
とーらの
かーこいもの
むーざん
むーざん
キャ
...
ドキドキ
ふふ...
いくんに
か〜し(裏手)
も〜ろたら
いはな、
むーざん
むーざん
まさかくやのいてなずけてくてく
な〜まえ
ばだら
〈袈裟〉
さいた
あ〜かいけ
ぶ〜ぎょしょ〈蕎聾の
か〜みそり
ずんずん
さすがに、
おおだな入店
たずねたら
そして、それでも、
し
あ〜か
まえだれ
さ〜
「らの
かこいもの
「こから
くるはい!
いや...
...
...
...
あわがたけ
...
まっば
松葉
の
...
むーざん
むーざんか
木造家屋の密集
する当時の
宿場町では
最も
恐るべきものは
火災であり
裕福な商家でも
自宅に風呂を
持つことは
許されない
いきおい
湯屋のにぎわいは
大変なもので
いんのう
!
ちなみに、
後輩とは眉額よはずを刺す
脚は脚と交わ
これからこれを知っているよりも今日は新たないと思います。
おはようございません!!!
どうするか
羽生大夫
ふたぇ!!
男湯女湯の
区別ができるのは
まだずっと後のこと
触わらぬ
祟りな
掛川の童唄に
無惨無惨と
うたわれた
濃尾無双の剣客岩本虎眼の囲われ者〈妾〉
濃尾無双の剣客
岩本虎眼の
囲われ者〈妾〉
多いくんである
おまえさまは
命が
いらないのかえ?
湯につこうて
おるだけで
死ぬる者など
むざんむさんの
童唄は
嘘ではありませぬ
わたくしの側に
近寄る殿方は
みな..
奥方様の
お耳に
入れたき儀が
視良子清玄
だんな様のご門弟
こせい!?
どぎゃーちょうらながゃ
研屋町裏長屋
わたくしは
呪われの身
添い遂げようと
誓った人を
二人も
死なせて
しまいました
かくのごとき
忌まわしき
わたくしを
だんな様は
可愛がって
くださる
ホッ
がたさま
奥方様は
〝七丁念仏〟なるものを
ご存じで?
ななちょうねんぶ
七丁念仏!?
げんな
元和三
かけがわじう
掛川城
それなるは
でも
駿河の頼宣公より
賜わりし業物...
あんとうなお
安藤直
名を
〝七丁念仏〟と
申す
御家中の使い手
田宮対馬守長勝が
斬った筈の乞食坊主が
血の一滴もたらさず
念仏を唱えながら
歩みを止めぬ
これを用い
池にて験したところ
刀創が開き
血が噴いたのは
丁ほど先で
あったそうな
いかに虎眼
この儀
真実で
あろうかの?
生き様しにて
斬られた人間が
七丁も歩くのは
不可能である
しかし
っ
士が主君に対し
出来ぬと申し出ることも
また不可能
〜〜〜っ
~~っ
これ
っ
ひ...
やはり
眉つば物で
あったか
七丁念仏
それとも
そこもとの腕が
老いたかの
いわば
妖刀と
申すべきもの
これは
名剣業物に
あらず
かかる差料を
お手元に
置き申さば
いや、そういうことなんだけど...
必ずやいえ
御家に
災いが
そは
まことか
虎眼
殿
そろそろに
ござる
腰のあたりが
じわりと
重くなった
失禁と思ったが
小便の色ではない
これですから、
いつかでは
ちなみに
眼の前の科人が
斬られた際
自分の腹部に
感じた一熱さ」の
真相を知った時
岡部平兵衛の
心臓は停止した
ホォオ
要はかわいちょ
皮一枚
恐怖によっても
人は死ぬのだ
わたくしの
許嫁男は
それでは...
門弟の身ゆえ
これより先は
何とも
だんな様が
殺めたと...
...
それがしの
申し上げたき儀は
つまるところ
奥方様は
ただの女
童唄など
笑止
むーざん
むーざん
第八景、飾りはたもの
掛川宿肴町
伊良子
先生は
おぬしか
藤木を
三重どのの
婿に考えて
おられるご様子
それかしか
虎眼流の跡目...
ひとつ
申しのべておく
もったいのう
ございまする
研屋町の奥方様の
もとへ通うのは
やめにいたせ
はて?
何のことか
尾けたのだ
湯屋の
帰り..
あれは
湯あたりなされた
奥方様をご自宅まで
お送りしただけのこと
その後も足を
運びし理由は
奥方様はいたく
天井裏のねずみに怯えて
おりますゆえ
時折それを
片付けにお伺いして
おりまする
やましいことは
何ひとつ
とぼけまいぞ
伊良子
もしも
おぬしの所業が
先生の耳に
漏れたら...
委細しろち
承知いたしました
奥方様のもとへは
金輪際...
御免
いたします
重を!!
れるの
あの
未通女を
の仰せとあらば
無碍にも
できまい
お引き取り
くださいまし
もう
おいでにならないと
約束した筈
なりませぬ
このようなこと
もしだんな様に
悟られてもしたら
伊良子さま
これは
何のお仕置きに
ございましょう
案ずるな
手荒なまねは
いたさぬ
あ...
伊良子さま
いったい何を
虎眼の跡目
掛川藩武芸師範
知行三百石
それではないのですが、
駿河藩剣術師範
田宮対馬守
八百石
将軍家剣術指南
柳生但馬守
万二千石
己の剣は
食べて
首都の...
逆川に面した
なめくじ長屋と
蔑まれる
貧民集落に
お蓉という
夜鷹がいた
女は
子を孕んだ
後も
十月十日
経っても
腹は膨れる
ばかりで
一向に
生まれてくる
気配かない
生活のために
客をとらねば
ならなかった
常よりも半年おくれて
生まれ出でた赤子は
生まれたその日に
四つ足で這い歩いた
獣の子がそうであるように
五月目には
立ち上がり
四つの時には
十三の子供の耳を
噛みちぎった
九つの時には
定廻り同心の
財布を抜き
十二の時には
泥酔した浪人者と
立会い
盗むより
はるかに
たやすいことを
知った
これを
打ち負かした
入門して
わずか
二年足らずで
夜鷹の子は虎眼流を
己のものとしていた
寛永元年
師・寛
まるで
虎眼流の稽古納めに
行われる
無刀取りの演武は
この年
藤木源之助と
伊良子清玄によって
なされた
この際
曖昧な状態に
あると思われた
虎眼だか...
先生..
お父上...
...
ん...
み
三重どの
た
たね
種え
第九景傀儡
武家にとって
婚礼は
家名を残し
後嗣を生むための
厳粛な儀式であり
恋という概念の
入り込む余地は
ない
相手は
当主の一存で
決まるのだ
お父上
どうせよと
?
た
たね
種え
たね..
おそれながら
三重さま...
先生は
この場にて
三重どのとそれがしに
男女の契りを
結ばれるよう
望まれておられる
ご様子
男女の契り...
お痛ましゅう
ござりまする
武家の娘にとって
貞操は
誇りそのもの
胸の中に輝く
真白き打掛
実の父親が
下がらせて
いただきます
泥足で
踏みにじったのだ
一重どの
大事ない
今日の
お父上は
いつにも増して
お痛ましい
御容体...
皆も
ひとまず
ここを離れるが
身のため:・
権...
う牛股
道をあけよ
お戻り
あそばされ
ますよう
先生は
伊良子清玄を
婿にお選び
なされた
全ては
虎眼流安泰の
ため
幼き頃から
嫌というほど
見てきた
父の仰せとあらば
意志をなくした
傀儡となる高弟たち
藤木...
あの時と
同じ顔...
三重が十の頃
入門したばかりの
藤木源之助に虎眼が
焼け火箸を
握らせたことがある
肉の焼ける臭いが
部屋にたちこめたが
源之助は手を離さず
ゆっくりと灰を
かきませていた
出来ておる
その時と同じ顔を
しているのである
くぐっ
傀儡...
田ぐ
田田っ、
男はみんなに
三重は
産むための
道具
«翌子...できそこない
生まれてくるのは
蛭子
こ〜〜
舌をかんで
お許し
たまわります
よう
今この場にて
事に及べば
三重さまは
命をお断ちに
なりましょう
さすれば
お家が
絶えまする
虎眼流と
三重さまのため
この儀
祝言の後
あらためて
三重は
泣いた
生まれたばかりの
赤児のように
うまか
たあ
伊良子清玄は
傀儡ではない
もっとおぞましい
何かだ
その夜
道場の
煤払いを終えた
源之助が外出して
二刻半
剣士の生命線である
指先の感覚は
すでに失い
今宵はめでたき日に
ござる...
めでたき目にござる...
先生は
お選びなさ
気かつけば
相手の間合の
中にいた
伊良子..
舟木流の刺客
信楽伊右衛門は
居合の名手である
大刀の抜き討ちを
一閃すれば
ちょうど首が飛ぶ
距離に源之助は
たたずんでいた
懐中の温石によって
充分に温められた
右手と
抜き合いとなれば
勝負の行末は
明らかである
凍てついた
右手
貴様では
ないな
貴様の腕では
兵馬数馬は
討てぬ
馬鹿な...
ううんあんっ
速すぎる!
この時
源之助の放った
脇差の一閃は
まさに神速と
呼ぶべきもので
あったが
その速度は
源之助自身も
思いもよらぬものであった
凍えた指が
偶然に生み出した
新手
の掴みこそ
虎眼流奥技
流れ星の
骨子となる
技法である
剣はまだ
藤木源之助を
見放していなかった
第十景、物語をし
がんぇいがんねん
寛水元年師走
みぞか
な
逆川に面した
貧民集落
いや、そうだったのは
へえっ、あっ、はぁぁっ、
「へぇ...
年の瀬の
にぎやかさは
ここにはない
お袋...
いら
しゃんせえ〜
清玄の母
蓉の声は
少女そのもので
ある
いつか死ぬほど
食ってみたいと
言っていた
もちやの
銀鐔
七年前より
蓉は脳梅に
侵されており
ヒグ...
息子と客の
区別も
ままならない
もうじき
三百石の屋敷が
手に入る
ぬかるみ
長屋とは
これ切...
奥今より
せいげん
清玄の身分は
みぶん
士にござる
かけがわしょうか
掛川城下
いわもとここがんじゃじき
岩本虎眼屋敷
武家では元旦に
家族全員で尾蘇酒を
祝うため
妾いくも屋敷にて
虎眼に奉仕していた
わたくしの大切な
良人を二人も
奪った憎い指
いえ
二人だけでは
ない
伊良子
さま..
伊良子さま
までも!
どうやら己は
虎眼流の跡目
となると
いくは
己の母御
じゃれ合うのも
これ切..
三重の婿に
選ばれたらしい
嫌!
いくは
伊良子さまに
とって
ただの女
わたせない!
伊良子さま
だけは...
...
はっ
旦那さま
お目覚めに
ございまするか
いや
夢ん中で
お寒う
ございましょう
すぐに
着替えを
寒うない
ちくりと蚊に
さされたわい
いく
はい
剣客たるもの
その剣が
幾人
どのように
斬ったか
刃紋を
見れば
おおよその
察しはつく
まして
これはわしの
道具:・
儂の眠っておる間
手入れをしている
者の姿が
出来ておる哺
藤木は...
よう
見えよるわ
ぶっす
つまえ
すっす
ですか
いく
これへ
よう見え
よるわ
いくは儂の
道具ゆえ瞞
痛
ううう
三尺七寸の太刀を
神速にて操る
剣客の腕は
無刀であろうと容易に人体を破壊しうる
無刀であろうと
容易に人体を
破壊しうる
良子
れた
SHIGIRU『Yo!2GND
.shigurui
敬一那須信弘
作画協力,細倉,徹
考証協力時野佐一郎
今回は、自分でも同じようにキャンペーンではなかったのですが、新規模機関はお問い合わせいただきます。
原作「駿河城御前試合"初出無明逆流れ_オール試物』
原作『映像は映画『試合初出』無明迷減をオール請求の行け方も
南條銀夫「はんじょう・のおお
1908年・東京生・56年「路台鬼」にて直木賞、82年、「細香日記」にて吉川英治文学賞を
受賞。「月影兵庫シリーズ・「元禄大平記」など著作多数。
山口関西「やまぐち」だからさ」
1966年・東京生・小池-夫剣画村塾に身。代表作「覚悟のススメ!「悟空道」「蛮勇5け」
など。
剣術は理論であるから、尋常の立ち会いであれば自分の技量より上手には敗れ、下手にほ
勝ち、互角には引き分けとなるこのが道理である。しかし剣術を学ぶことによって、そのよう
うな思慮ができるようになる。ことは、武士道においては後れをとったようなものである。
と「葉隠」は戒めている。
「武士道に於いて分別出来れば、はや後ろるなり」
おく
一武士道は死狂ひなり。一人の殺害を数十人して仕かぬるもの」
「狂気について」、山口貴田
戦う前に思考の中で損得の計算をして、行動を未遂に終わらせてしまう者は、武士ではな
く卑怯者である。
武士道とは死狂いである。そのような状態にある一人を仕留めるのに、数十人がかりでも
できかねる場合がある。と「葉隠」に記されている。
ある。
正気にては大業ならず、
武士道においては、相手が上手であろうと、多勢であるうと向かってゆかねばならぬ場合
が殆どであり、そのような困難に勝利して見せることが、すなわち役に立つということで
どうにもできない傷を負った者が、獅子の群れに向かってゆかねばならぬ時
...
凡庸の者が、才能ある者と競い合うことを決意した時
薬院」の「節がまぶしく輝いて見える筈だ。
死狂いこそ命の最後の拠り所となるものである。
死狂いとなって事に臨むものだけが、勝負の行末が明らかな戦いを、予測不能の領域にま
で押し上げることができる。
*楽園(はがくれ):!8世紀初頭、山本常朝らによって著された書物
二六一八年二元和四年
一六一六年一元和二年一家康没
年諧
国千代、元服して忠長おこ名乗り甲斐一国を加封される
二六一七年一元和三年一二代将軍秀忠の次子・国子代、信州小諸城十万石を賜る
欧船の米航を平戸・長崎に制限
武家諸法度制定
一方○五年一慶長十年徳川秀忠、第二代将軍となる
一方、二年一度長十七年一宮本武蔵主佐々木小次郎、舟島にて決闘
一六一五年一元和元年一大坂夏の陣で豊臣氏滅ぶ
一方の三年一度長八年一徳川家庭、征夷大将軍となり江戸幕母を開く
二大○○年一慶長五年一関が原の戦い
一方○一年一度長六年一柳生佃馬球宗矩、将軍家剣術指南役となる
関が原の戦い
岩本虎眼、掛川城主・松平隠岐守定勝の面前にて
村人六名の生き様しをおこなう
岩本虎眼、安藤直次の前で、「もーな仏」の様しをおこなう
一方三七年一覚永十四年島原の乱おこる
二大三年一覚永十年一忠長自刃
一六三二年一覚永九年
一六三一年一寛永八年
二六二九年一覚永六年
一六二三年一元和九年
一方、三年一元和人年一度
元和八年
島原の乱おこる
忠長自刃
うむ!!
忠長、駿府から上野に移される
・一忠長、城中にてて真剣御前試合を催す
柳生士兵衛、将軍・家光の勘気を受ける
「忠長、ニキー蔵、従工位、総計五十五万石、駿河大納言となる
一六二六年一覚永三年
小夜中山鎌殿事件
一六二四年一覚永元年
一方二五年一畳永二年一忠長、さらに駿河・遠江両国を加えられ、駿府城城主となる
伊良子清玄、虎眼流に入門
キリスト教徒五十五名が長崎立山で処刑
八月忠長、浅間山に入り猿狩りをおこなう
十二月点長、旗本・小浜氏部あ輔忠医の次男・七之町の首を突然打ち落とす。
掛川二万六千石城主・朝倉筑後守宜正、忠長の付家老となる
秀忠、将軍職を退いて大御所となり、
徳川家光が第三代将軍となる〈〜一六五一年没まで〉
妻がはじまる
次巻に
さらに、
うなる俺をいあなたは浴び
ソン!!第3巻
きというイ
鮮血が
垂麗に飛び散る!
蒙断の策酷時代劇""
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原作/南條鈍夫
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それが、
華麗に!?
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聖闘士星大EPISODE.商作/車用に
原作/車田正美
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無限の小ささに入れた少年が一生では
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二柳生暗殺帖ー
原作ノ車田正美星南ノ由引
原作/早田止実漫画/由利八聡
お目にかけます!
ステパニアップ
ライビナッス
驚きと
手天童も
降魔伝
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そんな魔術...教師バイガレンス..ゼロバイオレンジャン!!
原作ノ永井豪司王
漫画ノ夏元雅人
新基軸
メディカル
アクション!!
そういうことは
えに☆さむ
・不安の種
・ラヴラビイズ
プラレスラ...
・HEAVEN
イレブ・
吉富昭仁
Champion
REDComics
チャンピオンロー
コミックス
2004年-7月25日初版発行
者著
発行者
発行所
南條箪南條
「未来のNonTo.Nationdamo2011
箪巳
夫
(作)
山口貴由個
『akayuiki-Yahingeechi』と
裁田貞美
101東京都千代田区飯田橋2丁目10番8号
株式会社・秋田書店
ああーいいですね。電話、東京のスタジュースの一番大
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ネット2018年の東京30人(35年4月28日)24日)また、
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(禁/無断転載・放送・上映・上演・複写
Printedion.japan
ISBN4-253-23044-X
...
...
南條範夫
羅
徳間文庫
無明逆流れ
まで
ある
ん...ただなが
するがだいなごん
すべ
この駿府御前試合は、そのまままの形で世に流伝されることを禁正された。理由の一は、云う
迄もなく、忠長が反逆の意図を疑われて領土を没収され、目殺の名の下に事実上切腹を仲付け
すんぶ
世に云う寛永御前試合なるものが、いつ頃から、何びとによって、如何なる経路を経て伝承
きれるようになったものかは不明であるが、それが史実にあらざることは明白である。
徳川実紀によれば、試合当日と云われる寛永十一年九月二十一日には、三代将軍家光は日光
参詣中で、江戸に在城しない。将軍不在中に、吹上上覧所に於てそこのような試合の行われるべ
き筈はないのである。
だが、この上覧試合なるものが、「凡て全く講談師の張扇から生み出された虚構にすぎないか
と云えば、必ずしもそうではない。多くのこのような場合におけると同じように、この試合に
ついても粉本たるべき事実は存在した。
寛永六年九月二十四日、駿河大納言徳川忠長の面前で行われた駿府城内の大試合こそこれで
はりせん
おい
アーチャーの「立派」を
合の始終を聞きとると、眉をひそめて、
あの
たお
試合を、反対を押し切りって敢行せしめたもののとみるべきであろう。
ことごと
この試合中、城内南広場に敷きつめられた自砂は血の海と化し、死臭あたりに漂って、見物
の侍の中にも、呻き声をあげて列を退き、ひそかに嘔吐するものがあった。だが、忠長は、蒼
白の額に、青く静脈を浮上らせたまま、平然として終りまで見届けたと云う。
寛永十年十月、忠長が甲府に移された後、駿府城受取りに来た上使青山大膳幸成は、この試
試合の経過をみると、十一組の中、八組迄は、一方が対手を殺さしており、あとの三組に於て
は、両方の剣士が共に整れている。寛永御前試合なるものが、同じく十一組の試合を挙げ、その
の中勝敗のあったものを八組、相打ちを三組としているのは、正にここれに倣ったものに違いな
あいて
カイ
られるに至ったからであり、他の一つは、この試合自体、空前絶後の残忍凄惨な真剣勝負であ
った為である。
泰平の時代にも真剣を以て試合した例は少くない。しかし、大国の領主が公けに開いた御前
試合に於て、十一番の勝負を悉く、殊更に真剣を以てせしめたと云う例は全く他にない。
忠長が、多少精神に異常を来していたことを認めるとしても、秀忠から付属せしめられてい
た鳥居土佐守以下の宿将老臣が、この暴挙を諫止しなかったのは、意外である。恐らく、忠長
の行動が既に部下の何人の制御もきかぬほど常軌を逸するに至っていた事と、殺戮傷害を家常
茶飯事とした戦国の時代を、ほど遠からぬ過去に持っていたと会う事情とが、この凄惨な真剣
ひーっ
る。
る。
おじきげんのすけ
一方西側に現れた藤木源之助は、年二十七八歳でもあろうか。清玄の神経質な俊敏な相貌に
比べれば、やや重くるしい感じではあるが、より均衡のとれた秀抜な顔貌である。だが、彼も
源之助にも、二十歳を一つ一一つ越したかと思われる清楚な美女が、ついてきていた。先の年
比べれば、やや重くるしい感じではあが、つけ根から無かった。
瑠の艶やかさは城内の若侍たちの胸に、悩まし気な情感をほのかに湧き立たせたが、この美女
この気品にみちた姿こそは、まごとに眼をみはらせるものがあった。
「せいげんよわ」
先ずは天魔の所行じゃ」
と呟き、関係書類の一切を焼却せしめた。
従って、この試合に関する直接の公式記録は全く残存しない。ただ、当日、試合の席上に居
合せた者のひそかに書き残し、たものが転々して、読み伝えられ、やがてかの寛永御前試合とし
て、血風凄絶の史実とは全く別に、専ら大衆の耳を悦ばしめる興味主眼の講談と化したのであ
試合は、当日、日の刻(午前十時〉から始まったが、その最初の対戦者が、東西の幕を排し
て試合場に現れた時から、異常な緊張が席上をつつんだ。
東側に現れた伊良子清玄は、齢三十余り、稀有の美貌であるにも拘らず、両眼盲い右足を少
しくひきずっていた。幕内の試合場には、もとより入ってここなかったものの、この盲目跛足
の美剣士に城内の試合場の幕外までつき添ってきたのは、同じこ年配とみえる凄艶な年増女であ
そういうことはう
かかっ
9.無明逆流れ
おいしよう
今、正面に向って恭しく一礼した伊良子、藤木両名が向き合うって剣を抜いた時、列座の人
は果して、一斉に、
あッ」
と、驚愕の叫びを発した。
藤木源之助が、抜き放った一刀を、大上段に構えたのに対し、伊良子清玄は、盲いた両眼を
二人の不具者と二人への美女。これだけでも列座の侍たちの好奇心を湧き立たせるのに充分で
あったが、どこからともなく、聞かれた噂が、口から口へと伝えたところによれば、この二人
の剣士は、かつて同門の相第子であり、伊良子清玄に付添ってきた年増は、二人の師岩本虎眼
の愛妾、藤木源之助と共にきた娘は、虎眼の一人娘で伊良子清玄の愛人であると云うのであ
る。
この奇妙な縁に結び合おされた四人が、二人すつ東西に別れ、その中の男二人が、互いに不
具の身を以て、真剣を交えようとしているのである
列座の者の、より多くの好奇心と興味とは、伊良子の方にあった。彼が盲目であったからば
かりではない。藤木は今日始めて彼らの前に姿をみせた男であるが、伊良子は、半蔵程前から
おかくらぼくさい、やしき
当藩の武芸師範岡倉木斎の賊に滞在し、その奇怪な「無明避流れ」と称する剣法について、無
数の噂が流れていたからである。
この秘剣をみたものは、主君忠長以下数名の限られたものに過ぎないが、正に言語に絶する
妙技と伝えられていた。何よりも先ずその構えが奇誓、人の意表に出るものと聞かされていた。
うやうや
10
こかー
しい美しさに惹かれて、見込みの少い剣道修業にやってきていたものも少からずあったことは
間違いない。
だが三重の婿たるべきものは、衆目のみるところ、伊良子>清玄か、藤木源之助か、何れか
人であろうと思われていた。岩本門下の一虎双竜と云われたのは、師範代をつとめる牛股権左
高岡と、伊良子、藤太の両者であろうが、牛股は既に医師三十の半ばに達して妻帯しており、各説の
あまわ
みえ
伊良子、藤木両名の師岩本虎眼は、慶長末から寛永の初めにかけて、濃尾一帯に聞えた無
双の達人であった。その初め、名古屋城下に現れた時は、さながら山男の如く、蓬髪垢面、片
手にひっ提げたニ尺三寸の薪雑棒で、無造作に各道場を破って城下を品然たらしめたと伝えら
ああ
れているが、これは永禄の頃梅津某を薪雑櫟で叩き伏せた富田勢源の事跡と混同された伝説
に過ぎないらしい。お
ともあれ、その剣技が絶妙であるったことは周く知られており、晩年は門弟千人を越えていた。
っぽみ
尤も、この数多くの門弟の中には、虎眼の一粒種、三重の、蕾のほころび始めたような初々
...
敵手に据えながら、同じく抜き放った一刀を、右足の指の間に、杖の如くつき立てたまま、凝
然と佇立したからである。
それは凡そ一切の流派に、聞いたごとも見たこともない奇怪な構えであった。
そういえば、
る。
た。
「1年目の世話を
分になってくる。家中の娘御、女房衆は勿論、城下の町家の女どもの間でも彼女は大変な人気
もちろん
ああー
怪奇の偉丈夫である。これに反して、伊良子、藤木は何れも二十歳代で、独身である。
二人の力量は殆ど互角であったが、剣の技法には各々特色があって、伊良子は俊敏軽捷
藤木は荘重雄健である。師の虎眼は、何れかと云えば、藤木の技風をより多く愛したが、娘は
重は、藤木の端麗な容貌よりも、伊良子の独特な悪魔的な美貌資気をひかれているらしくみえ
「でも、跡をおとらせになるのでしたら、やはり、本当に旦那機のお目がねにかなった方がよ
いと思われます。―それに、お美しいと云っても、伊良子さまは、妙に怖ろしいような、な
子の心を不安にさすようなとこころがありますし、藤木さまの方が、私なぞは、ずんと天人じゃ
かに頼もしいように思われますが」
「うむ、わしもそう思うが、やはり若い娘には伊良子の方がいいらしいな、大体、きゃつの眼
村は奇妙に悩ましいところがある。男のわしでさえ、時々、あいつにみつめられるとヘルな気
たん
「藤木の方が剣はまともだが、三重はどうやら伊良子に夢中らしいから、やはり、伊良子の方
に決めるかな」
虎眼は、盃を乾しながらら、妾のいくに云った。五十に近い年であり、ながら、強靱な体軀と
絶倫の精力に恵まれた虎眼は、妻の死後、何人も姿をとりかえたが、最近手に入れた松阪の商
家の娘いくは殊の他、気に入ったらしく、初めから家に置いて朝夕の世話をさせていたのであ
えーんだ。女子
..
この手入れをしていると静かにに部屋に入ってきたものがある。
「あっ、伊良子さま」
せんげん
数日後、虎眼が、門弟数名を連れて、浅間神社へ出かけた後、いくが、離れで、虎眼の衣類
ないか」
あれ、そんなことはありません」
いくは慌てて打消して、森に酒をみたしたが、その指先が微かに震えていた。
虎眼は、いくのその白く細い指先をじっと眺めていたが、急にキラリと鋭いものがその瞳の
中に浮んだ。その視線は、いくの艶やかな首筋から肩から腰へと流れていったが、ふと、何か
新しいものをみつけたようにパパッと輝き、やがて、底気味の悪い微笑のようなものが口辺に浮
かす
「まあ、私はもう殿方の眼つきに迷うほど浮ついた齢ではございませぬ。それより、旦那さま
のお眼こそ、じっと睨まれると身動きが出来ぬと、門弟方がいつも云っておられます」
「わしのは、名前通り虎眼、鬼眼じゃ。見る奴は怖ろしくて金縛りになるのだが、伊良子のは
悩ましくなって、気が遠くなってくるそうな」
「そのような方ならなおのこと、お嬢さまのお婿さまとしては、よろしからぬと存じますが」
「はは、妙だな、お前は、ひどくく伊良子びいきだったのが、此頃はすっかり反対になったでは
...
らしいな、じっとみつめられると、骨がとけそうだと申しておるそうな、はは、権左が先日云
うとった。きゃつは少しは羨まし気ではあったがな。お前なぞも、そんな気がするか」
ひとる
13.無明逆流れ
ますし
カナ
ひさ
いくは、抑えた低い声でそう云ったが、眼にも、
恨みと、哀しみと「嫉妬との入れ湿った声で云う。
清玄もそれは予期していたところころである。未だ番ながら、朧容濃尾第一と云われる三重と
師匠の後嗣の地位とは、もとより欲するところである。ただ、殆ど物心つくときから、まとい
ついてきた女の匂いは、一日もそれなら何では済まされなくなっていたのだ。
せいえ~
師の女ー悪いと知りながら、凄艶な年増女が思いがけなくみせた、純真とも云うべきひた
むきな熱情に、ずるずるとひきこまれていたのである。
「清玄さま、どうなされます」
「うむ、一応お受けするより他はない」
しばらくして、二人が、もつれ合ったからだを引離すと、いくは、乱れた裾を気にしながら
紅潮した頬に、思い込んだ色を浮べて、
「伊良子さま、旦那さまは、いよいよ、あなたを三重どののお婿さまになさるらしゅうござい
くい入るように男の顔をみつめる。
「なかなか、よいおりがなくて」
清玄は、つとよりそっていくの膝に己れの膝を触れるように坐ると、両肩を抱いて、瞳を向け
せた。自分の瞳の妖しい魅力は充分に知っている。いくが、その瞳に射すくめられたように眼
を閉じて、顔を上に向けると、その首に手を回して、自分の顔にぴったりひきよせた。
すわくっ
頬にも、隠し切れない悦びの色を漲らせ
いくは、息を荒くして叫んだ。
天下にあるまい」
虎眼の「流れ星」は、対手の首を狙って、流星の走る如く横に薙ぎ払う一刀必殺の魔剣として
て怖れられている。剣の道を知るるだけに、清玄はいくの不敵な申出を、言下に却けた。
「ではー私をつれて逃げて下さいませ」
いくが必死の面持でとりすがった時、清玄は、障子を隔てて、何か殺気に似たものをびりり
と感じた。パッと飛び離れ、縁に出て、
誰か!」
と眼を放ったが、思わずどきりと胸の鼓動を止め、背に冷たい汗を滲ませた。庭の、深い木
立ちの中に、ギラギラと光る。二つの眼が、憤怒に燃えて鬼火のように輝いていたのである。
その翌日、虎眼は、三重、いくを傍にして、年股、伊良子、藤木の三人を呼び寄せた。
オレ
「いや、だめだ、私の腕ではとてもも斬れぬ。私ばかりではない。師匠の流れ星に敵するものは、
「いやでございます。妾はいやでございます、あなたを、他の女子にとられるのはいやでござ
います」
「と云うて、こなたは師匠の思いもの。もし、このような事が知れたら、私は師匠に斬られる
だろう」
「斬られるなぞーーそれより斬っておしまいなさいませ、旦那様は何と云ってもお年、あなた
はお若い」
15.無明逆流れ
防ぎ得るものは、師虎眼の他になかった。
清玄は簡単に敗れた
ばか
やま
ひえ~
らんらんと、己れの顔を射すくめている虎眼の視線の異常な光に、威圧され、うしろめたい
ぎは!
気怯れに日頃の俊敏な気魂を失っていた為である。無念無想、純一無雑の権左衛門の剣は、苦
もなく伊良子の右小手を、切り落さん許り手痛く打った
次の、全身で対手を押しまくる。必死にこらええ。敵の反抗を強力に利用してパッと飛びする。
瞬間、その愛剣が、過ごす対手の右手をしたたかに打ちのゆずのぐある、この切返しの地域を
「近頃、道場の有様とんとだらけ切っておる。上に立つお主らが気力たるんでおるからじゃ、
久しぶりにわしの前で、カー杯試合ってみせい」
いつになく厳しい声である。ただそれだけの目的ならば、むしろ、道場で、門弟一同の前で
試合をさせればよい筈、わざわざ三人だけ、離れの庭前に呼びよせての命令には、何か底にあ
るに違いない。
牛股権左衛門は、「流れ星」の秘伝授の前提と予感した。藤木源之助は、三重どのの、婿
えらびと判断した。そして伊良予清玄は、特に自分に向けられた師の、憎悪の眼に、具体的に
如何なるものかは分らぬながら、きびしい報復の企図を予感したのである
試合は虎眼の命令によって・牛股と伊良子の間に行われた
牛股の得意は、自ら会得した「飛飛切返し」である。打ち合うこと数合、隙をみて、その生
の如き巨大なからだのどこにそれだけの俊速さがひそむかと思われる早業で対手の手許に飛び
する
虎眼が、狂暴な怒罵を浴びせた。
「えっ!」
だっ、伊良子、わしがその腐った生徒達同さ直也してやろう、剣をとれ。基海!真剣だ!」
いつせ!
っしゃ
だら
「見苦しいぞ、伊良子、何のさまだ」
虎眼が罵った。一礼して引退ろうとするのを、
「まて、伊良子、藤木とやれ」
勝者生股が、藤木との試合を予想して待っているのを眼顔でしりぞかせると、虎眼は、源之
助を指した。
権左衛門に打たれた右手は、まだ半ばしびれ痛んでいる。清玄は、ためらいをみせたが、師
この眼光は、益々激しく、荒々しい。清玄は観念した。
源之助は師の「流れ星」と兄弟子生股の切返しとを、最も忠実に習った正統派の剣技である
が、何れも未だ師にも、兄弟子にも及ばないこと勿論である。だが、それは虎眼や牛股に比べ
ての事であって、通常の対手に対しては、勿論、怖るべき妙手たるを失わない。その上、三重
の見ていることが、彼の意気を下倍せしめていた。
立上ると同時にひらりと清玄の胸許に飛び入り「さっと引いて小手を切り返すと見るや、つ
ついて間髪を容れず横薙ぎの二閃。自由を喪っていた右手を更にに重ねて打たれた清玄の木刀は
まっただなか
真只中を鋭く横に切り払われて一聞も左に飛んだ。
「未熟者め、ろくろく修練もせず、女子どもに淫がましい眼ばかり使いおるから、その態なの
17.500円前まで
それから三年、
「岩本家の跡とりはまだ決まらなかった
真剣と聞いて、三重も、いくも、さっと顔色を変えた。牛股も藤木も、さすがに驚いて
「お師匠さま、それは」
と止めたが、虎眼は一喝した。
黙れ。この木熟者、真剣で叩き直してでもやらねば、正気はつくまい。ふふ、皆、心配はい
らぬ。伊良子のなまくら腕では、わしのからだにかすり傷一つ負わせ得ぬ。わしの方は、伊良
子を叩き斬るのは容易だが、
いか、命だけは助けてやるぞ」
覚悟はしていたとは云え、余りのなりゆきに清玄がただ花妖としている時、縁の上から、い
くが半ば狂乱したような上ずった声で叫んだ。
「伊良子さま、お立合いなされませ、斬る、断るのです、斬らねば、あなたが斬られます」
夢遊病者のように剣を抜いたお清玄が、己れの眼の前一杯に巨獣のように覆い被さってくる虎
眼の鬼眼を感じた瞬間、その真白中を貫いその熱した白金の刃が横一文字に走った。
清玄は、悲鳴を挙げて仰向けに倒れた。虎眼の「流れ星」が、その両眼を切り裂いたのであ
ほうぜん
ーはは、怖いか、命はとらぬ、約束してやろう、命だけは、よ
虎眼が改めて、藤木源之助を三重の婿と云い渡した時、三重がごこれを拒んだからである。あ
の日の事件を、顔色蒼白になって、小きざみにからだを震わせながらも、始終一言も云わずに
見つめていたこの十七歳の少女は、意外にもきっぱりと日和の意思を表明した。
「私は自分の心の中で、伊良子さまを天ときめておりました。伊良子さまが、私を他の女子に
見かえられたことは無念でございますが、あの方の生きている限り、他に夫はもちませぬ、ど
なたにてもあれ、あの方を殺して下きった方の妻になりましょう」
他の女とはいくである。同眼を切り裂かれて昏倒した清玄の傍にはだしで飛び下り、すがり
ついて泣きくずれながら、虎眼に向って、大胆にも
そういえば、
「人でなし」
と叩きつけると、運び去られる伊良子につき添って、邸を出たきりの女であった。
何と叱っても、なだめでも、頑として聞き入れない三重に手をやいて、ともかくも伊良子清
女の様子を尋ねさせると、あの数日後、両眼を白布で覆い、いくに手を見かれて、いずこへと
もなく立去ったと知れた。
それきり、行方は知れず、岩本の道場には何か不吉な重苦しい空気が、深くたちこめるように
な日がつづいた。
そして、三年目の或る夏の昏れ方
通い内弟子たちもすっかり引場はあ、夕方の庭掃きも済んで、水のうたれた岩本道場の玄関に、
繋然と現れた二人の男女があった。
19.無明逆流れ
ちようしよう
居残っていた二三の内弟子の一人が、その姿をみつけると、
「あっ、伊良子どの」
と叫んだ。
蒼白の、彫の深い、秀麗な細面に、黒く筋をひいて、両眼はヒタと閉じられている。つき添
たいくも、邸にいた頃よりは痩せて、凄艶の趣はかえって加わったように見える。
清玄は、驚く門弟に向って、冷たく沈んだ声で云った。
伊良予清玄、当選場の主、宮本虎眼どのに立合いを申入れる。お取次さ頂きたい」
うげぜんぜん
新しい姿と共に、夕餉の膳につこうとしていた虎眼は、伊良子と聞くと、サッと立上ったが
思い直して、にやりと笑った。
「伊良子に云え、虎眼は未熟者とは立合わぬ、強いてとあれば、明日でも参って権左衛門なり、
源之助なりに、一太刀合せて貰え、とな」
虎眼の返事を聞くと、清玄は、ふふと嘲笑を洩らし、人が変えったように、たけだけしい色
になって、道場の奥迄聞える大きな声で、叫んだのである。
「伊良子はもはや虎眼の弟子ではない。天下浪々の一剣客として岩本虎眼に真剣試合を申入れ
るのだ。虎眼、臆したか、見苦しいぞ」
虎眼は愛刀をひっさげて、縁に躍り出た。
「庭先へ回せ、ぶった斬って呉れる!」
冷然と薄ら笑いを浮べた清亥と、憎悪の瞳を突き刺すように向けているいくとをみた虎眼の
むなっ
カ
え
頭に、情怒が猛然と湧き上った。庭へ降り立ち、剣の鞘を払う。
伊良子、今日は命も許さぬぞ、構えろ」
と云い放った途端、虎眼は、ひやりとするものを感じ、我と我眼を疑ったのである。
清玄は既に構えていたのである。刃の方を対手に向けた剣を、大地にぐっさりとつき立てた。
その形は、ただみれば、盲人が杖をついているかの如くに見えてたが、殺気刀身に満ちて、寸毫
微塵の隙もないのだ。
清玄の剣技は、端から端まで知悉しているつもりで、またそれ故にこそ、頭から呑んでかか
っていた虎眼は、この不可思議な、しかも怖るべき殺気の注る構えに、茫然と息をのんだ。
二人が、対峙したまま、永い時間が過ぎたように思われた。或は、極めて短い時間であった
かも知れない。
盲いた清玄には、あの嘗ての恐るべき虎眼の鬼眼の呪縛はなかった。彼はただ冷然と、心を
空しくして、機会を待っている。
もはや明かに昔日の清玄ではない。最後の手は「流れ星」あるのみ、ーー虎眼は己れの生涯
に初めて現れた強敵に対して、そう考えた。虎眼が同じ人間に対して「真剣流れ星」を二度まで
で用いようとするのは、これが初めてである。今迄の凡ての敵は、只一回の「流れ星」によって
て斃していたからである。
「こやつ、あの時、一息いに殺しておけばよかった。
死よりも惨酷な復讐のつもりで、無双の魅力をもつ両眼を切りきいたことを、虎眼は、骨
じゅぼく
ほとぼー
......
切りかける気力もなく、
たッし
あご
切りかける気力もなく、懐然としている内弟子たちを尻目に、伊良子清玄は、いくに導かれ
かつて破れたことのない「流れ星」の秘剣が、横なぐりに伊良子の生首を狙って走った瞬間、
地上に突き立っていた清玄の剣が、白い火花の如く光り、弧。を描いて垂直にはね上ると、虎眼
は、のけぎまに倒れた。顎から脳天にかけて、下から上に、見事に切り裂かれたのである。
「覚悟!」
と叫んで、走りかかった三重は、鞘のこじりでつき倒さそれ、匕首をはねとばされた。
「三重どのか、美しゅうなられたことであろう、この眼がみえぬのが残念だ。だが、そなたで
は、何ともならぬ。牛股にでも藤木にでも伝えて下され、師匠この仇がうちたければいつでも来
いと。抽者はしばらく落栄寺裏におる」
そう云って、いとおし気に三重の方に向けた清玄の顔は、三年の恨みを果した満足に妖しい
迄に冴え、夕やみの中にこの世のものとは思われぬほど、美しくく、また悩ましく、幻のように
浮いてみえた。
あいくよ
髄まで後悔したのである。が、これ以上の猶余はならない。迫り来る夕やみは盲いた清玄には
何の不便もないが、毛境に近い虎眼にとっては著しい不利である。
「己れの眼前にあるものは、ただ茫漠たる灰色の世界のみである。陽の光の下では、そこに無
数の明るい火花が戯れ、夜の闇の中にあっては、黒一色のもやが濃く群れているのみ、形ある
世の相、人の影は、全く映らない。
この薄灰色の世界を相手に清玄は必勝必殺の剣を練った。
横一文字に切り裂く「流れ星」に対抗する為に清玄の案出またものは、下から上に切り上げ
ふっきゅう
そ、命にかけても一度は破ってみたいと云う執念が、清玄の魂に夢魔の如くとりついた。
しっ
両眼盲いた今は、かつてのような女人に対する惑いもない。明け昏れひたすら剣一筋に工夫
をこらした。
にはないと、賢くも直感したいくの狙いは正しかった
残念な師の処置に対する復仇という念よりも、今迄は絶対に破れぬと諦めていた「流れ星」
ーそれを、いくは虎眼の道場で知らず知らすの中に、
て道場を出た。
「あなた、おめでとうございます」
いくの頬に涙が流れていた。
「うむ、そなたにも苦労をかけた」
清玄は、いくの、興奮にまだ震えている手をしっかり握りしめて、答えた。
両眼を失って、もはや剣の道もこれまでと思い諦めた清玄を、必死の女の執念で、奮いたた
せたのはいくである。剣の途の激しさ、!
身に沁みて知っていた。盲目となった愛しい男の生命力を燃えてつづけさせるのは、剣の途以外
23.無明逆流れ
え「逆流れ」の秘法である。大地につき立てた刃の、土を蹴る。力にのって、垂直に切り上げる
一条の剣光は、横ざまに切る「流れ星」よりも、より多く殺傷の可能性をもつ。
が、問題は、その閃く瞬間の剣光が、対手のからだを捕えることことだ。盲目の身に、どうして
それが可能であるか
清玄は、いくに命じて、凡ゆるものを、自分に向って投げさせ、それを「逆流れ」で切りさ
く練習を、飽くことなくつづけた。
遂に、何ものにてもあれ、「逆流れ」の剣の走る軌道に、それが入った瞬間、それは下から
上に縦に切り上げられるようになったのである。最初は、衣類、いくくり枕、茶碗、基石、笄
そしてしまいには、いくが発出と投げる豆つぶできえ、清玄の正面四尺以内に入った瞬間、真
二つに割られた。
そして或る日、いくが、幾つかのものを投げ、その悪くが切り落ちれたのに満足して、
休みした時、清玄の剣が、サッと垂直に空に向けて立った。
「あッ、何をお切りになったのです」
いくが不審に思って尋ねると、清玄は
何か分らぬが、逆流れの道に入ったものがあるので、無意識に剣がはね上ったのだ」
と答えた。いくが、仔細に地面を調べると、小さな蚊が一匹、胴中を見事に断ち切られて落
ちている。
「そうか、蚊か」
ことっこと
まくらちやわ
清玄は、殆ど手応えのないほど小さくうすい蚊の下切れを指先にのせ、にっこり笑った。
翌日二人は旅装をととのえ、三年ぶりで名古屋城下に向ったのである。
虎眼の惨死を報らされて、急遽かけつけた牛股と藤木とは、顔面を切り裂かれた師の死体
を我と我眼で見、三重から清玄の不可解な剣さばきを聞きとる。と、二人眼を合せて云い知れぬ
鬼気を感じた。
同時に、二人とも、云い合せたように、伊良子を斬らねばと、心に固く決したのである。如
何なる天魔の修業をしたにせよ、師の、流れ星」が、まともに破れようとは思われない。正に
ケガ敗けとしか信ドしられないのだ。
三年前の清玄の腕を丸るだけに、自分たちが死力を尽して闘ったなら、ば、むざむざ敗れよう
とも思われぬ、その奇怪な剣技、岩本道場の面目にかけて破ってくれよう。
二人は即座に、師の為に報復することを誓った。共々清玄を襲おうと云う同門の人々をこん
は固く止めた。
「ならぬ、一人の対手に大勢押ししよせるは岩本門下の恥辱だ。それに、対手の名指したのは
我ら二人なのだ」
そしてその翌朝、二人は、落栄寺裏に清亥を尋ね当てたのである
「来たか」
清玄は、うすら笑いを浮べて、二人の前に現れた。静かに支度し、庭に降り立って剣を抜い
た。縁の上ではいくが、もう昨日とは打ってかわって、愛する男の必勝を信じ切ってか、やや
25.無明逆流れ
冷笑するような色さえみせている。
まず
法の裏をかく唯一の術、ーーと信じたのである。
師の「流れ星」に新しい手を加ええ、全身を対手の左肩にぷつけろ如く飛びこみぎまに横薙ぎ
に払うのだ。剣気動いたとみえた時には、既に全身が斜右に飛んでいるーとすれば、清玄の
逆突上げは空を打つ他はない筈である
ーーが、これは、惜しむべし、「逆流れ」の怖るべき速度を、充分に計算に入れてなかった。
源之助のからだが斜に飛び、横薙ぎの一閃、清玄の胴を払ったと見えた時、源之助の左腕が根
元から空に飛び、源之助は剣を空ぎまにあげたまま、きりっと一回転して倒れたのである。
入れかわって、立ち向った生股権左衛門と伊良子清玄の勝負を、源之助は、斬り落された腕
の痛みに、殆ど失神しかけながらら、見届けた。「飛猿横流れ」の奥儀さえ遂に脱れ得なかった。
伊良子の剣法の真髄を、我が眼でそしかと見定めようと云う武芸著者の悲願が、昏倒しかかる彼の
全身を辛うじて支えていた。
権左衛門と清玄の試合も、凄壮を極めた。恐らく両者とも各々の一生に未だかってない危
「藤木、来い、お主から先に片付けてやろう」
剣の刃先を相手にむけ、大地をで垂直に突立てた。三重の話をもとに、ゆうべ一夜、源之助は
工夫をこらしていたものの、改めてこの奇怪な構えに直面すると、さすがに止め難い恐怖の念
下がきざしたが、直ちに応じた得意の青眼ーこの数年来ひそかに自得した「飛猿機流れ」の秘
術を、思うさま試みてくれようと心に決めた。これこそ、一二重に聞いた清玄の垂直切上げの刀
26
「伊良子、来い」
きよかん
縁の上のいくの口から小さい叫びが洩れた。剣は、手答えのないやわ土に突きささったので
ある。その刹那、権左衛門は、巨巌をぶつけるような勢いで、清玄の胸先におのれをぶち当て
また。「逆流れ」は、弾き上げる王の抵抗を欠いた為、わずかに権左衛門の胸先の衣をさき、そ
の顎の先を傷つけただけであった。
立て直した清玄の剣と、ぴったりついた権左衛門の剣とが、鍔元でがっきと組合わされてい
る。切返しを独特の秘技とする権左衛門にとって、絶対有利の体勢である。
意識朦朧としかけていた源子こ動も、顔色を変じたいくも、清玄が斬られる!と感じた。
「が、権左衛門が、きっと一足ひくとみえたその寸秒の前、伊良子のからだが先に、パッと
右に飛んだ。
っぽもと
声に応じて、白刃を下げたまま、牛股の方へ近づいた清玄の表情に、ちらっと混乱の気配が
動いたのをみると、権左衛門は、すかさず、
「ゆくぞ」
と、怒鳴った。清玄はビタリと止まり、剣を地に突き立てた。
「あッ」
機を覚えながら闘ったに違いない。
源之助と清玄の勝負を見極めていた間に権左衛門の脳裏に電光の如く閃いたものがあった。
彼は素早く四辺を見回し、たたっと三四間南の方(下ると、大声で呼びかけたのである。
...
27.無印消法と
た。
之助とを送り届けられた岩本道場は、「惨として声なき有様であった。
衆を頼んで、報復に押しかけようと云い出す者さえなく、却って、今にも、伊良子清玄が
虎眼と全く同じ形に切られた生股権左衛門の死体と、左腕を喪って半死半生になった藤木源
薄玄の足の血には誰も気がつがなかったが、これこそ、その目の勝負を決したものだったの
である。
新しく態勢を備えようとした時、清玄は、再びやわ土に刀をつき立てる代りに、己れの右足
をつき出して、その甲に剣先を、ぐさとつき差したのだ。
勝負は、それからの瞬時に決した。
権左衛門が、二度目に清玄の手許に飛び入ろうと、からだを動かした時、清玄の「逆流れ」
は垂直につき立った。先の傷を再ぴ切り裂き、更にその上方へ、鼻梁の真上まで、深く縦ざま
に貫き裂いたのである。
その剣はしかし、その前に、清玄自身の右足の甲の肉を骨まで、切りさいていた。
切返しの機会は失われ、二人の闘者は、再び初めの態勢に戻って対峙した。ただ、権左衛門
は、傷つけられた下顎から血を噴き出していたしーー清玄は、右足の甲に血を惨み出さしてい
かな
を襲っただけではありませんか。勝って下さい、あなたはきっと勝てます」
ひっそり暮らしている屋敷の内を想像して人々は、源之助と三重は天婦になったのだと考え
た。二人とも、人前ではそのように行動した。だが、二人は未た、夫婦の契りを結んではいな
かったのである。
蒼白痩身、怪奇の白刃をひっ提げて、逆よせするのではないかと会う恐怖にさえ襲われた程で
ある
一同は、清玄が「駿府にゆく」と云いのこし、いくに手をひかれ、右足をひきつつ、城下を
去ったのを知って、初めて、ホッとし、師と師範代の葬儀の手等にうつった。
一挙に中心人物を失った岩本道場は、急激に淋れ、いつしか解体した。
広い屋敷には、漸く起上れるようになった藤木源之助と、何かを深く思い定めているらしい
三重と、古くからいる奉公人数名だけになった。
三重は、源之助にせがんで、幾たびとなく幾十たびこなく、試合の様子を話させ、その度に
完全子のどこともなく眼を流して、「憑かれたような声で云うのである。
「憎らしい伊良子。あのひとは、どうしてあの素晴らしい不吉な剣を編み出したのでしょう。
憎い。憎い、憎いやつ、涙之助ささま、あの男を殺して下さい。父の仇、牛股さまの仇。あなた、
この仇、そして私の仇」
「いや、彼女は天皇の中だ、私は敵わぬ」
「なぜそんな弱気なことを仰言るのです。あの人は両眼を失くしているのです。あなたは御腕
おっしゃ
さび
29.無明逆流れ
す」
!!け
「三重は、想像も及ばぬほど劇しく、清玄を愛しているのではないだろうか。
そんな気がしてきたのである。憎いと、三重が云うとき、それは、父の仇、そして、己れを
裏切った男、ーに対する真底からの憎悪と云うだけでは了解七切れぬ、きびしく、深く、の
たうちまわる憤りと悲しみとが籠っているように思われる。それはむしろ、生身にくい込んだ
愛葬の思いを、殊更にかき立てた憎しみの念で絞殺しようとして発する、苦悩の叫びとも聞え
るのである。
「あなたがお討ちなされぬのなら、私が討ちます。どうせ敵わぬにしても、一太刀なりと浴び
せて討たれます」
そこまで三重が云い出すと、さすがに源之助も、今一度、剣の意地にかけても闘ってみよう、
と、微かな闘志を湧き上らせるようになった。
だが、その夜は、夢の中で、三重が清玄に斬ってかかり、苦もなく叩きふせられるところを
三重の返答はいつも同じであった。
そうした問答を幾たびか繰返す中に、源之助の心に、次第に、ほぐし切れない黒い疑惑のか
たまりが湧き上ってきた。
剣の上の自信の喪失から気弱になった源之助は、せめてもの救いを三重の美しさに求め、妻
となってくれるよう観願し、哀願したが、三重は断学として聞き入れなかった。
「伊良子を、あの憎らしい伊良予を殺して下さい。そうすれば、その夜、あなたの妻になります
みた。夢の中の三重は、清玄にくみ伏せられると、急に四肢の力をぬき、融け入るような声で
「憎い、憎い伊良子さま、妾はあなたたが好きなのです。死ぬ程好きえのでず。
と切な気にあえず、衣をはだけて、清玄のからだにまといついた。源之助は、嫉妬の思いに
全身汗をかいて目をさました。
伊良子を斬らねばならぬ。
源之助は、漸く心を決めた。その剣の怖ろしさは身に沁みて知るっている。だが、斬らねばな
らぬ、断じて斬らねばならぬ。
それには先ず第一に、清亥の「逆流れ」の第一撃をなんとかして避けることだ。そのために
牢股のように顎ぐらい傷ついてもよい、第二には、清玄の胸許に飛び込んだならば、対手が身
をひるがえす隙を与えず、対手を斬ること。牛股権左衛門でさえ失敗した以上、切返しは利か
ぬと思わねばならない。ひたとからだを密着させたまま、対手を斬り倒すーこの至難事を可
能ならしめる手段を案出せねばならないのだ。
源之助は、明けても暮れても、「逆流れ」打倒の工夫をこらした。夢寝にも、清玄の、大地
につき立てた剣と、垂直にはね上った剣の妖しく白く光る姿が、頭を離れなくなった。
そうして二年、夏の初めの或る夕。
「来月の今日は、父上の三回忌でございます、まだ、伊良子を斬る思案がつきませぬか」
三重が、召使いに命じてもってこさせた大型の西瓜に疱工そを当てながら云った。源之助は
わざと話を逸らせて、
31.無明逆流れ
貴永六年九月初めの或る朝、道場から出てきた源夕飯の顔をみて、三重はは
こんしん
つぐ
「見事な西瓜ですな、私どもの子供の頃は、オランダ渡りの珍菓として滅多に食べられず、た
まに手に入れても、その半分ほどこもない小さなものだったが。もうこの辺りでも出来るように
なったのですかな」
と云いかけて、ふいと、口を墜んだ。その源之助の瞳が、やきつくように、西瓜を切ってい
2三重の手許に注がれていた。
翌日から源之助は、久しく使わなかった広い道場に何時間となく閉じこもった、何人も窺う
ことを禁じていたので、内部で何をしているかは知れなかったが、時折、呻き声のようなもの
れっぱく
が洩れてくる。いわゆる裂帛の気合と云うのではない、低く押えた、刹那の「うっ」と云う呻
きに似ていたが、日を経るにつれて、その低い呻きが、低いままに、聞く人の腸にしみ渡るよ
うな、異常に鋭くしかも強烈なものになっていった。
虎眼の三周忌が来たが、源之助は何も云わない。三重も亦、源乙助を刺激することを忘れた
かの如くみえた。だが、三重は忘れていたのではない。彼女は源之助のこの頃をみて、源ク助
が新しい剣の秘法に渾身の大をこらしているのを感じた。
このような時、剣者は半ば憑きものがついたようになる。そ、の憑きものが落ちた時、彼の剣
の工夫は完成するのである
虎眼の娘として、三重はそれをよく知っていた。さればこそ、大きな期待に満たされながら、
源之助に対して、やや多くの優じさを示し、剣の業に話のふれることを避けたのである。
うわあ
る。
きよか~
「あ」
と眼を輝かした。源子こ助は微笑んで立った。
「そうです。漸く工夫がつきました。伊良子を斬りに行きましょう」
を離れて逸走した。とどめようとする足軽を二名蹴りたおし、田圃の中の一本道を矢の如く発
駿府にゆくと云って去った伊良子のその後の動静は分っていた。
駿府城下長谷寺町の師範岡倉の邸にいるのである。
藤木源之助は三重と共に、駿府に赴いた。
尾州藩の大番頭斎田満之進から、駿府城の家老三枝高昌に宛てられた添書をもっている。到
着の翌日、三枝邸に赴いて、これを差出し、一部始終を話して、伊良子との試合を求めた。
三枝は、聞き終って、首をかしげた。
「そうか、伊良子にそのような事があったのか。しかし、かれの絶妙の剣技は、君公もいた。
御感になっている。わしの一存では取引いかねる。しばらく待つがよい」
伊良子清玄が、駿府城主忠長の目にとまったのは、半年ばかり前、公が三保松原に遠乗りし
た帰途のことである。一頭の馬が、何に驚いたか、突然狂い出して馬上の侍をふりおとし、列
たんぎ
33.無印消され
ま
とか
られた。
忠長の命により、家中の使い手として知られた、願流始祖松林左馬之助の高弟相木久蔵、鞍
馬流大野将監の正統をつぐ右村一鉄、新陰流出淵平兵衛の嬌子同苗平次郎の三人が選ばれ、
極秘の中に盲目の剣士伊良子清玄との文合いが行われたが、何れも、清玄の軽くはね上げる木
刀の先で、したたか頤を打たれ、木刀を飛ばされ、胸をつきのめされた。
奇体な構え、何流か、と会う忠長の問いに、清玄は、にこりともせず、
無明逆流れ」
と答えたのである。
牢股権左衛門との試合に、己れの足の甲を割いて危機を脱ぐただ清支は、その後、大地に頼ら
ずに剣をはね上げることを工夫してた。己れの右足の第一指と第1二指の間に、しっかと剣先をは
平然と仕込刀の血のりをぬぐい、もとの杖におさめていた盲目の剣中は、丁重に城内に招い
「危い!よけろ、危い」
馬の行手に杖をついた盲人らしい姿が現れたのをみて、追いかけた侍たちが絶叫した時には
もう発馬と盲人の間は二三間に迫っていた。やられたか、と人々が思わず立止まった時、盲人
はぴたりと足をとめた。
その手から、杖がパッと上空にはね上ったとみるや、奔馬は棒立ちとなり、二三度左右にゆ
らめき、どうと横倒れになったのである。かけつけた侍たちは、馬の死体をみて、茫然とした。
馬の長い下顎から、逆に、両眼の間にかけて、真二つに切り裂かれていたからである。
枝から呼び出しがきた。
さむのである。清玄が、足指の間にはさんで剣をつき立て、手を離して
「抜いてみよ」
と云う時、力自慢の若い男が必死の力をふるっても、僅か五六分はさまれただけの剣先が
分もひき抜けなかったと云う。
家中の多くの者が、清玄の木思議な剣法をききつたえ、その妙技をみたいと願い、或は更に
その教示を懇願したが、清女は笑って二度と木刀をとらなかった。
清玄の剣は他人に教え得る種類のものではない。が、さりとてさ、これ程の剣士を他国へやり
たくない。彼は師範岡倉の邸の離れを与えられ、いくと共にこここに手厚い待遇を受けることに
なったのである
旅宿にあって、以上のようなことを人伝てにきき、首尾を案じている藤木源之助の許に、三
腕の剣客ーこの素晴らしい取組を当日第一陣に据えたのは、この試合をより効果的にしてお
君の御感に与ろうとした家老二枝のはからいであった。
さて、場面は、駿府城内。広場の試合場に、伊良子、藤木両名が白刃を握って対峙した瞬間
にかえる。
「そなたたちの事、よくよく君公に申上げた処、師の仇を討たんとする義烈の心をよみせられ
仇討にはこよなき、晴の舞台を賜わることとなったぞ」
晴の舞台とは、即ち、真剣御前試合だったのだ。盲目の剣王と、これに復仇しようとする愛
ファン
そう......
...
...
「ええい!」
そういうことで、
...
......
そんなことはありませんでしたねそういうことは、
...
こんな時から...
それでも、これまでのそれで、何か言っているのか、
...
...
あーあ...
晴れわたった空は碧一色、雲も流れず、風もない。広場一帯を透徹した静寂がおしつつみ
しわぶき一つ聞えぬ。
清玄は例によって、杖の如くつき立てた剣の刃を源之助の方へ向け、刀犬を足指にはさんで、
凝然として佇立している。一方、源之助は例になく、一剣大上段にふりかざして、伊良子の盲
いた両眼の間を、はったと睨んでいる。
列座の緊張その極に達した刹那、広場の静寂を微塵に叩きわる如き必死の気合、
...
...
...
うあああっ!!
...
やっぱり
...
...
...
そういえば、
そういえば、