在りし日の貴恵と圭介... 結局昨日千嘉さんにお母さんの記憶が戻ったこと伝えられなかったな... 言いづらいよねあんな状況じゃ... だって前に千嘉さん万理華ちゃんの記憶のままの方が私の娘だったころの万理華...って言ってたし... だけど...ダメなこと? あの子が万理華ちゃんであって 新島貴恵でもあるってこと 出雲君のサイン会問題なく開催されるそうですよー! あそうなんですねよかったですね 麻衣さんも本買ったって言ってましたよねーどうですか?一緒に行きますかー? うーん...ちょっと考えておきます... 出雲君興味ないですか?作家さんって知的な感じがして魅力的なんですよね〜 ファンレターとか書いたらもらってもらえるかしら 今度小説家さんとか漫画家さん達が来る合コンセッティングしたんですよ! そっちの方はどうですか、麻衣さん!! あ...いやえっとそういえば... 私今彼氏いるんです... いったいいつの間に...!?どこで...!? 以前出張で行った茨城で出会った人と...仕事の延長上で...! もうすぐ結婚する予定で... 伝えるの遅くなってすみません... そうだそろそろ式の打ち合わせ蓮司さんとしなきゃ... ...あ...あ・ああ... てかなんなのよこの状況娘が親に小学生の算数を教えてるっていう.. 仕方ないでしょお母さんが昨日記憶戻ったって伝えなかったんだから... そうなのよね...なんかとっさに隠しちゃったのよね: 新島貴恵の記憶が戻ったって言ったらママ悲しむかもって思っちゃったのよ あんなに一生懸命娘の誕生日を祝おう...娘と向き合おうってしているママを見たら、 とにかくいずれは説明しないとね もう終わっちゃったね...さすがお母さん ていうか小学生の問題を大人がやったら誰でもこうなるわよ.. ねえお母さんって絵も上手なの? 前に飾ってある絵お母さんが描いたんだよ? 私こんな上手に描けないわよ... 去年は写生大会で他の子に笑われたわ 記憶が違うだけでそんなに違うんだね... ホント別人みたいよね... そういえば麻衣昨日言ってた「君と再び」の作者のサイン会どうなったの? ああちょうどその話を職場の人としたけどちゃんと開催されるみたいだよ 私一緒に行かないかって誘われたけど... じゃあ同僚の人に一緒に行くって言っておくね それじゃ式は身内だけでってことで... すいません...自分が全然友達少ないせいで... 俺もそんなに大勢でわいわいしたり注目されるの好きじゃないからさ麻衣さんに合わせるよ まあ終わった後簡単に仲間呼んで飲み会とかはするかもしれないけど あの前にも言ってた通り万理華ちゃんは... もちろん親族じゃないけど別に出席して構わないよ そんなに仲がいいんだね どうしてもその私のウエディングドレスを生で見せてあげたくて.. お母さんのウエディングドレスが残ってたんだっけ? じゃあきっと天国のお母さんも喜ぶだろうね 最近ちょっと元気ないっていうか... すすみませんそんなことないです...! あれ?マリッジブルーってやつ? いえ...蓮司さんと結婚することに何も不安はないです... むしろこんなうまくいっていいのかなってくらい... ばっちゃんも言ってたけどさ 結婚は通過点で結婚してからの方がたくさん大変なこと多いって だから幸せを想像するよりも 不幸になった時のことをたくさん想像しとけって 想像するたびに胸に問えって...覚悟はあるかどうか 覚悟を決めておくと逆に不幸を回避できるとかなんとか... それは...なかなか哲学的な... 俺は覚悟はあるよ麻衣さんを守る こういう考えはもう今の時代古いのかもしれないんだけど... 男って自分を投げ出してでも愛する人を守るもんだって俺は考えてる ありがとうございます... きっと圭介さんも同じこと考えてると思うな でも私も守られてばかりじゃないようしっかりした奥さんを目指します...! もう十分しっかりしてると思うけどね... 出雲さんありがとうこさいます! これからも頑張ってください! 本何度も読ませて頂いて何度も泣いてます! あとこれ...もしよかったらファンレター書きましたんで読んでください! うわー私もなんか急に緊張してきた... 私も登場人物と同じように前世の記憶があります 私も登場人物と同じように前世の記憶があります 本当に失礼一度お会できます 過去の記憶他の人とは違前世からの確かに、と思 私も同じこと不思議な話な信じられない たしかこのあたりよね出雲さんが待ってるっていう喫茶店 まさか本当に会えることになるなんて... でもどうだろう:出雲さんが私と同じ生まれ変わっても記憶がある人かはまだわからない... もしかしたらただ面白そうな手紙だったから一度会ってみようとかそういう可能性もあるわよね... ただ、もし私と同じ境遇だったら 何か知ってるかもしれない 私が「記憶がなくなったり戻ったりする原因が:・ いい雰囲気の喫茶店ね: この喫茶店よく来るんだ静かで落ち着く 君と再び一を書き上げる時もよくここを使わせてもらった あの...手紙のことなんですか... 飲み物が来るまで待とうか それとちょっと編集の人からメール来てたから返事する時間貰ってもいいかい? スマホって未だにまだ慣れないんだ 昔みたいな二つ折りの携帯電話の方が愛着があったな 今の子たちは子供のころから携帯電話持ってるよね 昔じゃ考えられませんでしたよね? 私も社会人になってからでした初めて携帯電話持ったの 今は友達とのやりとりはテキストチャットアプリでが主流だけど あのころはメールだったよね 既読機能がなかったから何度もセンター問い合わせボタンを押しちゃったりして... 着信の曲も変えられて今よりも個性があったよね ああ懐かし〜独特の機械音でしたね まさか自分と同じ状態の人がいるなんて じゃあ...やっぱり..出雲さんも... 出雲さんは前世ではどんな生活を? 小説家になりたくてね大ヒットして世間から評価されるような文豪を目指していた 教師をしながらも賞に応募し続けていたけどなかなか芽が出なくて 志半ばにして死んでしまった ふと気づくといつの間にか僕は中学生の男の子として生活していた 最初の方は夢でも見ているような感じだった その状態に違和感など覚えずに だけど親や友達から急に人が変わったねって言われることがその時期、多々あった 出雲凛音として過ごすことを当たり前のものとして生きていた そんな折学校の図書室で一つの小説がふと目にうつった そして読み終わった瞬間 絶対に自分はこの小説を読んだことがある 一気に前世の記憶がフラッシュバックしたんだ その小説は僕が前世で一番感銘を受けた小説だった 何年も開いてないアルバムを一ページずつめくっていくように過去の記憶を思い出していった このことがきっかけで前世の記憶が次々に蘇ることになった 不思議だったし困惑もしたただ喜びもあった だけどここで一つ疑問に思うことがあった また人生をやり直せるって思って 丁度記憶が戻ってきた中学生以前の記憶を思うように思い出せなくなっていたんだ 親の話や友達の話をきくと「そんなことあったっけ?」と返すことが多かった それどころか記憶が戻る以前と性格も変わってしまっているようだし 趣味やスポーツの出来すらもがらっと変わってしまったらしい 僕はそれを前世の記憶がフラッシュバックしたことによる影響かなくらいに考えていた それから僕は前世でやり遂げることができなかった小説家の夢を再び追った 生まれ変わった分時間はたっぷりあると思って無心で書き続けた 今の自分の境遇を参考に書けばきっと面白いものができると、確信していたしね そして完成したのが君と再び』だ 予想通り「君と再び』は文学賞を受賞してその後も注目されてベストセラーになった 僕の前世の夢は生まれ変わってついに叶ったんだ しかしここでトラブルが起きた 小説がヒットしベストセラーになった瞬間僕の記憶は急に飛んでしまった 新商品の営業用の資料次の会議までに準備しておいてもらっていいかな 今回は取引先との合同プロジェクトでいつもより量多いから気を付けてください データの収集の方もう終わったって言ってましたよね ちょっと守屋さんを手伝ってもらってるいいかな? すみません忙しいときに いや本当に手が空いてたから大丈夫だよ じゃあ早速資料分けてっちゃおうか たしかにこれを一人でやるのは大変だ... ありがとうございます... ペーパーレスが進んでる時代なのにうちの会社遅れてますかね...? こんなにあるんだ... でもメモとかすぐ書けるし僕は紙の方が好きかな手間だけど ああ...問題ないよ僕も丁度、手が空いていたし... 何か...気まずい思いをさせてしまった気がして... 奥さんから何か聞きましたか? むしろ秘密を守ってくれていて感謝しているよ ああ...僕たちのことを信じてくれて 私とのやり取りのこと... 秘密も守ってくれると約束してくれたって言っていたよ 妻も守屋君に感謝しているみたいだったよ でも凄いですよね...こんな奇跡みたいなことあるんだ...って驚きました 僕も最初は信じられなかったよ 奥さんが戻ってくる前はどこか寂しそうな...空っぽな状態だったじゃないですか... そうだね...抜け殻のようだった もしかしたらそれを見た天国の奥さんが 新島さんを元気づけるために戻ってきてくれたのかもしれないですね 愛ってすごいな...って思いました あの映画の授賞式の前にも同じことが...? ああ正確なタイミングはわからないけど同じように急に記憶が飛んでしまったんだ 性格もがらりと変わってしまったと... お前なんか急に性格変わったよな... 記憶がないときのお母さん本当に別人みたいで:・ だけどそれから数週間後 あることがきっかけでまた僕の記憶は戻ったんだ 戻った当初は自分も周りも混乱していたよ 落ち着いた頃に僕はこの現象の謎について何度も考えた 何度も同度も考えて導き出した仮説 それはかなり残酷な仮説だった それはいったい...? 僕は生まれ変わったわけじゃなく もともと生きていた少年の体を借りている状態ー 憑依しているという仮説さ そう考えると合点がいくことが多かった そもそも生まれ変わりならば小学生時代のこともちゃんと覚えているはずだし 性格も違ったりしないと思うんだ そして何よりも僕の記憶がなくなった瞬間 この体の中にいた彼がちゃんと生きていたことこそが憑依の証明に違いないと思うんだ これも仮説だけど答えは出た 前世での未練が解消されたからだ 僕にとっては小説をヒットさせること それが叶ったことが記憶が消えたきっかけだったんだと思う そもそもこうして前世の記憶が残っているのは前世でやり残した強い後悔があるからだ だからその未練をクリアしたらもうこの世にとどまる意味がなくなるというのは自然な考え方じゃないかな... 手紙に書いてあったけど 君も最近一度記憶が飛んでしまったと言っていたよね? それはもしかして何かしらの未練が解消されたタイミングじゃなかったかい? じゃあなぜ、未練を断ち切ったのに再び記憶が戻ったのか これはおそらく前世で成し遂げられなかったもう一つの未練に気づいたからなんだ... 出雲さんのもう一つの未練...? 僕にとってのそれは前世で想いを寄せていた女の子に対する未練 その子は高校教師をしていた頃の僕の生徒でさ 告白されたんだけれども その時は立場もあって彼女の想いを受け止めることはできなかった だから彼女が卒業したら一緒になろうと約束していた だけどこれも事故で亡くなったことにより叶わなかったんだ このエピソードって... もしかして..君と再びの主人公って出雲さんが... 職業や年齢は変えてるけど 君と再び」は僕と彼女の叶わなかった恋を元に書いた小説なんだ 一緒になれるはずだったのにそれが叶わなかった悔しさを 自分の体験に重ねて書き切った作品さ だから僕の記憶が抜けていた時 本来の人格の彼〟が試しにこの小説を読んだ瞬間 作品に込められた僕の彼女に対する強い後悔に触れて それが引き金となってまた僕は彼の体に戻ったんだ つまり僕が今こうして出雲凛音の体を借りて生活できているのは 小説家として大成する...っていう夢とは別に 愛していた女性と一緒になりたいという未練が残っていたから...さ じゃあこの前の授賞式の日に記憶がなくなっていたのは... ごめんそろそろ時間が... あまり外出てると親が心配するんだ この前の授賞式のこともあって... 僕の話...少しでも参考になったかい...? 僕も同じ境遇の人に出会えて嬉しかったよ 死ぬまで一生誰にも話せないと思っていたから少し気が楽になった 出雲さんは罪悪感とかはないんですか? そうだね...僕も考えたよ 言ってみればこの状況は偶然だとしてもこの体を借りているー いや...奪ってしまったことになるだろう これが運命の流れだったとしたら仕方ないんじゃないかと思う 運命にゆだねた結果こうして僕らは戻ってきた だからこれも一つの生まれ変わりなんだよ 僕はそう思うことにしてる これも一つの生まれ変わりなんだよ ごめんぼーっとしてた... そういえば今日友達と会ってくるって言ってたけど...何かあったの? ううん普通におしゃべり楽しくしたよ す少し話し過ぎて疲れちゃったかな あと勉強の方はどう?ついていけそう? 麻衣おねえちゃんのおかげでなんとか ちょっと最近考えること多すぎだわ... これも一つの生まれ変わり? この体は本当は万理華のものなんでしょ...? 確かに私は一度死んでまたこうして生きられてるけど... それって...どうなのよ... それに出雲さんの仮説が正しいとすれば 私もまた未練があってこの体に入って 一度離れたけど別の未練に気づいたからまた戻ってきたってことよね... 私...なんでここにいるんだろ... 早く帰らないと...帰って...明日のピクニックの準備しなきゃ... 圭介と麻衣...絶対に立ち直れない... 私がいなきゃ...きっともう... 二人を残して...死ぬなんてできない 愛してる家族二人を残して死んでしまったこと... 生きてた頃本当に幸せな家族だったからこそ 自分がいなくなったら二人ともだめになるんじゃないかって思ったんだ... 麻衣は婚約して素敵な旦那さん きっとそれがきっかけで気持ちが緩んで一度この体から離れてしまったんだ そこから戻ってきたのは多分... 希吉姫さんはこの昔たちが大婦であることお兄ちます。大新島圭介 結婚届を見て気づいたんだ このままだと圭介が一人になってしまうって.. でも、もし未練がなくなることで でももし未練がなくなることで 圭介といつかまた結婚するということ... もしもしどうしたの麻衣? おはよう起きてたお母さん?今日って空いてるかな? 特に予定はないけど...何?どこかで会う? 別でお母さんに会いたいって人がいて... えっと...実は私じゃなくて え...なんでまた守屋さん...? しかも麻衣なしって...気まずすぎる... 貴恵...さんに身勝手な言葉をぶつけてしまったことをずっと謝りたくて... あの時は思いがけない失恋の仕方をして... 思わず貴恵さんにぶつけてしまったんだと思います たとえ貴恵さんが生まれ変わっていなくても結果は同じ 私にもやっぱり未練があったんだなって... ホントすみません...! このためだけに時間いただいてしまって...また私の勝手で: ああいえちょっと考え事しちゃって... 守屋さんの気持ちもわからなくないです.. きっと私が同じ立場でもやりきれない気持ちになっていたと思います もしも憑依ならばなおさら... とりあえず私は守屋さんを許します というかあなた本当にしっかりしてますね ちゃんと反省して謝ろうと行動して... 秘密も守ってくれてありがとうございます これからも圭介のこと仕事仲間としてよろしくお願いしますね はい...でもこうして謝ることができてすっきりしました 奥さんなんだなこの人... ...それならよかったです 大事に終わらせようと思ったんです 今日はありがとうございました 守屋さんずっと気にしてたんだ... きっと今日謝ることも勇気をもって決断したのね...ホント偉いわ アイス買ってきたからよかったら食べな? もう貴恵さんに変わってるんでしょう? 抹茶味のお菓子は食べないのよ それに今朝、あなた麻衣さんのことを一麻衣おねえちゃん」って呼んでたでしょ? 万理華は「麻衣さん」って呼んでる それでもしかしたらって... 私に気を使ってそうしてくれてたんでしょ? 千嘉さんのことお父さんにも連絡きた? 貴恵は千嘉さんは怒ってはないとは言っていたが... それでも申し訳ないな... やっぱり母親だから..気づいたのかな.. 本当に申し訳ありませんでした ちょっと留守番頼める? おっさん...いや圭介さんちょっと借りてもいいかしら? 最近は来てなかったからちょっとなまってるわね 圭介さんもやったら?おごるから そう...じゃあちょっと待っててくれる? もやもやしたときはよく来てたんだここ だめだ向いてないようだ自分には... この前の万理華の誕生日を祝った時 あの時にはもう貴恵さんに戻ってた? なかなか滑稽だったわね私 ...本当に申し訳ない 何も知らずに豪勢な食事に誕生日ケーキまで用意して ただ、あの日はあなたが帰ってきたらすぐに戻ったことを明かそうと決めてたんだ だが万理華ちゃんの誕生日だと知らされ突然のことで言い出せなくなってしまった 勝手な言い分に聞こえるだろうが、貴恵はあなたを気遣ったんだと思う やっぱり怒ってるのか...? 誰が悪いって問題じゃないしさ 今回の件で本当に確信したわ あの子があなたの奥さんだったっていうこと 正直そんな非現実的なことあり得ないって心のどこかで感じながら過ごしてた あくまでもあの子は私の子...だと思ってた でもやっぱり違うのよ... というか...わかっちゃうの だからこそ辛いわ本音を言うとね どうしようもないけどさ私には 嬉しかった?奥さんが戻ってきて いいの...。...っ、んいいの。のんっ、ひっ、ああっ、...あの... なら...よかったわね 付き合わせて悪かったわね 私らまだ面と向かって話ができるほど仲良くないからさ ...確かに二人でこんなに話すのは初めてでしたね このことは言おうか迷ったんだけど あなただけには言っておくわ 私に万理華じゃないってばれた昨日の夜 あの子布団の中でめちゃくちゃ泣いてたわ 「ごめんなさい」ってずっと言ってた どっちに謝ってたんでしょうね もう一つだけ出雲さんに聞きたいことがあるんです この体の主の意思についてです やっぱり自分には元の体の主の意思を無視して体を奪ってるこの状態を 運命だけで片付けていいのか疑問があるんです... 主からしたら自分の人生を、急に他人に奪われたということと同じですよね...? 主の周りの人達にとっても同じように... なぜ多くの人がいるのに彼彼女らが憑依されることに選ばれたのか? 話さなかった僕の仮説がもう一つあるんだ 元の主も自ら自分の肉体を放棄しようとしていたからという説さ 僕の元の人格の彼は僕が憑依する前辛いいじめにあってたんだ 学年全員から無視され時に苦痛を与えられ生きることに絶望してたんだ 僕の魂と交差するきっかけが生まれ という気持ちの利害が一致したから こうして人格が入れ替わった:: 君の主の少女も家庭のことで悩みを抱えていたと手紙に書いてあったよね? 君の主も同様生きることに絶望していたんだろう それが原因で入れ替わった つまり人格の入れ替わりは元の主の意思でもあるんだ だから僕たちが罪悪感を感じる必要はないんだよ 万理華もまた自分の人生を放棄しようとしていた...? 確かに私と入れ替わった直後はママは荒れてて未来も不安だった 万理華の気持ちが知りたい... 万理華を...知りたい 小学校低学年の時の万理華ちゃん? うーん...とにかく優しくて勉強とかも教えてくれて マラソン大会の時も私が足遅いから一緒のペースで走ってくれて: 静かなやつって印象だったな ずっと絵描いててあんま目立たなかったというか... 動物が好きなのかよく飼育小屋のうさぎにエサあげてたのを見たぜ? あそういえばクミが下校中に一人で泣いてた白石さん見たって言ってたわ 話しかけたら「大丈夫」って言ってすぐ行っちゃったらしいけど 勝手に観てごめんなさい カメラの中にこの映像が残ってるの見つけて... 知りたくて万理華のことが ねえママ教えてくれない? 万理華ってどんな子だったのか 万理華は優しい子だったわ 私が疲れてるとそっと肩をもんでくれるような ただちょっと不器用で外食するとよく飲み物をこぼしたり、すぐ迷子になったりして そのたびによく泣いてたわ 勉強はできてたけど運動が苦手で体育の授業の成績はあまりよくなかった あと朝が凄く弱くて私が起こしに行かないと布団から出てこられなかった 私が元旦那との関係が悪くなって毎日喧嘩してたころは万理華ともほとんど話さなくなった 離婚の話し合いをしてる最中とか離婚後は、逆に万理華の優しさすらうっとうしく思った 些細な方理華の行動も「余計苛立つようになって必要以上に罵倒して... もう私自身もすべてがどうでもよくなってきて: 最低な母親の出来上がりよ もしかして悪いと思ってる?今の状況 自分が私の娘の万理華と代わってしまってることに ...ほんの少しだけさ私もホッとしてるんだ あなたが完全に万理華に戻ったとしても もしかしたら私もいつか以前のような毒親に戻るんじゃないかって不安があるの 今は前よりは気を付けてるけどさ 正直...これからもちゃんとした母親でずっといられるって自信はないわ: いつ糸が切れて過去の自分のように戻るかもわからない 万理華にとってはもう私みたいな親のところに戻ってこない方がいいんじゃないかとすら...思う だから貴恵さんがそのままでいたいなら 万理華と私の人格が代わった原因は家庭の問題で人生に絶望してたからかもしれません それは本当に親であるあなたのせいです 万理華は心のなかではまたあなたとの関係を取り戻すことも願っていた だからこそ一度この体に戻ってきたんだと思います自らの意志で 今のママならきっと万理華といい関係のまま続けていけると思う もちろんこの先心に余裕がなくなったり苛立ってしまう時もあるかもしれない でも今のママならそんなとき相談できる人がいるでしょう? 足りない点数を補ってくれる仲間がいるから世の中の家族はなりたってるの 今月末の土日空いてる? ああ普通に休みだが.. よかった!じゃあさ... 私が結婚する前に叶えたかったんだ お母さんと三人でまた能登に旅行に行くこと 実は宿ももう予約してあるんだ 旅行か...たしかに貴恵が帰ってきてからはしてなかったな 日帰りはあったが... じゃあ私お母さんと千嘉さんに連絡してみるね 今度は迷子にならないように気を付けてね たしかあれが貴恵が事故に遭う前の最後の旅行だったか... 千嘉さんは?挨拶しようかと せっかくの休みなんだから寝かせてだっておみやげよろしくって言ってたわ 以前誰かさんが迷子になって台無しになった旅行を 自分の稼いだお金から捻出してやり直してくれるなんて 今度は携帯電話なくさないよう気をつけなさいよ 私は旅行に行ければどこでもよかったんだけどせっかくならと思ってさ 俺のスマホには紐を結べる場所がないよ あれよあれ首にぶら下げる紐とかつけておいたらいいんじゃない? まあいざとなったら落ち合う場所だけ決めておけばいいんじゃない? そうね新幹線の中ででも決めましょ なんか今日調子よさそうだな貴恵 そりゃ久しぶりの旅行なんだからテンションもいつもより上がるでしょうよ ほらほらじゃあ行くわよ 貴恵...お前も本当に気づいてるのか 生まれ変わりではなく憑依だっていうことに 家族を大切にするお前ならば どれほどの苦しみを内に秘めているんだ 旅館も以前と同じ場所にしたのか... その方が想い出を思い返せるしさ あー覚えてるわこの外観 たしかお風呂が最高なのよね〜早く入りたいわ 風呂は帰ってからの楽しみだな いい部屋ねー麻衣にはちょっと高かったんじゃない? せっかくなんだからお金のことは気にしないで楽しんでよ じめんごめんつい親のクセが出ちゃったわ ねえこの部屋窓開けたら景色最高 晴れててよかったわねー じゃあ早速、能登巡り行きましょうか! お父さん携帯持った!? イワシのビックウェーフ ちょっとトイレ行ってくるからまっててくれる? お父さんお母さんすごく楽しそうだね 記憶がなくなっちゃったり千嘉さんとのことだったりいろいろ大変だったけど どれも解決できてこうして旅行を楽しむことができて本当によかったな 水族館でトイレと言えば 鴨川の水族館でお母さん迷子になっちゃってアナウンスされたの思い出すね あの時は貴恵がまたいなくなってしまったのかと思って焦ったな そうだったね...あの時のお父さんの慌てようも 去年のことを思い出してさ 近道あったから周ってきたわ 千嘉さんとの関係も解決して こうしてまた家族で旅行ができて こんなに幸せな瞬間などないはずなのに この気持ちはなんなんだ.. あらあら無理して飲むから 本当に楽しみにしてたみたいだな こういうプレゼントをくれるいい娘に育ってくれて本当に嬉しいよ あーなんか思い出すわ前回来た時もここ二人で歩いたわよね あああの時も麻衣が先に寝て...全く同じだ 本当は変わってしまったはずだったんだがな 私のこと本当に愛してる? そんなの当たり前じゃないか... 俺が浮気するとでも思うか? そんなこと思ってないわよ 相手に求めることが愛なのか 相手の求めることを叶えるのが愛なのか どちらもそうかもしれないが... どちらかというと相手が求めることに尽くすのが愛なんじゃないだろうか お互い求めることが違う場合はどうなのかしらね それは譲歩し合えるところを模索して話し合うしかないだろうな... その場合相手の意見に折れる方が愛かしら? 折れる...ということは納得はしてないということか? 片方のわがままを通すことになるが...それはどうだろうな どうしたんだ貴恵?もしかして俺に何か求めることがあるのか? 私が生まれ戻ってきてあなたと麻衣に初めて会った日覚えてる? あの日私があなたに何を言ったか 私がいなくても進んでいけるっていう姿勢と未来を見せてよ この格好になってあなたに会いに行ってあなたを見たとき 麻衣がいながら父親として動けてないあなたに 本当に覇気がなくて心配になってがっかりもした それからはやっぱりあなたの良さを取り戻していった 家族を愛する気持ち大切にする気持ち 麻衣を放っておいたことを反省したり 私が苦しんでる時に自分に何ができるか考えて動こうとしてくれたり 私が死んでしまったことで失った時間を取り戻そうと努めてくれた それによってあなた自身も成長していったと思う 麻衣の結婚先の家庭ともうまくやっていけそうだし あなたのまわりにこれからも誰かがちゃんといる だからきっともう... ごめんせっかくの旅行中に... そろそろ戻りましょうか お母さんも楽しそうでよかったねお父さん ううん育ててもらったお礼だし...これからも... ええ心が落ち着く... こういう時ふと幸せって思うのよね こういう瞬間を死ぬまでいくつも集めていきたいな おじいちゃんとおばあちゃんになっていつかは死んでしまうじゃない? 先にいなくなるのと後から亡くなるの お前が死ぬのを見たくないしその後のことはもう耐えられないよ ははっそう言うと思ったわ 絶対に私はあなたより長生きしてあげるわ じゃないと、心配で死にきれないわよ 私がいなくても進んでいけるっていう姿勢と未来を見せてよ 抱っこ代わってくれる?ちょっ なぜか座ると泣くからゆっくり座ろうと... 貴恵最近寝不足だろう?深夜は自分がミルクをあげるからゆっくり寝ててくれ 圭介も寝不足なんじゃない?文代でいいわよ深夜は ん...ああ全然大丈夫まかせてくれ.. さあミルク飲みにいくぞ〜麻衣〜 あれ?麻衣はこっちに.. ぷはっ...何それ... 活動的になってきたわね〜 あははこの調子だと最初に言う言葉はママかしら? それにしてもこの笑顔を見れば疲れてようが幸せな気持ちになるな... スペシャルサイクちゃんスペミュルルルの人大久保大幸田に野太郎 ははるくん日に野太妻なんでないもん 妻、小学生になるんだってそういうスタッフ ...!!?それがそれにそれは 貴恵の記憶が消えたことで そして単なる生まれ変わりという 状況に違和感を感じ始めた貴恵 複雑な思いへと変化し始め::: 憑依という可能性を突き付けられた圭介。 最愛の人が生まれ変わったという幸福は