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Instructions:
幸せ?
はいはい
姿・月岡月穂
【性顎木あくみ
【警高坂りと】
ははは
として
・セナ
ははは
ララー曇月岡月穂、
【搾顎木ぁくみ
【業高坂りと】
第壱話婚約
第試話、初めてのあさごはん」
第委語、初めてのゆうごはん。
第四話「おかしな婚約者」
第五話「矛盾する心」
第六話、初めてのデネト(希望)
第七話、初めてのデエト〈復讐〉
書き下ろし小説
目次
お初にお目に
かかります
第壱話|婚約
斎森美世と
申します
無視され
放置されるのには
慣れている
それに
初めての場所
初対面の人の前で
下手に動かない
ほうがいい
いつまでそうして
いるつもりだ
申し訳
ございません
謝れとは
言っていない
顔を上げろ
陶器のように
染みひとつない
真っ白な肌
透けるような
海茶の長い髪
青みがかった瞳
全体的に色が薄く
ほっそりとした
容姿とあいまって
男性とは思えない
儚い美しさだ
けれど
人は見かけに
よらない
今まで何人もの女性が
三日ともたずに
彼との結婚を諦め
去っていったと
聞いている
わたしにはもう彼がない
帰る家もなく
頼れる場所も人もない
いくらつらい目に
あわされようと
ここで
やっていくしか
ないのだ
父と母は
政略結婚だった
その特殊な血を
少しでも濃く保つよう
細まれた録談だった
斎林家は
歴史ある名家で
異能者の家系だ
わたしはそこの
長女として
生まれた
家の決定に
逆らえなかった父は
当時恋人がいたか
別れて結婚を
承諾したのだという
そんな愛のない
夫婦の間に
生まれたのがわたしだ
わたしははじめ
確かに愛されていた
...らしい
記憶はおぼろげだけれども
父も優しく母は目いっぱい
わたしを可愛がっていたと
聞いた
けれど母が病で
この世を去り
父がかつての恋人と
再婚したことで
何もかもが
変わってしまった
桃はは
恋人だった父との仲を
引き裂いた女の娘である
わたしを恨んだ
父は政略結婚の
負い目から継母に弱い
しかもやはり愛する女性との
娘のほうが可愛いのか
異母妹が生まれ
成長するにつれ
わたしには見向きも
しなくなった
異母妹である香耶はわたしよりはるかに器量良しで要領も良い
異母妹である香耶は
わたしよりはるかに
器量良しで要領も良い
おまけにわたしにはない
異能ーー見鬼の才まで
持っている
え!!
...いいじゃないですか?
香耶が継母と共に
わたしを見下すまでに
時間はかからなかった
何よこれ!
こんなお茶
渋くて飲めないわ
すぐに
淹れなおして
申し訳
ありません
もう
お茶も満足に
淹れられない
なんて
恥ずかしく
ないのかしら
本当にねえ
みっともない
こと
もう
何年もこの調子だ
わたしは今年で
十九になった
良家の娘ならば
嫁いでいて
当然の年齢だ
しかし使用人以下の
「扱いを受けている
わたしには稼談などなく
働けど賃金も
もらえないので
...
家を出ることも
ままならない
申し訳
ありません
でした
「生こうして
一生こうして
大人しく
下僕のように
働くだけ
屋敷内の掃除を
することは
あまりない
うっかり
継母や香耶と
何かと用事を
顔を合わせると
言いつけられ
面倒なことが
起こるからだ
使用人たちも
それをわかって
いるので
気を使ってか
わたしの分担は
決まって洗濯や
外の掃除だった
幸次さん
こんにちは
こんにちは
この方は
斎森家と同じく
古くから異能を
受け継ぐ
辰石家の次男で
わたしや
香耶の幼馴染
はい洗濯物が
よく乾きそうで
助かります
今日は
良い天気だね
とても暖かくて
そしてわたしを
京森家の娘として
見てくれる
心を許せる人
わたしがこんな
何でもない会話を
できるのは
今は
幸次さんだけ
わたしのことを
気にかけてくれる
唯一の人
僕が君の父上に
かけあってみるよ
幸次さん...
君は斎森家の娘
だっていうのに
こんな使用人のように
扱われるのはおかしい
幸次!
辰石の
人間であるお前が
人様の家のことに
口を出すな!
結局辰石のおじさまに
ひどく叱られてしまった
ようだけど
わたしの
唯一の味方...
つまらない
ものだけれど
ああ
そうだ
よかったら
どうぞ
流行りの
洋菓子じゃなくて
悪いけど
ありがとう
ございます
あ...いや
ああいうのは
傷みやすいって
聞いたから
使用人の皆で
わけていただきます
そういうことじゃ
なくて...
ところで今日は
どのようなご用
なのですか?
ああうん
まあ...ちょっと
大事な用だよ
?
君の父上に
ね
じゃあ
またあとで
おっとりした方では
あるけれど
曖昧なもの言いは
あまりしないのに
珍しい..
それに普段
和装の幸次さんが
洋装でいらして
何か大切な話をしに
来られたのかしら?
結婚の...
申し込み...?
まさか...
今のわたしは
貧しい庶民の娘と
変わらない
幸次さんとも
もう住む世界が
違うのだから
でも..
美世さん
旦那様が
お呼びよ
え?
話というのは
他でもない
縁談と
この家の
今後のことだ
美世
この斎森家は
幸次君に婿養子に
入って継いで
もらうことにした
お前にも今のうちに
聞いてもらったほうが
いいと思ってな
そして彼の妻として
この家を支えるのは
香耶お前だ
ああ
やはり
父が幸次さんを
入り始にと考えて
いることは前から
気がついていた
だから
もしかしたらと
淡い期待を抱いて
しまっていた
もしかしたら
唯一心を許せる
幸次さんと結婚できる
かもしれない
もしかしたら
京森家の女主人として
存在を許して
もらえるかもしれない
もしかしたら
香耶はどこかに
嫁いでいって
もう比べられずに
済むかもしれない
もしかしたら
父とは昔のように
話せる日が来る
かもしれない
なんて
馬鹿なことを
考えたのだろう
全部
ありえないに
決まっている
美世
お前には
嫁いでもらう
嫁ぎ先は
久堂家
当主の
久堂清霞殿の
ところだ
...
はい
まあ!
良かったじゃない
久堂家と言ったら
この国では格上
資産も権力も
素晴らしい
名家でしょう
あの久堂家に
嫁けるなんて
けれど
当主の久堂清夜は
冷酷無意悲として
有名な人物
そんな男性の詐へ
嫁に行けという
結婚に関しても
多くの良家の女性が
彼と婚約をして
三日ともたずに
逃げ出すほどだと聞く
女学校にさえ
通っていない
わたしが
そして一度
家を出たからには
もう二度と
斎森家の敷居を
勝がせぬつもりだろう
久堂家の当主となど
上手くいくはずがない
ことを知りながら
取り柄が何もない
あなたにはもったい
なさすぎるお話ね
ああもちろん
断ることは許さない
お断りするなんて
失礼なことは
できないわねえ
この斎森家を出れば
少しは心が楽に
なるかと思って
いたけれど
これからすぐに
荷物をまとめ
それが済み次第
久堂殿の屋敷に
行くように
嫁ぎ先が
久堂家では...
早々に
追い出されるか
あるいは
冷酷無慈悲と
噂の相手に
斬られるか
美世
幸次さん?
ごめん
僕は本当に
不甲斐ないね
幸次さんが
謝ることでは
ありません
結局何も
できなくて...
今だって
なんて言ったら
いいのか
ただ運が
悪かっただけ
ですから
違うっ
運なんかじゃ
いいのです
違いません
だって
わたしは別に
気にしていません
嫁ぎ先で
幸せになれるかも
しれないのですから
もしかしたら
微塵も思って
いないことを
言い聞かせるように
言葉が出てくる!
...君は
どうして助けて
くれなかったのかと
僕を恨んで
いないのか
どうか責めて
ほしい
恨んでなど
いません
そんな気持ちは
もう忘れました
...ごめん
本当にごめん
僕は君を
助けたかった
また昔のように
僕は
普通に君と
笑いあいたかった
君を
幸次さん
何を話して
いるの?
なんでも
ないよ
名家の生まれで
能力にも容姿にも
恵まれた彼に
唯一欠点が
あるとすれば
これだろうか
彼は臆病だ
この場で彼が
何か意見したならば
きっとわたしか
香耶のどちらかを
傷つける
優しすぎるが
ゆえに
それを理解して
結局口を噛むのだ
僕は君を
彼が何を
言おうとしたのか
わからないし
けれど
そんな優しい彼に
根本的な解決には
至らずとも
幸次さん
今さら
知りたいとも
思わない
何度も救われたのは
確かだから
今まで
ありがとう
ございました
変付けない
使用人のお仕着せ
同僚皆から
譲り受けた
お下がりの
普段着と日用品
久堂家へ行くときに
祖末な格好では
斎森家の評判に
傷がつくと
父から渡された
上等な者物
お父さまはやはり
わたしが余所行きの
着物のひとつさえ
持っていないことを
知っていて
放置していたのだ
荷物をまとめは
したけれど
持っていくものも
大してないわ
昔持っていた
お母さまの
形見の着物も
高価な小物も
すべて捨てられるか
義母と香耶に
持っていかれて
しまったから...
思い出すのは
苦しかった
記憶ばかり
そして
明日からも
きっと幸せなど
待っていない
早くこの命が尽きるのを
ただ期待して眠る
それだけ
わたしには
もう後がない
帰る家もなく
頼れる場所も
人もない
このあといくら
つらい目に
あわされようと
お初にお目に
かかります
斎森美世
と申します
ここで
やっていくしか
ないのだー
新しい場所。新し
せいかっ
ごも繰り返される生活は変わらず
"cl
幸せな
はい
だ
第2話「初めてのあさごはん
...
【原作・顎木あくみ(富士見上交廉バムLEOKAWA刊)
まんが寝こうさか
【漫画・高坂りと】【キャラクター原葉・月岡月穂】
Mop:2018LicersetbykADOKAWACDFPORATON
ない...!
ない
ないっ!
どうして
幸せを諦められない故、辛かった子供の頃の記憶...。
どこに
行ったの...!?
お母さまの
形見の着物も
帯も
装飾品も
美世お嬢さま
申し訳ありません
申し訳ありません
鏡台や口紅まで
すべて
なくなっている
私が買い出しに
行っている間に..
きっと
お継母さまが
やったのよ
お継母さまは
いつも
わたしさえ
わたしのお母さまは
いなければ...
泥棒だって言って
お継母さまの
ところへ
行ってくるわ
大丈夫よ
わたしのことを
嫌っているもの
お嬢さま
おひとりで!?
そんなっ
いざとなったら
お父さまに
言うから
いいや...っ!
お継母さまっ
蔵はいやっ
人を盗人呼ばわり
だなんて性根が
腐っているんだわ
反省するまで
わたくしの前に姿を
現さないでちょうだいっ
本当
あの泥棒猫の
娘なだけ
あるわね
出して
ふん
ごめんなさい
誰か
出して!
ごめんなさい
みっともない
ごめんなさい
ごめんなさい
ごめんなさい
ごめんなさい
ごめんなさい
幼い頃の夢を
見るなんて...
ああそうだ
わたしは久堂家に
来たんだ
とても布団だめ...
ここでは
私の言うことに
絶対に従え
私が出ていけと
言ったら
出ていけ
死ねと
言ったら
死ね
別に何と
いうこともない
はい
わたしにとっては
今までと
変わらないこと...
久堂家は異能持ちの
家の中でも
名家中の名家である
異能を
受け継ぐ家は
歴史も長く
どこも名門で
通っているが
久堂家はその中でも
特に飛び抜けており
筆頭と名高い
爵位を
有していて
財産も莫大
各地に
広大な土地を
所有している
当主の名は
久堂清霞
年齢は二七
軍では少佐として
ひとつの部隊を
率いる立場だという
帝大出身で
卒業後難関の
士官採用試験に合格
そんな
若く立派な人物で
財もあるとなれば
さぞ豪勢な暮らしをしているだろうと思っていた
さぞ豪勢な暮らしを
しているだろうと
思っていた
けれど想像に反し
本邸から離れた郊外に
質素な別宅を構え
静かに住まう
生活をしていた
ふかふかの布団で
眠ったからかしら
疲れていないし
体調もいい
ついいつもと
同じ時間に起きて
しまったけれど
わたしは
何をすれば
いいのだろう
三般庶民の
家ならともかく
久堂家当主の
妻となれば
それほど早くは
起きないだろうし...
ましてや妻が自ら
炊事や掃除洗濯は
しない
名家の妻ならば
華道や茶道を
嗜むもの...
昔はやっていたが
やめさせられて
ずいぶん経つ
そもそも
十分な教育を
受けていない
でもわたしは
何もできない
習った内容もおほろげで
到底使い物にはならない
わたしが
久堂家の女主人になど
なれるわけもない
では
では
わたしの
やるべきことは?
炊事をする嫁など
久堂家当主の妻に
ふさわしくないと
思うけれど
今のわたしに
やれることは
これくらい
それに
ふさわしくないのは
初めからだったわ
でも斎森家で
していたことが
役立つとは
思わなかった
斎森家では
わたしの食事は
待っていても
出てこなかった
あの家でわたしは
使用人でもなく
家族の一員でも
なかったから..
美世さま?
おはよう
ございます
美世さま
ゆり江さんは
適いの使用人で
おはようございます
ゆり江さん
旦那さまが
幼い頃から
親代わりに世話を
なさってきた
らしい
あの...
勝手をしてしまって..
むしろ奥さまになる方の
お手を煩わせてしまい
申し訳ありません
わたし
余計なことをして
しまったかもしれない...
勝手になんて
減相もありませんよ
ゆり江はもうこんな
しわくちゃの婆
ですから
お手伝い
していただけて
助かりましたよ
美世さま
ありがとう
ございます
...い
え..
さあさ
坊ちゃんが起きるまでには
まだ時間がありますからね
他のことも
やっておきましょう
ここはお任せして
よろしいですか
美世さま
はい
あの
わたしで
よければ
ではお願い
いたします
冷酷無慈悲の
主人に仕えるならば
もっと人形のように
淡々とした冷たい人だと
思っていたけれど
ゆり江さんは
旦那さまを
坊ちゃんと呼ぶ
幼い頃から
お世話をしてきた
名残だろうか
ゆり江さんは
とても優しい方...
おはよう
ございます
坊ちゃん
朝ごはん
ですよ
けれど...
それを許している
旦那さまも
そこまで厳しい人では
ないのかもしれない
おはよう
...ゆり江
人前で坊ちゃんと
呼ぶのはやめろ
はいはい
坊ちゃん
今朝は
美世さまが料理をして
くださったんですよ
...そうか
ええ!
それはもう
手際もよろしくて
とても助かりました
お前
え...
先に
食べてみろ
あるじより先に
料理に箸を
つけるわけには!!
食べられ
ないのか?
あの...
ふん
毒でも盛ったか
わかりやすいことだ
え...
こんな
何が入っているか
わからないものは
食えん
片付けておけ
分かると..
次はもっと
上手くやることだ
失敗してしまった
対異特務小隊
帝国陸軍の中でも
飛び抜けて
異質なその隊は
帝国内で起こる
怪異に関係する
あらゆる案件に
対処するため
設立された
隊員はほぼ全員が
見鬼の才ー
怪異を見る
ことのできるか。
もともと
見鬼の才がある者や
真能者は数少ないため
一般にはあまりに
知られていない
部署でもあった
あるいはそれ以上の
人智を超えた能力を操る
異能者で構成されている
そんな
特異な隊を率いる
久堂清霞少佐は
現在書類の処理に
追われている
わたしの幸せな結婚
3.「初めてのゆうごはん」
はやっ、勇太あくんはもう少し減れるのはありますが、
まんがこうさんが
【漫画・高坂りと】
ラクター原案・月岡月穂】
げんさくおだとぜ!!
集中出来て
いないな
原因は
わかっているが...
こんな
何が入っているか
わからないものは
食えん
坊ちゃん
何もあんな
言い方をすることは
ないでしょうに
美世さまは
一生懸命お食事の
用意をなさって
おいででした
ゆり江には
美世さまが毒など
入れるような方には
思えません
会ったばかりの
信頼関係もない人間の
作ったものなど
ましてや
斎森の娘
口にできないのは
当然だろう
あの家なら私を葬り
久堂家の地位に
とって代わろうと
画策していても
不思議はない
美世さまは
今までいらした
方々とは
どこか違います
ひたすら
私に媚を売り
裏でゆり江を
虐げる者もいた
この質素な家を見て
嫌悪し帰る者や
怒り出す者もいた
食事が気に入らない
部屋も変えろと
我がままを言う者もいた
名家の当主で
ありながら
このような場所で
暮らすのは一般的
ではないという
自覚はある
誇り高いのも
気位が高いのも
否定する
つもりはない
ゆり江は
うれしかったの
ですよ
だが
相手を理解しようとせず
己の意見を通そうとする
女はまっぴらだ
しかし
自惚れるなと思い
いつも破談になる
気を遣って
仕事を手伝って
くださった方は
初めてでしたから
...そうか
いって
らっしゃいませ
無表情に
戻っている...か
いってくる
まるで
使用人のようだ
普通に名家の令嬢として
育てられたのなら
あのようにはなるまい
今回も早々に
追い出すつもり
だったが...
それに斎森の娘は
結婚相手として
かなり良い条件が
そろっている
しばらく
様子を見るか
おかえり
なさいませ
旦那さま
...ただいま
あの
旦那さま
今朝は申し訳
ありませんでした
旦那さまの
信用できない者の
お立場であれば
作ったものなど
口にできる
はずもないと...
少し考えれば
わかること
でしたのに
出過ぎた真似を
しました
夕食はすべて
ゆり江さんが
作っていかれて
配膳したものを
そのまま
ご用意しています
どうか
お許しください
誓って毒など
入れておりません
別にお前を
本気で疑った
わけではない
こちらも
言い方が
きつかった
ただ勝手に
警戒して
警告しただけ
いえ!
とんでも
ありません
成圧しているつもりは
なかったのだが
わたしが
いけなかったの
ですから
しかし
あらためて見ると
とても名家の令嬢とは
思えないな
古着とも呼べぬ
粗末な着物
ひどく痩せ細った
首許や手首
あかぎれだらけの
白い指先
都会に住む娘ならは
庶民だってもう少し
良い格好をしている
お前
傷んで
艶もない髪
食事はもう
とったのか?
え...えっと
わたしは...
とったのなら
とったと言えば
いいだけの話を
食べて
いないのか
そう言わないと
いうことは!
家族やそれに進する
関係の人間同士で
ともに食事をするのは常識...
と認識して
いたのだが
なぜ自分の分を
用意しない
これは本格的に
おかしな娘が
来てしまった
旦那さまに
ため息を
吐かれて
しまった...
いよいよ
追い出されるかも
しれない
追い出されたら
もう帰る場所の
ない身
ゆり江は
お前の食事を
用意しなかったのか
住み込みで
働けるところを
探すか
あるいは
違うんです
あの...
食欲がなくて
わたしが
ゆり江さんに
いらないと
言ったのです
食欲が?
いえ
大したことでは
食欲が
ではなく
食事を抜かざるを
えなかったことが...
具合でも
悪いのか
たまに
あるんです
まあ
いいだろう
着替えてくる
冷えているな
申し訳
ありません
お前は
息をするように
謝るのだな
なぜだ?
すぐに謝って
しまうのは
実家でそうして
きたから
納母や異母妹に
目をつけられ
文句を言われ始めたら、
謝罪以外
口にすることを
許されなかった
即座に謝らなければ
嫌がらせや罵倒が
ひどくなるので
反射的に謝罪が
口につくように
なってしまった
そんなことを
話せるわけがない
ここにいなくても
継母や異母妹...
父でさえも
恐ろしい
言わない、か
申し訳
謝るな
もう
謝るな
謝罪は
しすぎると
軽くなる
正直怖い
にこりともせず
今朝の冷たい顔と声も
思い出すだけで
震えあがりそうになる
.....
あの美貌が
余計に恐怖を煽る
けれど
わたしの食事を
気にする
ということは
今のところ
追い出そうと
しているわけでは
ないのだろう:
わたしに謝ったり
体調を心配したり
坊ちゃんは
本当は優しい
お方なのですよ
冷たいだけの
人でもない
...と
少しわかった
ごちそうさま
あの
自分でやる
お風呂をすぐに
沸かします
ですが
うちの風呂は
異能を使って
沸かせる仕組みに
なっている
私以外が
使うのは
難しい
発火能力
どうした?
わたしに異能が
ないことを
わたしには
縁のないもの
ななんでも
ありません
おそらく
旦那さまは
ご存じない
やってくる妻候補に
いちいち興味を持っては
いないようだし
わたしが斎森家の
娘という時点で
異能ないし見鬼の才を
持っていると
思ったのだろう
ふさわしくない
わたしは久堂家の
当主の妻に
ふさわしくない
妻に似合うのは
香耶のように
何でも持っている
女性なのだろう
【キャラクター原案:月岡月穂】
【原作:顎木ぁくふふふはははぁんっ!!!?
【漫画高坂りと】
抑えた気持ちが涙もなって
零れ落ちる
悲しい気持ちで辛い気打ち
そして嬉しい気持ちで
幸せぇ
第話
仕事は
「おかしな
婚約者」
cAkuniAgleagi2018L
いいぞ香耶
お前には
見鬼の才がある
わたくしの娘
ですもの
香耶お嬢さまは
見鬼の才を
発現させたらしい
香乃子
お前もよくぞ
この娘を
産んでくれた
当然ですわ
まだ
三歳でしょう
すごいねえ
それに比べ
美世お嬢さまは
能力の発現は
もう絶望的だって
ご両親ともに
異能持ちだったのに
才能ないんだねえ
かわいそう
わたしの
居場所が
価値が
どんどん
なくなっていく
屋敷の中でも
香耶が敬われ
わたしの扱いは
ぞんざいに
なっていく
わたしは
いらない子ね
この家に
生まれなければ
よかったと
何度思ったか
普通でいい
生活が
苦しくてもいい
温かい家に生まれたかった
温かい家に
生まれたかった
お嬢さま...
......!
ぎゃ
ま
わたしのことを
大事にしてくれた
使用人の花...
わたしが蔵に
閉じ込められた
あのときに
継母に解雇
されてしまってから
会っていない
一晩も連続で
悪夢を見て
しまうなんて...
斎森家を出ても
わたし自身の
価値のなさを
忘れてはいけない
という戒めだ
自分が
どれだけ平凡で
使えない
人間かなんて
わかっているわ
この着物も
もう寿命ね
確か斎森の
使用人のひとりに
着なくなったからど
譲ってもらったもの!!
もらったときに
すでに相当
着古されていたし
けれどただでさえ
少ない衣類が
こうしてどんどん
使い物にならなく
なっていったら
その後
何度も直して
布も薄く
なっている
そのうち着るものが
なぐなってじまう
ゆり江さんに
裁縫道具を
借りられるか
聞いてみよう
あら
おはよう
ございます
美世さま
ゆり江さん
おはよう
ございます
昨日の
朝のことが
ありますから
気になって
早く来て
しまったの
ですよ
今朝は
お食事の用意
どうされます?
あ...それは
え...
朝食を...?
ああ...
今朝は食べずに
残して悪かった
わたしは
構いませんが...
無論
また明日
作ってくれ
本当に毒を
入れる気ならば
容赦しないが
まあまあ
坊ちゃんたら
美世さまの手料理を
食べたいなら
そうおっしゃれば
いいのに
いえ
そういうわけでは
ないと思いますが..
フフフ
では美世さま
このゆり江にも
手伝わせて
くださいな
ははい
お願いします
ゆり江さんは
とても手際よく
仕事をこなしていく
なので
そばで見ている
だけで勉強になる
はい
ところで
美世さまは
ずいぶん早起き
ですのねえ
あの
ゆり江さん
実家ではずっと
早く起きていたので:
まあそうなの
着物を繕いたいなどとは
さすがに言えない
このおうちに
裁縫道具は
ありますか?
ええ
お使いになるなら
ありますよ
あとでお部屋に
お持ちしましょうね
ありがとう
ございます
裁縫は
名家の令嬢も
日常的にする
ことなので
怪しまれ
なかったようだ
おはよう
おはよう
ございます
旦那さま
一時でも
これほど麗しい人の
婚約者であることを
おこがましく
感じてしまう
では
いただこうか
ははい...
お前も
食べるんだぞ
はいもい
申し訳...
味は―普通
舌が肥えて
いるであろう
旦那さまには
不味く感じられて
しまうかもしれない
いえ
いいただき
ます
不味く感じられてしまうかもしれない言葉
美味い
ゆり江とは
少し味付けが
違うようだが
悪くない
誰かにこうして
褒められたのは
認めて
もらえたのは
何年ぶりだろう
あ...っ
ありがとう
ございます
...なぜ
ここで泣くんだ
黒曜石のような
しかしどこか
ガラス玉のように
空虚な瞳が
濡れて
光っていた
私の言葉が
気に入らな
かったのか?
褒めたつもり
だったのだが
ゆり江と比べた
物言いが彼女を
傷つけたのかも
しれない
けれど
美味いと言ったのは
まぎれもなく
本心なのだ
慣れ親しんだ
ゆり江の味とは
違うのに
すんなりと
舌に馴染んで
素直に感心した
ゆえにそのまま
口にしたのだが
まさか
泣かれて
しまうとは
も
もっ
申しわ
け...っ
...だから謝るな...
泣きながら謝られたら
余計にどうしていいのか
わからない
あり
ませ...
...と
取り乱して
しまい
申し訳
ありません
ああの
う
うれしくて
つい涙が
お料理を
褒められたのは
それが
本質的な理由では
ないように思うが..
初めてで..
背景が
見えない
斎森美世
という女性の
今までの人生
どのような環境で
どのような大人に囲まれ
どのような教育を受けて
育ってきたか
他人と向き合ったなら
多少は透けて
見えるはずの背景が
いや正確には
私の知る令嬢たちとは
彼女の場合は
まるで見えない
ゆり江
私の感覚が
おかしかったら
言ってほしいのだが
印象がかけ離れ
すぎていて
想像もつかない
もしや彼女は
普通の名家の娘として
育ってはいない...
のだろうか
昨日からずっと
抱いていた違和感
久堂家当主の妻に
おさまるために
演じている可能性も
考えていたが
さきほどの涙で
ある程度の
確信を持った
あの涙は
演技では
ありえまい
彼女は
正真正銘
私の
なにげない言葉で
泣いたのだ
そうですわねえ...
事情を尋ねたら
話すと思うか?
だろうな
ええ
ええ
それは難しい
でしょうねえ
かしこまりました
ゆり江
それとなく探りを
入れてみてくれ
私は外から少し
斎森を調べてみる
それにしても
坊ちゃん
いつになく
婚約者さまに
興味津々
ですこと
...言うな
わかっている
認めよう
これまで会ってきた
結婚相手候補の
女性たちの中で!
思い出してみると
最初から彼女は
変わっていた
彼女に一番
興味を
引かれている
自己紹介のあと
ほぼ無視されて
いるにもかかわらずに
こちらがいいと言うまで
頭を上げようともしない
令嬢など見たことも
聞いたこともない
照れなくとも
よろしいのですよ
まあまあ
照れていないし
お前が考えて
いるような意味で
彼女を知ろうと
しているわけでもない
そんなことじゃあ
一生独り身ですよ
...
失礼な
失礼な
と言いたい
ところだが..
婚約者が
これが出して
記憶の
彼女らに未練など
欠片もないが
ならば自分は
どういう相手なら
受け入れるのかと
自問しても
よくわからない
ゆり江は
美世さまは良いと
思いますよ
そうか?
母のような
典型的な
ご令嬢との結婚は
ごめんだ
坊ちゃんの
奥さまに
ええ
そうです
やけにきっぱり
言い切るな
だった三日の間に
どうやらゆり江は
彼女をいたく
気に入ったようだ
...
斎森家とは
どのような家なのか
彼女はどんな環境で
育ってきたのか
いって
らっしゃいませ
斎森家は...?
久堂家と同じ!!
異能の家柄ゆえに
当主の名くらいは
覚えているが
それだけだ
婚約関係を
続けるにしろ
解消するにしろ
やっかいな事実が
出てこなければいいが
詳しく調べる
必要があるだろう
ただでさえ多くない
異能持ちの家が
さらにどうにかなる
事態はごめんだ
斎森の
話が違う
だろう
話とは?
わかって
いるだろう
なぜ美世を
久堂家にやった
辰石の長男にと
頼んだはずだが
辰石と久堂
その二つの
選択肢があれば
当然久堂を選ぶ
美世はあの
薄刃家の娘を
母に持つのだぞ
だがあれは
薄刃の異能を
我がなかった
言うまでも
ないはずだ
だとしても
美世の子が
薄刃の異能を
継がないとも
限らない
それをー
人心にかじゃ
干渉する力だ
それにこれ以上
久堂家が
強くなれば
そうまでして
薄刃の力が
ほしいのか
不要だと
いうほうが
嘘だろうが
我々の
立場とて危うい
では美世が
久堂に捨てられた
暁には
そちらで嫁に
迎えればいい
どうせ上手く
いくはずも
ないのだ
拾って
もらえるとなれば
あれも泣いて
喜ぶだろうよ
気に入らん
香耶を重要視
しすぎるあまり
美世の価値を
見誤っている
この男が
文字通り
金の卵を産むかも
しれない娘を
わざわざ
放り出すなど
正気の沙汰
ではない
では斎森家は
今後いっさい
美世の処遇に
口出ししないと
いうことで良いか
ああ
正気の沙汰ではない
捨てたも
同然の娘だ
どこでどうしようが
生きていようが
死んでいようが
興味はない
そうか
了解した
久堂などに
あの娘を
奪われてたまるか
美世さま
お裁縫道具
お持ちしましたよ
こんなに綺麗な針箱
本当に使っても
いいのでしょうか
こAkamiAomogl2018.
第5話「矛盾する心」
もちろん
かまいませんよ
ああでももし
新品がよろしければ
ご用意しますけれど
使い古していて
使いにくい道具も
あると思いますし
いえ!
とんでも
ありません
もとはといえばほぼ身ひとつでここへ来た私がいけないのだ
もとはといえば
ほぼ身ひとつで
ここへ来た私が
裁縫道具くらい
いけないのだ
自分で持ってくる
べきなのに
...でもおかげで
ほつれた着物が織える
無一文の
自分が情けない
ありがとう
ございます
あの
ゆり江さん
なんでしょう
旦那さまは
今朝のこと
怒る?
怒っては
いらっしゃい
ませんでしたか
坊ちゃんが
でございますか?
いきなり
泣き出したりして
きっと旦那さまは
嫌な思いをしたに
違いない
異母妹ほどの
器量良しの
相手であれば
わたしの泣き顔など
醜くて見られた
ものではないだろう
男性はよろこんで慰め
抱きしめるだろうが..
ずっと
わたしの存在自体が
不快だと言われ
続けてきた
涙などこぼせば醜い。
みっともないと
ますます顔をしかめられた
そうしていつしか
夢の中での無意識の
涙以外には泣くことを
忘れていたというのに
まさか!
そのようなこと
ありませんよ
美世さま
泣くことは
悪いことでは
ありませんよ
むしろ涙を
お気持ちを
我慢して
ため込んで
しまうほうが
よほど
悪いのですよ
そう
自然に
流れてきた涙は
そのまま流せば
よいのです
ですか?
そのくらいで
坊ちゃんは
お怒りに
なりませんよ
本当だろうか
ゆり江さんが
そう言うなら
きっとそうなのだ
けれどもわたしは
異能も見鬼の才も
持たぬ身
家名を気にする父が
恐ろしいので
言い出せずにいるが
勘違いしては
いけない
いずれは
旦那さまに知られ
ここを出ていく
日が来る
この生活は
所詮二時のもの
さてゆり江は
お台所に
おりますから
足りないものが
あったら言って
くださいな
お昼の
準備ですか?
それなら
わたしも
いえいえ
美世さまは
そのままで
自分のことなんて
後回しにしなくちゃ
いけないのに
できたらお呼び
しますからね
これでは本当に
ただの穀潰しに
なってしまう
けれどせっかく
ゆり江さんが
作ってくれた時間だ
今のうちに着物を
繕ってしまおう
お前は日中
何をして
過ごしている?
ゆり江も
早めに帰るし
家事が
あるとはいえ
時間に余裕が
あるだろう
たしかに
ゆり江さんは
夕方前に
帰ってしまう
ゆり江さんから
雑誌を借りて
読んだり
しています
破れたり
破れそうな着物を
直しているなどと
言ったら
旦那さまやゆり江さんに
できれば
嫌われたくないので
誠実であろうと
するけれど
新しい着物を
ねだっていると
思われそうで嫌だ
矛盾している
どうしても実家や自分の
これまでの生活について
告げ口のようなことは
したくなくて隠してしまう
受け入れられる
資格がないと
知りながら
嘘や隠し事は
したくないのに
嫌われたくないと
思ってしまう
斎森のことも
自分のことも
言わずにいるなんて...
...実は
今度の休日に
出かけようかと
思っている
はい
お前
ここに来てから
一度も街へ
行っていないだろう
はい
...行きたいと
思わないか
え
行きたいかと
聞かれても
よくわからない
高等小学校を
卒業して以降
はじめは
街の喧騒が恋しく
自由だったときが懐かしくて
悲しくなることもあった
斎森家の敷地内から
ほぼ出ずに過ごしてきた
しかし今となっては
自分で自由に使える
金もなく
街へ行ったところで
どうなるという
気持ちのほうが強い
あの
わたし
街のにぎわいに
心を踊らせる年頃は
とうに過ぎてしまった
行け
ません
なぜ?
用事も
ないですし
迷惑ではないし
私に付き
用事などなくても
添っていれば
いいだろう
いいだけだ
旦那さまと
一緒になんて
ご迷惑はー
でも
お邪魔では
まったく
邪魔ではない
服装はここへ来た
初日のものと
同じでいい
いえ...
他に
心配事は
あるか?
では
そのつもりで
ごちそうさま
また旦那さまを
呆れさせてい
じまったかじら
せっかく気を遣って
誘ってくださったのに
はっきりしない
自分が嫌になる
一緒に...街へ..
出先で旦那さまに
恥をかかせないよう
不快にさせないように
今から準備して
おかなければ
お母さま...?
え...?
お母さま
ーー
何と仰って...
待ってください
真一さま
違うのです!
何が違うと
いうんだ
澄美
美世は...
異能を
持たない
それ以外に
何がある
どうか
...我が家が
異能とは何も
関係がない家で
あったならば
どうかこの子を
見捨てないで
ください
その子を
愛せただろうな
ごめんなさい
美世
不甲斐ない
私を許して
謝りたいのはお
わたしのほうです
お母さまー
何の力もなく
人を不幸にするだけの
わたしのほうが罪深い
でも大丈夫よ
あなたが
もう少し大きく
なったらー
夢...
大きく
なったら...?
お母さま
すごく綺麗だった
わたしの髪も
きちんと
手入れしたら
いえ
無理ね
美世さま
入っても
よろしいですか
あんなふうに
なるかしら
どうぞ
お綺麗ですよ
美世さま
...いえ
お化粧は
されませんか?
えええと...
お化粧があまり
上手くなくて
それならゆり江に
お任せくださいな
わたし
でも道具も
持っていなくて。
平気ですよ
ほら
お道具はこちらに
ありますからね
わたしがあまり
物を持って
いないこと
きっともう
気づかれている
はい
できましたよ
そろそろ
出たいのだが
い
今行きます!
ゆり江さん
ありがとう
ございました
いえいえ
楽しんできて
ください
申し訳:・
いいえ
お待たせ
しました
いや
待ってはいない
急かして
悪かった
行こうか
はい
今日は
旦那さまと
出かける日
いよいよだ
ああの
mazon(原作:顎木あくくみ、富士見工文庫KLDOOKAWATANA
気こうさかなか
【漫画:高坂りと】
今日はどこへ
行くのですか
初めての二人でのお出かけ
しかし、【キャラクター原案,月岡月穂】
そういえばあんってわかってるかっとは、
edbyKAOK
ああ
言って
いなかったか
まずは
私の仕事場へ
行く
はい
このデュト壱」
!?
仕事場と
いうことは...
帝国陸軍本部
ですか?
わたしのようなものが
行ってもよいので
しょうか?
そんな顔を
するな
軍本部には
行かない
え...ですが
仕事場
なのです
よね?
ああ
だが軍人の職場は
軍本部だけではない
私が隊長を務める
対異特務小隊は
軍の中でも異質だ
軍本部とは別の
緊張しなくても
小さな施設にある
大丈夫だ
はい..
それに
この車を置きに
行くだけだ
普及し始めたばかりの
自動車を置ける場所は
限られている
それで職場に...
そ
そうですか
着いたぞ
なんだか
小学校の
校舎みたい
では行くか
あれ~
隊長?
五道
隊長
今日は非番じゃ
なかったですか?
ああ
非番だ
車を置きに
来ただけだ
なあんだ
で
そっちの方は?
どちら様?
私の連れだ
詮索するな
ふーん
まいいか
隊長明日はちゃんと
出勤してくださいよ
当たり前だ
お前こそ早く
持ち場に戻れ
へいへい
了解です
あれは一応
私の側近の男で
五道という
じゃ
ああ見えて
異能者としては
できるほうだ
不本意だがな
では行こうか
どこか行きたい
ところはあるか?
えっ
何か
買いたい物や
ほしい物は
ないのか?
いいえ
はい
特には
今日は本当に
旦那さまに
付いて行くだけの
つもりで来たから
まさか私の希望を
聞かれるなんて
思わなかった
ふ
そうか
では
私の買い物に
付き合って
もらおうか
はいっ
楽しいか?
も申し訳
ありません!
わたし
付き添いが
主人を放って
景色を見るのに
気をとられるなんて
ありえない
お上りさんのような
振る舞いで
恥をかかせて
しまったのでは...
気にする
ことはない
好きなだけ
楽しむといい
私も誰も
それを咎めたり
しない
でも
大丈夫
私への迷惑は
考える必要はない
お前を誘ったのは
他の誰でもない私だ
いいな?
...はい
だがよそ見をして
はぐれてくれるなよ
はい
気をつけます
よろしい
歩調を合わせて
くださっている
この人のどこが
冷酷無慈悲
なのだろう
こんなにも
優しいのに
わたしがこの人と
釣り合うだけの
ものがあったなら
きっとずっと
付いて行くのに
ここが
目的地だ
屋ましずす
ここは久堂家が昔から
贔屓にしている店だ
いらっしゃいませ
久堂さま
大きい...
今日は
世話になる
事前にご連絡
いただいたお品
何点か選ばせて
いただいて
おりますわ
奥へどうぞ
お嬢さまも
こちらへどうぞ
ぜひ店内を
ご覧になって
くださいませ
旦那さま
わたしはお店の物を
見せていただいて
お待ちしていますので::
好きにするといい
気に入ったものが
あれば言え
帰るときに買おう
買ってもらうなんて
そんな恐れ多い
いずれは
追い出される身
見るからに高級な
物ばかりなのに
何かを買って
もらうのは
心苦しい
ふふふ
久堂の坊ちゃんも
ようやっと
ですわねえ
別にそういう
ことでは
恥ずかしがらなくても
よろしいですわよ
お坊ちゃんが
女性を連れて来るなんて
初めてじゃありませんか
確かにそれは
そうなのだが
美世さまは
古着をご自分で
縫われて直して
いらっしゃい
ました
お止めしようかと
思ったのですが
美世さまは
あまりそのことを
知られたくない
ご様子で...
そうか
今まで結婚相手候補たちには
はあ
何かを買い与える気に
ならなかったが
いや
彼女に特別な意味が
あるわけではない
貧しい
農民以下の古着
色や柄に違いはあれど
どれもぽろぽろで
さすがに心が痛んだ
彼女は...
...で
ふふ
そうですわねえ
こちらのような
淡い色のものが
お似合いになると
思いますよ
ふむ
彼女に
合いそうな
品はあるが?
季節柄
淡い色の着物は
確かに...
あれは?
あれも良い
ですわね
今から
仕立てるとなると
季節が合わなく
なるかも
しれませんけれど
美しい桜色だ
淡いのにどこか
鮮やかな色合いで
目を引く
この色は
似合うだろうな
旦那さま
ーっ
何をやって
いるんだ私は
彼女に特別な
意味はない
ないのだ
勝手に想像されて
彼女も気持ち悪く
思うだろう
いやむしろ!
想像しようとした
自分が気色悪い
あの
桜色のもので
ひとつ
仕立ててくれ
あら
良いのですか?
いい
来年の春にまた
着られるしな
来年..
あと
ここらの生地で
何枚か仕立てて
くれるか
かしこまり
ました
ああそうだ
こちらは今日
お持ち帰りで
よろしいですわね
ああ
ありがとう
もらっていく
久堂さま
なんだ
いいですか
あのお嬢さまは
絶対に離しては
いけませんわよ!
はあ?
あの方はいわば
原石ですわ
あの髪も肌も
お顔でさえも!
計り知れないほどの
伸びしろがございます
磨けば
お坊ちゃんと並んでも
遜色がないほどの
美人になりますわ
今日お買い上げ
くださった品々は
始まりにすぎません
そうすれば?
美しい女性を
遠慮なく
着飾る楽しみが
生まれますわ
これから
お坊ちゃんの愛と
財力で離さず磨き
続けるのです
そうすればー
そして
ぜひまた当店で
お買い物を!
それが本音か
けれどそれも
悪くない
いや
私は何を
考えているのだ
愛などと
愛などと
そういう
ものではないと
言ったはずだ
何を見て...
先ほどの
桜色の反物
...お母さま
それが
気になるのか
だ旦那さま!
あのこれは
欲しいとか
そういうことでは
なくてっ
...
...母の
形見に
似た色の着物が
あって...
いえ
もうないの
ですけれど
懐かしかった
だけなのです
いいえ
そうか
他に何か
気になったものは
あったか?
今のところは
間に合っている
ので
彼女は
自分からは
欲しがらない
遠慮して
遠慮して
屋ましず
だからこそ私も
今日この店に来た目的を
彼女に話さなかった
話せば申し訳なさで
いっぱいになり
死にそうな
顔になる彼女が
容易に思い浮かぶ
その判断は
間違って
いなかった
では行こうか
はい
またのお越しを
お待ちしております
初めてのデヱト
うしろめたい気持ちを抱えたまま、デェトは続く...
美味いか?
ははい
デヱトは続く...。
けれど
甘くて
美味しいです
普通に歩いて
いるだけでも
旦那さまは
周囲の注目を
集める
見られて
いるわ...
その気持ちは
よくわかる
久堂清霞
という人は
絶世の美青年だ
一挙手一投足が
とても優雅で
隙がなく
女性顔負けの
目を奪われる
美しい髪を持ち
とりわけ
若い女性から
わたしが
ものすごく
睨まれる
どうして
あんな子が
あんな素敵な人と
といったところ
だろうけれど
わたしは
ただの
にゃがーーん.
けれど
チラ
和んでどこかへ
いってしまう
そんな
くだらない
考えも
なんとなく
機嫌の良さそうな
旦那さまを見れば
普段は
どちらかというと
無表情というか
仏頂面といった
感じなので余計に
あまり
美味しいと
思っている
顔ではないな
そ
そんなこと
ありません
...
お前は本当に
笑わない
...申し訳
ありません
いや
責めている
わけでは
なくてだな
ただ
笑っている
ところを少し
見てみたいと
いうか
興味が
あるというか
旦那さまは
その
変わって
いらっしゃい
ますね?
.....
あ
もう
申し訳
わたし
ありません!
生意気な
ことを
久しぶりに街に出て
いろいろなものを見て
気持ちが浮ついていた
最悪だ
これだから
わたしは
だめなのだ...
変わっているなんて
主人に対して
失礼すぎる
きっと
香耶ならば
こんな失敗は
しない
わたしには
嫌なことばかり
してきたけれども
要領がよく
決して誰かに
見咎められる
ことはない
顔を上げろ
私は
怒っていない
だからそんなふうに
小さくなる必要はない
私たちは
このままいけば
結婚する仲だ
思ったことは
何でも言い合える
ほうがいいだろう
私も
お前が今のように
素直な言葉を口に
するほうがうれしい
結婚する
仲...
謝罪ではなく
旦那さまは
ご存知ない
わたしが
異能どころか
人並みの教養も
何もかも持たず
とても
久堂家の嫁など
務まらないことを
こうして
楽しくお茶を
できるのも
素敵な
街の様子を
見られたのも
今日は旦那さまに
たくさんのものを
いただいた
謝罪ではなく
わたしの素直な
気持ちを聞きたいと
言ってくれたことも
すごく
すごく嬉しい
でも..
ありがたいと
思うなら
旦那さまのことを
思うなら
たとえ恨まれたと
しても今ここで
わたしはあなたには
相応しくないと
自分から告げる
べきなのだろう
望んでしまった
少しでも長く
この人と居たいと
あとでいくらでも
どんな罰でも受けます
だから
わかり
ました
これからは
ちゃんと
言います
今だけ
許してほしい
それでいい
もう少しだけ
この幸せな時間を
過ごしたら
本当のことを
言おう
遠慮の塊である
彼女でも
部屋の前に
置いてあるものは
受け取らざるを
えないだろう
さて
何を言って
くるかー
だ
旦那さま
これ..
大人しく
もらっておけ
置いたのは
旦那さま
ですか?
さあな
気にすることは
ないだろう
こんな高価なもの
いただけません
えっと...
髪にはやはり
櫛のよしあしが
関係してくる
ですが..
気にするな
置いたのは
旦那さま
だが男が女に
櫛を贈る行為には
求婚の意味がある
ですよね?
今の彼女に
贈るならば
実用面で
これしか
ないだろう
誤解を避けるため
こんなふうに
こそこそとする羽目に
なってしまった
......
旦那さま?
ふ
深い意味は
考えず
使えば
いいのでは
ないか
では..
はい
そうします
大事に使わせて
いただきますね
そうしろ
感動
いや
強いていうなら
この感情は
何というのだろう
それとも興奮か
歓喜か
ありがとう
ございます
旦那さま
愛しさー
対異特務小隊屯所
継母の娘の
出来が良くて
よくある話っちゃあ
そうなんですけどね
虐げられていた
みたいでして
異能を受け継ぐ
家では
才能の有無で
扱いの差がより
顕著になる
斎森家の内情は
ひどいものだった
斎森美世を
虐げる継母と義母妹
道理で
炊事洗濯掃除裁縫まで
何でもするわけだ
彼女は下僕のように使われ
食事さえ満足に
与えられていなかった
見て見ぬ
ふりをする父親
傍観する
使用人たち
ぽろぽろの
古着も
あの
痩せこけた
身体も
笑うことさえ
満足に
できないのも
全て
彼女の家族が
原因だったのだ
そして私も
知らなかった
とはいえ
悔やみきれない
だがこれで
わかった
そんな彼女に
かなりきつい言葉を
ぶつけてしまった
斎森美世には
異能がない
見鬼の才さえも
おそらく彼女は
結婚は成り立たないと
考えているはずだ
いずれ出て行く
つもりゆえに
過剰に遠慮がちに
なっているのだろう
だが私とて
今までの縁談相手が
必ずしも異能を持つ
ものではなかった
それにしても
彼女の母親が
薄刃家の人間
だったとは...
異能を受け継ぐ家は
古来より帝に
臣下として仕えてきた
他にも国の
平穏を保つため
戦をおさめるため
常人には
見ることができぬ
異形を討伐するために
異能は不可欠だ
いつの時代にあっても
その力は重宝されてきた
異能には
さまざまな
ものがある
念じるだけで
ものを動かす
火をおこす
水や風を
意のままに操る
離れた場所に
一瞬で移動する
空中を歩く
けれど
薄刃家の異能は
飛び抜けて異質で
危険とされている
壁に隔たれた
先を見通す
かの家の
受け継ぐ異能は
人の心に
干渉するもの
だからだ
人の記憶を
操作する
思考を読む
思考を読む
夢に入り込む
それらはまだ
危険性は低い
相手の自我を消し
傀儡を作り出す
幻覚を見せて
錯乱させる
そんな危険な
能力すらあった
薄刃家は
自分たちの異能の
危険さを十分に
理解していた
使い方次第で
どのような
攻撃的な
異能よりも
国にとって害になりうると
国にとって
害になりうると
ゆえに
いつからか
海刃家は決して
表舞台に立たず
ひっそり
隠れて
暮らしている
独自の
しきたりにより
行動を縛り
異能の情報が
漏れることを
警戒し
滅多にその血を
外に出さない
場合によっては
帝からの命でさえ
退ることも
あるという
彼女の母親である
諏刃湾美が
斎森家に
嫁いだのは
極めて例外的
だといえる
そのあたりの事情は
気になるところだ
斎森美世が嫁いで
くることについては
だが
なんら問題はない
薄刃家については
得体が知れず
不気味だ
どうしたものか
接触しようにも
連絡手段すらわからず
久堂家の力でも困難だ
情報屋に頼んだところで
徒労に終わるだろう
お疲れ様です
今日は少々
遅くなったな
そういえば
最近は帰宅時間が
早くなった
おかえり
なさいませ
玄関で出迎える
彼女の姿に
安堵をおほえ
彼女との
食事の時間が
とれるように
帰っている
本当にらしくない
女性に対し
苦手意識を
持っている
はずなのだが..
幼い頃から
多くの女性に
言い寄られ
辟易としていた
何よりも
けばけばしく
贅沢好きで
桐瓶持ちの母が
大嫌いだった
大学時代には
先輩に嗜みが
どうのと言われ
何人かと
お付き合いの
真似事を
したものの
苦手意識が
加速した
だけだった
さすがに今では
愛想笑いを浮かべて
受け流すこともできる
女性との距離を
置くようにしていたが
本邸は女性使用人が多く
秋波を送られ
心休まることがないため
あの小さな家に移った
そんな私が
年頃の女性と
好んで同居とはな...
何か
ついて
きている
あしおといい
足音も息遣いも
聞こえない
屯所には結界を
張っていな
生身の人間
ではないな
門番も
見鬼の才を
もたない!!
しかしそれは
人目を気にせず
戦える場を
設けるためだ
鳥型の式か
どこの手のものか
問うても
無駄だろうな
くだらない
ことをする
大したことのない
相手ではあったが
どこの誰の
仕業か..